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第四十話 【クリスマス・弐】

「今日は街中で大きなクリスマスツリーが用意されているみたいよ。あめ、ひろとくんと一緒に見てくれば?」

「‥‥‥え、でも」

「いいじゃんあめ。見に行く?」


 丁度、これだけの食べ物を貰って何かあめにお返しをしたいと思っていたところだ。

 外に行けば何かお店があるだろう。


「‥‥‥あ、うん。‥‥‥別にいいけど」

「じゃあ決まりね。二人共、行ってらっしゃい」


 お母さんはとても笑顔だ。


「ヒーロー君よ。一応言っとくが、ホテルに行ったりして、一線を越える様な事はやめたまえよ?」

「はい、分かりました! ‥‥‥因みに俺はひろとです」


 俺はそう伝えると、あめと共に外へと向かった。


 マンションから出ると、外は少しだけ雪が降って来ていた。


「来る時には降ってなかったのにな」


 あめは上向きに手のひらを広げ、「‥‥‥だね」と答える。


 にしても、クリスマスの雰囲気がめちゃくちゃ出てるなぁ。


「でさ、そのクリスマスツリーの場所って分かるの?」

「‥‥‥うん。ここでは毎年やっているから」

「そっか。じゃあそこに行く前にちょっと買い物をしてもいい?」


 俺がそう言うと、あめは少し不思議そうな表情をする。


「‥‥‥いいけど、どうして?」

「いや、この辺にはめったに来ないから、少しだけ見てみたいなと」

「‥‥‥そ、そっか」


 俺はあめの横に並び、道路を歩いていく。


 しばらく進んで行くと、右側に約七階建てほどのデパートが見えたので一緒に入った。


 そして買い物を済ませると、ビニール袋を右手に持って外へと出る。


「あめは何を買ったんだ?」


 途中であめから、別行動をしようと提案して来たのだが、見られたくない物でもあったのだろうか。

 まあなんにせよ、俺もプレゼントをあめに見られずに買えたから、都合良かったんだけどな。


「‥‥‥何でもない。‥‥‥ひろとくんは?」


 質問を返して来やがった。


「何でもない。という事でそろそろクリスマスツリーを見に行こっか」

「‥‥‥分かった」


 そう会話をすると、あめに案内してもらい街中を移動した。


 夕日はもうすでに沈んでいる為、空には月の光と星が見える。

 俺の住んでいる田舎は、この時間帯だとかなり暗いのだが、ここは違う。

 街灯がたくさんあり、今日はクリスマスだからか、もの凄い量の明かりがある。

 色んな建物にサンタの形をしたLEDやらがたくさん飾られていて、また道には色んなカップルや家族がいる為とても賑やかだ。


 少しの間建物を観察しながら歩き続けていると、やがてとても大きなクリスマスツリーが見えて来た。


「‥‥‥すごいね」

「ああ、俺こんなに大きいのは初めて見たわ」


 めっちゃでかいやん。

 てか男女二人組の割合多すぎだろ!


 って俺達もその中の一組なんだけどさ、まあ俺とあめはあくまで友達だし。


 にしても、まじで綺麗だな。

 今までこんなのにほとんど興味を持った事が無かったけど、実際見てみると結構良いもんだ。


「どうする、もう少し近づいてみるか?」


 俺がそう聞いてみると、あめは目を閉じて首を左右に振る。


「‥‥‥ううん、このくらいがいい。‥‥‥あそこは人が多いから」

「そっか。じゃああそこのベンチに座って、少しのんびりするか」

「‥‥‥ん」


 俺とあめは、端っこにある少し暗めの所に行くと、横に並んで座った。

 ここはあまり光がないからか、人が少ない。

 にも関わらずちゃんとクリスマスツリーは見えるので、かなり良い。

 いわゆる隠れスポットってやつだな、うん。


 その後、俺達は無言でベンチに座ったまま時間を過ごしていった。


 その間何を考えていたかというと、いつプレゼントを渡そうかなと。

 いざとなると、結構緊張して来たわ。

 意外と言い出せないものだな。


 俺が無言のせいか、あめまで喋らないし。

 ‥‥‥まあ、ちょっと勇気を出すか。


「‥‥‥なぁ、あめ」

「‥‥‥ねぇ、ひろとくん」


 ‥‥‥。

 うわぁ、被ったぁー!!

