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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
94/108

第87話 前代未聞の対策会議!

本日二本目です。

めっちゃ裏合わせ回......。




 ウィルガルム市街地外周。

 大都市を囲う外壁に最も近い位置に築かれた住宅街。昼間は商業等で中心部へ仕事に出る者が殆どだが、夕方を過ぎれば賑わいを取り戻してくる。

 そう、今は日暮れ時である。人々が夕餉の支度や酒場で一杯やっている所へ飛行型魔物襲来の警鐘が鳴り響いたのだ。


 冒険者業を生業としている者達は率先して武器を構え、それ以外の者達は逃げ惑うばかりだった。指揮を取れる者は誰一人おらず、ただひたすらに逃げ惑うばかりであった。


「有り得ない......この外壁は今まで一度も破られたことが無いはずだろう!?」

「知らねぇよ、っんなこたぁ! 今回は話が違ぇ。向かってきてるのは全部飛行型って話だ」

「全部!? まさか(モス)種か......?」

「そのまさかだろうな。魔法兵はとっくに配置についているから、俺達は撃ち漏らしを叩くぞ!」

「「「おぉ!」」」


 簡潔に打ち合わせをし、各々が配置につく。配置と言ってもそれはただ武器を構えて周りの者より距離を置いた位置なだけであるが。


 外壁の影が伸びる。辺りは逃げ惑う人々の叫び声がまだ残るが闘う者達の耳は外壁の向こう側に集中している。

 少しの時間を置いて無数の羽音が地鳴りのように響いてきた。


「な、なんだってんだ......」

「笑えねぇ冗談だろ、おい?」

「どんだけいるんだよ......」


 直後、外壁の上から様々な閃光が放たれ茜色に染まる空にカラフルな光が浮かぶ。

 魔法兵達の迎撃が始まったのを見て、闘う者達が各々身体強化や魔法の構築を始める。

 魔法兵の魔法が途切れなく続いて壁の向こうより魔物達の断末魔が聞こえるが、羽音や威嚇の声は鳴り止まない。魔法兵の魔力が尽きたか、端から端まで輝いていた魔法の輝きが光を失っていく。

 そして......


「う、うぁぁぁああああああ!!!」


 外壁の天辺から絶叫を上げながら落ちてくる兵士達。それらは皆地面に叩きつけられ即死した。

 遠目から見ても鮮血の飛び散り様が酷く、誰しもが即死だと理解した。

 それらがポロポロと雨のように外壁の上より落ちてくる。


 そして遂に闘う者達は見た。外壁全てを埋め尽くしても足りないような魔物達を。


「蛾だけじゃねぇ......陸上型が落ちてくる......!」


 冒険者達は見た。飛行型魔物達が抱えていたモノを落とすのを。落ちてくるのは空を飛べない筈の陸上型の魔物。地面に着地を失敗し魔法兵と同じように死ぬ奴もいれば、着地した瞬間に手当り次第に暴れ出す奴もいた。

