第十一話【学校にて・壱】
第二章の始まりです!
ログアウトを終え、目を開ける。
すると、‥‥‥真っ暗で何も見えない。
フルダイブする為のマシンを、頭に被っているからである。
あー、なんか疲れたな~。
俺はマシンを外すと、とりあえず水分補給をする為に冷蔵庫へと向かった。
なんか体が重く感じる。
さっきまでは、あんなに早く動けてたのに。
やっぱり現実と仮想世界は全然違うな。
俺は欠伸をしながら冷蔵庫を開け、コーラを取り出して飲み始める。
ゴクッゴクッ
そこでふと時計が目に入ってきたのだが、‥‥‥やはり驚くほど時間が経っていない。
俺が【デスティア・オンライン】にフルダイブし、ゲームを始めたのは大体16時50分くらいだ。
そこからキャラメイクをし、最初の敵であるゴブリンから逃げ、同級生と出会い、そして試練をクリアする為に色々と苦労し頑張った。
それだけの事をしたのに、時計に表示されていた数字は17時35分。
つまりこっちでは45分しか経っていないのだ。
計算上、向こうで450分。
簡単にすると7時間30分も過ごしている。
正直この時間差に違和感しか感じない。
まだ実感が沸かないのだ。
そんな現状に、自分でもよく分からない様な気持ちになった。
うまく言い表せないが、無理して例えるなら、まるで春になりかけの少し肌寒い季節に、かき氷を食べている‥‥‥みたいな?
ちょっと何言ってるか分からないです。
ただ、ちいとばかし寂しさがあるような気がする。
あれだけ濃密で楽しかったのが、わずか45分程度の事だったのかと。
「‥‥‥マジで、全然実感が沸かねぇな」
現実世界の時計を確認した今でも、時間の進み方が0.1倍というのはなかなか信じがたい。
ゲームを初めてキャラメイクをしていた時くらいには、たくさんゲームが出来るぜー!
ヤッフー!
ラッキー!
とかって思ってたけど、ここまで時間が経たないのも問題だな。
確かに働いている社会人の様に、忙しくて中々遊べる時間が無いという人たちには良いと思う。
だが自由時間が沢山あり、夜更かしを楽しみたい俺からすれば、ここまで時間が経たないというのは、何と言うか‥‥‥虚しい。
だってゲームで暇つぶしができなくなるって事だろう?
簡単に言おうとすると、ゲーム=別の日常。
俺の場合は、学校以外しなければいけない事は特に無いので、一日におよそ15時間ぐらい自由なのだ。
もし仮に暇つぶしをするという理由で仮想世界にフルダイブするなら、150時間遊ばないといけない。
これはもうただの時間つぶしではないと思うぞ。
言い表すなら、旅行だ。
俺は確かに重度のゲーム好きである。
しかし毎日150時間ぶっ通しでゲームをしたいか? と言われるとそれは違う。
だから、毎日10時間くらい【デスティア・オンライン】で遊び、後は現実世界で本を読んだり、別のゲームをして過ごしたりする、という生活の方が良いだろうな。
あっ、因みに俺はもうアルバイトをやってません。
このフルダイブマシンの開発が発表された一年前、つまり去年は死に物狂いで働き、お金を貯めまくったが、約70万円くらい稼いだ時点で、このくらいあれば足りるだろうと思い、急に働く意味が感じられなくなったので、すぐに辞めてやったぜ~。
ワイルドだろう~?
ワイルドひろちゃんだぜ~?
‥‥‥‥‥。
俺は手に持っていたコーラを冷蔵庫にしまうと、読みかけの漫画を読む為に勉強机に向かう。
おい、みんな聞いてくれよ。
この勉強机、全然勉強できる環境じゃないんだぜ?
明らかに学生の敵だぜ?
まず、机の左右に少し大きめのスピーカーが置いてあり、大音量で音楽を流す事が出来る。
中心にはノートパソコンがあり、いつでもインターネットが使える環境だ。
皆さん、見てください!
一番上の引き出しには、携帯型ゲーム機がいくつか入っています。
次に中間の引き出しの中身を確認してみましょう!