 めっちゃ気まずいやん。


「ど、どうしたんだ?」

「‥‥‥そっちこそ」

「いや、まあ。‥‥‥ちょっと渡したいものがあってさ」

「‥‥‥えっ」


 俺がそう言うと、あめは少し驚いた様な顔をする。


「はい、これ。クリスマスプレゼント」


 俺は手に持っていたビニール袋の中から、黒色のマフラーを取り出し、あめに差し出した。


「‥‥‥うわ。あ、ありがとう」

「いいよ」


 あめは俺から受け取ったマフラーを広げ、早速首に巻く。


「‥‥‥ふふ、あったかい」

「そっか」


 あめは少し嬉しそうな顔をした後、急に真剣な表情をし、こちらを向いた。

 いきなりどうしたのだろうか。


「‥‥‥あの、ひろとくん?」

「ん?」

「‥‥‥、これお返しに」


 そう言って上着のポケットから取り出したのは、黒色の指輪だ。


「えっ、俺に?」


 なるほど、さっきデパートでこれを買ってたんだ。


「‥‥‥ん。ひろとくん黒色好きでしょ?」

「ああ、えーっと。ありがとうな」


 俺は笑顔で受け取り、着けてみた。

 うん、なんの柄もないけど普通に格好良い。俺、こういうの好きだわ。


「‥‥‥あと、ひとつ伝えたい事があるんだけど」

「おう、どうした?」


 何だろう?


 しばらくの間が開いた後、あめは何かを決心した様に俺の顔を見て来た。

 そして目をじっと見つめて来て、ゆっくりと顔を近づけて来る。


 おいおい、そんなに来たら唇同士が当たっちまうぜ?


 やがてめちゃくちゃ近い距離まで来たところで、あめの口が開いた。


「‥‥‥す」

「おい、押すなって」


 あめの小さい声と同時に、近くから何か聞き覚えのある声が聞こえて来た。


 あめから視線を外し声のした方を向いてみると‥‥‥はっ!? 健二!?


「おーい、そこで何してんだ?」

「ほら、太陽のせいでばれたじゃん」

「健二が俺にも見せてくれないからだろ?」


 うわー、建物の角から二人も出て来たー。


「お前ら、なんでここにいんの?」

「いやー、まあ、その、うん。俺達はカラオケの帰り道にクリスマスツリーを見つけたからさ、ちょっと見ていこうぜって。な、太陽」

「お、おう。そうだぜ」


 いや、こいつらがここのカラオケボックスに来るとは思わなかったわ。

 なんにせよ、こいつらうぜぇな。

 あめの話を遮りやがった。


「まあ、とにかく邪魔してすまない。‥‥‥俺達は帰るから続きをしてくれ」


 眼鏡野郎こと健二が何か言い出した。


「弘人、頑張れよ!」


 イケメン高身長こと太陽が何か言い出した。


「は? 何が?」

「「じゃあな」」


 二人はそう言い残して、建物の角に消えていく。


「いや、あいつらまじで何しに来たんだ?」

「‥‥‥」

「あ、そういえば。さっき何を言おうとしてたの?」

「‥‥‥な、何でもない」

「そっか。‥‥‥じゃあ俺からも伝えたい事があるんだけど」

「‥‥‥ん?」


 俺はさっきと同じ様にあめの目を見て顔を近づけると口を開く。


「好きだよ。友達として」


 多分さっきあめは、こう言おうとしていたんだと思う。最初に「す」って言ってたし。

 まあ、人に邪魔されたら伝える気分じゃなくなるよな。


 という事で、俺も同じ気持ちなので、こちらから言いました。


 あめは、俺の言葉を聞いて顔を赤くし、目線を逸らした。


「‥‥‥わ、私もだよ」

「だからさ、これからもよろしくな」


 あめは再び俺と目を合わせると、顔を赤くしたままにっこりと笑った。


「うん」

死=データ削除 ─敏捷極振りで行ってみる!─ ~ 完 ~



これにて物語は完結させていただきます。


今までおつきあいいただき、本当にありがとうございました。


いずれまた次回作も書こうと思っているので、よろしければお願いします。

m(_ _)m


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