第三話【二人なら勝てる】
探索の列の順番は俺が戦闘で、雪菜さんが後ろだ。
最初雪菜さんに、「俺が抱っこして走ろうか?」と聞いてみたところ、「‥‥‥恥ずかしいから、やだ」と言われた。
よくよく考えると、確かに恥ずかしいよな。
同級生の男子にお姫様抱っこされるって、学校の試験中にボビッ! っとおならをしてしまった時レベルに恥ずかしいと思う。
いきなり女子に話しかけられ、なんで俺に? と思いながらも返事をしたら、実は俺の後ろにいた女子の友達に話しかけていた時レベルに恥ずかしいと思う。
授業中に「先生!」と呼ぼうとして、間違えて「お母さん!」と言ってしまい、何とか誤魔化す為に「──は、三者面談に来れないそうです」と付け足してみたが、やはりクラスのみんなに大爆笑された時レベルに恥ずかしいと思う。
あ、ちなみにこの例は今、俺が考えました。
実体験じゃないからね?
信じてくれるよね?
まあ、話が逸れてしまったがそんな事もあり、前後の一列で行く事になったのだ。
約10分後──。
「‥‥‥本当に何もないね」
「ああ、普通のゲームだったら何かヒント──」
ガサッ
俺が歩きながら話していると、少し遠めの横から草の動いたような音が聞こえた。
「──ゴブリンか!?」
「‥‥‥そうみたい」
横を向いてみると、二匹のゴブリンがこちらに向かってきている。
相変わらず汚い身なりだな。
「よし雪菜さん。一緒にあいつらと戦おう!」
俺は意を決して雪奈さんに言った。
二人なら勝てない相手じゃない。
さっき良い作戦を思いついたし。
俺が、逃げるのではなく、戦おうと提案した事に雪奈さんは驚いた表情をする。
「‥‥‥勝てるの?」
「大丈夫、100%の確率で倒せるから」
「‥‥‥分かった」
雪菜さんが俺の自信満々な表情を見て、静かに呟いた瞬間、俺は彼女をお姫様抱っこした。
「‥‥‥あ、‥‥‥ちょっと」
「恥ずかしいだろうけど我慢して、これなら絶対勝てるから」
雪菜さんはとてもびっくりした表情をしながら、手で口を隠す。
「‥‥‥どうするの?」
「雪菜さんってさっき炎を出してたよね? あれって詠唱がいるんでしょ?」
「‥‥‥まぁ、ちょっと長めの文章を口に出さないといけない」
二匹のゴブリンは、会話をしている俺たちに向かって歩くスピードを速めた。
「ぐぎゃおぉぉ」とか言って威嚇してきている。
「じゃあ、その魔法を使ってあいつらを倒して」
雪菜さんはめちゃくちゃ恥ずかしそうにしていて、あまり納得していなそうだったが、「‥‥‥やってみる」と呟く。
俺はそれを聞いて、雪菜さんをお姫様抱っこした状態のまま走り出した。
もちろん敵に近づくのではなく、逃げるのだ。
相手を翻弄できるが、ダメージを全く与えられない俺が動き、ダメージを与えられるが、相手の速度に追いつけず詠唱にも時間がたくさんかかる雪奈さんがアタックに専念する。
これが俺の考えた最強の陣形だ。
雪菜さんもそれに気づいたようで、片手で口を隠しながらも魔法の詠唱に取り掛かった。
俺は迫ってくるゴブリンからひたすら距離を取る。
「‥‥‥汝、我の求むる炎の力を、‥‥‥今この場で解き放て炎弾!」
ボウゥ
おー、格好良いな。
雪菜さんは詠唱が終わるのと同時に、手のひらをゴブリンに向け炎の弾丸を放った。
ゴブリンの一匹は、避けること叶わず首元に命中し、HPバーが半分程度減少する。
「グガァァ」
それに気を悪くしたゴブリン二匹は、無造作に木の棒を振ってくる。
だが俺は常に逃げているので、その斬撃が届く事は無い。
その間にも雪菜さんが詠唱をし、次の魔法を発動する。
ボウゥ
「グギャ」
一匹のHPバーが真っ黒になった。
HPがゼロになったのだろう。
その時、HPバーが真っ黒になった方のゴブリンが青色に光りだすと、そのまま砕け散る。
バリィィン!