勉強する為の文房具があるのかと思いきや、大量のゲームソフト、そして謎のUSBメモリの数々、かなり綺麗に整頓されている模様です。
さて、続けて一番下の引き出しです!
物凄く気になりますね!
それでは開けてみましょう!
それっ!!
おー、見た感じアニメDVDが二、三枚くらい几帳面に入れられています。
とても綺麗に並んでいるのです。
どうやらこれだけの様で‥‥‥ん? ちょっと待ってください!
作りが精巧すぎて一瞬分かりませんでしたが、良く見てみると二重底になっているみたいです。
アニメDVDの下に穴が一つ開けられているので、そこから指を引っ掛け、持ち上げるのでしょう。
それではどんなお宝が隠されているのか、OPEN!!
おぉ、凄いですねぇ!
全国の皆さん、ご注目を!
なんという事でしょう、中には薄い本が入っています。
表紙を見た限りだと、スクール水着を着た二次元のロリ系イラストが載っているので、そういうやつで間違いないでしょう。
──おい! や、やめろー!!
俺の大切な聖書を見るんじゃない!
‥‥‥い、いや違うんだ。
これはあくまで、無理やり友達に持っててくれないか? と頼まれて仕方なく置いているだけなんだ!
決して俺のじゃないし、見てもいない。
信じてくれよ!
必死に何かを弁解しようとしている誰かさんは放っておいて、ちょっと勉強机の椅子に座ってみましょう。
そして右側を見てください。
本棚がすぐ傍にあり、いつでも漫画やライトノベルが取り出せます。
次は左側です!
なんという事でしょう、液晶テレビと、ゲーム機本体があります。
結論。
こんな所で過ごしている学生は、勉学に励むのは不可能です。
以上、小改造アフタービフォアーでお送りしました。
とまあ、俺の部屋は大体こんな感じなのだ。
俺は本棚から読みかけの漫画を取り出すと読み始める。
いやー、にしても明日が楽しみでしょうがないな。
だって女子とお話ししたり、一緒にお弁当を食べたり出来るんだもん。
多分、俺のゲーム仲間達は、からかったりしてくるだろうが、適当に流そう。
少々意地悪かもしれんが、あいつらまで会話に入れるつもりは今の所無い。
そういえば、せつ‥‥‥あめが言ってたよな? 手作りのお弁当を作って来てくれるって。
今改めて思ったんだけど、男女の友達って普通弁当を作ったりするもんなのかね?
やっぱりあめの知識が偏っているよな?
そういう展開の小説をいくつか読んだ事があるが、少なからず友達以上の関係だった。
雪奈さ‥‥‥あめも色々とライトノベルを読んでるはずだし、そういうの分かっていると思うんだが‥‥。
‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥人の事を考えてもどうせ答えは出ないし、まあいいや~。
なんでもないや~。
やっぱりなんでもないや~!
てか、全然漫画の内容が入ってこねぇ。
おい! 俺の思考回路!
少し黙りやがれ!
‥‥‥あー、あめにあの事伝えるの忘れてた。
ひろとくんって呼んで貰えるかどうか聞きたかったんだけど‥‥‥もうログアウトしちまったぜ。
まあ明日の昼休みくらいに言えば良いだろ。
ん? そんな調子で大丈夫なのか? だって?
心配ないさぁ~~~~。
この世の事はぁぁぁ~~~~。
「うるせー!」
ガチで黙れよ!
誰だてめぇー。
お前のせいで漫画の文字だけを目で追っている状態になるんだよ!
名を名乗りやがれ!