 それを見た闘う者達は......ある者は動けなくなり、またある者は武器を捨てて逃げ出したり、またある者はその場で神に祈り始めたりなど。

 戦意のある者などその場には、否、ウィルガルムには存在しなかったかもしれない。

 魔物達は止まることなく雪崩込んで来て、街を荒らしていく。




 駆除など誰が出来ようか。

 誰しもが見たのはこの世の終わりのような景色。

 夕陽に照らされた空を埋め尽くすような魔物の数々。


 逃げ場など無いはずなのに、住民達はただひたすらに中心部を目指して走った。

 我先にと周りを鑑みずに走る者達の形相こそがその者の本性なのだろう。大人は人垣を力任せに掻き分け進む。女はそれに押され弾き飛ばされる。

 子供は既に誰の目にも写りはしなかった。中には踏まれ蹴られ死んだ者すらいる。

 既にウィルガルムのどこへ行ってもそのような状態だった。


 そんな中、ここにもまた一人郡勢から弾かれ逃げ遅れた子供がいた。


「シスター、ぇぐっ......しすたぁ......」


 涙を堪えながら逃げ惑う人々の群れの後を追うが、堪え切れなかった涙が次から次へと溢れてくる。

 シスター。教会の使徒を呼ぶその声は郡勢の怒号や背後から上がる破壊音などで掻き消され、誰もその声には耳を傾けない。

 突然の警鐘が鳴り響き、孤児院兼教会にいた少女はシスター達と共に中央を目指して逃げ出したが、人の波に揉まれシスターとも仲の良い子供達ともはぐれてしまったのだった。

 少女が駆ける石畳の上には時折自分と変わらない年齢の子供が力尽きたように横たわっているのが見えた。それを見かける度に、次は自分の番かと恐怖がこみあがってきては小さな悲鳴を上げる。既に遠くに見える郡勢に追い付こうと精一杯走るが、それも子供の走力だ。ただただ距離が離れるだけで一向に追い付ける気配はない。

 そんな時だった。

 先程通り過ぎたばかりの建物が突然、何の前触れもなく倒壊し始めたのだ。


「きゃっ!!」


 いや、前触れはあった。魔物と言う脅威が差し迫っていると言う前触れが。いずれこうなると言う事も分かっていた。

 そんな時だ、少女の頭上に影が差した。

 少女は訳も分からず顔を上げると、そこにはシスターや大人の男よりも一回りも二回りも大きい化け物が翅を大きく広げて見下ろしていた。


「ひっ......!」


 すぐに視点を前に戻して全力を振り絞って走り出した。逃げ切れる筈が無い。だが今はそんな事よりもただ目の前に迫ってきている死から少しでも離れたかったのだ。

 勿論、結果など火を見るより明らかであった。

 少女は恐怖で覚束無い足取りであったため足を引っ掛けて大きく転倒してしまったのだった。

 膝が擦り切れて血が滲んで来ている。折角のワンピースが土埃や血で汚れてしまった。これはお気に入りで、確か以前に命を救ってくれた人から貰った大切な一着だったのだ。

 腕を支えに立ち上がろうとするが、転んで出来た傷が痛み涙が止まらない。すると、目の前に何か大きな物が着地する音がし顔を上げる。


 そこには表情も何も無い、ただこちらを食糧としか見ていない捕食者の姿があった。その捕食者の口がゆっくりと開き、鋭い牙が鈍い光を放つ。

 あぁ、死ぬんだ。少女が最後に口にした言葉はそれだけ。ただの溜め息のような絶望。

 死ぬ寸前に見たのは毛むくじゃらの血で塗れた汚らしい口周りと鋭利な牙。


 シスターに聞いた事がある。人は死ぬ前に今までの人生を振り返る「ソウマトウ」を見るのだと。だが私の一生は酷く短い。親に捨てられて......あぁ、確か以前もいつ死ぬか分からない状況だった。その時は、どうして路地裏になんている私を見つけて、その上助けてくれたのか。一度は救われた命だがそれももう消える。私を助けてくれたあの人はまだこの街に居るのだろうか。名前も知らないあの人に、最期に一目だけでも会いたかった......。会って、感謝を伝えたかった......


 死を覚悟してか、涙が頬を伝う。襲い来るであろう衝撃に目を閉じようとした。

 だが次の瞬間、少女の視界は何かあったのか、一瞬にして晴れ、前に逃げる大人達の背中が映った。


「え......?」


 何も無かったかのように景色が晴れた。さっきまでいた化け物は? 私は死んだのか? と頭の中でいくつもの疑問が浮かぶ。しかし、手足に残る擦った傷の痛みはまだあるため生きていることが分かる。では一体何が起こったのか。

 訳も分からず真横へ視線を流した時、そこには今まで少女を食べようと迫ってきていた化け物が地面から生えた刺で地に縫い付けられていたのだった。

 それでも非現実的で、少女は自身の目を疑った。だが実際に感じられる事はただ一つ。


「生き、てる......?」

「ギリギリセーフだったねぇ。いやぁ、無事で良かった良かった。それじゃあ逃げよっか」

「っ!?」


 この状況には似つかわしくない浮ついた喋り声が背後から聞こえた。少女は勢いよく振り返るとそこには――













 帝都ウィルガルムの中心に座する立派な城。他国と比べて、豪華絢爛さは些か見劣りするが、静かながらも堅牢さを誇るその城は、城だけで一つの砦を遥かに凌ぐような堅牢さを持っている。