おぉ、綺麗だな。
「良いぞ雪菜さん。残り一匹だ!」
「‥‥‥ん」
ゴブリンは死んでいった仲間に動揺しながらも、すぐに切り替え、再び木の棒を振り出す。
ブンッブンッ
そんなに遅いの当たるわけ無いだろ。
後はほとんど同じ流れだった。
俺が相手の攻撃を避け、雪菜さんが魔法でHPを削る。
結局その戦いが終わるのに1分もかからなかったぜ。
一匹目と同じように、青色の光を放ちながらバリィィン! という効果音を響かせ、消えていった。
「勝てたな」
「‥‥‥うん」
お互い一言ずつ言葉を交わした時、ピコリーン! という音が二回ほど響いた。
「なに? 今の」
「‥‥‥レベルアップしたとか、かな」
「ちょっと見てみようぜ」
「‥‥‥ん」
俺と雪菜さんはステータスウィンドウを目の前に開く。
「あ、俺レベル2になってる」
やったー!
「‥‥‥私も」
今はパーティーを組んでいるのでお互い経験値が半分になっている。
つまりプログラム上、一人で一匹を倒せば、レベルが2になっていたのか。
「‥‥‥五月雨‥‥‥くん」
雪菜さんが少し恥ずかしそうな声で呟いた。
ん?
「どうした?」
「‥‥‥そろそろ‥‥‥降ろして」
あらっ?
「おー、ごめん。全然気づいてなかった」
よく見ると俺は、雪菜さんを抱っこした状態でステータス画面を開いていて、雪菜さんは俺に抱っこされたままステータス画面を開いていた。
端からみると、かなり恥ずかしい姿だ。
俺も言われて気づき、めちゃくちゃ恥ずかしくなって来たので、謝りながら雪菜さんを地面に降ろした。
にしても軽かったなぁ。
体重40キロ無いんじゃねえのか。
「‥‥‥あ、ステータスポイントが増えてる」
地面に降りた雪菜さんが、ステータス画面を確認しながら言った。
そう言われて画面の下の方を確認してみると、残りステータスポイント1030と表示されている。
「レベルが1つ上がっただけで、こんなにポイントくれるんだ」
「‥‥‥多いね」
「じゃあ、それぞれ振り分けよっか」
「‥‥‥うん」
俺は悩んだ。
必死こいて悩んだ。
HPにどれだけ振るか。
そして攻撃力をどれだけ強くするか。
果たしてどのくらい耐久性が必要なのか。
とにかくめちゃくちゃ計算して割り振って行った。
やがて振り分けが終わると、自分が割り振ったステータスを見てみる。
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Name ひろってぃー 男
Lv 2
称号 スピード君
H P 10/10
M P 10/10
攻 撃 10
防 御 10
魔 攻 10
魔 防 10
敏 捷 4600
スキル 【敏捷適性(小)】【敏捷適正(中)】
残りステータスポイント 0
────────────────────────────────────
ふっ、流石俺。
バランスが良すぎるぜ。
俺はステータスを割り振る天才かもしれん。
てか、称号が初心者からスピード君に変わってるじゃん。
‥‥‥なんかだせーな。
もう少しかっこいいの無かったのかよ!
って、あれ? またスキルが増えてる?
【敏捷適正(中)】‥‥‥という事は、また敏捷の値がプラスされているのかな。
2570(レベルアップ前の敏捷値)+1030(レベルアップにより貰えたステータスポイント)=3600(合計)。
先程の計算で出した3600(合計)+X=4600(今の敏捷値)。
X=の形になる様に移行する。
X=4600(今の敏捷値)ー3600(合計)。
X=1000。
つまり、【敏捷適正(中)】によって得られる、敏捷の値は1000である。
ふっ、俺は天才だぜ。
こんなに難しい計算ができるやつ、世界中のどこを探してもいないだろう。
フハハ!
「‥‥‥終わったよ」
雪菜さんがそう呟く。
以外と早いな。
「俺も終わった」
「‥‥‥じゃあ、メニュー画面を通してお互い確認しよっか」
「そうだな」
俺は目の前にオレンジ色のメニュー画面を出した後、【レインさんのステータス】と表示されているボタンを押した。
────────────────────────────────────
Name レイン 女
Lv 2
称号 初心者
H P 310/400
M P 460/900
攻 撃 10
防 御 300
魔 攻 800
魔 防 690
敏 捷 60
スキル 【火炎魔法(小)】【防御魔法(小)】
残りステータスポイント 0
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ふむふむ俺と同じで全体的にバランスが良いな。
てか、防御魔法覚えてるじゃん。
これで俺、守ってもらえるかな?