‥‥‥あ、俺か。
お騒がせして申し訳ありませんでした。
不徳の致すところでした。
結局、今日のところは色々とあったせいか、主にあめの事について考えてしまうので、音楽を流しながらベッドに入り、ササッとカロリーメイトを食べるとそのまま眠りについた。
全く、こんなに早く寝たのはいつぶりだろう。
次の日──。
俺の通っている学校は何の特徴も無い、ごく一般的な所にある。
うん、本当に特徴が無いのだ。
近くにあるものと言われて答えられるのが、コンビニと本屋。
そして裏山があるくらい。
俺の住んでいるアパートからは、大体徒歩十分くらいで、まあ近い方だろう。
あ、一つ言っておこう。
ここは田舎だ。
高校から少し離れた場所で営業しているカラオケ店と、少し小さめの本屋以外、何も遊ぶものは無い。
今までJK達の会話を盗み聞ぎした限りだと、遊ぶとなったら電車に乗って街に行くのが普通らしい。
俺の場合は帰り道に電化製品屋があるだけで満足だがな。
俺は今日、余裕をもって起床し、余裕をもって朝ご飯を食べ、余裕をもって学校へ登校した。
そしてちぃとばかしの余裕をもって教室のドアを開ける。
ガラガラ
すると、窓際の端っこの席にはもうすでにあめがいた。
相変わらず静かに読書をしている。
今のところ、こちらには気付いていない様だ。
ふっ、あのブックカバーの中身のジャンルを知っているのは俺だけだぜ。
他のみんなは、真面目で静かな女の子だと思っているんだろうな。
てか、やっぱりアバターとほとんど同じだわ。
‥‥‥いや、こっちの方が可愛いかも。
「おはよう、弘人!」
本物のあめに見とれていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そう、ゲーム友達の一人で、名前は‥‥‥えーっと、何とか‥‥‥太陽。
下の方は特徴的なので覚えていたのだが、苗字を忘れたわ。
俺と違い高身長で、俺と違いかなりイケメンだ。
俺と違いコミュ力がある為、女子と良く会話をしている。
俺と同じでゲーム好きのはずなのに、なんか俺と違う。
「太陽か、おう!」
俺は自分の席に向かうと、鞄を床に降ろしながら言った。
因みに俺の席は廊下側で、あめの席とはかなり距離がある。
だが斜め後ろを向けばいつでも様子が見られるので、‥‥なんか良い。
「‥‥‥さっきずっと立ち止まっていたけど、誰かに一目ぼれしたか?」
太陽は笑いながらそんな事を質問してくる。
すでに面倒くさいな。
てかこいつ、俺があめをじっと見ていたの、気付いてたのか?
洞察力やばいな。
当たっているのか、外れているのか自分でもよく分からない質問に、俺は椅子を引きながら答える。
「そんな訳ねぇだろ」
すると太陽は笑いながら手を叩く。
「だろうと思ったよ。だって弘人は二次元の彼女がいるもんな」
「うるせぇー」
大きい声で言うんじゃねぇよ。
みんなに聞こえるだろうが。
「今は誰だっけ? 確か‥‥‥あの深夜アニメのヒロイン─」
「─朝からしつこいわ! お前はガッツリ豚骨のラーメンか?」
あのラーメンはかなりお腹の中に居座りやがるからな。
「アハハ、やっぱり弘人のツッコミは一級品だな」
お前みたいなのが近くにいるせいで、こんなに鍛えられてるんだよ。
キーンコーン! カーンコーン!
学校周辺にチャイムが鳴り響く。
学校の一限目が始まる時を知らせてくれるチャイムだ。
「お、もう始まるな。じゃあまた来るぜ?」
「来んでええわ!」
俺の魂を込めた返事に、太陽は微笑みながら親指を立てると、前辺りにある席に戻って行った。
因みにこのチャイムの音、普段の俺にとっては寝る時間だと伝えてくれるものなのだ。
だが、今日は違う。
昨日早く寝すぎて頭がさえまくっているせいで、全く睡魔が無い。
今日はちょっと、真面目に授業を受けてみるかな。
そういえば、俺二年生になって授業‥‥‥受けた事あるかな?
全く覚えて無いんだけど。
一時限目、現代文。
「おーい、五月雨ー。気分が悪いのか?」
眼鏡を掛けた男性の先生が、ガラガラとドアを開けて教室に入って来た瞬間、俺の方を見てそう言った。
そんな先生の言葉に、クラスの全員が俺の方を向く。
やめろー、注目を集めるのは苦手なんだよ!
「はい?」
言葉の意味が分からないので、とりあえず聞き返してみた。
すると、先生は俺の席の前まで歩いてくると、心配そうな顔で見てくる。
「保健室に行くか?」
「いや、何でですか?」
ちょっと何言ってるか分かんないです。
「起きているからだ」
WHAT?
なにその理不尽な言い分。
保健室に行くか? って、普通寝ているやつに言うセリフだろ!