 そこは今、臨時の時を迎え避難所として開かれていた。常日頃から城は開放的に開かれており、玄関口でもありホールでもある一階にあたるフロアまではウィルガルムの者ならば誰でも入れるのだ。その一階部分は既に人の波が押し寄せており、次から次へと途切れること無く奥へ奥へと人が雪崩込んで来ているのだった。



 その上方に位置する会議室では、現在物々しい雰囲気に包まれた緊急の会議が開かれていた。

 その場は今、現在の状況に対応しようと集められた帝国の上位に当たる者達、八名の剣呑な雰囲気で占められていた。一つの空席が目立つが、空席の彼女には誰しもが知る事情があるため、誰も空席を咎める者はいなかった。

 帝国の歴史上、この様な事態は前代未聞であり、対応し兼ねているための会議である。力を信じる帝国の人間としては、今すぐにでも前に出て害獣共の駆除に向かいたい所だが如何せん原因が不明なのである。

 無闇に動く事は危険だが、動かないでいることの方が苦痛かのように声が上がった。



「状況はどうなっている!」



 年代物と思われる堅牢な木材で作られたテーブルに拳を叩きつけながら苛立ちを露わにして怒鳴ったのは、今現在この国で最高の権力と威光を持つ者。茶髪をオールバックにして額に血管を浮かべているのは、最強の剣士にしてガルム教司教、ディアガルム帝国皇帝のギラオス・シュヴェアト・フラーヴリー。又の名を「剣帝」。



「陛下、落ち着いて下さい。そうも怒ってしまえば皆様は畏れ多く落ち着かれませんぞ」


「ふん、この程度で恐れるなど、たかが知れている。爺もこの場にいる者を侮りすぎだぞ?」



 爺。皇帝にそう呼ばれた白い髭を綺麗に整え携えている男は、細身ながらもこの場の空気に何のひとつも感じていない涼しい様子で皇帝の後ろに付き従っている。

 好々爺然とした風貌であるが、この場にいる者でこの者を知らぬ者は存在しない。彼の名はシュヴァルツァー。ギラオスが25歳で皇帝に付くずっと前から帝国に命を捧げている者だ。

 彼の名は偽名だが本名でもある。彼は帝国の諜報部筆頭の影の者。故に真の姿は誰もが知っているが誰も知らないと言う摩訶不思議な存在なのであった。しかし、この場に呼ばれるだけあって彼の実力は本物だ。微かに開かれたその目は、この場の誰よりも鋭く常に周囲に注意を払っている様子だ。


 これはまた別の話になるが、彼の風貌が何年経っても変化しないというのは上層部だけに伝わる帝国の謎の一つだったりする。



「陛下の言う通りだシュバルツァー、陛下の短気に常に付き合わされる我々は既に慣れているからな。それで、現状はどうなっているのだ?」



 嫌味ったらしく言うが、決して悪気は無い口調で口を開いたのは、皇帝の右手とも呼べる武の使い手、グレース・テシュテル。古くからある名家であり武家のテシュテル家当主である。白髪の目立つ茶髪を丁寧に整えたギラオスと同年代の人物だ。先の口調はその親しさも含めた遠回しの「短気は直せ」と言外に含んだ言い草だったのだろう。

 財も力もあるのに驕らない性格故か、彼は実に親しみやすそうな雰囲気を漂わせている。皺の寄った笑顔で茶化した後、真剣さを含んだ面持ちでシュバルツァーに訊ねた。



「はい、現状は著しく悪いです。現在、飛行型魔物が大量に迫ってきており、間もなく外壁に辿り着く模様。それらはウィルガルムを完全に包囲しており数は不明でございます。学者に調査させておりますが、未だに原因不明でございます」


