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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
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第65話 巨乳死すべし!


「え? 私の早とちりって事? あはははは! ごめんねごめんね! 違うなら違うって言ってよねー、逃げなくても良かったのに!」

「はぁ、貴女が追いかけるからですよ......」


 ベッドに腰を掛けて楽しそうに笑うアルテリアさん。笑う度に二つの塊が目の前で揺れるのが凄く憎たらしい。




 アルテリアさんが転移を使ってここまで来た後、アルテリアさんは疲労困憊の様子で迫るもすぐに倒れて気を失ってしまった。


 ちょっとやばいかなとか思ったあの瞬間を返せ。


 ラ・ビール曰く、魔力の使いすぎによる昏睡との事だそうで、魔力が回復するのを待てば直に起きると言っていたのでベッドに寝かせた。


 待つ間も暇なので、ラ・ビールが時々練習していた魔力譲渡と言うモノを教えてもらう事にした。丁度実験相手はそこに眠ってるからね。問題無かろう。


「魔力は人それぞれ持つ波長が違うんです。その波長が合わなければ、譲渡した先で反発を起こしてしまいます。最悪四肢が分裂しますね。なので、波長を限りなく近付けて譲渡しなければいけないのです」


 失敗出来ないやつじゃんこれ!? 失敗は成功のマザーとも言うけど、それは失敗しても次が無ければ成立しないよね。


「失敗しなければいいのか」

「は?」

「いやいや、何でもないよ」


 ラ・ビールの練習風景は、ステラの回した駒に自分の魔力の波長を限りなく近付けて更に回転数を増やすと言う練習方法だ。成功すると逆回転になるらしいけど、そこら辺は分からない。


 百聞は一見に如かず。まずはやってみてからだね。失敗したら治療魔法も試してみたいし......おぉ、アルテリアさんって結構いい実験体、もといタイミングのいい人だな。

 その立派な双丘を据ぎ取ってやろうか。


「うーん、こんな感じ、かなぁ......?」


 まずはアルテリアさんの波長とやらを感じ取る。これは魔力感知に集中すると良く見えた。

 アルテリアさんの波長を見るつもりが、この部屋にいる人達全員の波長が見えた。


 リサーナとステラとアルテリアさんは似ている波長だ。存在が強くもなく弱くもないと言った感じだ。

 レヴィは何だか不安定に歪んでいた。これが魔力循環の乱れと言うやつかな。

 ラ・ビールのは他の皆とは違って規則性が無かった。常に乱れているような。それでいてそれが正常と言うよく分からない感じだった。


 一番の問題は、私のだ。


「あ、これ無理なやつ?」

「私にも分かります......アスカ様のこの出鱈目な感じはなんと表現したらいいのか......」

「アスカのはそんなに酷いんですか?」

「......ん、誰よりも強いけど、誰よりも乱れている。でも、安定感のある......」


 なんか酷い言われようなんだけど言い返せないから仕方がない。

 波長が似ていると譲渡もしやすいそうだが、私にそんな常識は通用しないって所を見せてやりましょう。


「えいっ」

「んんっ、あっ......くぅぅ、ゃっ、あぁん!」

「ダメですダメです! アウトぉぉ!!」


 こんな私でも常識は通用しました。


 と言うかアルテリアさん! そんな淫らな声を出さないでくれないかな!? 皆恥ずかしそうに視線を逸らしていた。ステラだけはなんか私にくっついてきたけどスルーだ、スルー。

 大急ぎで譲った魔力を私に吸い戻す。これはエナジードレインみたいだな。


「ん......何が......」


 そんな風にアルテリアさんで実験をしていると、すぐに目を覚ましてくれた。その後、私が頑張って......それはもう、頑張って説明したら、なんとか理解してくれたんだよね。






「それで、なんで私はこんなに汗をかいているのかしらね」

「うっ......」


 その場にいた全員がアルテリアさんから再び視線を逸らす。だから、ステラくっついてこないの!


