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リリのスープ  作者: 愛摘姫
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リリのスープ 第七章

海の町を離れてから、しばらく田舎道を進むと、見晴らしのいい高台に出た。

新鮮な空気と、緑と山々、そして、遠くに海が見渡せた。

いまやってきた海の町も見えた。

二人とも、黙ったまま、太陽の下で、伸びをして、自由を味わった。


「次は、どんな町に行きたいかしら」


ナディンが、聞くと、リリは、ん~と考えてから、


「やっぱり、大きな町に行ってみたいわ。どっか、大きくて、田舎町じゃない、素敵なところ」


そういうと、


「決まりね!」


といって、車を走らせた。

高台から見える景色の中に、大きく広がる平野にならぶ町を、見つけていた。


二人とも、田舎じゃない町がどんなところか、ワクワクしていた。

きっと、素敵なことがあるかもしれないと、二人とも、感じていたのだった。


リリは、少し眠って、起きると、もう夕方だった。

ナディンも眠かったが、なんとか、宿がありそうなところまで行っておきたかったので、

走り続けていた。

ハイウェイを走っている最中に、それは、起こった。


車がびゅんびゅん走っている国道の途中で、車がスローになり、動かなくなってしまったのだった。

ガソリン切れだった。


ナディンは、こんなに、走ったことがなかったので、ガソリンを入れることを忘れていたのだった。

リリは、そんなナディンを励ました。


「あたしも、ごめんなさい。気づかなくて」


そういったけれど、リリは車を運転したことがなかったので、ガソリンを補充するということまで、気がつかなかった。


二人とも、国道に車を寄せて、誰かにガソリンをもらおうと思い、手を上げ続けた。


大きな国道だったので、なかなか車もとまってくれなかったし、止まれなかった。

このままここで夜になっちゃったら、大変だと思ったけれど、ナディンは、リリの心配をやめてから、旅を楽観的にみられるようになっていた。

いざとなったら、車の中に寝ればいいわ。

夜が明けて、パトロールがきたら、助けてもらえばいいと思った。



リリも、何もかも新しい体験だったので、楽しんでいるようだった。


日が傾きだしたころ、ある一台の車が止まった。

中からは、男性が二人降りてきた。


「どうしましたか?」


すぐに、駆けつけてくれ、ガソリンのことを知ると、


少しだけ、自分たちの予備のガソリンをわけてくれ、


「この先に、スタンドがあるので、そこまで、先導しますよ」



と言ってくれた。ありがたい申し出に、二人は、安堵した。


30分もすると、スタンドのネオンが見えてきた。

二人に、お礼をいうと、グッドラックと言って立ち去った。


スタンドの人にみてもらうと、ガソリンだけでなく、エンジンも不調していたことがわかった。

一晩、車を預かってもらい、修理してもらうことにし、自分たちは、近くの宿にとまることにした。



しかし、国道の宿といっても、モーテルのようなところしかなかった。

リリのことを、いえないくらいに、ナディンも、お嬢様育ちなところがあった。

モーテルのようなところに女二人で、しかもこんな国道沿いのところに泊まるなんて、大丈夫だろうか。

誰が使ったかわからない、衛生的にも、そして、治安的にも。


二人は、どうしようかと思ったが、迷っている場合でもなかった。