「そういえば雪菜さん」
「‥‥‥ん?」
雪菜さんはメニュー画面を見ていた視線をこちらに向ける。
「こういう新しい魔法を覚える時って、同時に詠唱の言葉も覚えないとだめなの?」
もしそうなら面倒くさいだろうな。
「‥‥‥あれ? 私の目の前に詠唱する文章が出てきていたと思うんだけど」
ん? 目の前に出ていた?
「どういう事?」
俺が首を傾げて質問すると、雪菜さんは少し悩んだようにして答える。
「‥‥‥えーっと例えば、魔法を使いたい時に、【防御魔法(小)】って頭の中で考えるの。そしたら目の前にその魔法の詠唱が出てくるから、それを読んでたんだけど‥‥‥私の目の前に赤色の文字が無かった?」
赤色の文字?
「多分見えてなかった。そんなの出てくるんだな」
「‥‥‥うん、じゃあ今からちょっと試しに、新しい魔法を使ってみるね」
「おう」
その会話をした数秒後、雪菜さんは詠唱を始めた。
「汝我の求むる場所に守護の力を張り巡らせよ。光盾!」
全ての言葉を言い終えた瞬間、少し離れた所に、黄色の大きい壁が出てきた。
サイズは大体3メートルくらいだろう。
「す、すげー」
「‥‥‥私の目の前にあった文字‥‥‥見えなかった?」
「いや、やっぱり見えない」
一応確認してみたけど、‥‥‥雪菜さんの顔以外見えない。
他のものが一切見えないんだ。
‥‥‥君の顔しか。
あまーい!!
あ、まとめると赤色の文字が見えなかった、という事です。
他意はないので。
「‥‥‥うーん。どうやら詠唱者以外は見えないみたいだね」
「そうだな」
「‥‥‥で五月雨くん、あのステータスは?」
「俺のか? バランス良いだろ!」
「‥‥‥う‥‥‥うん」
俺が自慢げにそう言うと、雪奈さんは躊躇いながら頷く。
良いと思ってないような反応だな。
「あの称号は気に食わないけどな。スピード君だっけ」
「‥‥‥私は可愛いと思うけど」
そうは言っているが、少し口元が微笑んでいる。
何か小馬鹿にしてない?
気のせいかしら?
「そうかな? だってもし俺がこのまま有名なったら、色んな人に「ひろってぃースピード君だ!」とか「きゃぁぁぁ、スピードひろってぃー君よ!!」とかって呼ばれそうだろ? ふーが悪くてしょうがねえよ!」
俺が色々と音色を変えて喋っている中、雪奈さんは声を必死で押さえながら笑っている。
「‥‥‥ぷ‥‥‥ふふ」
やっぱり可笑しかった様だ。
「まあそれは置いといて、探索を続けようか」
「‥‥‥ふっ‥‥‥うん」
俺と雪菜さんは再び前後の一列で歩き始めた。
後ろから笑い声が聞こえてくるが、そっとしておいてあげよう。なんか楽しそうだしな。
歩き出して約30秒後──。
「‥‥‥ふふっ」
まだ笑ってやがる。
やっぱり学校の雪奈さんと同じ人物だとは思えないな。
教室では多分一度も笑った事ないのに。
つまりこれって、俺に気を許してくれてるってことなのかな?
だとしたら嬉しいな。
てかさ、雪奈さんスピード君って言うより、絶対ひろってぃーで笑ってるよな?
