第二十八話【海周辺の洞窟・壱】
再び前を向くと、少しだけ植物が視界に入って来た。
崖にはツタが垂れて来ていて、恐らく平面なのだろう。
「やっとか。じゃあもうひと踏ん張り!」
「‥‥‥ん。頑張って!」
「おう」
頂上に洞窟があるかもしれないと言う僅かな希望を頼りに岩場を上って行く。
今気付いたけど、かなり高い所まで来たな。
少し横に寄って下を見たら、海がどこまでも続いている。
真下を見ると‥‥‥やばいわ。
お腹がきゅーってなったわ。
落ちたら絶対死ぬだろ。
「よし、とうちゃーーく!!」
やがて不規則に積み重ねられていた岩場を移動し終わると、平面の草原に出た。
結構広くて、遠くには森がある。
「はぁ、やっと岩場が終わったわね」
「‥‥‥お疲れ様」
見た感じ数人のプレイヤーがいる。だが、
「洞窟は見当たらないな」
「そうね。予想では上りきってすぐあると思ってたんだけど」
「俺もだ」
「‥‥‥とりあえず進んでみよ?」
「そうだな。行こう」
俺達はそう会話をすると、森の方向へと進んで行く。
どうやら生息している魔物は、塔の辺りにいたやつらと同じらしく、動く木やとげとげの芋虫くんだ。
あいつらの行動パターンは分かり切っているが、油断しないのが俺のポリシーである。
今は鉄さんの速度に合わせているから、奇襲を食らう可能性もあるしな。
索敵のスキルは切らない方が良いだろう。
しばらくして、俺達は遠くに見えていた森に着いた。
なんか、始まりの街の近くにあったあの森に似ている。
「どんな魔物が来るか分からないし、鉄さんに先頭を歩いて貰っても良い?」
森の目の前でそうお願いしてみると、横にいる鉄さんは少し疑問そうな表情をして頷く。
「それは構わないけど、五月雨くんの索敵スキルがあったら大丈夫じゃないの?」
「まあそうなんだけどさ、正直俺の索敵もどこまでの性能があるのか分からないんだよ。だからもしもの事があったら嫌だろ?」
「なるほどね。じゃあ背後は十分に注意して行きなさいよ?」
「ああ、勿論だ」
緊張感が無くなる為あまり考えない様にはしているが、最悪俺には生の指輪がある。
そう、一度なら死んでも大丈夫なのだ。
でもこの【デスティア・オンライン】を始めて、まだ一つしか持っていない。
つまり、あの小さいサーバー以外の入手手段を見つけられていないのである。
鉄さんは俺の前に出ると、そのまま歩き出した。
この森は一応小さい道があるのだが、植物が生い茂っている為、あまり周りが見えない。
その為どこから何が来るのかは、索敵スキルを使わないと分からないのだ。
「鉄さん、右方向から何か来てるぜ?」
「了解!」
「俺が距離をとるから、あめは魔法の詠唱を頼む」
「‥‥‥ん。分かった」
俺達はそう会話をすると、索敵スキルの反応している方に集中した。
ガサッガサッ
草の擦れる音が聞こえて来る。
だが、魔物特有の声が聞こえてこない。
こりゃー、やっかいだな。
普通は声で、ある程度距離感を掴めるのだが、聞こえて来ないとなると大変だ。
「もう少しだ」
俺は反対側に逃げる準備をしながら呟いた。
鉄さんが俺に続けて、盾を構えあめの方を向く。
「雪奈さん、とりあえず簡単な魔法を撃ってみてくれる?」
あめは無言でコクッと頷く。
ガサッガサッ
なんか、かなり遅いスピードで来ているな。
まさか亀みたいな魔物が来たりするのかね?
いや、鎧をたくさん装備した人型のロボットかもしれん。
そんな事を考えながら警戒していると、背中にいるあめの詠唱が終わったらしい。
指を前に向けて「──火炎弾丸!」と呟いた。
その瞬間。
ボウゥゥゥ!!
