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第二話【出会い】

 森の探索を始めて少しの時間が経った。


 俺は途中で何度か、先程と同じ緑色のゴブリンに出くわしている。

 言わずとも分かると思うが、すべて逃走したぜ。

 だって勝てないんだもん!


 にしても、かれこれ10分くらい歩いているはずなんだが、未だに人影が無い。

 もっと言えば一切人工物らしき物がないのだ。

 どこを見ても植物や魔物だらけで、安全地帯すら今の所なさそうなので、常に気を張っていないと魔物に不意打ちをくらわされそうだ。


 俺の場合多分一撃で殺されるので、1秒1秒が死と隣合わせである。


 ボウッッ


 よく分からない植物を踏みつけながら、木々の間を歩いていると、どこからか変な音がした。


 ん?


「何、今さっきの赤い光!?」


 なんか炎みたいなものが見えたような気がしたんだけど。

 ストーリーに関係するイベントかな?


 俺は炎が見えた方向に走って向かう。


 タッタッタッ


 すると案外近くにその原因はあった。

 俺と同じような布の服と、少し長めのスカートを着ている女の子が、木にもたれ掛かり必死そうな表情で口を動かしている。

 よく見ると、その子の目の前には、4匹のゴブリンがいた。


「襲われてるのか?」


 俺は一旦、木と木の間から様子を観察した。

 俺と同じ服装だという事は、このゲームの初心者プレイヤーだろう。

 という事は、今はもうオンラインの状態なのか?

 まあなんにせよ助けないと!


 俺と同じ初心者が一人で、ゴブリン4匹なんて相手にできる訳がない。

 俺は、一匹ですら勝てないからな。

 だからやる事はもう決まっている。

 俺は走り出した。


 ダッ


 ──その時、女の子の手から真っ赤な炎が放出されて、敵の1匹に命中した。


「ぐぎゃ」


 すると、その炎食らったゴブリンのHPバーが半分くらいまで減り、少し痛がった表情をしている。

 うわっ、すげぇー。

 俺が殴ったときと大違いだな!


 確かにダメージを与えられているが、あいつらは立ち止まらない。

 何事もなかったかのように、再び女の子に向かって歩き出した。

 女の子はそれに絶望したのか、その場に座り込み手で顔を覆っている。

 もうだめだと判断したのだろう。

 敵の一匹はそれをいい事に、戦意喪失している女の子に向かって、木の棒を勢いよく振り降ろした。


 これはまずいと思い、自分が出せる最大のスピードを出し、その女の子をお姫様抱っこして、そのまま走り去る。


 バッ


 えっ、軽!?


 「きゃっ」


 女の子は何が起こったのか分かっていないようで、少し甲高い悲鳴を上げ、俺の顔をガン見している。


 あぶねえ、なんとか間に合ったぜ。

 もう少しで俺の背中に木の棒が当たる所だった。

 ‥‥‥運が良かったと言うしかないな。

 もし、あと1秒でも遅れていたら俺多分死んでたわ。


 因みにあいつらは、諦める事なく俺を追って来ている。

 なのでもうちょっと引き離すしかないだろう。

 そう思い、走るスピードを少しだけ上げる。


 タッタッタッタッ


 じーーー。


 ‥‥‥。

 気になる。

 抱きかかえている女の子の視線が気になる。

 めちゃくちゃ見て来ているんだが。

 まさか俺に惚れたのかな?


「‥‥‥あれ? 五月雨‥‥‥くん?」


 不規則に生えている木や、所々に落ちている大きな岩を避けながら走っていると、抱きかかえている女の子がそう呟いた。

 ん!?


「何で俺の名前を?」


 不思議に思い少しだけ下を向いてみると、‥‥‥あー、なんか見た事あるような気がする‥‥‥けど‥‥‥誰だったかな?

