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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第一章
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8話 第三王女のわがまま

本日ラストです。


「お、お城に来ませんか!?」


「え、えーっと......それはどう言う......」


 流石に顔を真っ赤にして今にも泣きそうな顔までされて無下に断ることなんて出来ない。

 このまま逃げることも出来るのだがそれをやると罪悪感で胸を締め付けられそうで嫌なのだ。


「えっと......命の恩人だから......そ、そうです!い、命を助けてくれたお方に何も返せないとなると王族としての評価が下がります! ですので是非お礼をしたいと思いまして......」


 うーん? なんか考えたような間があったから別に恩返しって訳でもなさそう......

 すごーく、嫌な予感がするのですよ。


「別に通りすがっただけですし、恩を売るような真似がしたかったわけでもございません」


 丁重に断っておこう。

 あー、夕日が沈んでいく。宿屋取れなかったら野宿ということで頭がいっぱいすぎて第三王女様に構ってる暇がないのが事実。


「そ、それでも! 助けられたことは事実ですので......是非お越しになられては......ならなくてはなりません!」


 あれー? なんか違う方向に向かってる気がするなー?

 それにお城とかめんどくさいイベントがあると相場では決まっているのだ。


「今夜は用事があるのでそのお誘いはお断りさせて頂きます」

「今日来たばかりで用事なんてあるのですか!」


 なんか失礼になってきた気がするがきっとこっちが本当の性格なのだろうか?

 でも用事があるのは本当だ。

 関わるとめんどくさいパーティ五人組の、多分唯一であろう、いい人そうなアルマさんから呼ばれているのですよ。


「えぇ、先ほどアルマさんと言うお方から呼ばれておりまして......」


アルマと言う言葉に第三王女様よりも子供達が先に反応する。


「アルマ!」

「アルマさんとお知り合いなのですか!?」

「アルマさんのお知り合いなのですね、ならばあの強さはわかります」


「あ、アルマと......? 一体どんな用が......」


 うーん、あの人もめんどくさい人かもしれないぞ?


「では、こうしましょう。王族に恩を売るよりもリサーナ様に恩を押し付けることにます。またお会いできたらその時にお返し頂ければと思います」


 どうだこの折衷案! 咄嗟に思い付いたがなかなかにいい案だと思うのだ。


「う、アルマとの用事であれば......わかりました。今回は引き下がることにします」


 んー? 何、この街。めんどくさい人多すぎない?

 と、その時子供達が大きな欠伸やお腹の鳴る音が聞こえた。


「もうこんな時間ですか、みんな帰りましょうか」


「はーい」

「わかったー」

「帰るー」


 うーん、第三王女様はトラブルメーカーな気がするしな。最後まで送っていった方が良さそうだな。

 多分もう宿なんて無さそうだし。


「夜道は危ないですからね。送りますよ」

「本当ですか! ありがとうございます」


 そう言って子供達を無事孤児院まで送り届ける。


「バイバイ、リサーナ様ー」

「ありがとうローブのお姉ちゃん!」

「またアイス買ってねー!」


「この度は本当にありがとうございました」


 修道女っぽい服装の孤児院の院長からも感謝された。

 さて、次は第三王女様を送り届けないとな。




 道中、こんな話をした。


「貴女の、お名前を聞いてもいいですか?」


 あー、名前言ってなかったっけ。ずっとローブにフード被ってるのに良くもまぁ、ここまで信頼できるもんだね。


「私はアスカ。アスカ・ニシミヤですよ」

「アスカ・ニシミヤ......アスカって呼んでもいいかしら?」


 おぉう? 今日出会ったばかりで名前呼びとは馴れ馴れしいと言うかなんと言うか。

 でも第三王女様からは懇願するようなそんな必死さが伝わってくる。

 別に悪い気はしないのでいいかな。


「いいですよ、リサーナ様」

「あ、そのリサーナ様って呼び方やめてちょうだい。今度からリサーナって呼ばないと返事しないわよ」

「それはちょっと......リサーナ様?」


 あれー? 本当に無視されてるわ。

 噂ではイジメられてるとかそういう感じらしいけど元気そうだしな。

 今この辺りは時期でいうと夏っぽいが、長袖、長めのスカートなのに涼しげで。


 王族と言う立場だが肩身の狭い生活だったのだろうか、友達が欲しいのだと思う。まぁ、減るもんじゃないしな。別にいいだろう。


「リサーナ」


 そう呼んだ瞬間パァァと表情が明るくなりニカッと年齢相応の美しい笑顔を見せてくれた。


「なぁに、アスカ? うふふ」


 そんなやり取りをしている内に王城の前に着いた。

 そこで私とリサーナは別れることにしたが、


「や、やっぱりお城に来てくれないかしら......」


 先ほどとは正反対に暗く険しい顔で俯きがちに呟く。

 うーん、こう言う弱った感じの子を見るとついつい助けたくなるが、お城には関わりたくないと決めたから、仕方が無いのだ。


「また、いつか。城下町でお会いしましょう」

「わかったわ......おやすみなさい、アスカ」


 そう言ってトボトボとリサーナは門をくぐっていった。




 もう夜も遅い。月が天辺に昇っている。


 私はアルマさんに渡された紙切れに書いてある場所へ向かっていた。


 その場所とは、


――――――――――


王城裏手、南区の空き地で待ってるわ


アルマ

――――――――――


 王城を中心にして、正面が北、時計回りで東、南、西とある。その内の南区にある空き地を目指して歩いていた。


 南区は治安が悪く、スラム街みたいだ。本物のスラム街とか見たことないんだけどね。

 とある角を曲がったところに空き地があった。そこには1人の人影もあった。


「あ、来た来た! ローブの子! おーい! こっちこっちー!」


 アルマさんだ。半日前に出会ったばかりなのにこんなにも砕けた感じで話すとは......これも冒険者としては普通なのかな。


「あの、アルマさん話したいことって一体何ですか?」


 正直この世界のこととかはその内集めていくつもりだし特に今すぐにでも知りたい情報なんて無いからさっさと終わらせて久しぶりに眠りにつきたいのだ。



「おー、いきなり本題とはねー。雑談くらいしよーよー。」

「こんな所に雑談するためによびたんじゃないでしょう? さっさと終わらせましょう」

「それもそうね、一番聞きたいことから聞こうかしらね」


 次の瞬間、おちゃらけた雰囲気が一気に真面目な雰囲気に変わる。



「ローブちゃんって、転生者でしょ?」



 ―――え?

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