小さい火炎の弾が植物の音のする方へ飛んでいく。
「うわっ!!! いきなり何だよ!?」
火の玉が何かに着弾したのと同時に、大きな声が聞こえて来た。
「ここの魔物は喋るのか?」
「そうみたいね」
俺と鉄さんが一言ずつ言葉を交わすと、あめが肩を叩いてきた。
「‥‥‥ひろとくん。‥‥‥向こうにいるのって、多分プレイヤーだと思う」
何だって!?
「いや、それは無いだろ」
「そう言われれば、喋る魔物なんている訳‥‥‥無いよね? これって不味くない?」
俺達はそれぞれ目を合わせて言った。
確かに当たったとしてもダメージは無いが、見ず知らずの奴に奇襲を仕掛けられて良い思いをする人なんていないよな?
「マジか。ここの敵って魔法まで撃って来るのかよ‥‥‥ってあれ? HPバーがさっきと同じだ。‥‥‥という事はそこまで威力は無いみたいだな」
なんか聞こえて来るなぁ~。
HPバーが減っていない理由‥‥‥、プレイヤーからの攻撃だからです。
「なあ、提案があるんだが‥‥‥」
「‥‥‥どうしたの?」
「魔物のせいにして逃げないか? 今なら間に合うだろ」
そう提案してみると、盾を構えている鉄さんが真顔で頷く。
「そうね。行きましょう」
という事で、俺達は早足で道なりに進んで行った。
正直、謝るのとかは面倒くさかったからな。
逃げるが勝ちだぜ!
しばらく、近くに潜んでいた虫型の魔物を倒しながら狭い道を歩いていくと、分かれ道に遭遇した。
こういうのマジで嫌だわ。
「‥‥‥どっちに行く?」
あめは鉄さんの方を向きながら呟く。
「私は右が良いと思うわ」
おーん?
「いや、絶対左だろ」
「なんでよ?」
「俺の経験上、左が外れっていうパターンが多い様な気がするからな」
「なら、正解の右で良いでしょ!?」
「ふっ、まだまだゲームの事を分かっていないな。鉄さんレベルのゲーム好きなら、全ての宝箱等を取りたいと思うのが普通だろ? 最初に正解の道を当てたらずっとモヤモヤするしな」
「まあ、確かにそうね‥‥‥って、なによ、私レベルのゲーム好きって!! 私そんなに毎日ゲームをしたりしていないわよ!?」
フハハッ! 儂の罠に引っ掛かりおった。
「誰が毎日ゲームをしているとか言ったんだ? 鉄さんレベルって、そんなに凄いの?」
「あ、え、‥‥‥ち、違うわよ!!」
俺が笑いながらそう言うと、鉄さんは顔を真っ赤にして否定した。
今更もう無理だろ。
「何が違うんだ?」
「さっきのは‥‥‥こ、言葉の綾よ!? 気にしないで良いわ」
気にするわ。
だが、今回も引き下がってやるか。
俺は金魚のフン並みにしつこく無い男だからな。
スイカの緑色の部分をガツガツと食べれるレベルに、モラルがあるからな。
「まあ、良いけどさ。結局右か左‥‥‥どっちに行く?」
「ひ、左で良いわよ。その、宝箱っていうのも気にならなくも無いしね」
「そうか。じゃあレッツゴー!!」
という事で左の道を進んで行った。
結果。
「‥‥‥見事に森を抜けたね」
「そうだな」
森を抜けた先には草原が広がっていて、少し先に地面から突き出ている茶色の洞窟がある。
てか、鉄さんがこっちを見て来ているんだが。
何だね?
「左に宝箱があるって言ったのは誰だっけ?」
そんな質問に俺は首を傾げて答える。
「さぁ。多分あめじゃないか?」
「‥‥‥違う。ひろとくん」
「五月雨くん‥‥‥なにが左にあるって?」
「いや、俺は確率の多いのが左と言っただけで、確定はしていなかったぞ?」
「‥‥‥どうするの? なんか気になるよね?」
あめの言葉に、鉄さんは納得した表情をする。
「そうね、ゲームで良くあるモヤモヤ感だわ」
うん、ゲームで良くある‥‥‥ね。
「戻るか?」
俺がそう聞いてみると、鉄さんは「戻りましょう」と答えて後ろを振り向いた。
そしてもう一度来た道を戻り、先程の分かれ道を右側に進んでみた。
結果。
「‥‥‥行き止まりだし‥‥‥何もない」
「そうだな」
「どちらかに宝箱があるって言いだしたのって誰だっけ?」
そんな質問に俺は首を傾げて答える。
「さぁ、多分あめだろ」
「‥‥‥違う。ひろとくん」
「そんな感じのやり取りは一度見たから良いわ。犯人はどうせ五月雨くんだもの」
なんで、俺になるんだよ!?
