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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
80/108

第73話 擬似ワイドショー!


「ん......?」


 魔法の反応が二つ。

 ポカポカとよい陽気が零れる木漏れ日に当たりながら気持ちよく三人で身を寄せ合って眠っていたところ、私はそれに反応して目が覚める。

 ステラとレヴィは私が寝る前とは少し格好が変わっているが、気持ち良さそうに寝ている。愛くるしい。


 それは置いておいて、肝心なのは魔法の方だ。

 因みに、この世界に生活魔法のようなものは存在していないが、威力を弱めた魔法で代用していたりする。そんな発想があるなら生活魔法とか作れよって話なんだけどさ。

 便利のために生活魔法とかも作ってみようかな。

 ......ダメダメ。あれよこれよとする前にステラ再生を最優先にしてあげないと。


 生活魔法が無いということは、感知したのは攻撃魔法って事だ。もちろん、水遊場では常に下級の水魔法が発動しているし、街中では先に述べたように威力を弱めた魔法だってある。世間一般では威力を弱めた魔法を生活魔法と呼んでいるらしいけど、それも立派な攻撃魔法だからね。

 それらで肝心なのは、人に向けて使われないという事だ。簡単に言うと人に向かわないって事だ。


 魔力感知では魔力の流れ......つまり向きが分かる。これをリサーナ達に話したら、「分かるわけ無いですよ」なんて言われちゃったけど、分かるものは分かるんだ。

 だから、水遊場や威力を弱めた魔法は感知するが気にはならなかった。だが、今回は人に向かって放たれた。二箇所違う場所で。


 まだ日は傾き始めたばかりで昼間の時間帯に襲撃するなんて計画性が無いな、なんて思う。


「どうしたものか」


 ついつい口に出て独り言になってしまう。


 助けてあげても良いんだけど、目立つのがダメな私だからそんな大々的に助けてあげる事が難しいのが現状。


 ――アスカは目立つのは嫌だと言っているが、目深なローブとその下につける奇妙な仮面のせいで、アスカ自身も十分に視線を集めてしまっているのにはアスカ以外は皆気付いている――


 でもまぁ、この世界は日本じゃないし、この世界にはこの世界の事情ってものもあるだろう。

 もしかしたら魔法を撃った方が貧困に喘いでいて、被害者の方が金を巻き上げている地主的な人かもしれない。うん、そう考えよう。


 だからと言って人を傷付けるのはどうかと思うけど、それも同じように言葉なんかで通じるようなら強硬手段になんて出ないもんね。


 だから、私は見て見ぬ振りならぬ気付かぬ振りをしよう。

 そう思い、再び目を閉じる。



 ――気になる。



「ま、まぁ、見るだけ見るだけ......」


 気になってしまいソワソワしそうになるので、魔法の目を二箇所に向かって飛ばしてみる。


 魔法の目、改良に改良を重ねた結果、頑張れば透視くらいならできるようになったのだ。生物はもちろん、もしかしたら幽霊とか普通の目には見えないような存在も見れるかもしれないくらいには改良した。


 そんな私の魔法の内超便利魔法さん(お気に入り魔法)に上り詰めた魔法の目さん。そろそろかっちょいい名前付けてあげたいなとか思うけど、なにも思いつかないのでそのまま呼んでしまう魔法の目から与えられる新しい視界に集中する。

 すると、片方ずつに違う景色が浮かんでくる。これって初めてやった時から当たり前みたいにやってるけど、私じゃない人がやったらどうなるんだろう。


 ラ・ビールが少し練習していたけど、今度感想聞いてみよ。


 右目に映るのは......これは宿のある区画だ、見覚えがある。どうやら盗人が出た所で通りすがった冒険者が魔法を脅しの容量で足を狙い転ばせて捕まえたようだ。

 概ね私の想像通りだったね。え? 全然ちがう?


 ......細けぇこたぁ、いいんだよぉっ!

