第74話 イベントスルーなんて許しません
ストック切れたので今後は不定期更新になりそうです!
PV数やユニーク数について感謝を述べたいですが、そうなると前書きが本文を超えそうです。
「どうしよどうしよどうしよぉー!!」
水着から着替えて、話をしやすそうな場所へと移動して来て開口一番、アルテリアさんは悲痛な面持ちで叫び声を上げた。
「どうしよう......本っっ当に、どうしよう......解雇されて路頭に迷うのが目に見えるよ、あぁ、さようなら私の素晴らしき人生......」
学校長であり、創設者であるアルテリアさんを解雇出来る人なんているのだろうか。そうなると国のお偉いさんが刑罰を下すくらいしか思い付かないけどね。
アルテリアさんはお金持ちだ、とか自分で言ってたから刑罰とかはお金で解決出来そうだけどねぇ。
「助けに行ってくれば〜? 場所を教えるくらいなら出来るけど」
「うん、知ってた。アスカちゃんは手伝ってくれないだろうなって......。
でも、私だってやれば出来るもの! いつまでも頼ってばっかじゃ女が廃るっ! そうと決まれば即断即決よ! 場所を教えてちょうだい!」
私は魔法の目で見た情報をそのまま伝える。
「ふむふむ、今の物流庫が移動する前の物流庫かしらね。ウィルガルムは私の庭のようなものよ! ちょっと行ってくるわね!」
伝えた直後、アルテリアさんは「転移!」と叫んで消えた。事前に詠唱してたんだね。
話は変わるけど......話ができそうな場所として選んだ個室完備のカフェだが、そこで頼んだデザート類も、見た目素晴らしいのに味覚の情報と視覚の情報が一致しない。
それでもリサーナ達は美味しそうに食べているので、私の分は皆に分けてあげる。
私の味覚について、とある仮説を立ててみたい。
それ即ち、これは一種の味覚障害なのでは? と。自分で作った時はちゃんと味がするのに、私の知らない誰かが作った料理は美味しくない、と言うか味がしないのだ。
いや、でもそれではメルガスでご馳走されたアルテナ商会の店長のおじさんの奥さんが作ってくれたご飯はしっかりと味がしたな。ダメだ。いくら考えてもこうだと思える仮説が成り立たない。
「ねぇ、リサーナ。メルガスのご飯って、美味しかった?」
「もにゅもにゅ......んぐ。急にどうしたんですか? うーん、でもそうですね......ウィルガルムのご飯と比べると美味しくないのだと思いますね。味が薄かったり無かったりしましたし」
「......ん、確かに、メルガスのご飯は美味しくなかった。雑と言うか、なんと言うか。その点こっちのはちゃんと甘くて美味しい」
リサーナの答えに、補足するようにステラが付け加えた。
メルガスの料理は美味しくなかったのか。でも、ここのは美味しい......と。宿屋のご飯は最近慣れてきたけど、それ以外だとメルガスの時とどっちもどっちみたいな味なんだよなぁ。
となると、やっぱり私の方に問題があるんだろうか?
いくらレベルが高くても自分の問題一つも解決できないとなると悩ましいことこの上ないね......。
そんな悩みの種を抱えたせいか、つい溜め息が漏れてしまう。
「はぁ......」
「それで、アスカ様? アルテリアさんの方は大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫って、何が......? あの人ってこの国じゃ最強クラスなんでしょ? 何も問題無いんじゃない?」
実際、私の知る中では私と本気の追いかけっこをほぼ互角にできる人なんてアルテリアさんくらいだろうし。人類最強ってやつかな?
ジークとかパンデミアさんとかラ・ビールは人外だしね......。
私の答えにラ・ビールが何を言っているのだこいつは、みたいな顔をされてしまった。
「え? 何言っているのですか? アルテリアさんは......学校の外じゃ本気出せないはずでは?」
「え、そーだっけ?」
「我と共にいた時はそこまで弱体していたとは思わなかったが、確かに言われて思い出してみればあの学校内で感じた物をあの者とすると大幅に下がっておろうな」
姿を消していたパンデミアさんが付け加えてきた。私が追いかけられていた時はパンデミアさんはまだ学校内に居たんだね。
――いや、ちょっと待ってね。だって、ただの誘拐犯じゃん? それを弱体化しているとは言え冒険者でも高ランク相当のアルテリアさんが一人で......一人で......
