表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

迷える子羊よ、入りなさい。 盛る女の変

作者: 等々力 白米

 今日も迷える子羊が一人、ロベール秋山の占いの館を訪れた。


「さぁ、迷える子羊よ中へお入りなさい。」

「はい失礼します。」

「迷える子羊よ、本題に入る前にこの用紙を記入してください。出来れば出生時間もわかれば幸いです。」

「はいはい、名前や生年月日で占うんですね。」

「私は姓名判断はやらないんですけど、名前を書きたがらない方がたまにいらっしゃるんで、たまにそういう事含めて判断します。」

「へぇ、そういう人は後ろめたい気持ちがあるんですかね?」

「さぁ、どうでしょうね。面倒なのかも知れませんし、後ろめたい事があっても正直に話したくてここへ来られる方もいらっしゃいますからね。」

「成程、大変なお仕事ですね。」

「いえいえ、仕事ですから。子羊様こそ、こんな休日の回転一番に来ていただいて、普段お忙しいんじゃないですか?」

「実は今日はデートをボイコットしてきました。」

「おやおや、よっぽど切羽詰まってらっしゃるんですね。」

「ええ、僕後ろめたい気持ちでいっぱいです。でも、今まで通りにはもう出来ません。ダメな人間ですね。きっと占いでもそうでてくるでしょう?」

「少々お待ち下さいね。これを入力して星の配置図を出して、星を見て、星の度数を見て、星同士の角度を見て、全体の割合を見て、それをあれこれしないといけないんですよ。」

「はい。」

「…。」

「…。」

「子羊様は土星座水星座が多めですね。どちらかと言うと、真面目で生真面目で真面目真面目で生きられてるように見えますね。お金の管理とかきっちりされてそうです。」

「人からもよく”真面目”だって言われます。まぁ、自分としては小心者なだけで、細目に管理しないと気になって仕方ないってだけなんですけどね。」

「それが真面目って言うんですよ子羊様。」

「はははははは。」

「しかし、そんな子羊様が彼女様とのデートをボイコットとは…。」

「やっぱ、最低ですよね?」

「いえ?何だか「ボイコット」と言う表現が仕事みたいだなと思っただけです。」

「仕事の方が好きです。」

「お仕事は何を?」

「郵便局員です。」

「成程、細かい事をテキパキこなされそうですね。」

「いやぁ、下っ端何で雑用ばっかやらされてるだけですよ。」

「そんな真面目な方が、何故デートをすっぽかされたんですか?」

「何かもう、彼女が嫌になっちゃって…。でもやっぱり僕の方が悪いんでしょうか?」

「彼女様のどういうところが気にかかるんでしょうか?」

「何か、僕の彼女、事前に誕生日プレゼントの候補をあれこれ上げといて、いざプレゼントしても、あんまり僕に対して誠意見たいのを見せてくれないんです。」

「ほぉほぅ」

「そのわりに、ブログにはどんだけ高いものをもらったか、自慢げにアップしてるんですけどね。」

「お礼も言ってくれないんですか?」

「その場では言ってくれますが。何か僕は口先だけに感じちゃうんですよね。」

「ちょっと、彼女様の生年月日も見てみましょうか?料金変りましが宜しいですか?そういう商法じゃないですよ?」

「ははは、ええお願いします。」

「ではここに記入をお願いします。」

「はい。」

「…。」

「…。」

「うーん、本来なら自分で稼ぐタイプの女性何ですけどね。その場だけの口はとっても強いです。」

「関係無いかも知れませんが、彼女ってプレゼントしたり何かやってあげた後で、他の事柄で罵倒してくるんですよね。」

「まぁ、後ろ目たいんでしょうね。そこで素直に後ろめたい気持ちを受け容れて、感謝を行動に出来れば良いんですが、それが面倒臭いんでしょうね?」

「え?やっぱ彼女そういう性格だって星に出ていますか?」

「あくまで子羊様のお話と、鑑定を照らし合わせた考察ですが。」

「あんま、こういう事言えないんですけど…。」

「はい」

「結局、彼女は僕を好きな訳じゃなくて、高価なプレゼントをくれる『彼氏』が欲しかったんですよね?」

「それは、わたしには何とも言えませんが。彼女様は大分見栄っ張りなところがあるようですね。お付き合いされたきっかけは何だったんですか?」

「学生の頃、バイト先が一緒で、彼女の元彼が彼女に付きまとってたから、彼女と一緒に帰るようになったんです。そしたら何時の間にか僕が彼氏になってて。」

「あはは。」

「全然笑えませんよぉ」

「それで何でそのまま彼氏になったんですか?」

「まぁ一緒にいて楽しかったですし、彼女何事にも積極的だったので。」

「積極的ねぇ…。」

「でも、何時の間にかみんなの間で僕が彼女を元彼から奪った事になってて驚きました。」

「あらあら」

「しかも、その事もブログに載せていたんですよ?とっても誇張して。」

「はっはっははぁ、ヒロイン希望なんですね。」

「そこに反論してもバイト先に居辛くなって、バイト中が不穏な空気になっちゃうから、良いとこもあったし取り合えず、付き合って来たんです。」

「ほう、他の方は彼女の事どのように言われてますか?」

「そうですね。姉御肌だって言ってました。」

「ほほぉ」

「でも、何かその言い方も何か…変に誤魔化されてる気がするんです。」

「まぁ、どちらとも知り合いなら話したことがどう伝わるか分かりませんしね。」

「そうなんです共通の知り合いに少し当たり障りなく聞いてみても「女性っていうのはそういうもんだ」って言われちゃって。でも昔から僕世の中の「そういうもの」っていう”そういう”が良くわかんないんですよね。僕ってどっか変かね?」

「みんな自分以外は変わった人なんですよ。」

「そうなんですか?」

「変わってるか変わって無いか気にするより、好きな事を楽しんだ方が良いんじゃないですか?」

「そうですね。」

「子羊様、彼女様といて楽しいですか?」

「楽しく無いです。」

「はい鑑定終了」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