「ふむ、ならば手遅れになる前に出るしか無いだろう」


「わたくしも賛成ですわ。こんな話をしている前に動いた方がよろしいのでは無いかしら?」


 シュバルツァーの説明はほぼ全てが不明であると言うことにギラオスが苛立ちを隠さずに机を指で小突き始めた。

 説明が終わった後に力強く頷いたのは第七席に席を連ねる若い剣士。長い金髪を後頭部で軽く纏め、引き締まった身体からは滾らせたエネルギーが溢れ出ている。若輩者だが実力は折り紙付きの、マック・ハーバー。


 その意見に賛成の意を唱えたのは第八席に席を連ねる淑女然とした女性。服から伸びる手足は、女性らしくスラッとしており一見頼りなく見えるが見縊ることなかれ。彼女はテシュテル家の長女シュタール・テシュテル。父の武を自己流にアレンジした舞踏は見たものを魅了し、瞬く間に切り裂く鉄扇を用いた特異な武術を駆使する。


 その意見に反対したのは、以外にも彼女の父親だった。


「私は反対だ。これから戦争も控えていると言うのに全戦力総出でかかるのは些か不安が残る。誰か一人でも欠けてしまえば損失は大きい、いや、大きすぎるのだからな」


「しかし、お父様!」


「それにだ、魔物の数が不明なのが引っかかる。私の推測では周囲を囲い、更に余剰を加えると総数は万を優に超えるだろう」


「魔物如き万など余裕だろう」


 グレースの推測にギラオスが口を挟むが、その意見には同意するようで皆が力強く頷いた。


「確かに私達の力を持ってすれば苦はないだろう」


「なら......!」


「だがしかし、本当に万で済むのか? この軍勢が初期のみで、奥に更に数があると考えるとどうだ?」


 グレースは視線だけでシュバルツァーへとその可能性の有無を確かめる。


「はい、その可能性は大いに考えられるでしょう」


「だそうだ。そして終わりの見えない戦いをすればする程兵士達の士気は下がるというもの。むざむざと皇帝の権威を下げるような行為は絶対にしてはならないのだ」


 何も知らぬ者から見ればその力説は臆病者のように思えるが、グレースとギラオスの深い友情を知っている者達は、彼が本当に皇帝のためを思っての行動だと言うことが理解出来た。その為、マックとシュタールは大人しく引き下がった。


「だが、俺達が動かなければ被害は増える一方だぞ?そこはどうする?」


「そこだ。そこに関しては......ドラコーン、アステル頼めるか?」


 皇帝の問に、グレースは二名を指名した。


「殲滅に関しては俺達が有利だからな。良かろう、任された」


「任務、遂行致します」


 ドラコーンと呼ばれた男は、この部屋の中でも特に異色を放つ存在だ。第四席に席を連ねる唯一の亜人、ドラゴニュートである。普段は目立たぬよう人に擬態しているが、この場では誰しもが知る事実ゆえに擬態する必要が無かった。筋肉が盛り上がったその巨腕は、大木すら簡単に薙ぎ倒せるであろう想像が容易につく。上半身裸で腕組みをし、顎を軽く引き任務を承る。


 アステルと呼ばれたのは女性。それもまだ幼い顔付きの少女だった。しかし、幼いながらも実力は高く、第五席に席を連ねている。彼女は帝国で珍しい魔法使いであり、極大魔法を一人で行使出来る程の腕前である。常に肌身離さず持っている長杖を握る力についつい力が入ってしまう。年相応とは言えないような、いくつもの修羅場を掻い潜ってきた猛者のような目の輝きを見せ、深く頭を下げた。


 その時、窓の外よりの声が一際大きくなった。


「既に外壁を超えられたようですね......」


 誰かの呟きが漏れた事で、会議室の空気が更に張り詰めたものになる。


「お父様、では、わたくし達は何を?」


「私達は今回の魔物襲来の原因を究明しましょう。シュバルツァー、影の者は」


「既に外で待機しておりますゆえ......」


「では、陛下」


「ドラコーンとアステル。お前達に魔物共の殲滅を命ずる。一匹残らず焼き尽くすのだ。被害は最小限に食い止めろ!! 残った者達は影を引き連れ今回の原因究明を急げ」


「「「「「はっ!」」」」」


 皇帝より通達をし、各々が散会していく。シュバルツァーの言う通り扉のすぐ外で跪いて待機していた影達諜報部を引き連れ皆が魔物大軍襲来の原因究明へと駆けていく中、ギラオスは一人に声を掛けた。