 ちょっと可愛いんだけど。

 俺の腕の中には、前髪が長くて目元がよく見えないが、それでも十分可愛いと認識できる女の子がいた。


「‥‥‥五月雨君、‥‥‥私の事、分かってない?」

「う~ん。いや、見た事あるんだけど」

「‥‥‥」


 俺は知り合い? の女の子をお姫様抱っこした状態で、しばらく走った。

 人間一人を抱えているので、少し速度は遅くなっているが、それでもゴブリン達は俺に追いつけない様だ。

 やがて奴らは諦めたらしく、それぞれ別の場所へと散らばって行く。


 俺はそれを確認すると、女の子を地面に降ろした。

 今気づいたけど、結構小さい子だな。

 てか、やたら軽かったんだけど。

 女子ってこんなに軽いもんなんだな。

 まあ身長は、161センチの俺から見ても小さく見えるのだから、多分140センチ程度だろう。


「‥‥‥ありがと、助かった」

「あー、良いよ」


 女の子が服やズボンについた汚れを手で払いながら、俺の目をガン見してくる。


「‥‥‥で、本当に分からない‥‥‥の?」


 いや、マジでどっかで見たんだけど。

 ‥‥‥ぬー、くそー! 思い出せない。

 モヤモヤするなぁ~。


「うん、ごめん。ちょっと心当たりがない」


 すると女の子は悲しそうな表情をし、俺に近づいてきた。


「‥‥‥学校で同じクラスのはずなんだけどな」


 同じクラスメイト‥‥‥あー、多分わかったかも!


「思い出した。昼村さんだよね?」

「‥‥‥違う。それは隣のクラスの子だよ。私‥‥‥五月雨くんと去年から同じクラス」


 ありゃっ!?

 去年から同じ?


「大森さん?」

「‥‥‥違う」

「山本さん?」

「‥‥‥それなりにショック。やっぱり私って影薄いよね」


 影の薄い子‥‥‥あ!!

 誠に申し訳ないんだけど、それで思い出したわ。


「ごめんな。俺学校で寝てばかりだからあんまり把握できてないんだ。でも雪菜せつなさんだよね?」


 確かずっと本を読んでいる子で、本名は雪奈せつなあめ

 一回その姿を見て、可愛いなと思った事があるけど、完全に忘れてた。

 大変失礼致しました。


 「‥‥‥うん、そうだよ」


 俺が正解すると、雪菜さんは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。

 長い前髪のせいで目の表情は分からないが、口元でだいたい分かる。


 前から思ってたけど、この子って元が良いから、おしゃれをしたり、積極的にお喋りしたりして生活してたら普通にモテそうなんだけど、前髪を下ろして静かに読書をしているから、みんな近寄り難いんだよな。


 まあ俺は、こういう前髪が長くていつも本を読んでいるような女の子、結構好みだけどな。

 ガチの方で。

 だってアニメ系の女の子の理想に一番近く感じない?

 ちょっと現実離れしているっていうか。


 因みに俺はギャルとか、大きい声で喋る様な女子は嫌いだ。

 見ていてストレスが溜まってくる。


 でもこういう子は、大人しく清楚でなんか良い。

 てか、いつも読書をしていて真面目そうなイメージのある雪奈さんが、どうしてここにいるんだろう。


 学校では自分を偽って過ごしていて、実はガチのゲーマーだったりするのか?

 ‥‥‥ちょっと確かめてみよっと。


「そういえばさ、どうしてこの仮想空間にいるの? 雪菜さんってこういうのとは、全く無縁そうなんだけど」

「‥‥‥今日学校から家に帰ったら、お父さんに誕生日プレゼントだって言って渡されたの」


 まじかよ。


「へぇ~、良いなぁー。俺なんてこれを買うために、約1年間もバイトしたのに」


 すると雪奈さんは少し驚いた表情をした。

 目を大きく見開いている。

 ‥‥‥前髪で見えないけど。


「‥‥‥すごいね。ゲームの為にそこまでできるって」

「まあな」


 俺にとってゲームとは命の次に大事なものだ。

 その為にお金や労力を惜しもうとは思わない。


「‥‥‥ふふっ」


 俺が腰に両手を当て、得意げにそう答えると雪菜さんは口に手を当て、軽く笑った。

 この子、こんな感じで笑えるんだな。


「俺、雪奈さんの笑った顔見るのって‥‥‥初めてかもしれない」


 不意にそんな事を口に出してしまった。

 その言葉に雪奈さんは、少しがっかりした様な顔をする。


 彼女の目が少し細くなった。

 ‥‥‥前髪で見えないが。


「‥‥‥やっぱり、ちょっと変かな? さっきお父さんに、これで色んな人と遊んでもう少しコミュニケーション能力をつけて来なさい。って言われたの。だから、せめてゲームの中だけでも自分を変えていこうかな‥‥‥と思ったんだけど」


 偉い!