「......敵の本拠地に単独で乗り込んで、しかもそこには王族の護衛を簡単に殺せるような、白昼堂々誘拐を行えるような奴らが数人から数十人いるところに乗り込んで行って無事で済むと......思う?」
はい、ステラさんごもっともです。
でもなぁ......相手は王族だし、ステラを治してあげるのも先だから、適当に警備兵達を突っ込ませるのでもいいかなぁ......。
と思ったところで、パンデミアさんが近付いてきて耳打ちをしてくる。
「何を躊躇うことがある? 治療魔法の実験台が向こうから転がってきたのだろう?」
「っ......! ......そっか、うん、そうだよねぇ」
きっと仮面の下では非常に悪い顔をしているかもしれない。
今回はかなり惨劇になると思われるので、私一人で行く。ラ・ビールとパンデミアさんにはリサーナ達の護衛を任せる。
「皆、宿で待ってて。アルテリアさんを持って帰ってくるからさ」
「......むぅ、行く」
「ステラ、大丈夫。私も必ず戻ってくるからさ」
ステラが最後まで引き下がらなかったが、結局は渋々納得してくれた。レヴィはおやつを食べ終わって静かに眠っている。きっと起きていたら一番大変だったと思うね。
続いて私はさっきとは逆に私からパンデミアさんに耳打ちをする。
「パンデミアさん、分かるでしょ?」
「敵の気配は三人か。お主が離れるのを待っているようだが?」
「それは私が蹴散らしとくけど、宿に着いてからは任せたからね。絶対、守ってよね」
水遊場を出た辺りからつけられていたのだ。この前の事も踏まえて、恐らく狙いはリサーナだろう。
確か、敵の名前は「チック」と言ったかな? 見つけ次第、殺さないとね。問答無用だよ、慈悲など無い。
敵に姿がバレているラ・ビールよりも、パンデミアさんの方が適任だと思ったから、今回はラ・ビールには内緒だ。
「がはは、我を誰だと......思っているのだ?」
「ま、そーゆーことで」
私はローブと仮面をつける。今回は少しアルテリアさんを蔑ろにしすぎたかもしれない。反省反省。
と、そこへリサーナが近付いてきて私を抱き締めてきた。いつもなら恥ずかしがって自分からはあまりしてこないのに、あぁ、幸せだ。幸せで昇天しそう。
「アルテリアさんを、よろしくお願いしますね。......それと、アスカも絶対に、無理しないでくださいね」
リサーナは誰よりも賢い子だ。魔力感知も、きっと私が把握しているよりも精密かもしれない。だからきっと、外にいる敵の数も少なからず知っているのかもしれない。
それでいて、私が傍を離れることを承知しているのだ。私がパンデミアさんに任せたっていうのが一番大きな点かもしれないけど。
力いっぱい抱き締めてくるリサーナを抱き返す。
「大丈夫。私はね、強いんだよ? 知ってた?」
「知ってます......知ってます! 私がアスカで知らないことなんて、何もありません!」
ははっ、なんだこの愛らしい生き物は。一生離れたくないや。
そうこうしていると、ステラにラ・ビールまでも抱きついてくる。
「......約束。破らないで」
「私ってね、約束とか破ったこと無いんだよ?」
「アスカ様、私は自然体でリサーナ様を守ればいいんですよね?」
「ラ・ビールってば......頼んだよ」
うちの子たちは本当に良い子達ばっかりだ。
三人から静かに離れて、すやすやと眠るレヴィを抱くセラの元へ向かう。
「アスカさん......」
「セラ、宿に帰ったら宿を閉めてね。これは、約束してほしい」
敵は一般客を装って侵入してるかもしれない。もしそうなったら宿の中で戦闘が起こるかもしれない。更にそうなればセラのご両親、無関係の人達まで巻き込んじゃうかもしれないからね。
パンデミアさんって手加減を知らないから......。
「は、はい! 分かりました。父と母にも伝えますから! アスカさんが言ってたって」
「なるべく外には出ないようにしてね。外に出ちゃうとあのおっきい人が守れなくなっちゃうからさ」
「あの人は......?」
「守護神、的な?」
昔々の真の魔王様だよ、なんて話したら説明がまた大変かもしれないから、私のお墨付きだって説明すればなんとか通るのだ。私のネームバリュー、高くなったなぁ。
セラの腕の中で眠るレヴィの髪を優しく撫でると、レヴィは擽ったそうにもぞもぞと動く。
「レヴィ、お土産買ってくるからね」
「んん......」
可愛らしい返事をいただいたので私はそろそろ向かうとしよう。全員でカフェの外に向かう。
外に出た直後、私は魔法の矢を三本空に向かって放つ。遠隔操作も自分の手足のように動かせるようになった。そして、先程から私達を遠方から監視するように後を付けてきた三人の額を撃ち抜く。ヘッドショットはお得意なのよ〜。
「全く......人業は思えん所業よな。ほれ、行ってこい。後は我に任せよ」
「ありがとう、パンデミアさん。
それじゃ、皆、行ってきます」
「「「(......)行ってらっしゃい(ませ、です!)」」」
ローブを翻して屋根に飛び移り、アルテリアさんが向かった先、魔法の目が示す【旧物流庫】へと向かう。
「さぁて、『姫』を取りに行こうか」
暗闇に集まった荒くれ者達の前で、小さな背の少年と思わしき人物がそう呟くのを合図に、荒くれ者達はニヒルな笑みを浮かべギラギラと光る目で得意の獲物をぶら下げて次々と暗闇から飛び出し街へと駆り出した。
「まさか、まだ生きていたとは思わなかったよ......アスカ・ニシミヤ......」
先頭の少年は次々と自分を追い抜く荒くれ者達の背中を見て溜め息をついた後、虚空に空いた穴に手を突っ込んで自身の体長よりも大きな大剣を片手で振り回すと、最後尾にいた一人の荒くれ者の体が下半身とお別れを告げ、上半身だけが街中へ放り出される。
それに気付いた街中を通る人の悲鳴が響いた。
時刻は夕刻。今宵は満月。
ウィルガルムの歴史に残る最悪の虐殺事件が起こる。
書かないとは言ってない。
PV数70,000、ユニーク数12,000超えありがとうございます!ブクマに評価に感想までいただけて作者やる気ビンビンビンラディンで頑張ってます。(だからと言って更新が早くなるとは限りませんが......)
今後ともよろしくお願いします!!