「ま、まぁ、この際だから何があったのかは聞かないでおこうかな!」

「それが身の為ですよ......」

「やっぱり何かあったんだね......」


 簡単にアルテリアさんの体を拭いてあげる。本当に憎たらしいほどうらやまけしからん肉体をしているな。


「そう言えば、アルテリアさんはどうやってこの宿の部屋に私達が逃げたって分かったんですか?」

「テリアって呼んでいいのに。それはね、あの子......えーっと、セラちゃんに聞いたからだよ」


 なるほど。セラが私とリサーナと面識がある事をあの一瞬で知って、すぐに追いかけてきたのか。

 セラも難儀だなぁ。決して私が巻き込んだ訳では無いからね、うん。


「私からも聞いてもいい?」

「はい、何でもいいですよ」

「質問と言うか、お願いなんだけど......その仮面、取ってみてくれないかな?」


 私は少し警戒を強めてその質問に答える。

 アルテリア・カイゼル。校長を務める上にあの異界(アナザーワールド)を作り出せる程の実力者だ。決して侮ってはいけない。


「それは、どう言う意味ですかね?」

「あははは、そんな警戒しないでもいいよ。ただの、興味本位だからさ。私はもう追いかける気も無いからね。それに今は体を起こすので精一杯だし」


 確かに、アルテリアさんの今の状態を見れば私は余裕で逃げ切れると思う。

 私は緊張を解くようにして異界(アナザーワールド)を開く。


「うっそ......」

「凄いですよね、アスカ様は。どんな魔法も無詠唱でやっちゃうんですから」

「私の姿は他言無用でお願いしますね」


 驚いているアルテリアさんに他言無用を約束させて仮面とローブを脱ぐ。


「っ! 貴女って魔王だったの!?」

「違いますー」


 光を反射して輝く銀髪を見てアルテリアさんは目を見開いて驚いていた。私の噂ってどこまで広まってるんだろうかな。


 さっきの弁解で私は疲れてしまったので私が魔王ではない事を説明するのは省く。決してめんどくさいからとかそんな粗末な理由では無いですからね。


 と、その時、お腹の虫が鳴く音が聞こえた。

 いつも食いしん坊のレヴィは爆睡しているので違う。音鳴る方を向くと、お腹を隠して頬を紅潮させているリサーナがいた。


「あっ、えへへ......お腹空いちゃいましたね」


 私はそっとリサーナに近付いて行って、ヒシッと抱き締めた。体が勝手に動いたのだ。


「えっ、えっ、アスカ!? は、恥ずかしいですよぉ......」


 リサーナは恥ずかしがりながらも嫌がる素振りは無く、抱き返してきた。もうリサーナをお嫁に貰いたい。


「......むっ、狡い。私も、お腹空いた」

「あー、私もですー!」


 ステラとラ・ビールも加わって私を抱き締めに来た。何故か私が身動きを取れなくなってしまった。


「え......何この疎外感。私はどうすればいいの......」

「んー......」


 放置されたアルテリアさんは横に寝ていたレヴィを抱きかかえていた。





 暫く四人で楽しんでいると、レヴィが起きて混ざってきた。アルテリアさんが完全にぼっちになってしまったので私達は気を利かして部屋に戻る事にした。

 部屋に戻ると、学校から帰っていたセラが私達を呼びに来た。


「アスカさん居ますかー? 夕飯はどうされますか......って校長先生っ!?」

「やっほー。昼間はありがとねー」

「なっ、なっ、ななななんで......」


 セラが固まってる。

 突然通ってる学校の一番偉い人がいるんだもんね。そりゃ驚くに決まってる。


 会長とかいるんじゃないかな? と思って聞いてみたけど、アルテリアさんが個人財産で学校を造ったらしい。何者なんだこの人。そして何歳なんだろうか......。


「夕飯は六人分頼んでもいいかな」

「は、はいぃ! すぐにお持ちしますぅ!」


 緊張しすぎてなんかぎこちない動きで階下へ降りていった。大丈夫だろうか?


「アスカー、助けてくれー......」

「どうしたのレヴィ、って......離してあげて下さい」

「えー、どうしてよー。この子可愛いわね」


 レヴィが可愛い事は重々承知している。ちょっと脳筋な所も、誰よりも仲間を思う所も大好きだ。


 そのレヴィが、今やアルテリアさんに捕まって逃げ出そうとしているも、アルテリアさんの剛力には勝てないようだ。

 もう逃がさないと言わんばかりにホールドして、憎たらしい程大きな胸の谷間に挟み込んだ。逃げようと暴れるレヴィの手がアルテリアさんの柔らかそうな胸に沈んでいく。


「んー! んー、んー!!」

「げへへ、可愛いなぁ、もう!」


 うわぁ......綺麗な顔の筈がデレデレに解けてしまっているよ。もしかしてアルテリアさんってロリコンなのかな。そうではないことを祈ろうか。

 と言うよりこれ以上はレヴィの命が危うい。


「死んじゃいますから離してください!」

「ぶーぶー! そんな訳ないじゃん! 気持ち良かったでしょう?」

「ぷはっ、し、死ぬかと思ったぞ......」


 真っ青になって私に飛び付いてくるレヴィ。よっぽど怖かったようだ。

 すると、何故か自分と私の胸を交互に擦り出した。


「やっぱり、アスカの胸の方が平らで気持ちいいぞ」

「た、平らで......」


 私はそっとレヴィを下ろして、涙が零れそうなのを顔を上げて我慢する。まだ大丈夫だ。


 べ、別に! 悔しくなんかないし! あんな脂肪の塊要らないし! 動きにくくなるだけだし! ちくしょう!!


