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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
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第68話 サボってませんよ


「パンデミアさんの行きそうな所って、何処だろうね?」

「お酒!」

「食べ物ですかね?」

「......女?」

「皆さんのパンデミアさんに対してのイメージが辛辣ですね......」


 皆に聞いてみると、確かに私が考える事を答えてくれた。

 ラ・ビールは一応少しだけパンデミアさんの事尊敬するような感じで見ているんだよね。


「......でも、凄い人」

「そうだなぁ。段々存在感が薄くなってるしな」


 レヴィが言いたい事は感じる魔力が減っていっているという事だろう。魔力感知が優れていないとまともに存在を感知出来ないくらい小さくなってきているから、レヴィの言う存在感が薄いというのは大方当たっていると思うけどね。


「ん? 魔力感知でもほぼ感知出来ないって、それは逆に異常じゃない?」

「そうですね。どんな生物も魔力は少なからずあるので、極端に少ないと言うのは逆に違和感が生じますね」


 なるほど。パンデミアさんは出来すぎたのが仇となるのね。やっぱりどこか抜けてるんだよねあの人......。


 そうと決まれば、早速魔力感知の範囲を最大まで広げる。ウィルガルム全土を囲えるくらいだね。


 ウィルガルムの人口は凡そ十五万人。その中でも特別魔力が多いと思われるのが王城に五人と学園に一人、そして私だ。学園にいるのはアルテリアさんで......おや? 王城にまた一人増えた。それでも王城で一番多いのが王様だとするとそれより少ないから気にする必要は無いかな。


 そして冒険者達を除く市井の住民は十二万人か。その内の奴隷が五万......。

 奴隷の事は置いておいて、十二万人の中から極端に少ない人物を探し出すのか。


「かなり重労働だよこれ......」

「アスカっ、ファイトですよ!」


 リサーナに応援されればやる気万倍だ。十二万人だろうが五十万人だろうが仕分けてやろう。

 それにしても相変わらずリサーナの手はフニフニとしていて柔らかい。いつまでも握っていられるな。


「......あ、狡い。私も握る」


 左手でリサーナと手を繋いでいると、右手をステラが奪い取るようにして繋いできた。ステラの手は槍を扱うのでマメが出来ているが、それでもスベスベで綺麗な手をしている。


 魔力感知はじっとして集中すればいいだけなので両手が使えなくても大丈夫だ。


「私はここがいい〜」


 次はレヴィが私の膝の上に乗ってゴロゴロしてきた。猫みたいで可愛いな。


「あ、じゃあ私はこちらで......」


 最後にラ・ビールが後ろから抱きついてきた。

 四方を完全に囲まれて捕えられてしまったな。これは大変だ。魔力感知どころでは無いっ!


 その後、私達は昼下がりまでじゃれ合うように人探しそっちのけで遊んだ。





「......いた! 見つけたっ!」


 時間は既に夕暮れ時。少しサボり......もとい集中するために必要な事に時間を取られてしまったけれど、日が落ちる前にパンデミアさんと思われる人物を見つける事が出来た。


「ん? ちょっと待って......。もう一つ? 何で?」


 パンデミアさんと思わしき魔力の小さい反応がもう一つある事に気付いた。


「恐らく弱っている子供か奴隷だと思いますよ」

「うーん。二つあるしなぁ......あっ、もう一個あった」


 合計で三つ。異常なまでに小さな魔力反応があった。

 一つ目は、一番遠い箇所の魔力反応。それはウィルガルムの北にある小さな森の方向へと進んで行っている。

 二つ目は王城付近をウロウロしている。

 三つ目が一番近く、西区の大通りを通っていたと思いきや突然路地裏に走り込んだりしていた。


「それじゃあ、近い所から順に行こうか。早く見つかればご飯までに戻れそうかな」

「わ、私はどうすれば......待っていましょうか?」


 一人で待たせるなんて、私が気が気でない。

 リサーナの事はもちろん、私がお姫様抱っこで連れて行く。


 レヴィとステラの速度に合わせて進む。ラ・ビールは相変わらず認識阻害を自身にかけて私達の後ろをピッタリと浮いて付いてくる。

 認識阻害ってのも結構便利そうだよね。人目を気にせず思いっ切り走ってみたいものだ。


 数分間走ると、一つ目の反応のある地点に辿り着く。そこは通りから逸れた細い路地裏で、光も無い。

 私達は路地裏にストンと落ちて魔力反応を探すと、隅っこの方に子供が五人集まって皆揃って一点を見つめて震えている集団を見つけた。

 これは、私達を見ているのかな?