「いや、そんな事ないよ。俺は断然そっちの方がいいと思う」

「‥‥‥良かった。ありがとう」

「うん」


 雪菜さんは、また少し嬉しそうに微笑んだ後、近くにあった丸太に座りしばらく地面を見つめる。

 そして口を開いた。


「‥‥‥五月雨くんってさ、このゲームが発売された初日からやってるの?」


 ん?


「何でそう思うんだ?」

「‥‥‥だって、さっき緑色の魔物から私を助けてくれた時、五月雨くん‥‥‥すごい速かったから、結構レベル高いのかなと思って」

「いや、雪菜さんと同じでついさっき始めたばかりだよ。学校の帰り道でこのゲームを買って、今早速プレイしてる」

「‥‥‥えっ!? ‥‥‥でも、じゃあ何であんなに速く動けてたの? 私一度あの魔物から逃げようとしたんだけど、すぐに追いつかれちゃって」


 それは敏捷が低いだけだと思うけどな。


「あの、ちょっとステータスを見せてもらって良い?」


 追いつかれるという事はあまり敏捷を上げていないのだろう。

 雪奈さんは「‥‥‥良いよ」と返事をして、目の前にステータスウィンドウを開いた。

 俺は丸太に座っている雪菜さんの隣に腰を下ろすと、ステータスウィンドウを見てみる。


────────────────────────────────────

Name レイン 女

Lv 1

称号 初心者


H P 310/310

M P 540/600


攻 撃 10

防 御 230

魔 攻 470

魔 防 450

敏 捷 60


スキル 【火炎魔法(小)】


残りステータスポイント 0

────────────────────────────────────


 なるほど、見た感じ魔法職系か。

 そういえば、さっき炎みたいなの出してたな。

 この【火炎魔法(小)】がそうか。

 てかMPが540/600って、少し減ってる。

 ふと雪菜さんの頭上を確認してみると、HPのバーは満タンだったのだが、MPバーが10分の1ほど黒くなっている。


 俺が助けに向かう前にも炎が2、3回見えたから、何回かこれを使っていたはずだ。

 という事は【火炎魔法(小)】を一度使用するには、MPを約20くらい消費するのだろう。

 ふっ、俺は天才だぜ。

 まあ、あくまで仮説を立てただけだがな。

 というくだりは置いといて。


「敏捷60か、ちょっと少ないかも」

「‥‥‥私ゲームとか初めてで、よく分からないんだけど、もう少しくらいあった方が良かったのかな? 魔法職にしたくてこんな感じに振ってみたの」

「いや、悪くはないと思うよ。バランスも良いし、それに魔法職が相手の攻撃を躱せないのは普通だから。ただ、相手の攻撃とかを避ける事が前提なら、60は少ないと思う」


 魔法職に前衛が必要なのは、どのゲームでもお決まりだ。


「‥‥‥そうなんだ。‥‥‥あの、五月雨くんのステータスも見せてもらって良い?」

「OK」


 俺は待ってましたと言わんばかりに、自分の自慢のステータスウィンドウを勢いよく開く。


────────────────────────────────────

Name ひろってぃー 男

Lv 1

称号 初心者


H P 10/10

M P 10/10


攻 撃 10

防 御 10

魔 攻 10

魔 防 10

敏 捷 2570


スキル 【敏捷適性(小)】


残りステータスポイント 0

────────────────────────────────────


「‥‥‥ぷふっ」


 雪奈さんは俺のステータスを見始めるとすぐに吹いた。


「ん? どうしたの?」


 俺のステータスって、なんか可笑しいところあるかな?


「‥‥‥ご‥‥‥ごめん。‥‥‥ふふっ‥‥‥名前が」


 めちゃくちゃ震えている。

 あーなるほどね。


「これ、付けたの俺じゃねえからな? 勘違いするなよ!?」

「‥‥‥うん、知ってる。私も最初の名前を教えるところで、雪奈せつなあめって答えたら、勝手にレインって名前にされたから。‥‥‥まあ、結構気に入っているから良いんだけど」