「あっはははは! え、もしかしてアスカちゃんって貧乳がコンプレックスなの? 私よりも化物じみてるのに、貧乳が、貧乳がコンプレックス!? あはははは!」


 この女。絶対殺してやる! 巨乳よ滅べ! 滅んでしまえ!! な、泣いてなんかないし! 泣いてなんかないし!


 私は膝から崩れ落ちる。

 くぅ......涙で明日が見えないぜ......。


「アスカを泣かせないでください!」

「......敵?」

「だ、大丈夫ですか?」

「えっ、あ、まさか泣くほどとは......ご、ごめんね? 悪気は無かったから......」


 リサーナとステラとラ・ビールが私を擁護しに駆けつけてくれた。怒りよりも虚しさが込み上げてきて涙が頬を伝う。

 異世界で初めて泣いてしまうとは......。巨乳を一生恨み続けよう。


「アスカ、私は今のアスカが大好きですから、自身持って下さい!」

「......無い乳でも問題無い」

「す、ステラさん遠回しに貧乳って言ってますよね......。私だってどんなアスカ様でもばっちこいですよ!」

「私もアスカが大好きだぞ!」


 先程まで何が何だか分からない様子でいたレヴィも負けじと加わってきた。

 うちの子達が可愛すぎる。


「ありがとう皆......。私も、大好きだよ」


 全員でしっかりと手を繋いで、ここに反巨乳同盟が結成された。え? アンチは私だけ? きっと皆同じ気持ちなのです。


「え、何これ......デジャヴ?」


 アルテリアさんが何か言っているけど放置だ。

 私達はそのまま運ばれてきた夕飯を食べた。セラは相変わらず緊張してすぐに引っ込んでしまったけれど。

 少し涙の味でしょっぱかった。








 皆が寝静まった夜。私は仮面とローブを着込んで部屋を出ようとする。

 今夜から暫くの間は眠れないだろう。


「リサーナ、行ってくるね」


 相も変わらず可愛い寝顔を見せてくれるリサーナに出掛ける挨拶をして扉に手をかけた時、背後から声がかかった。


「何処へ行くつもりなのかしらね?」

「アルテリアさんはまだ寝ててください」

「はぁ、振り向かなくても分かっちゃうのね。何処へ行くのか答えてくれるかしら?」


 十分に回復したのか、床に足を付けてしっかりと立って私の行き先を聞き出そうとしてくる。


「答える必要は無いです」

「そう? なら、貴女が出て行った後に私がリサーナちゃんをメルガスに返しに行ったりしちゃうかもしれないわよ?」

「......リサーナ? 何を言いますか。彼女はアイリス。顔が似ていますが全くの別人ですからね」


 もしもそんな事をしたら、私はメルガスどころかウィルガルムまで滅ぼすだろう。それこそ、本物の魔王にでもなってね。


 しかし、そんな言い訳はアルテリアさんには通用しない。


「誤魔化しても無駄よ。さっきの台詞もちゃんと聞いたし、貴女が銀髪の魔王なら、そばにいるのはリサーナちゃんって事でしょう? 貴女が魔王では無かったとしても、誘拐は立派な犯罪よ」

「何が......言いたい?」

「そっちが本性かしらね? でも安心していいわよ。そんな事しないから。だって、私は貴女と敵対するつもりは無い。だからと言って、貴女を信用するつもりでも無いの。遠回しに言いすぎたわね。要は貴女を監視しておきたいの。何されるか分かったものじゃないからね」


 軽やかに微笑む姿が、得体の知れない存在だと言うことを確かに表している。


 それにしても頗るめんどくさいな......。手の内を見せろって事でしょう? 嫌に決まっている。私自身、私の底と言うのもよく分かっていないし。学校長としてのプライド的なのもあるのかな。

 だが、ここで変に断っても無理矢理着いてきそうだし、万が一変な事されたらライアさんに頼んで吸い尽くしてもらおう。


「余計な事したら、死にますからね」

「あ、じゃあ良いってこと――」


 これ以上巨乳と喋っているとストレスが溜まりそうなので、アルテリアさんが言い終わる前に転移で移動する。


 この様子だと、少なくともウィルガルムにいる間は監視とか言う名目でずっと着いてきそう......。

 パンデミアさんが今異界(アナザーワールド)にいなくて本当に助かったな。もし遭遇してしまえば私が更に疑われる事になってしまいそうだし。


 もしかしてパンデミアさんはこうなる事を予想して単独行動に......? いや、それは無いか。絶対無いな。






 そんな失礼な事を考えながら、私はアルテリアさんを連れて迷宮の二十九階層に転移してきた。


 今から行う実験は、治療魔法の実験だ。

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