「相変わらず速いですね。でも、私少し慣れてきましたよ!」

「......リサーナの驚き喚く姿が見れないのは残念」

「街中じゃ、アイリスって事だから」

「......ん、間違えた」

「それよりも喚く姿ってなんですか! ステラもそのうちアスカの最高速を試してみてくださいよ。絶対に、怖いですから!」

「......望むところ。是非ともやってみたい」


 リサーナとステラが可愛らしく鬩ぎ合っているの見てホンワカした所で小さな反応の人物を探す。

 まぁ、すぐそこにいるから分かるんだけどね。

 しかし、よく見ると一番小さな子が私の探していた魔力反応だが、それ以外の子も一般人よりも小さな反応しか無い。


「外れ、ですね?」

「うん。そうなんだけど......」

「こいつら、お腹減ってるみたいだぞ?」


 レヴィが気兼ねなく近付いて先頭にいた子供の様子を見ると、端的に言った。

 孤児院の子でも無ければどこかの子という事も無いだろう。裸足に見窄らしい布を一枚被っただけの幼く痩せ細った子供だ。髪もボサボサで、憔悴している子もいた。


 そしてレヴィの言う通り空腹で、いつ死んでもおかしくない様子だった。


 だからと言って、簡単に見捨てる訳にも行かない。

 流石に弱っている子供を放っておいて見殺しにするような人で無しでは無いつもりだ。そこまで魔王っぽくは無いし。


 まずは鑑定で子供達の状態を確認する。すると、全員の状態が『飢餓』だった。

 まずはラ・ビールに頼んで子供用の服を五人分買ってきてもらう。

 続いて路地裏を結界スキルで私達以外の物を一定範囲排除する。やっぱり汚いと嫌だもんね。


 次に、ステラとレヴィには子供達の身体を温かい布で拭いて貰う。嫌がって逃げようとしたが有無を言わせず強引にだが優しく拭いてあげている。お湯と柔らかな布が次第に気持ち良くなってきたのか、子供達も大人しくしていた。


 私とリサーナは弱った胃腸に優しいお粥を作る。栄養確保の為に薬草を細かく切って七草粥のようなものを作る。この薬草はウィルガルムに来る途中に暇潰しでそこかしこを鑑定していたら見つけたので多分大丈夫だろう。


 完成した薬草入り粥を子供達に振る舞う前に、ラ・ビールの買ってきた子供服に着替えさせる。おぉ、ラ・ビールのセンスはなかなか良いな。


 綺麗になった所でお粥を渡す。レヴィも一緒に食べるのはサクラ要員だ。決して「私も食べたい!」と言われたから渡したんじゃないからね。

 私の予想通り、最初は警戒してなかなか手を付けなかった子供達も、レヴィが美味しそうにお粥を食べている様子を見て皆一斉に食べ始めた。


 何回かお代わりもして、お腹いっぱいになった所で、子供達はウトウトし始める。

 因みにお粥は半分以上がレヴィのお腹の中に消えた。


 微睡みの中、子供達の中でも一番の年長者らしき少年に名前を聞かれた。


「お姉ちゃん達の、名前は、何?」

「レヴィだ!」

「......ん、ステラ」

「アスカ、お姉ちゃんですって、お姉ちゃんですって!」

「本当に教えちゃっていいんですかね......?」


 ラ・ビールが心配しているけれど、レヴィもステラもリサーナも子供の可愛さにメロメロのようだ。


「うーん、良いんじゃないかなぁ」


 すやすやと全員が寝息を立て始めたのを確認してから、皆で一人ずつ子供を抱いてその場から移動する。次に目指すは孤児院だ。

 流石にこのまま独り立ちするまで面倒を見ると言うのは出来ない相談なのだ。


 孤児院へ向かう途中、私が抱く女の子が目を覚ました。


「どこ......行くの?」

「新しいお家だよ」

「やらぁ......」


 孤児院だ、って気付いたのだろうか。女の子は少しグズって私の胸を掴んで泣いてしまう。

 困ったな......。私は安心させようと思い、そっと仮面を外して女の子だけに見えるように軽くウィンクをしてみる。


「はうぅ......」


 今度は顔を茹でダコのように耳まで真っ赤にして顔を埋めてしまった。

 そんなに私の顔って怖いのかな......。自分では結構好みなんだけどなぁ。ちょっと自身失くしそう。

 女の子はそのまま私の胸の中で再び寝息を立て始めた。


 暫く歩くと、空き地の横に立つ教会が見えた。前には看板が立て掛けられていて、孤児院と書いてある......らしい。私はこの世界の文字は読めないのでリサーナに読んでもらった。


 言葉は同じなのに文字は違うって不思議だよね。

 いや、もしかしたら言葉も私に合わせてそう聞こえているだけなのかもしれない。


 話が逸れたね。

 教会を数回ノックして待つと、年若いシスターが扉から顔を出した。


「何の御用で......あ、子供ですか......」


 私達の抱く子供達を見て開口一番残念そうな表情に変わる。

 何か事情がありそうなので中に入って聞いてみると、


 何やら隣国と戦争が始まるようで、鉄器や青銅の物を片っ端から徴収されて手元には必要最低限の物すら残っていないそうだ。

 現在孤児院にいる子供八人と、若いシスターと老シスターの二人を合わせて十人がなんとか食い繋ぐのでやっとの事らしい。

 寄付も殆ど無く、安い米すらも買えない状態のようだ。


 戦争、戦争ねぇ。シュバルがそんな事言っていたような気がするけど憶えてなかったなぁ。

 それはそれとして置いておこう。

 お金が無いなら私が寄付をすればいいじゃない。と言う事で子供達五人分と教会に住む十人分を合わせて金貨十五枚程を手渡した。一人金貨一枚あれば一年は過ごせるだろう。それ以降はこの教会の努力次第かな。