やがて笑い声が止むと、俺は質問した。
「そういえば雪菜さんって、晩御飯の時間とか大丈夫なの? 俺は一人暮らしだから心配ないけど」
「‥‥‥大丈夫だよ。私の家は19時ぐらいに食べ始めるから。それにこの世界の時間の進み方は0.1倍らしいし」
「19時か、分かった。‥‥‥えーっと俺がこの世界に来たのは、16時50分くらいだったから、現実世界では、大体あと二時間後くらいかな‥‥‥。で、雪菜さんは何時くらいにこの世界にフルダイブした?」
「‥‥‥私は時計を見ていた限りだと、16時51分くらいだと思う」
なるほど、ほとんど同時刻に始めているのか。
約1分差という事は、この世界にいる時間は俺の方が10分くらい長いという事になる。
俺が雪奈さんをゴブリン達から助けたのは、この【デスティア・オンライン】にログインしてから、大体15分から20分くらい経った後くらいだろうから、辻褄が合う。
現実世界で19時までは残り約2時間だから、こっちでは20時間だ。
つまりほぼ1日。
良いな。時間を気にせずに遊べるって。
「まあ、こっちの世界だと、あと20時間くらい遊べるな」
俺が冗談交じりにそう言うと、雪奈さんは苦笑いで答えた。
「‥‥‥うん‥‥‥まあ疲れそうだから、そこまではできないけど」
「ああ、俺もだ。無類のゲーム好きでも流石にほぼ丸1日は厳しいぜ。まあ、今日はとりあえず都合の良い所まであそぼっか。勿論、雪奈さんが良かったらだけど」
「‥‥‥私は歓迎だよ‥‥‥特に予定もないし。‥‥‥それに‥‥‥初めて他の人と遊ぶから‥‥‥えーっと、だから‥‥‥こちらこそ一緒に遊んで欲しい‥‥‥です」
雪奈さんが下を向いて、めちゃくちゃ恥ずかしそうに言った。
今の言うの、結構勇気いるよな。
‥‥‥てか、俺が初めての遊び相手なのか?
「今まで他の人と遊んだ事無いの?」
「‥‥‥子供の頃からずっと一人だった」
「へぇ」
「‥‥‥だからお父さんや、お母さんからずっと心配されてたの」
「なるほど、だからこの仮想空間で遊べるマシンを買ってきて貰えたんだな」
「‥‥‥うん」
よし、ここは男らしく行こう。
「雪奈さん、俺で良かったら、いつでも遊ぶよ」
「‥‥‥う‥‥‥うん」
「だから、学校とかでも少しは、お話しとかしようよ」
すると、雪奈さんは驚いた様な表情で俺の顔を見た。
目が大きく開いている。
‥‥‥前髪で見えないが。
「‥‥‥えっ、‥‥‥う、嬉しいんだけど‥‥‥でもそんな事したら五月雨くんが変な目線で見られるよ?」
「別に良いよ。周りとかどうでも良いし、大事なのは自分がどうしたいかだから。それにまず変な目で見られないと思うけどな」
「‥‥‥なんで?」
「いや、なんでって。クラスの中に雪奈さんの事が気に食わない、って言ってるやつなんていないだろ?」
「‥‥‥みんな言わないだけかもしれない」
あー、やっぱりそんな感じの事思っているのか。
俺もたまにそういう事考えたりするけどな。
いつも寝ているばっかだから、みんなに迷惑だと思われているんじゃないか、とか。
でも俺はあまりそういう事気にしないタイプだから、別に誰がどう言っていようが構わないんだけどな。
気楽に生きるのが一番だぜ!
「えーっと、これは男子更衣室での会話なんだが、聞きたい?」
「‥‥‥コクッ」
雪奈さんは無言で頷いた。
言っとくが下ネタ系の話じゃないぞ?
女子にそんな話題を振るほど、品の無い男じゃ無いからな?
「まあ、俺はその会話を聞いていただけで、参加してはいないんだけど、どの女子が可愛いかっていう話題でみんなが盛り上がってたんだよ」
「‥‥‥うん」
「それで出てきた名前なんだけど、まず鉄雨花さん」
「‥‥‥あの子、スポーツ万能で綺麗だから、なんとなく分かる」
「次に誰だったかな‥‥‥ん? ありゃ? ‥‥‥悪い、二人目は忘れた」
記憶に無いわ。
「‥‥‥」
「全部で三人いたんだけど、‥‥‥因みに最後は雪奈さんだよ」
「えっ!?」
俺の言葉に雪奈さんは、今までで一番早く反応した。
喋る前とか、ずっと間があったのに。
「物静かで少し話し掛け難いけど、おっとりしてて可愛いってみんな結構言ってる」
俺はいつも寝てばっかで、全くクラスの女子を見たりしないんだけど、雪奈さんのおっとりして可愛いって言うのは、なんか納得できた。
今日名前を思い出すのに、ちぃとばかし時間が掛かっちまったが。
それを聞いた雪奈さんは、もの凄く恥ずかしそうな表情をし、下を向いてしまった。
だが同時に、結構嬉しそうでもある。
「‥‥‥それって‥‥‥ま、真で‥‥‥ですか」
話し方がおかしいぞー。
やっぱり、いきなりこんな事聞かされたら動揺するよな。
「真でござるよ」
ちょっと乗ってみる。
「‥‥‥そ、そっか」
「だからさ、自分を過少評価するのは止めようよ。誰も変な目で見たりなんかしてないからさ」
「‥‥‥うん、‥‥‥わ、分かった」
俺、まあまあ男らしいよな?