あ、俺か。
「よし、戻るぞ! あまり過去の事に囚われていても、先には進めんからな」
俺は、誤魔化す様にして振り向くと、再び来た道を戻る。
そして再び森を抜けるとそのまま草原を進んで行き、やがて先程の茶色い洞窟の近くに到着した。
「どうする? 俺は洞窟を見つけたら一度町に戻るつもりだったんだけど‥‥‥かなり遠いよな?」
俺が、腰に手を当てようとしたけどあめをおんぶしている事を思い出しやっぱりやめてそう呟くと、鉄さんは頷く。
「まあそうね。一応アイテムもたくさんあるし、気を付けながら入ってみる?」
「‥‥‥でも、このレベルで大丈夫かな?」
確かにあめの言っている事も十理ほどあるんだよな。
俺達は静かな村を出てから、ほとんどの魔物との接触を避けて来たので、あれから全然レベルが上がっていない。
それに洞窟とかそういうジャンルは、俺とあめが苦手とする分野なのだ。
狭い所になったら途端に敏捷が生かせなくなるからな。
財宝を取って来るクエストで上った塔は、運良く広かっただけで、今回も広いとは限らない。
「あめの言う通り、ちょっとは上げといた方が良いかもな。見た感じこの辺には数人のプレイヤーが魔物と戦っているから、レベル上げをしているんじゃないか?」
あめに続いて俺がそう言うと、鉄さんは納得した様な顔をする。
「なるほどね。‥‥‥ちょうど戦闘の陣形とかも色々と試したいし、この辺りで頑張ろっか?」
「‥‥‥ん」
「おう!」
俺達はそう会話をすると、近くを歩いている魔物と戦っていった。
数分後‥‥‥。
「ねぇ。‥‥‥私が相手の攻撃を食い止めている意味ある?」
鉄さんが不機嫌そうな表情をしている。
「無いな。うん、全く無い」
俺とあめのおんぶ戦法は、相手が動いているのかどうかなんて関係ないぜ!
だって別に追いつかれないしな。
「別のやり方を試さない? 自分の存在意味が感じられないって結構辛いんだけど」
「‥‥‥ん。色々と頑張ってみよ」
更に数分後‥‥‥。
「ちょっと! 五月雨くんが速すぎてどこにいるか分からないから、盾になれないんだけど」
鉄さんが不機嫌そうな表情をしている。
「別に盾になって貰わなくても良いぞ? 当たらないから」
「それって、私に突っ立っていろ、って言いたいの?」
更に更に数分後‥‥‥。
「おい、鉄さん? なんで立ち止まっているんだよ?」
さぼりかね?
「仕方ないでしょ!? だって役割が無いんだもん」
鉄さんが不機嫌そうな表情をしている。
役割が無いって‥‥‥。
何を甘えた事を言っているのだね?
社会人になってもそんな戯言を言い続けるつもりかね?
良いか?
仕事をしていく中で大切な事、それは『気付き』なんだよ。
人に言われた事をやるだけでは、いつまで経っても出世出来ない。
つまりだ、鉄さんよ。
自分自身で良く考え、やるべき事を見つけてみなさい。
‥‥‥ん?
俺は社会人になって何年目なのかって?
しょうがないなぁ~。
特別に教えてあげよう。
0年だ、馬鹿野郎!!
現役高校生だよ、馬鹿野郎!!
更に更に更に数分後‥‥‥。
「おーーい。なんで座ってのんびりしているんだよ!?」
そんな俺の言葉に、鉄さんは不機嫌そうな顔をして答える。
「多分、一生私の役割なんて見つからないと思う」
希望を失っているかの様な声だ。
「どうしてだ?」
「だって五月雨くんと雪奈さんの二人で、黙々と狩って行っているんだもん」
この経験値泥棒め!