「俺、めちゃくちゃ健康なんで大丈夫です」
「‥‥‥そうか、まあ無理しなくて良いからな」
どういう意味だよ!
先生は納得していない様な表情を浮かべながらも、教卓へと上がり授業を開始した。
ふとあめの方を向いてみると、手で口を隠しながら目立たない様に笑っている?
やっぱり可愛いな。
二時限目、数学。
「五月雨‥‥‥すまん。お前の授業プリントは作ってないんだ。てっきり寝ているのかと思ってな」
「‥‥‥」
教師としてどうなのだろうか。
三時限目、英語。
「えぇ? ‥‥‥お、起きてる?」
「‥‥‥」
起きているが‥‥‥何か?
四時限目、体育。
「‥‥‥ベンチで休んでても良いんだぞ?」
「‥‥‥」
‥‥‥俺、不登校になっても良いか?
そして長い午前中が終わり、やっと昼休みとなった。
俺は、高身長でイケメン君の太陽が購買から帰って来る前に、あめの席へと向かう。
昨日一緒に昼ご飯を食べるって約束したしな。
休み時間に話し掛けたいとは思っていたのだが、先生達と色々あり、中々時間が無かった。
本当にだるかったぜ。
英語の女性教師なんか、授業が終わった直後、俺のおでこに手を当てて熱が無いかどうか確かめて来やがったからな。
途中から、学校にいない方が良いのではないかと思い始めたわ。
スタッスタッ
あー、なんか緊張するなぁ~。
良く見てみると、あめは本を読む事無く、じっと席に座っている。
机の上にはお弁当箱が二つ積み重ねるように置いてあるので、いつか来るはずの王子様を待っているんだろうな。
我が妃‥‥‥いや、あめよ!
長らく待たせてしまった。
「あめ?」
やがて机の横まで近づくと、俺は小さめの声でそう呼んだ。
「‥‥‥あ、五月雨くん」
「ごめんな。十分間休みの間に話し掛けようと思ってたんだけどさ、色々と忙しくて」
「‥‥‥ん。大丈夫‥‥‥お疲れ様」
「おう!」
俺は特に座る所が無さそうだったので、立って窓にもたれ掛かった状態になる。
一応前の席が空いているのだが、女子の席なので勝手に使うのが怖い。
何を言われるか分からないしな。
「‥‥‥あの、作ってきた」
あめは恥ずかしそうにお弁当を指でさす。
ゲームの中よりも若干元気がない。
やっぱり学校で話したりするのは気まずいのかな?
「ああ、ありがとう。早速食べても良い?」
「‥‥‥ん。食べよ」
青色のお弁当箱を開けてみると、まるで美術館の様な情景が広がった。
綺麗な黄色の中に、わずかな心の闇を映しているかの如く少し黒色が混じっている卵焼き。
森林浴を体感できるかと思うほどのブロッコリー。
男性のあれを思わせ‥‥‥東京タワーにすら届きそうなほどに美味しそうなソーセージ。
真冬の新雪みたいに綺麗で澄んでいる白米。
その新雪の中心に乗っているのは、女性のちく‥‥‥じゃなく、この地球を絶えず照らし続けてくれている太陽の様に丸くて赤色の梅干しだ。
「すげー、これ自分で作ったの?」
俺はそんなお弁当の中身に思わず声を上げてしまう。
あめはこちらを見ないまま頷く。
「‥‥‥ん」
「そっか。じゃあいただきます」
「‥‥‥どうぞ」
まず最初に卵焼きをパクッと一口で食べる。
モグモグ。
うわー、まるで味の向日葵畑や~。
「凄く、おいしい」
「‥‥‥ほんと?」
「ああ、あめの愛情を感じる」
「‥‥‥学校ではそういうの‥‥‥恥ずかしい」
学校では?
