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02.魔法少女ソードダンサー爆誕!

 俺は今日もついてない一日を終えて重いからだを引きずりながら帰宅していた。


「クソッ、何で俺が武藤の女の尻拭いをしなきゃならねぇんだよ……!」


 同僚の武藤は確かにイケメンだ。

 だが女癖が悪い。それも最悪と言っていいほどに。

 奴に泣かされた女は会社内に止まらず、他の会社や商売女までも含まれると言う。


 それも3年前に結婚をしたことにより治まるかと思いきや、それを逆手に取って不倫と言うスパイスを使い、更に輪をかけて色々な女に手を出し始めたのだ。

 奴の嫁さんは分かってて無視しているのか、何も知らないでいるのかは分からないが、不憫でならん。


 そして今日は今日で奴が捨てた女が詰め寄って来たのだが、奴は俺に後始末を押し付けたのだ。

 無論そんな事を俺がする必要は無いのだが、奴は上手い事上司を使い仕事の邪魔をする女の排除を命じるように仕向けたのだ。

 お蔭で俺は今日の仕事はほぼその女の相手で潰れてしまった。


「はぁ……これで部下も使えればまだマシだったんだが……」


 新たに与えられた部下は2人。だがその2人もどちらも使えなかった。

 1人はまだいい方だ。いや、良くないか。

 部下の古木(男)は全く仕事が出来ない。お蔭で雑務が増々。

 もう1人の部下は最悪だ。

 新井(女)は今時のギャル風で仕事を舐めきっていた。

 何かあるごとにサボろうとするのだ。なまじ仕事が出来るだけにそのサボり癖に腹が立つ。


「クソックソックソッ! 何でこんなについてないんだよ! 最近までこんなことなかったのによ……!」


 最近は何をやるにしても裏目に出てやがる。

 俺が悪いのか? 俺が何かしたのか?

 ……いや、俺だけじゃないはずだ。

 そう言えば最近は何か世の中の雰囲気が可笑しい気が……

 そんな事を言えば、常に世の中はおかしな雰囲気で溢れかえっていると言われるだろうが、それに輪をかけて最近は可笑しい気が……


「あー……魔法、だっけか? ネットじゃそんな噂も飛び交ってたな。確かに魔法が実在したなら世の中は変わるだろうよ。

 つーか、俺にも魔法をくれ。こんな世の中ぶっ壊してやるよ」


 あり得ない妄想を抱えながら俺はフラフラと歩いて行く。


 ――――ピリッ


「……? なんだ、今の感覚は」


 ふと気が付いてみれば俺は人気のない公園に迷い込んでいた。

 余程今日の出来事が頭に来ていたんだろう。


 この辺は治安が悪いわけではないが、流石に周囲に人気が無いのは気味が悪い。

 俺はさっさと人気のない公園を抜けようとしたが、そこへ突如爆発音が鳴り響く。

 流石に只事ではない訳で、普通なら関わらないようにさっさとその場を離れるべきなのだが、その時の俺は好奇心を刺激されその爆発音の元へと恐る恐る近づいてしまった。


 そして俺は近づいてしまった事に後で猛烈に後悔する事になる。


 爆発音に近づいたところには信じられない光景が広がっていた。

 その場にいたのは2人だった。

 正確には1人と1匹なのだろう。


 最初に目に付いたのは異形の化け物だった。

 膨れ上がった筋肉は着こんでいたと思われる衣類を破り、その緑色の肌を晒していた。

 額には角が生え、さながらファンタジーものの(オーガ)だ。


 もう1人は(オーガ)とは正反対の可憐な少女だった。

 ピンクのフリルの衣装に身を包み、両手には可愛い意匠を凝らした2本の剣を携えていた。

 衣装と同じくピンクのリボンで括られた黒髪のツインテールのヘアスタイル。

 手足のグローブとブーツも可愛いピンクで統一されている。

 所謂魔法少女だ。


 その魔法少女が(オーガ)と戦っていたのだ。


 だが戦況は素人目に見ても芳しくないように見えた。

 肩で息をしている魔法少女に、全くの無傷で怒りを顕わにしている(オーガ)

 よく見れば魔法少女は血を流し片手をだらりと下げていた。


「グガァァァァァァッ!」


「ちょっ、これマジでマズイ……!」


 両腕を振り回し襲い掛かる(オーガ)を魔法少女は片手で剣を振るい何とか凌いでいたが、このままでは凌ぎきれずに攻撃を喰らうのは時間の問題だ。


 その光景を目にし、俺は何を思ったのかその辺の石を拾い(オーガ)に向かって投げたのだ。

 普通であれば厄介事に巻き込まれないようその場を立ち去るのが正解なのだろう。

 だが、今の俺は今日の鬱憤を晴らすかのように、ちっぽけな正義感を膨れ上がらせ魔法少女を助けるべく(オーガ)に立ち向かっていったのだ。


 確かに今日の俺はついてないが、目の前の少女を見捨てる程落ちぶれていねぇっ!!!


 俺の投げた石は見事(オーガ)の頭にヒットし、気を逸らすことに成功した。

 だが俺の気を引く攻撃は状況を改善するまでには至らなかった。

 魔法少女はその隙をついて一撃を与え、すぐさまその場を離脱するだけに止まったのだ。


「ちょっと! 何で一般人の人がここに居るのっ!?」


「わふわふっ!」


 あ、よく見れば魔法少女の近くに1匹の白い子犬がいるな。

 よくあるマスコットキャラと言う奴か?