スタンドの人に、地図をもらい、そのあたりのモーテルを一軒一軒、みてまわることにした。


一番よさそうなところに泊まろう。

二人は、清潔そうで、建物も明るい場所を探して、そこに泊まることにした。


疲れていたから、朝は、すぐにやってきた。

二人とも、長居する気がなかったので、朝起きると、すぐに準備を済ませて、スタンドに向かった。


スタンドに行くと、店の人がいなかった。

休みなのかと思ったが、若い店員らしき人がやってきて、


「あの車ね、部品がうちには、無いから、ここで修理できなかったんだよ」


ナディンは、あわてて



「あたしの車は?」



ときくと、若い店員は、自分の後ろを指差して、


「中にあるよ」


と言ってガレージを開けてくれた。

ナディンは、ホッとしたが、この先どうしようと思った。


「もうすぐ、オーナーがやってくるから、相談してみるよ」


と言って、若い店員は、中に入っているようにと、手で指図した。


ナディンも、リリも、何がなんだか、どうしていいかわからず、言われるままに、スタンドの建物の中に入っていった。

しばらくすると、大きなトラックが入ってきて、車から、割腹のいい男性が降りてきた。

さっきの若い店員と何言か話すと、こっちをみて、まっすぐやってきた。


スタンドに入ってくるなり、



「やあ、お客さん。あの車ね、こっちじゃ、どうにもならないから。近くの町でみてもらうしかないんだがね」


と言った。

40台の半ばだろうか。半そでのTシャツに、だっぷりとしたズボンをはいて、腹はおおきく突き出ていた。



「あの、町は、あとどれくらいですか。町まで車は走るんでしょうか」


ナディンが聞くと、その男性は、



「ガソリン入れたから、しばらくもつと思うけど、エンジンがイカれちまってるから、保障はできないんだよね」


そういうと、ぽりぽりと頭を掻いて渋い顔をした。


「町までは、ここから、40分くらいだけど」


ナディンは、困ってしまった。いつもなら、知り合いの人になんとかしてもらえるが、ここらへんに知り合いはいない。




「その町に行ったら、車は直るんですか?」


ナディンが、詰め寄ると、オーナーは



「ん~、大きな町だし。うちもそこで部品を発注してるから」


と曖昧な感じだった。

このオーナーは、嘘をついていないと思うけれど、信用も出来ないと思った。

誰か信用できそうな人がいるといいんだけど。


とにかく、車は、町までもっていかないといけない。



「部品を町から、取り寄せてもらうことは出来ないんですか?」


リリが言うと、オーナーは、


「ん~、コストもかかるし、うちじゃやらないんだよね」


と言った。二人はがっかりし、自分たちでなんとかしなければいけないと思った。



「じゃあ、町の修理やさんの連絡先を教えてください」


ナディンは、その連絡先の番号に、電話することにした。



一回目は、話中だったが、二回目は、女の人が出た。


事情を説明すると、女の人は、


「オッケー、じゃあ、あなたたちの車がある場所を教えて、そこまで、レッカーしにいくわ」


と言ってくれた。

ありがたい申し出に、二人とも手をとって喜んだ。


一時間もしないうちに、レッカーがやってきて、ナディンの車を運んでくれた。

自分たちも、車に乗せてもらい、一緒に町までいくことになった。


ナディンは、神に感謝した。


町のはずれに、その修理やはあった。

修理やにつくと修理には、部品を取り寄せたり、一週間かかるといわれた。