「ありがとうございます! ありがとうございます! 貴女方に、どうか神のご加護があらん事を......」


 泣いて喜ばれてしまったので私達は足早に教会を後にする。名残惜しそうにしているステラを本来の目的を果たすために引き摺るようにして先を急ぐ。

 ステラが子供好きと言うのが結構可愛らしかった。


 今は月が水平線より顔を出し始めた時間だ。まだ時間はある。次は王城の周囲をウロウロと徘徊するように歩き回る反応を目指す。





 王城前に着くと、その大きさに私達は圧倒されていた。


「おっきーですよー!」

「......でかい」

「これで食べれたら良かったんだけどな......」

「見上げる程大きいですね。私は中に入れませんけど」


 光魔法か何かで照らされている王城は、ウィルガルムにいればどこからでも見えそうなくらい高く聳え立っている。威厳すらも感じる程だ。

 城門の入口は、家一軒が丸呑み出来そうなくらい大きく、城門から続く検問のような場所には兵士が二名、槍を片手に険しい顔付きで警備していた。あ、片方が欠伸した。


 私達はパンデミアさんを探すついでにウィルガルムを観光するという目的も果たせそうな勢いでいた。


 早速小さな反応を探しに動くと、丁度こちらに近付いて来ている。よく見ると年老いたお爺さんのようだ。

 私はさり気なく声を掛けてみる。


「あのー?」

「あ〜? 何じゃ〜?」


 この人はパンデミアさんじゃないね。さっきの子供達よりも反応が小さいからかなり老衰しているのだろう。


 ん? それなら歩けないくらい弱っている筈だ。なのにしっかりとした足取りで歩いているのは怪しすぎる。

 横を通り過ぎようとするお爺さんの肩を掴む。


「貴方、何者ですか?」

「っ......! お前こそ、何者だ? 俺の正体を見破るとはな」


 突然目付きが変わり、鋭い眼光が月明かりに反射して怪しく光る。そして口調も低いけれどよく通る声がした。

 私はすぐにリサーナ達をこの得体の知れない男から離す。


「私達はただの観光客ですよ。通りすがりのね」

「誰かを騙すならもっとましな嘘をつくんだな!」


 そう叫ぶと、老人だった姿が早変わりしてその場に夜の闇に溶け込むような黒装束を着込んだ男が現れた。どこかで見た事があるようなシルエットだな。


「正体を知られたからには生きて返さねぇぞ」

「あ、誰かに話す気も無いので安心していいですよ。それに、私達は先を急ぐので」

「信じられるかよっ!」


 私達は最後の反応があった北の森へ向かおうとした所で黒装束の男が私に急接近してきた。それなりに速いね。でも......


「ぐぁっ!?」

「......邪魔」

「敵ですか? 敵ですね」


 ステラとラ・ビールの蹴りが黒装束の男に炸裂した。私の足元にカランコロンと鉄の何かが転がってくる。これは......苦無?

 あぁ、黒装束の人は忍者か。なんでこの世界にも忍者がいるのか気になるけれど、あの変装からして変わらず諜報部隊なんだと思う。


 更に続いて火の付いた丸い物が転がってくる。爆弾? 導火線が短くなる前に爆弾を握り潰す。


「げふっ、かはっ! な、何者だ貴様らは......」

「......ラ・ビール任せる」

「貴方のお名前は?」

「はっ、言うわけ......がぁっ!」


 ラ・ビールは容赦無いねぇ。でも拷問ってあんなにやっちゃっていいものなんだね。勉強になるよ。

 男が答えようとしなければ問答無用でどこかの骨を折る。痛みで失神したならまた更なる痛みで起こせばいい。そんな事を何回か繰り返すと、最終的に男の心が折れた。


「お、俺の名前は......ショウ」

「はい、分かりました。ショウ」


 ラ・ビールが男の名前を言うと、男の体が糸の切れた人形のように崩れ落ちる。ラ・ビールから魔力が流れると、その男の目から意思が消えて逆再生のように立ち上がる。


「......人形使い(パペットマスター)


 初めて見たけど面白いスキルだね。これを見るとやっぱり悪魔なんだなって思えちゃう。


 その後、情報を聞き出したものの、個人的にどうでもよかったので衛兵に突き出して北の森へと急ぐ。

 月も段々昇り始めて来ている。



 パンデミアさんったらどこまで行ったのやら......。

300ポイント達成しました!

ありがとうございます!

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