「じゃあ学校以外だったら良いのかい?」
俺はソーセージを口に含みながら、にやけ顔で聞いてみる。
「‥‥‥だめ」
おーーん。
良いのかと思ったのに。
「そっか」
「‥‥‥ん」
てか、全然目が合わないな。
「そういえばさ、今緊張してる?」
「‥‥‥なんで?」
「だってあめ、ずっと下を向いてるから」
するとあめは箸をお弁当の上に置き、こちらを向いた。
そしてしばらく沈黙が流れた後、小さい声で呟く。
「‥‥‥周りが気になるし‥‥‥それにその呼び方が、なんか恥ずかしい」
あー、なるほどね。
気持ちは分かる。
俺も周りが気にならないと言ったら嘘になる。
だが、今のところ誰もこちらを見ていない。
いや、俺達二人が一緒にいる事に気付いてないのかも。
現在この教室には約十人の生徒がいる。
女子五人グループと、ギャル系三人グループと、スポーツ系男子二人組だ。
女子五人の集まっている机では、笑い声が絶えず、自分達の話に夢中で周りを見ている素振りすら見られない。
ギャル系のJK達はそれぞれスマホを見ながらキャハハとか、まじウケるー等、品の無い言葉で会話をしている。
非常に不愉快だ。
まあ、気にしなけりゃ良いんだがな。
最後にスポーツ系男子の二人は、とにかく弁当を大量に食べている。
あとは食堂やら中庭やらに行っているはず。
つまり地味な二人組を見ている奴なんてゼロに等しい。
「あめ?」
「‥‥‥ん?」
「あめ?」
「‥‥‥ん?」
「あめ?」
「‥‥‥」
「あめ?」
「‥‥‥なに?」
「もう慣れたか?」
「‥‥‥なんか無理やりだね」
若干呆れた様な表情でこちらを見ている。
「まあ、あと二、三日したら慣れるだろ! 大丈夫だ!」
俺はあめのちく‥‥‥失礼しました。赤色のクリクリッとした梅干しをかじりながら親指を立ててそう言った。
あー、これ思ったより酸っぱいなぁ。
「‥‥‥ん」
「あ、今思い出したんだけど、伝えたい事がある」
昨日言い忘れたからな。
「‥‥‥どうしたの?」
「俺が雪奈さんをあめって言う様に、俺の事をひろとって呼んでくれない?」
「‥‥‥えっ?」
あめの目が大きく開いた。
‥‥‥前髪で見えないが。
「ダメかな?」
「‥‥‥い‥‥‥良いよ」
「ほんと!?」
「‥‥‥ん」
やったぜー!
これでTHE仲間って感じだな。
「あめ、じゃあ早速呼んでみてくれる?」
あめは恥ずかしさを誤魔化す様にして箸を手に取ると、卵焼きを口に運びながら呟く。
「‥‥‥ひ‥‥‥ひろとくん」
「おぉ、良いねぇ~」
まるで彼女が出来たみたいだな。
正直、二次元で見つける嫁よりも、ちぃとばかし良いかもしれん。
まあ、俺のあめに対する気持ちは好きというのとは違う? と思うけど。
だって、二次元の女の子が好きだからと言って、それと結婚出来たりする訳じゃねぇだろ?
どっかの誰かが言ってた様な気がする。
結婚は愛し合っている人とするものだ! と。
で、今思い付いた考え‥‥‥。
五月雨理論とでも言おうか。
ちょっと聞いてくれ!
可愛い一部の三次元女子と、二次元のヒロインは好感度が同じである。
これは普通の事だが、二次元のヒロインと結婚する事は不可能である。
だから、その二次元のヒロインと好感度が同じである可愛い一部の三次元女子とも結婚が不可能である。
つまり結婚が出来ない程度の好感度では、好きとは言えない。
これが五月雨理論だ。
もしかしたら、将来辞書に載るかもしれないな。
そうは思わんかね?
その後、俺とあめは昨日の出来事について話をしながらお弁当を食べていく。
あめの話によると、どうやら昨日は相当楽しかったらしい。
人と一緒に遊んだり、ゲームをする事があんなに楽しい事だとは思わなかったんだって。
俺もだ。
友達と遊んで、あんなに楽しいと感じたのは初めてだぜ。
他のゲーム仲間と遊ぶのも、まあ楽しいんだけど、昨日ほどじゃない。
俺達が会話を始めてすぐ教室のドアが、ガラガラッ! と開いた。
誰かが戻って来たらしい。
読んでくださりありがとうございます。