ナディンも、リリも突然、見ず知らずのこの町で一週間過ごさなければいけなくなったことに、不安も覚えたが、そうするしかなかった。


「なんだか、嫌んなっちゃうわね。ここで一週間っていったって、どんな町かもわからないわ」


リリはぼやいたが、運転から解放されたナディンは、少しほっとしていた部分もあった。



「とりあえず、滞在する宿を見つけましょうよ。話はそれからだわ」



フロントでは、二人の持っている大きなスーツケースをみて、受付の電話に出たであろう女性は、



「あなたたち、どこからきたの?」


と言った。「サンウェイの町のはずれからです」というと、女性は、驚いた顔をして肩をすくませた。


二人とも、それをみて笑い、自分たちは、女二人で、そんなに遠くにきたのかと思うと、自信が持てるようだった。


ようし、宿探しだ。


女性は、いくつか、モーテルを案内してくれたが、二人は、断り、どこか、安くても、いいホテルか、滞在できそうなアパートメント探すことにした。


荷物を持って歩くとなると、大掛かりだったため、修理やにおかせてもらい、

貴重品だけもって、歩くことにした。


二人が降り立った町には、バスも、タクシーも路面電車もあった。

はじめてみるものに、リリもナディンも興奮していたが、二人はクタクタに歩きつかれてしまった。


どこをどう探したら、宿がみつかるだろうか。

結局、カフェで、昼食をとると、どっと疲れが湧いてきた。


リリが言った。




「ナディン、あたし、こんな大きくて忙しない町、いられないわ」


自然育ちの、リリのこめかみのほつれ髪が、疲れを感じさせた。


ナディンも同じ意見だった。田舎からきたからなお更だった。

せめて、海でも山でも見えるところじゃないと、落ち着かなかった。


「けれど、車がないし、一週間、どうしたらいいかしら」


そういうと、リリがいった。


「一週間後にここにかえってくればいいんじゃないかしら」


「そんなこと、できるかしら」


「そりゃそうよ。預かってもらえるわよ。きっと」



そういうと、修理やに向かった。事情を話すと、家の連絡先と、身分証明を見せるように言われ、一週間後に取りにくるという約束の書面を書いた。

荷物も、手で持てる分しか、もっていけないので、二人とも、バッグとスーツケース一個ずつを持ち、それ以外は車の中に置かせてもらうことにした。


やはり、海の見える方にいこうということになった。

こんなことなら、この間の海の町を出るんじゃなかったと、ナディンは少し思った。


二人は、バスで、海沿いの方へと向かっていった。


市街地をぬけると、すぐに、自然がまばらに広がっていた。

二人は、バスに揺られているうちに、眠ってしまい、気づくと、外は夕暮れになってきていた。

バスは、海の防波堤そばの停留所で、止まり、二人もそこで降りることにした。


それから、宿を探すために、スーツケースを引きずりながら、歩いてみた。


海の風が、懐かしく、帰ってきたような気持ちがして、ホッとした。


ナディンも、リリもあんなに疲れているはずだったのに、海風にあたると、気持ちが開けてきて、何もかもがどうでもよく感じられた。


足もとは、ふらつきながらも、やっと一軒の店の明かりが見えてきた。


二人とも、もう何でもよかった。人心地つきたかった。

店に入ると、そこは食事とお酒を出すようなところだった。


バーというよりも、食事も楽しむことが出来そうなところだった。


二人は、宿が決まっていないことなども、どうでもよくなり、とにかく、座ってゆっくりしたかったので、食事をとることにした。