「良いなぁ~。俺なんてひろってぃーだぜ? しかも平仮名」

「‥‥‥ぶふっ」


 どうやらツボに入ったらしく、雪菜さんは暫くの間、両手で顔を隠しクスクスと笑い続けていた。

 その時、俺は思った。やはり可愛い、と。


 実際の所俺は今まで、女子と関わった事がほとんどなかった。

 話しかけられてもわざと寝たふりをしたり、本当に寝ていたりと自分から壁を作っていた。

 一人でゲームをしたり、本を読んでいる方が面白いと思っていたからな。

 でも今ちょっと女子との関わり合いも良いなと思ったりしたかも。


 てか、雪菜さんって笑うとこんなに明るいんだな。

 やがて雪菜さんは笑いが治まってきたのか、顔から手を離し俺の方を向いて何度も謝ってきた。


「‥‥‥本当にごめんね。馬鹿にしたわけじゃないんだけど」


 可愛かったから許す。


「うん、まあ良いよ」

「‥‥‥で、ちょっと思ったんだけど、五月雨くん‥‥‥ステータスの振り方なんか偏ってない? ‥‥‥これって大丈夫なの?」


 痛い所を突いてきやがる。

 これって、ほとんどノリと勢いで振ったからな。

 だが、なんとかなるさ!

 少し前にも言ったが、俺は難しいゲームが好きなんだ。

 うん、だから敏捷にポイントを極振りをした事に後悔はしていない。


 ちょっとだけで良いから、HPが欲しいとも思っていない。

 ほんのちょっとで良いから、耐久性に余裕が欲しいとも思っていない。

 初期ステータスを振っている時、最初に出てくる魔物があんなに強いと思っていなかった。

 だから敏捷にポイントを極振りをした事を、こ、後悔はしていない。


 自分でもちょっと何言ってるか分からないです。

 


「大丈夫だと、‥‥‥思いたい」

「‥‥‥大丈夫じゃないんだ」


 ほ、本心が見抜かれただと!?

 あ、いや。後悔してないんで、だ‥‥‥大丈夫です。


「雪奈さんよ。俺はスリルを求めているんだ。一人のゲーム好きとしてな! 一度でも殴られたりと、ダメージをくらったら死亡しデータを削除される。この緊張感の中で俺はゲームを楽しんでいき、最終的にはトッププレイヤーになろうと思っているんだ!」


 誤魔化すように空を見上げてそう言うと、雪菜さんは、パチパチと無言で拍手をしてくる。

 せめてツッコミを入れてくれ。

 てか拍手やめろー!

 悲しくなるから。

 少しの間、何とも言えない時間が流れた。


 ‥‥‥。

 時折、木々が風に揺れ、ガサッガサッという音が聞こえてくる。

 ‥‥‥。

 変に格好つけずに、ほんの少しだけ後悔しているって言えば良かったな。


 正直な事を言うと、雪奈さんが炎で相手にダメージを与えられているのを見て、少し羨ましいと思った。

 俺も相手にダメージを与えたい。

 最初のゴブリンに出会った時、ゲームの難易度は難しい方が良いぜー。とか思って調子こいてたけど、普通にこれ、元々無理ゲーだわ。


 だって最初の相手に勝てないゲームなんて、生まれて初めてだもん!

 普通は何をしても勝てるもんなんだよ。

 なのに俺が殴ってもゴブリンのHPバーはほとんど減らなかった。

 なんて日だ!!


 それに比べて雪奈さんはゴブリンのHPバーを炎一発で、半分辺りまで減らしやがった。

 あれはかなりショックだったわ。

 ‥‥‥まあ、今更嘆いてもしょうが無いな。

 俺は一度決めた事は、ゲーム好きの意地として曲げたく無いんでな。

 色々と工夫して乗り切ってやる。


 てか、今ゴブリンでも出てきたくれたら良いのに。

 こういう時に限って出てきやがらねぇ。


 先にこの沈黙を解いたのは、雪奈さんだった。


「‥‥‥そういえば私達ってこれから何をすれば良いんだろうね」

「ああ、特にこれと言ってイベントが起こらないんだよなー」

「‥‥‥うん。この世界に来てから緑色の魔物に襲われただけだし」


 やっぱり雪菜さんもか。


「俺も。‥‥‥最初はチュートリアルかなと思ったんだけど、一人じゃ勝てそうになかったし、普通に逃げれた。だからあいつらに襲われたのは強制的なイベントじゃ無く、ランダムだと思う」


 俺の時は一匹だけだったけど、雪奈さんの所には4匹いた。

 つまりみんな違うという事だ。


「‥‥‥なるほど」

「でも、一つ疑問なのはどうしてオンラインゲームなのに他の人が全然いないんだろう。世界中で売り切れが続出しているようなゲームなんだから、もっと人の声や、足音が聞こえてきても良いよな?」