アンリ(・・・)よ。貴様は未だに帝国から出たいと申すか?」


「......」


 皇帝の問いに、ただ無言で頷くのは第六席に座するアンリ・シノノメと呼ばれる人物。口元を砂避けのような大きな襟巻で覆い、一切口を開かない寡黙な少女。前髪はパッツンで切りそろえられ、カチューシャがアクセサリとして付けられているが、そのジトっとした目のせいか余り可愛げがあるとは言えない。彼女の使う武器はこの世界では異質かつ異形の武器。闘技場でそれを見たドラコーンがギラオスの耳に入れ、ギラオス直々にスカウトしたのだった。

 ドラコーン曰く、「幼き少女がたった一人であぁも野蛮な闘技場で日々を過ごすと言うのが怪しくもまた美しかったのでな」とのこと。


「そうか、戦争に力を貸せと言う契約であるから仕方ないと言えば仕方ないのだがな」


「......シュバルツァー」


「っ、何でございましょうか?」


 帝国に来てから初めて開いた口。とてもか細く小さな声だったが、初めて開いたのだからその驚きは計り知れない。その衝撃に少々焦り、返答に口篭ったが即座に対応したシュバルツァーは流石と言えよう。ギラオスは目を皿のようにしている。


「敵の主な種類は」


「種類、ですか。見た限りですと(モス)種が多いご様子。それがどうかされましたか?」


 少女は僅かに思考した後、何か思い付いたのか再度口を開いた。


「......幼生体、を探せば」


「なるほど、有り得ない話ではないな」


 少女の言葉にギラオスが何か思い当たる節があるのかシュバルツァーに命令した。


「蛾種の幼生体は身に危険が及ぶと母親を呼ぶらしい。その際に使う合図が、特有のフェロモンだ。雄が雌を誘う時とはまた違ったフェロモンかつ、俺達人間には分からない匂い。蛾種の幼生体は襲うな、どこからともなく母性体が現れる、とな。これは冒険者の間での暗黙の了解だ。興奮状態の蛾種は危険度が跳ね上がる......つまりこの都を囲っているのは殆どが興奮状態の蛾種か。一刻を争う事態だ。

 爺、皆に通告を頼んだぞ」


「畏まりました。幼生体の出すフェロモンを探せ、でよろしいでしょうか? しかしながら......」


「あぁ、そうだ。俺達人間には判別が付かないのだからな......」


 答えは目の前にあるが手が届かないと言った歯痒い状態に、ギラオスは再びテーブルを指でカツカツと叩く。

 そこへアンリが再度口を開いた。


「見つけた。全部で二十」


「千里眼、か。まさかこれ程とは。しかし二十だと......?」


「我々も出るとしまして影の者で今動けるのは残りが五人となりまして、合計で十五になりますね」


 そう言いながらシュバルツァーはテーブルの上にウィルガルムの精巧な地図を広げた。

 アンリはシュバルツァーの意図を汲み、見つけた箇所全てをマークした。


「では......『影伝い』」


 シュバルツァーはその技を使い影達に的確な指示を送る。グレースやマック、シュタールに付いた影には近い場所を各自教えた後に影の赴く場所へと向かわせると言う流れるような指示を繰り出した。


「俺達も出るか」


「はい」


「......、っ!」


 ギラオスがそう呟いた瞬間、外で尋常ならざる魔力の高ぶりを感じ皆が一様に振り返った。


「今のは......ドラコーンやアステルのモノでは無いな」


「それと比べてもう一つ小さな反応がありますが、こちらも御二方のモノではございませんね」


「......私はここ」


「あっ、おい!」


 アンリはこの場から最も遠い西側のマークした場所を指差し走り去ってしまった。そう、尋常ならざる魔力が放たれた方向へと。


「俺達も行くぞ」


「わたくしめはあちらへ参ろうかと」


 シュバルツァーはそう言うと瞬き一つの間に消えてしまった。

 ギラオスは皇帝らしい豪奢なマントを羽織り悠々と歩き出した。臣下を信じ切っている様子で。



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