自分たちの足で回るってことがどんなに大変なことだろうかと、二人はみをもって感じていた。

食事は、そのあたりで食べられる、魚介のものがメインだった。

観光客向けのバーというよりも、地元の人たちが通っているような店の雰囲気だった。

マスターらしき人が、二人の荷物をちらっとみて、注文を聞きに来た。



二人とも、お腹もすいていたし、喉も乾いていたので、何品か頼み、

お酒を頼むことにした。


ナディンは、ビールを、リリは、弱めのカクテルを、一口のむと、ホッと一息ついた。



「あ~」



思わず、二人の口から、安堵の声が漏れた。

それをみて、マスターは、笑っていた。


二人とも、恥じらいや何もかも、どうでもよくなっていたので、お互いに笑いあって、お酒を楽しんだ。

緊張がほぐれたのかもしれなかった。

車のことや、慣れない町、人ごみ、バスの移動、何もかもが、昨日から立て続けにあったので、二人ともぐったりと疲れていた。

防波堤の目の前にあるそのお店の中いるだけで、気持ちが落ち着き、自分に立ち返れるような気がしていた。

お互い、そんあことを感じてか、黙ったまま、お酒を飲み、お代わりした。


リリも、この間ほどは、酔いが回らなかった。

今日の方が疲れていたけれども、ホッとした気持ちでのむお酒は、心地よく酔わせてくれた。

ナディンも、ビールがこんなに美味しいと思ったのは久しぶりのような気がした。

海で飲んだお酒も美味しかったが、今日の方が、格別に美味しかった。


二人とも、まだ、今日の泊まる場所も決まっていないというのに、なぜか、ホッとしていた。


運ばれてくる料理の、海の幸も、五臓六腑に染み渡るような安心感だった。

昼に入ったカフェで食べたサンドイッチよりも、何十倍も美味しく感じられた。


何もいわずに、食事を平らげてしまった。

お酒と、食事で、大分、お腹が満たされてくると、二人は、やっと、ゆっくりと足を伸ばした。


店の小さな窓からは、外で鳴っている潮騒の音が聞こえた。

二人とも、だんだん眠くなってきていた。


スーツケースをみて、これをひいて、また歩き続けるのは、難しいとお互いが判断していた。


ナディンとリリは、自分たちが、いまどこにいるかもわからなかったし、このあたりに宿があるのかもわからなかったけれども、不安はあまりなかった。

きっと、海の音を聞いていたからかもしれない。



マスターは、皿をふいたり、カウンターの中にいた。


店内には、カウンターに一人と、あとから二人組の男性客が入ってきた。

みんな、はじめこちらを珍しそうにみていたが、酒をのみだすと、自分たちの話で盛り上がりだした。




すると、そこへ、カウンターの奥の裏の方から、男性が、入ってきた。

マスターとなにやら話すと、ちらりとこちらをみて、あいさつした。


日に焼けて、がっしりした身体と頭もぼさぼさしているような、若い男性だった。


男性は、自分達が食べた器を下げにやってきた。


誰にでも、やあと笑いかけるガイとは違って、挨拶すると黙って下げていった。


次に、また下げにやってきたときに、ナディンは、聞いてみることにした。



「あの、このあたりで、宿はありませんか」



彼は、ぎょっと驚いて、マスターの方に行った。

そして、何言か話すと、マスターがやってきて、言った。



「お嬢さんたち、このあたりで宿探しているの?残念だけど、このあたりじゃ、宿はないね。もう少しいったところは、観光地だから、そっちだったら、ホテルかなんかは、あるだろうけど、このあたりは、漁師の町だからね」


