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08.エピローグ 彼女が噂の魔法少女ソードダンサー

 魔王襲来から1週間がたった。

 以前にも増して特訓の内容が濃くなったのは言うまでもない。


「ぐぁ~~………キツイ………いつまで続くんだこんな生活……」


 特訓を終えた俺は重い足を引きずりながら自宅へ向かっていた。

 時間は深夜0時を既に回っており、繁華街はまだ人が溢れ賑やかさを醸し出していた。


「週末でもないのに景気が良いこって……って、ん? あいつは……」


 人の溢れる繁華街の中で俺は見知った人影を見つけた。

 俺の使えない部下筆頭の新井(女)だ。

 デート帰り……いや、まだデート中か? 嬉しそうに男と腕を組んで歩いていた。


 人がいらん苦労していると言うのにあいつは随分と楽しそうだな……!


 俺は理不尽な怒りを新井にぶつける。

 少なくともこの苦労の1部は奴の所為でもあるんだ。恨みの1つや2つや3つは構わないだろうよ。


 恨みをぶつけるかのように新井を睨みつけていると、2人は次第に人気のない裏路地を歩きはじめる。

 普通であればイチャイチャする為の進路だと思うところだが、相手の男から微かに漏れ出す魔力は……


 俺は疲れた身体に鞭を打ってこっそりと後をつけ始めた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ねぇ……ちょっと、何でこんなところ通るの?」


 私――新井弓――は上手く引っかけた男に食事を奢らせ3件目に向かっていたのだけど……相手の男はいいbarがあると言って近道だからと裏路地を通ってどんどん人気が無いところへ進んでいく。

 流石に不安を覚え、3件目の奢りは諦めようと男から離れようとしたのだけど、絡まわせていた腕が引っ付いて離れない!


「え? ちょっ、何これ!?」


「いやだなぁ……今日は最後まで付き合ってって言ったじゃん。途中で逃げ出すなんてズルいよ」


 男は不気味な笑みを浮かべながら私の引っ付いた手に反対側の手を添え、気持ち悪く撫でまわして来た。


「や、きょ、今日はもう終わり! 最後だから! 早く放してよ!」


「ん~~、残念だけどその言い訳は通じないよ。前も最後まで付き合ってって言ってたのに途中でいなくなったよね?

 だから今日こそは最後(・・)まで付き合ってもらうよ」


 男の笑みが深みを増す。

 思わずゾワッと寒気がした。


 キモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイキモイ!!

 って、前も(・・)


「ははっ、やっぱり覚えてないよ、この女。ほんのついこの前だと言うのに。お前にとって男なんてその程度のもんなんだろ?

 だったらこっちも同じような扱いをしてやるよ!」


 段々本性が現れて来たのか、さっきまで一緒に食事をしてた優しい雰囲気は吹き飛び、ゲスイ表情をしていた。


「まずは身動きを封じさせてもらおうか。その後で……ふふふ、今日は一晩中愛してやるよ」


 男がそう言うと私の体がビリッと痺れたかと思うと身動きが取れなくなりその場に崩れ落ちてしまった。


「あ……が……」


「ふふふ、さ~て、僕達の愛の巣へ行こうか」


 や、やだ……誰か、助けて……!


「はぁ~~~、騙した女も悪いけど、だからと言って拉致監禁は犯罪よ」


「っ! 誰だ! 人が来ないように結界を張っていたはずだぞ!?」


「誰かと聞かれればこう答えるわ。

 わたしの名は魔法少女ソードダンサー。貴方のような魔法を犯罪に使う者を倒す正義の味方よ」


 魔法少女……? え? ネットで噂になっている?

 あれってただの噂じゃなかったの……?

 ううん、誰でもいい! 助けて!


「うるさい! 俺はこの女に復讐する正当な権利がある! 邪魔をするな!」


「どうせ下心満載で鼻の下を伸ばしていたんでしょ。貴方ももう少し誠実な態度を取っていれば騙されることは無かったんじゃ?

 それで復讐と言われても納得は出来ないわよ」


「うるさいうるさいうるさい! 魔法の力に目覚めた俺を舐めるな!」


 男が火の玉やら氷の矢やらを放ちながら魔法少女に襲い掛かった。

 魔法少女はため息をつきながら両手に携えた剣を掲げる。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 あ……れ? 私何をしてたんだっけ……?


 私は昨日、男を引っかけ奢らせて……その後確か大変な事が有ったはず。


「えっと……」


 必死に思い出す事十数分。

 そう言えば、誰かに何かを言われたような……


「確か『普段の態度を改めないとまた痛い目を見るよ』って……余計なお世話よ! って誰に言われたんだっけ……?」


 些か腑に落ちないけど、早く出勤の準備をしないと。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 はぁ~~~、昨日の最後のアレは余計な仕事だった……

 助けない方が良かったか……?

 かと言って見てしまった以上、見捨てるのは魔法少女の流儀に反するし。


 あれで反省してくれればこれからの仕事もやりやすいんだろうけど……

 って、あ。

 覚醒者の起こした犯罪は被害者も記憶を消されているから昨日こことは覚えてないじゃん!

 うおぉ~~~、もしかして昨日のは助け損!?


 はぁ~、ツイてねぇ……









 今日も一日ツイてなかった……

 上司にはミスを擦り付けられるわ、同僚の武藤には女の修羅場を押し付けられるわ、部下の古木(男)は段取りは悪いわ、同じ部下の新井(女)は……昨日のことがあったからか、ちょっと様子がおかしかったな?


 まぁ、ツイてないのは変わらないか。


「わふ!」


 って、今日も魔法少女の仕事か……


 元気に吠えるフェルに案内されながら俺は気を取り直しながら現場へと向かう。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ふぅ~、後の事は頼んだわよ」


「わふ!」


 わたしは後始末をフェルに任せ、その場を立ち去る。

 人気が居ない場所を確認して変身を解く。


「今日はもう2・3件事件が起きそうだな。やりたくはないが訓練場に行く前にパトロールでもするか」


 ガサリ


 俺は思わずバッと振り返る。

 間違いなくこの場には誰も居なかったはずだ。

 今の変身解除を見られた……!?


 変身中は認識疎外魔法が掛かっているから正体がばれることは無いが、変身中や変身解除後はお約束(テンプレ)で正体がばれるのだ。


「……剣崎係長? え? マジで……? え……? 剣崎係長が魔法少女……? え゛え゛ぇぇ………!?」


 そこに居たのは今日一日様子がおかしかった新井弓だった。









……To Be Continued?

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