 右目の方は問題無かったので回収回収。その場で魔力を霧散させるだけなので痕跡は何一つ残らないのがいい点。こんなのスパイ活動に使ったら一歩も家から出ないでお金稼げそうだわ。



 次は、左目だ。

 左目に映るのはこれは......私達が通って来た大通りだね。中堅貴族ですら到底手も出せないような豪華な馬車が横倒しになっている。うわぁ、勿体無いな。

 馬も首が綺麗に切られて絶命していたり、これは魔法で撃ち出された岩、かな。結構強そう。

 馬車は豪華だから、貴族様とかお金持ちの誘拐とかかな? あ、でも、馬車に描かれている紋様がウィルガルムで何度も目にした国旗のようなものとは違うね。

 確か帝都ウィルガルムは、ディアガルム帝国の都なんだっけ......。となると馬車に描かれている紋様はディアガルム帝国の紋様ではないのか。他国って事だ。


 何やら面倒事の予感......!


 馬車の中を透視して見ると、血を流して倒れている装備一式を揃えた護衛のような人物が数人と、メイド服を着た、一目でメイドさんだと分かる人が倒れている。恐らく護衛さんは既に事切れているだろうが、メイドさんは重症だがまだ息はあるみたい。

 結構な大事故? いや、剣か何かで切られて護衛が死んでて馬も殺すなんて事故で済むわけないよね。これはどこからどう見ても誘拐殺人だろう。


 お、衛兵の人達が集まってきてる。襲撃者はこんな白昼堂々と襲えるくらい、結構な手練だと思うけど頑張って捕まえないと〜。

 馬車の豪華な飾り付けや護衛にメイドと見ると、他国のお偉いさんだろうなー誘拐されたの。

 これを放っておいたら国際関係が悪化するどころじゃないもんねぇ。大使とかだったら戦争とかになるかもしれないや。戦争になったら......セラの宿と孤児院に預けた子達くらいは守ってあげようかな、なんて。


 テレビでも見ている気分で魔法の目が拾ってくる光景を見ていると、近寄ってくる気配が五つ。

 遊んでた子達だね。


 魔法の目はそのままにしておいて、閉じていた目を開け二人を軽く揺すって起こす。


「はむ......むぃ〜」

「ん、ん〜......! ぁむ」


 レヴィが寝惚けて近くにあった私の指を咥える。

 寝起き直後に固まった体を解そうと伸びをしていたステラがそれを見て、さっと寝惚けた表情を作り空いた指を咥える。ステラ、それは流石に無理があると思う。

 二人を支えながら立ち上がる。レヴィはまだ半分くらい目が閉じている。


「アスカ〜!」


 遠くから私達に手を振りながら近付いてくるのはリサーナだ。プールに囲まれてるから、私達から行ったほうがいいかな。


「今行くから、待っててー!」

「は〜いっ!」


 可愛い返事だ。寝起きの二人を泳がせるわけにもいかないので、二人を抱え走り幅跳びの要領でリサーナ達の待つ向こう岸へと跳ぶ。


「......ん」

「ふぉ〜」


 両脇に抱えた二人から歓声が聞こえる。ちょっと気持ちいい。

 もちろん着地もピタッと成功させると、向日葵のような笑みを携えたリサーナが一番に駆け寄ってきた。


「流石アスカなのですっ!」


 さっきまで遊んでいたのか、髪も体も少し水が滴っていて、程よくエロい。......実に眼福なり。マーベラス。

 二人を地面に下ろすと、二人揃って「ん〜!」って伸びをしていた。こちらも可愛い。


「アスカよ、気付いておるか?」

「え、なになに?」


 お酒の匂いを撒き散らしながら、パンデミアさんとアルテリアさんの二人が寄ってくる。流石に匂いがキツい。酒臭い時は確か......水飲ませてお風呂入れて柿とか林檎を食べると治ったりするんだよね。そんな時間は無いのでそこら辺のプールに突っ込む。匂い落とさないと上がらせないからね?