「一軒もないんですか?」


「そうだねえ。店もそんなにないからね、観光地に行くまでも人の足じゃ、一時間はかかるかなあ」


ナディンも、リリも、顔を見合わせた。

まさか、自分たちが泊まるところがないんて。

すでに、あたりはまっくらになっていた。

二人とも、不安や心配を通り越して、可笑しくなってしまった。



笑い出した、二人をみて、マスターは、不思議そうにし、若い男性も黙ってこちらをみていた。


「お嬢さんたち、どっからきたの?」


客が声をかけてきた。


「サンウェイのはずれから」


というと、男たちは、わからなそうに、首をかしげた。


「寝る場所っていったってなあ。このあたりじゃなあ」


と、そのうちの一人が、


「漁師小屋でよかったら、貸しましょうか」




カウンターにいて、話をきいていた男性がこちらに話してきた。

漁をする網や、道具をしまってある掘っ立て小屋のようなところだという。



ナディンも、リリも、よくわからなかったが、そのわけのわからない場所でも、寝る場所がないよりずっとマシだと思って、お願いすることにした。


ナディンも、リリもその頃になると、清潔さや、治安も気にならなくなっていた。

きっと、海の傍なら、大丈夫なようなきがしたからだ。


カウンターにいた男性は、漁師小屋まで案内してくれた。

そこは、昔から使っている、古びた道具や、漁師網などが壁にかけられ、

ちいさな暖炉と、椅子とテーブルがおかれている質素なところだった。


一段高い個上がりになっているところは、寝袋があり二人で十分寝ることができそうだった。


海からの風が、吹きつけて、木造でできた小屋の屋根や、壁は、大きな音をたててガタガタ揺れた。

古びているが、手入れもされていて、泊まるには、こまらなそうだった。

小さいけれど、キッチンもついていた。


ランプの光をつけると、海の音と合わさって、幻想的だった。

リリは、気に入った。



二人とも、お礼をいうと、小屋で、荷解きをした。

シャワーは、外にあるのでもうこの時間は使えないといわれたが、二人とも、へっちゃらだった。


マスターが、寒いといけないからと、ぶどう酒を一瓶くれていたので、それを二人で飲むことにした。


寒くは無かったけれど、風の音が気になってなかなか寝付けなかった。

二人とも、ランプの中、寝袋に入りながら、お酒を味わった。


いつのまにか、寝てしまい、朝になっていた。



外へ出てみると、海が目の前にあるのをみて、感動した。


リリは、思った。

ここにすみたいわ!



ナディンは、リリの申し出を、困った顔をしながらも、オッケーした。

小屋を貸してくれた男性に事情を話すと、いまは、使っていないからと快くオッケーしてくれた。


「一週間だもの。どうせ、ここにいるのは」



そういって、ナディンも、リリも、生活するのに、必要なものの買出しをしにいくことにした。

まず自分たちが食べるもの、使うもの。

料理器具やら、生活必需品は、小屋の男性が貸してくれることになった。


そうしたら、あとは、食材や、水を確保しないと。

自分たちが、暮らすとなったら、リリは、


新しい家に引っ越してきたみたいに、ワクワクした。


食器や、コップは、貸してもらえたが、ナプキンや、タオルなどは、そろえなけばいけない。


この話を聞きつけたのか、近所の人も、やんややんやと覗きにやってきた。

ずっと、漁師小屋で、誰もつかっていなかったところに、旅でやってきた女の二人組が住み着くときいて、好奇心旺盛な人たちが、何かかにかと、理由をつけて、やってきていた。


買出しも終わり、午後になると、昨日のマスターが小屋にやってきた。

差し入れのパンと、果物を持ってくると、



「本当に、ここに住むのかい?」



と笑っていった。二人は、そう決めていたので、


「一週間です。リオンの町に車を預けてあるから、そこへ帰らないといけないから」


とナディンがいうと、笑って、オッケーと言った。


一週間の滞在でも、その町の人は、とてもよくしてくれた。自分たちの何かかにかと、できるものを持ち寄ってくれたり、心配する年配の女性の人は、食材を差し入れてくれたりと、とてもよくしてくれ、まるで、自分たちの田舎にいるような気持ちがした。


ナディンも、リリも、いままで着ていた余所行き用のワンピースから、普段きている、動きやすい服に着替えて、せっせと小屋を掃除したり、小屋の周りの草をむしったりと、汗をかいて精をだした。


不思議な気持ちがしていた。


田舎から逃げて、旅をしにきたというのに、いまこうして、新たな田舎にきて、自分たちの生活を始めようとしている。

期間限定といっても、自分たちが、ここで暮らそうとしていることには、間違いがない。


こんなことになるなんて、昨日まで想像しなかったことに、ナディンは、自分で自分が可笑しかった。



リリも、この旅一番の生き生きとした表情をみせていた。

やっぱり、リリには、主婦の血が流れているのだった。

家の掃除や、片付けや、食材を使って料理をしているときのリリの顔は、晴れ晴れとしていた。



リリの作った夕食を食べ終えたとき、外は、夕日が海にしずみかけていた。

黙ってその姿をみながら、あまりの充足感と、美しさで、リリは、涙が出てきた。


海の風が、顔にあたると、温かくなり、消えていった。


こんなにいい場所があるなんて、このままずっとここに住み続けてもいいと思った。


夜になると、二人は、家の明かりを、ランプだけにして、お互いのことや学生の頃の話をした。

満ち足りた、空間が、そこにはあった。


風は、おだやかに、吹いていた。昼間の汗もひいて、ゆっくりとした時計のない夜をすごしていた。



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