「あ、良い事思いついたかも」
俺が目を大きく見開いてそう言うと、二人は同時に「えっ、何?」「‥‥‥なに?」と質問してきた。
仕方ないから教えてやるか。
「かなりレベル上げの効率が上がると思うぞ」
「‥‥‥どんな方法?」
「鉄さんを十分使う事が出来るぜ」
「早く教えなさいよ!」
もう、せっかちなんだから。
「それはだな。‥‥‥名付けて、鉄さん、一人で戦闘作戦」
「なんか、内容を聞いていないのに、理解できた私がいるわ」
「‥‥‥同じく」
二人は同じ様にそう答えた。
「なら説明は不要だな。‥‥‥という事で、鉄さん。なるべく俺とあめの近くで戦っててね?」
「あまり気が乗らないけど、しょうがないわね。他に出来る事もないし、やるわ」
ほう、素直なのは良い事だと思うぞ。
一応鉄さんは、平均よりかは大分劣るが、それなりに攻撃力があるのだ。
だから、相手のHPを地道に削って行くことが可能である。
つまり、俺達が魔物を討伐している間に、鉄さんが他の魔物のHPを削って行き、少なくなってきたら、あめの魔法でとどめを刺す。
鉄さんは防御力とHPがずば抜けて多い為、誤って死ぬ確率は無いだろう。
やっとレベル上げのスタイルを見つけた俺達は、時間が経つのも忘れて、黙々とレベル上げをして行った。
自分で言うのもなんだが、かなり効率が良かったと思う。
特に効率が上がったのは、鉄さんのレベルが一つほど上がった後だ。
鉄さんは、HPの事を忘れて攻撃にすべて振ってくれたのだ。
説得には苦労したが、結果オーライ。
そして鉄さんのレベルが合計で二つ上がってすぐ、俺とあめのレベルも上がった。
で、現在、俺とあめがレベル26。
鉄さんがレベル23。となった。
「よし、そろそろやめるか」
鉄さんが通常攻撃で削っていた魔物を、あめが魔法でとどめを刺したのとほぼ同時に俺がそう言った。
「そういえばさ、一つ思ったんだけどさ」
ん? なんだね?
早く言いたまえ。
「どうした?」
「五月雨くんと雪奈さん‥‥‥めちゃくちゃレベル上げの効率良くない?」
「‥‥‥そうなの?」
あめが不思議そうな声で質問する。
「ええ、今までにいくつかのパーティーに入ったんだけど、ここまで魔物をサクサクと狩っていた人達はいなかったわ」
「そうなんだ」
このゲームを始めた頃から、周りにいるプレイヤー達の戦い方を見て来たけど、大体が盾役を使って長期戦に持ち込むというやり方をしていた人が多い。
だから壁役を全く使わない俺達が異常なのだ。
じゃあ、どうして攻略組達に追いつけないのかって?
答えは簡単だ。
うん、プレイ時間の差。
それ以上のものもないし、それ以下のものもない。
実際俺とあめって、そんなにやっていないんだよな。
現実でLIMEを使ってやり取りをしたりするのも楽しいしな。
その後、俺達は現在レベル上げをしていた場所を離れると、とりあえず様子見のつもりで洞窟に入ってみる事にした。
「よし、気を引き締めて行くぞ?」
洞窟の目の前に到着してすぐ俺がそう言うと、鉄さんは「ええ。私が先頭を歩くから、ちゃんとついて来てよ?」と答え、奥へと進んで行く。
中に入ってすぐ階段があったので、一段と飛ばす事無く、慎重に歩いていく。
まあ、最初に階段があると言うのは、大体予想がついていたぜ。
何故かって?
