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紫耀とニグルは「八禍山」の山頂への道を進んでいた。
何故かモンスターは出てこなかった。
紫耀はソワソワして、ちょっと早歩きになってはニグルに「急がなくてもお花見は逃げないわよ?」と言われた。
そして、やっと山頂に着いた。紫耀は『昼間に見た景色よりなんか凄い…』と思った。
今夜の月は満月。月光に照らされた垂れ桜はどこか幻想的だ。
ニグルは景色に見とれている紫耀を微笑ましく思いつつ、お花見の準備に取り掛かる。
準備と言っても、地面にレジャーシートをひいて四隅に重りを乗せただけである。そして未だに景色に見とれている紫耀を呼び寄せて、レジャーシートの上に下駄を脱いで座るように言う。
紫耀が言われた通りにすると、お弁当と飲み物の入ったビンをいくつか置いた。紫耀が首を傾げる。
「お花見っていうのは基本的に桜とか…景色とかを見ながら食事をしたり話をしたりするものなの。」
『そうなんですか…。』
「ちなみにお弁当は私の手作りよ。貴方の口に合うと良いのだけど。」
『ニグルは料理が出来るんですね。』
「まぁね。…あっ、この大きいビンはお酒だから最後にしましょう。…桜と満月を見ながら飲むときっとおいしいわ。」
『なるほど…。』
そして二人きりのお花見が始まった。
紫耀は景色を見ながらニグルの手料理に舌鼓をうち、あれが美味しいこれも美味しいと絶賛した。ニグルは絶賛の度に少し照れくさそうに笑う。
一通りお弁当を食べると、雑談を始めた。
『お花見ってこんなに楽しいんですね。』
「楽しんでくれたなら良かったわ。」
『お弁当も美味しいし、景色も綺麗、文句ナシのお花見です。』
「…ねぇ。少し聞いても良いかしら?貴方の事。」
『なんでしょう?』
「貴方、前に言っていたわね。ナイーンの冒険者ギルドに付いてる大砲、見た事ないって。」
『…言いましたね。』
「大砲なんて珍しくもないと思うのだけど…。それに景色とかも…まるで〝初めて見た様に〝目をキラキラさせている。…どうして?」
『………。ニグルになら…話しても良いかもしれません。あのですね…私は…現実では全盲なんです。…産まれた時から。』
「全盲…。」
『はい。なので〝ここ〝で目が見える様になって、とても嬉しい。楽しい。…そう思っているんです。心から。』
「そうだったの…。今も楽しい?」
『楽しいです。ニグルのおかげです。…ありがとう。』
紫耀は心からの無邪気な笑顔を浮かべた。ニグルは一瞬ドキッと心臓が跳ねた。
「(何…今の…。)…………きっ…気にしないで。そっそろそろお酒、飲みましょう。」
『そうですね。私、お酒初めてなんです。』
ニグルは酒を一杯グッとあおり、顔が熱いのは酒のせいだと思い込む事にした。
ーーーーーーーーーーー数分後ーーーーーーーーーーーーー
『~♪』
紫耀は歌を口ずさみながらクルクルと舞を踊っていた。
完全に酔っぱらっている。ニグルは「お酒はなしの方が良かったかしら。」と思った。
ゲームの中なので吐く事はないが、気分が悪くなる事はある。紫耀は案の定フラッと倒れそうになった。ニグルが慌てて抱き止めたので、地面との衝突は免れた。
紫耀はニグルにお姫様抱っこされて、レジャーシートに戻された。そして、ニグルの膝枕で寝かされた。
ニグルは普段手足に着けている硬い防具をお花見開始の際外していたため、女性ならではの柔らかさが紫耀に伝わる。
しかし酔っぱらっている紫耀はいつもの陰陽師ロール(もどき)が外れ、ニグルに『ニグルだいすき~』等と本来の口調で言い放ち、ニグルの心臓を忙しくさせた。
しばらくして酔いが覚めたが、酔っぱらっている間の記憶がない紫耀にニグルが「今度からお酒禁止。」と言ったのは、はたしてどちらのためなのか。それはニグルしか知らない。
なんとなく二人をイチャつかせたくなった。
後悔も反省もしていない。
今後もイチャつくかはTMMの気分しだいです。
ちなみにニグルがドキッとしたのが、恋愛的な感情か萌え的な感情かは深く考えてないのでお好きな解釈でどうぞ。