 ここに雪奈さんがいる時点で今、オフラインだという可能性は無い。


「‥‥‥確かに。ちょっとおかしいかも」

「もし仮にこのゲームのスタート地点が全員この森なら、ここが相当広く作られているのかな? 現に今日から始めている初心者プレイヤーは万の単位でいるだろうし」


 どんなに広くても、ここまで他のプレイヤーと出会わないのは、普通じゃない。


「‥‥‥まあ、なんにせよもう少し探索‥しない? ‥‥‥あの、‥‥‥二人‥‥‥で」


 雪菜さんが、恥ずかしそうにそう呟いた。

 喜んで!!


「良いよ! 一人より二人の方が心強いし、それにお互い一人じゃ魔物に勝てない。だから力を合わせて頑張ろう」


 雪奈さんなら、ゴブリン1匹とかだったら勝てそうな気もするけどな。

 さっき炎の魔法一発で、半分くらいダメージを与えてたし。

 だが、俺がいて損は無いはずだ。


 まあ、相手にダメージを与えることは出来ないが。

 まあ、一度でもダメージを食らうと死んでしまうが。

 まあ、逃げたりする事しか出来ないが。

 ‥‥‥雪奈さんに損は‥‥‥無いよな?


「‥‥‥うん、頑張ろ」


 という事で、俺と雪奈さんは他の人を探す為、そしてこの謎の森から脱出する為に、座っていた丸太から立ち上がった。


 そういえば、このゲームってプレイヤー同士で同じパーティーになれたりするのかな?

 俺は疑問に思い、ステータスウィンドウと同様に、頭の中でメニュー画面と思ってみた。

 あくまで出てきて欲しいなぁ~くらいの気持ちでやってみたのだが、普通に出てきた。


 ステータスウィンドウが青色なのに対し、メニュー画面はオレンジ色だ。

 まさか本当に出てくるとは。

 すこし画面をスクロールしてみると、上から四番目くらいの所に、(パーティー)という選択肢がある。


 それを押してみると、(パーティーに勧誘)(パーティーに参加)の2つの項目があった。

 えーっと、(パーティーに勧誘)を押せば良いのかな?


 ポチッ


 すると、画面には(近くにレインさんというプレイヤーがいます。勧誘しますか?)と出てきたので。(はい)を選択した。


「‥‥‥あ、こっちの画面に【ひろってぃーさんからパーティーの勧誘を受けています。参加しますか?】って出てきたよ」

「これでよさそうだな。じゃあ(はい)を押してくれる?」

「‥‥‥うん」


 ポチッ


 ボタンの効果音と共に、俺の画面へ【パーティーにレインさんが参加しました】というメッセージが出てきて、雪奈さんのステータス画面が、俺からでも見えるようになった。

 おー、仲間のステータスが見えるのか。


 ふふ、これでいつでも覗けるぜ!

 見放題だぜ!

 プライバシーもくそもないぜ!

 ゲヘへ。


 すいません。冗談です。

 本心では無いので気にしないで下さい。


 俺は、パーティーになったら他に何が出来るんだろうと思い、ヘルプ画面を開いて調べてみた。

 結果。どうやら相手を倒した時に貰える経験値が、二人で分割されるらしい。


 つまりどちらかが、ゴブリンを倒したとしたら、その一匹分の経験値が半分になり、お互い貰える。

 俺からしたら良い機能だな。

 だって俺は敵を倒せないからな!


「とりあえず、俺たちが魔物から逃げてきた方の反対側を探索してみよっか」


 さっき雪奈さんがゴブリン4匹に襲われていた辺りには、特に何も無かったので、別方向を探してみた方が効率が良いと思う。


「‥‥‥分かった」


 今この場所からだったらある程度方向が分かるのだが、他の場所を探すとなればもうこの丸太には帰ってこられないだろう。

 なので、探索と言うよりかは迷子という形になりそうだ。


 じゃあな、丸太!

 短い間だったが、良い椅子だったぜ!

 俺は丸太に向かって親指を立て、「あばよ!」と言い残した。

 その様子を隣で見ていた雪奈さんは、クスッと笑う。


 さてと、気を引き締めて行くか!


 俺と雪奈さんは前後の一列に並び、それぞれ魔物を警戒しながら森の中を進んでいった。

読んでくださりありがとうございます。

今日中にあと一話投稿する予定です。

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