 魔法少女は突如現れた俺に驚き、その白い子犬と会話をしているようだ。


「ああもうっ! そこの人! 今すぐここから逃げて!」


「いや、俺がその化け物の気を引くからその隙に君が倒すんだ!」


「いやいやいや! 一般人が何を言っているのっ!? いいから早く逃げなさいよ!」


 この会話の間にも俺は石を投げて(オーガ)の気を引いているのだが、(オーガ)は突如現れた俺と魔法少女のどちらを攻撃していいか迷っているようだった。

 だが、しつこく石をぶつけられることに気分を害したのか、(オーガ)は目標を俺に定めて突進してきた。

 その迫力はテレビや映画で見るものとはまるで違った。

 迫りくる生の感触は言い表せないほどの恐怖を生み出す。


「う…お……っ」


 思わずたじろいでしまい、その場に棒立ちになってしまう。

 (オーガ)の攻撃が俺に降り注ごうとした時、横からの衝撃で俺は辛うじて(オーガ)の攻撃を躱すことが出来た。


「っ痛ったー……、逃げなさいと言ったら逃げなさいよね」


 横からの衝撃は魔法少女だった。


「って、折角化け物の気を引いたのに何で攻撃をしないんだよ!?」


「あのね! 攻撃に晒されている一般人が居るのにはいそうですかって頷けるわけないでしょ!?

 それに、最悪な事に今の私には怪我している上に魔力不足であの愛怨(アイオン)を倒す力が無いのよ」


 マジか。

 攻撃手段が無いんじゃ手詰まりじゃん。


「わふわふっ!」


 (オーガ)――愛怨(アイオン)と言うらしい――の攻撃を躱し倒れと魔法少女は追撃を逃れる為に一旦距離を取る。

 と、そこへマスコットの子犬がいつの間にか寄って来て魔法少女に声を掛ける。


「ええっ!? ちょっと、それマジで言ってるの!?」


「わふ!」


「いや、もし本当なら私にも有りがたいんだけど……でも、ええぇぇぇっっ!?」


「わふ!」


「ああ、もう分かったわよ! これしか方法が無いんじゃ仕方ないわね」


 愛怨を警戒しながら魔法少女は子犬と会話をし、そして意を決意したように俺を見る。


「あの、おじさん。あの化け物――愛怨を倒すのに1つだけ方法があるの。それにはおじさんの力が必要なのだけど……」


 ありがちなパターンだな。

 突如現れた第三者が逆転の駒となる。

 まぁ、まさか俺がその第三者になるとは思わなかったが。


「ああ、俺も自分から首を突っ込んだんだ。俺に出来る事ならやってやるよ」


「あー……後で絶対文句言わないでよね。まず間違いなく愛怨は倒せるけど、おじさんにとっては絶対不本意な事になるから」


「……何をさせるつもりだ?」


 こうまでして念を押されると不安になるな。

 確かに変なストレスと正義感で化け物に立ち向かっているが、良く考えると俺何をしているんだろうな。

 もしかして踏んじゃいけない尾を踏んじゃった……のか?


「フェル――この子犬が言うにはおじさんは変身した私よりも凄い魔力を持っているらしいの。

 だから人払いの結界を越えて来れたみたいなんだけど」


 ああ、あれだけ騒いでも人が来ないのはそう言った魔法の効果が効いているからなのか。

 そして俺はその効果を突破できるほどの魔力がある、と。


「で、私がこれから魔法少女の力をおじさんに譲渡するわ。魔法少女の力とおじさんの魔力を以って愛怨を攻撃して。これが最後の手段よ」


「……ちょっと待って。それは俺に後遺症みたいな影響はないんだよな?」


「……いきなり魔法少女になっても魔法の力は簡単に使えないから最初から全力で攻撃してね。何も難しい事を考えないで全力で攻撃、いいわね!?」


「待てぃ! 今何か不穏な事を言ったな! 魔法少女になってもって何だ! おい、こら、答えろ! 何だその剣はっ!?」


 魔法少女は有無を言わさず、両手に持った剣に魔力らしきものを込めて二刀の魔法剣を俺の胸に突き刺す。


 刺された剣は眩い光を放ちながら俺の中へと吸い込まれていく。


 光が治まると景色は一変していた。

 景色だけじゃない、わたし(・・・)の体も一変していた。


 ピンクのフリルの衣装を身に纏い、伸びた髪はピンクのリボンでツインテールに。

 視界の高さも1段も2段も低くなっていた。

 胸にはかつてない重さが2つもぶら下がっており、足元は心許ない程スカスカに感じる。


 そう、わたしは先ほどまでの魔法少女の姿をしていたのだ。


「わふ!(5代目魔法少女ソードダンサー誕生ね。これからよろしくね!)」


 見ればマスコットの子犬が嬉しそうに尾を振る。

 鳴き声は二重に聞こえ、何を言っているのか理解してしまう。


 わたしに剣を刺した元魔法少女は今は普通の女子高生の格好をしていた。

 目は申し訳なさそうにしていたが、何処か安堵した表情も見せていた。


「…………………どういう事か説入してもらえるかしら?」


「ああ、うん。それは勿論するけど、今はほら、あっちが最優先でしょ?」


 元魔法少女の女子高生が指差す先には律儀にも待ってくれている愛怨が居た。

 いや、恐らくだけどわたしの内から溢れだす魔力に恐れをなして戸惑っているのだと思う。

 わたしも魔法少女の成りなり立てで魔力をコントロールできていないからだ。


「わふ!(5代目の最初の任務よ! 愛怨を倒してきなさい!)」


「えっと、頑張ってね」


「……………………………………………………………………………………………」


 何でこうなった?

 メチャクチャついてないじゃないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!


 この後八つ当たり気味に愛怨をボコったのは言うまでもない。









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