結構良い事言ってない?
‥‥‥ん? 自分でそれを言わなければ、良かったって?
‥‥‥あ、はい。すんまへん。
「よし、じゃあそろそろ行こっか」
「‥‥‥うん」
その後、適当に会話をしながら森の中を探索して行った。
時間で言うと三十分くらいだろうか。
正直この森の情景はもう見飽きた。
歩いても植物。
歩いても植物。
走っても植物。
止まっても植物。
ごく稀にゴブリン。
もうええわ!
ええ加減、別のステージを出してくれ。
ちなみに途中何度かゴブリンに出くわしたのだが、全て倒したぜ。
雪奈さんがな!
多分七、八匹くらいだろうか。
雪菜さんの魔法の威力は、レベルアップによって貰えたステータスポイントを魔法攻撃に振り分けていた為、少し強くなっている。
半分くらいダメージを与えられていたところを、3分の2くらい削れるようになっていた。
しかし結局二回命中させないと倒せないので、効率は変わっていない。
一番変化したのは、俺のスピードだろう。
明らかに先程と違う。
また俺が雪菜さんを抱っこして戦うというやり方で行ったのだが、ゴブリンがそもそも俺に近づけていない。
なのでほとんど攻戦一方だった。
今ちょっと思ったけど、俺って強くね?
‥‥‥あ、強いのは俺じゃねえか。
でも結構役に立っていると思うぜ?
サポート役としてな。
案外このパーティー、バランス良いでござる。
あと、やっぱり雪菜さんがお姫様抱っこは恥ずかしいと言ってくる。
今のところ、この方法でしか勝てないという事で渋々了承してくれているが‥‥‥。
俺は別にこれで良いんだけどな。
俺は別にこれが良いんだけどな。
‥‥‥。
同級生の女子を抱っこできるチャンスだとか思ってないからな?
抱きかかえている手で、女子の肌を堪能している訳じゃないからな?
下心なんて一切無いからな?
信じてくれよ?
でも一つ思った事がある。
お姫様抱っこされて恥ずかしいとか言っているけど、雪菜さん‥‥‥まんざらでも無い?
ちぃとばかし、嬉しそうって言うか、楽しそうに見えるんだよな。
心の底から嫌がっていないと言うかさ。
さっきの男らしい俺との、話し合いのおかげなのだろうか。
それとも気のせいかしら?
‥‥‥ま、気のせいだと思っておこう。
あ、そういえばこの一時間でゴブリンを約七匹くらい倒したのは良いんだけど、まだお互いレベルが3になっていない。
急に上がらなくなったのだ。
俺は一刻も早くステータスポイントを貰って、HPや耐久性を増やしたいっていうのに。
死んだらデータを消されるんだから。
そこんところはちゃんとやっとかないとな。
ん? お前、HPとか耐久性を上げるつもり無いだろう。だって?
心外だな。
勿論上げるさ、‥‥‥うん、多分。
‥‥‥まあ、この世界に100%なんて存在しないからな!
うん、そういうことだ。
「‥‥‥五月雨くん」
色々と考え事しながら森の中を歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。
俺は振り向き質問する。
「ん? 魔物か?」
「‥‥‥違う、あれ見て?」
雪菜さんが指を指している方を確認してみると、そこには大きめの洞窟があった。
天井や壁からツタや雑草が垂れてきていて、ぱっと見わかりづらいが、確かに高さ3メートルぐらいの洞穴が存在している。
「入れそうだな」
「‥‥‥行ってみる?」
「もちろん、行こう! もしかしたら何かあるかもしれないし」
「‥‥‥ん」
俺と雪菜さんは周りを警戒しながらも洞窟に近づく。
読んでくださりありがとうございます。
次の投稿は明日です。