 水遊場では酒気帯びの人でも普通に泳いでいるから怖い。異世界怖い。そのうち溺死しそうだ。特にアルテリアさんとか。あぁ、言わんこっちゃない、溺れそうになってるけど憎たらしいほどに大きな胸が水に浮いてなんとか助かってる。あぁ......飛び込みついでに飛蹴りを食らわせたい......。


 それで、パンデミアさんの質問の真意は恐らく、さっき見た異国の豪華な馬車襲撃事件のことだろう。

 ゾンビのようにアルテリアさんがプールから上がってくる。すっごい睨まれてるけど、臭いのが悪い。


「事件のことでしょ? この世界じゃ普通にあるの? 誘拐とか、強盗とか」


 アルテリアさんとは対照的に、水面に仁王立ちする明らかにおかしい存在に対して答える。

 古傷が刻まれた、筋肉が隆起した肉体を持ち、希少な戦闘民族である竜鱗族の特徴の竜鱗を持っている厳つい顔をした古の戦士が、娯楽施設の水遊場で水面に直立不動の形で立っている。それはもう、他のお客さんは顔が引き攣っている。

 立っているだけでも恐ろしいのに、それが一歩ずつ水面を歩くのだから、実に怖い。


 それは、置いておいて......。

 私の質問には恨みがましく睨み続けるアルテリアさんが答えてくれた。後で高いお酒プレゼントするから、って言ったらすぐに機嫌直してくれた。


「ウィルガルムで事件なんて、滅多に起きないわよ。だって、常に数人のグループで衛兵達が見回りしてるし、街中には冒険者もいるし。ウィルガルムで冒険者登録している人は、率先的に動かないと冒険者登録を抹消されて罰金も取られるから、冒険者達がよく働いてくれるのよね〜。その分、冒険者達はウィルガルムでの食費が割引されたり、色々サービスしてるのよ〜」


 なるほど、国と冒険者が上手いこと関係を築いているのね。ってことは、事件を起こすような奴らはそれを承知でやっているのね。だからあんなに無理やり出来るんだね。護衛も結構いい装備してたけど、それすらも斬っていたから。


「え、もしかしてなんか事件でも起きたの?」

「うむ、そのようだな」

「私も感じましたけど、アスカ様が動かないので気にしないでおきました」


 うん、ラ・ビールの事はリサーナとセラの満足そうな表情で、本当に楽しく遊んでいたんだなって窺い知れるよ。ラ・ビールは良い仕事をしてくれた。



「ま、そうだよねー。異国の貴族が誘拐(・・・・・・・・)されても、関われば絶対面倒事だもんねぇ」

「え? 異国の......?」



 私がふと漏らした言葉に、アルテリアさんがいつもとは違う、ガチトーンで聞き返してきた。あれ? これってもしかして私やらかしたかな?


「ねぇ、アスカちゃん。異国の貴族って......なんで分かるの? いや、アスカちゃんなら分かっても不思議じゃないからこの際方法なんて置いておいていいか。それで、異国の貴族......もしかしてそれって、王族とかじゃない?」


 いつになく真剣な表情で質問してくるアルテリアさん。

 丁度その時、タイミングを見計らったかのように放りっぱなしだった魔法の目に犯人らしき人物の姿が確認できた。だって、もぞもぞ動く麻袋を担いでいるんだもん。怪しいったらありゃしない。


「......少し待ってね」


 その後を追わせると、ある建物の中へ入った。そこは古ぼけた今はもう使われていない倉庫のような場所だ。

 透視するためにはまだ集中しないと不安定で微調整ができないので、集中して透視を始める。

 何やら高度な結界も張ってあって画質が悪いが、見えないという程ではない。


 魔法の目を介して見えた光景に、私は二重の意味で溜息を吐く。


「はぁ......。アルテリアさんはその異国の王族さんとやらとは面識があるの?」

「面識があるも何も、今私の学校に留学で来ているのがその異国の王族だもの。留学生の証として、胸にバートゥーン王国の国章のブローチを付けているはず」


 そんな大事なこと、私達に話しちゃっていいのだろうか。これはアルテリアさんなりに信頼してくれていると思えばいいのかな?


 誘拐されたのがその王族かもしれないとなれば、預かっている側のアルテリアさんは責任問題とかあるのかな? でも今日は学校は休日だしな......なんて考えるのは後にしよう。


 バートゥーン王国の国章について、ラ・ビールに聞き教えてもらい、その情報と透視で見える景色とを照らし合わせる。


「あー......」

「うん、その反応だけでよく分かったよ......」


 私の反応を見て、アルテリアさんがその場で顔を青くして頭を抱えてしまった。

 とりあえず、報告くらいはしておかないとね。




「誘拐されたの、多分その留学生だ」




 何でもー! 全部面倒な方に向いていくかなー!




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