この洞窟は、草原の真ん中に、ぽつりと存在していたからな。
そのまま一直線に進める訳が無い。
それにここは、岩場をずっと上って来た為、かなり高い位置にある。
つまり、下に掘り進めてあるのではないかと考えたのだ。
約二分ほど降りて行くと、灰色のコンクリートの通路に到着した。
一直線に道が続いていて、一定の間隔おきに松明が付けられている為、それなりに明るい。
また、幅や高さがかなり広いので、俺にとっては動きやすいだろう。
「なんか、思ったより広いな」
「そうね。‥‥‥まあ、オンラインで他のプレイヤーも数人いるんだから、広く作られるのは当然なのかもしれないわね」
それもそうだな。
確かに狭かったら、プレイヤー同士でぶつかったりと色々面倒事が起こりそうだし、運営側が建物や迷宮等、すべてのものを広く作っているのは普通か。
まあ、俺は最初から気付いていたけどな。
うん、それを予想して、敏捷が生かせそうだなと思ったから、極振りにしたんだぜ?
ふっ、俺は天才かもしれん。
「‥‥‥見た感じこの通路に魔物はいなさそう」
あめがそう呟いた。
「ああ、俺の索敵スキルにも反応していないし、他のプレイヤーも戦闘をせずに歩いている事から、この通路を抜けた先が本番だろうな」
「じゃあ、行きましょう」
「‥‥‥ん」
そう会話をしコツコツと足音を立てながら歩いていく。
しばらく進んで行くと、分かれ道に遭遇した。
ガチで嫌いだわ。
しかも今回は、正面、右、左と三方向もありやがる。
正面は松明が多めで明るい。
右は松明が少なめで少し暗い。
左は右方向と同じで、少し暗いな。
「どうするかね?」
分かれ道の中央に立った状態で俺が言った。
他のプレイヤー達も、それぞれ別方向へ行っているので、あてにならない。
俺の質問に、顎に手を当てて考えている鉄さんが答える。
「う~ん、とりあえず真ん中は止めときましょう」
「ほう、気が合うじゃないか。俺もそう思っていたところだ」
なんか真ん中は次のステージに進みそうだからな。
先に宝箱を取っておきたい。
「となると、右か左ね」
「いや、右しかないだろ」
俺が自慢げにそう断言すると、鉄さんは目を細める。
「なんでよ?」
「だってさっきの森は右が何も無かっただろ? つまり今回も右が何も無い確率は低いからな」
「それ、信じるわよ?」
「おう、任せとけ?」
「‥‥‥私もひろとくんを信じるね?」
「ふっ、俺に間違いは無いからな!」
俺がウインクをしながら親指を立てて言うと、鉄さんは無言で右方向への通路を歩いていく。
おい、なんで何も言わねぇんだよ!
俺が間違いを言った事なんて無いだろ?
しばらくして‥‥‥。
「ねぇ、五月雨くん?」
鉄さんが笑いながらこっちを見て来た。
「どうした?」
「俺に間違いは無いって言ったの‥‥‥誰だったかしら?」
「さぁ、多分あめじゃないか?」
「‥‥‥私、何も言ってない」
「うん、認めよっか? あなたが右に行くって言ったからこうなったんだもん」
「俺のせいかよ!?」
「ええ、あそこで左を選択しておけば、こんな事にはならなかったはずよ」
えっ、俺達に何があったかって?
うん、落ちた。
さっき右側の通路に進んで行った後、一番奥にツボがあったんだよ。
やったぜー、と思いながら並んで歩いていると、突然床がパカッ! と開いて下に落とされた。
マジでふざけんな!
読んでくださりありがとうございます。
【デスティア・オンライン】のとある掲示板。
1 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:00.00
今日、海辺の町の近くにある岩場を上って、森を探索していたんだが、突然威力の低い火弾ファイアーボールを食らったwww
そんな魔物がいるって聞いて無いんだが。
2 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:01.00
>>1
嘘乙wwwwww
俺はとっくにそこをクリアして新しい大陸に渡っているが、火弾ファイアーボールを撃って来る奴なんていなかったぞ?
3 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:02.00
>>2
いや、本当なんだって!
木と木の間から赤色の弾が飛んできたwww
4 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:03.00
>>1
私も今その辺りを攻略中だけど、炎を出す魔物なんていないよ?
5 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:04.00
>>1
気のせいじゃねぇのか?www
6 名前:名無し :20XX/12/XX(水) xx:00:05.00
>>1
うち、ちょっと今から確認してくるわ




