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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
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第61話 騒がしい夜

次回は久し振りのバトルシーンですよ!

ほのぼのは今回で終わり (だといいな!


「うおおおお......!」


 夜の宿に響く可愛らしい雄叫び。

 テーブルに並べられた沢山の......鶏肉を、レヴィは目を輝かせて眺めていた。


「た、食べても良いのか!?」

「好きなだけ食べてね」


 私は宿の厨房を借りてひたすらコカトリスさんを焼く作業だ。

 セラとそのご両親もちゃっかりいるのは気にしない。

 使わせてもらってるんだもの。いくらでも食べてくれて構わない。


「私のお気に入りはこれです!」


 皆が騒がしくしている中、リサーナの声はよく通る。


 厨房から少し顔を覗かせて見ると、ホワイトソースを指差してこれがどれだけ美味しいのかを語っていた。


 どうやら皆はそれぞれ好きなソース、味付けは違うようだ。


「私はレンジの実が入ってるこれが好きだぞ!」


 レヴィはレンジソースがお気に召したようだ。実際はレヴィ好みの味にしてみたのだが、意外と美味しかった。


「......私は、この照り焼きソース」


 野菜とかを色々ぶっ込んで溶けるまで煮込んだソースだ。若干デミグラスソースに近い味がするが、鶏肉にもちゃんと合うので美味しい。


「私はこれですかね。この、塩ダレと言うのでしょうか。頬が落ちそうです」


 ラ・ビールはシンプルなものが好きなのかな。簡単に作った割には他の皆からも好評のようだ。


 セラとご両親も皆に負けないくらい食べている。でも、美味い美味いと次から次へと口に放り込んでは噎せている。自分のペースで食べていいのに。


「我はシンプルなのが一番好きだが、この多種多様なソースもまた素晴らしいという物だな」

「ちょっと、突然出てこないでってば」


 厨房へ戻ると、コカトリスを片手に酒を飲むパンデミアさんがいた。鶏肉は何でも合うからね、今度お酒のつまみに唐揚げでも作ってあげよう。


 


 私はコカトリスを焼いては次を焼き始めると言ったように忙しなく動いて......いない。

 基本的に火炎魔法で焼くだけなのであっちへこっちへ動く必要が無いのだ。

 魔法ってすげー。


「アスカー、お肉、無くなっちゃったぞ」


 レヴィが大皿を頭に担いで厨房に入ってくる。

 一見すると皿が勝手に歩いているように見える。が、それはレヴィが小さいからだ。大皿のお陰でレヴィの姿は完全に隠れてしまっている。



 それにしても無くなるのが早いな。さっき新しく出したばかりだと言うのに。


「わはははは!! 美味いぞー!」


 気になる声がしたので食堂の方をを見に行くと、一人の幼女が緑色のツインテールを揺らしながらあっちへムシャムシャ、こっちへムシャムシャと、コカトリスの様座なフレーバーを楽しんでいた。


 が、彼女は招かれざる客と言うやつだ。

 それと他の皆が怖がってしまうのでこっちに来てもらわねばならない。


「はい、ジークリィン逮捕ね。すぐに新しいの焼くから、待っててね」

「むぅっ? あふかではないふぁ! ふぁんふぇふぁたひふぁふぇ?」

「食べ終わってから喋りなさいな。皆が怖がっちゃうでしょう?」


 私はこっちへムシャムシャしに来た所を抱き上げて連行する。

 ジークリィンがいなくなって、再び皆の食事を楽しむ声が聞こえる。


「私もまだ食べたいぞ!」


 怒りを顕にして地団駄を踏む。これが魔王で無ければ可愛く見えたのだが......。


「大人しくしていられるなら、ちゃんと上げると約束してあげるよ?」

「本当か!?」

「ほんと、ほんと」

「分かった! ジッとしてる!」


 餌を釣らせば面白いように意のままだ。

 私は一回分焼き終わる毎に少量をジークリィンにあげる。


 あれ、そう言えばライアさんと追いかけっこしてた筈じゃなかったっけ? ジークリィンならライアさんを捕まえてからここに来る事も余裕か。深く考えないようにしよう。


「アスカー、ソースが無くなってしまったのです」


 そうこうしていると、今度はリサーナがやって来た。ホワイトソースが無くなったのかと思い、皆の方を見てみると、殆どのソースが残り少なかった。


 身内とセラ達の少人数なのに、予想以上の大盛況と言った所か。


 しかし、ソースの替えは無いのだ。全て出し切ってしまったのだった。


 アイテムボックスを眺めて簡単に出来るソースを考えていると、ふと思いつくことがあった。


 コカトリスさんを解体して加工することもアイテムボックス内で出来たのだから、アイテムボックス内で料理をする事も可能では、と。


 これは成功したら嬉しいが精神的に結構刺さる。

 それなら最初から料理しなきゃ良かったって事態になりかねないのだ。


 複雑な思いを抱えながら各種ソースの作り方や完成予想図をイメージする。

 すると、アイテムボックスの中に新しいアイテムが出現した。


「まじか......」


 それは私が作ったソース達と全く同じものだった。なんかもう、これ私要らないんじゃね? って気がしなくもなくもないが、これ以上考えると病んでしまいそうなのでラッキーだと思う事にした。


 やっぱね、切り替えって大事だよ。


 アイテムボックスからソースを分けてリサーナに渡すと、少し驚いていたがすぐに喜んで戻っていった。


 この後、試しに親子丼をイメージしてみたが何も出てこなかった。

 恐らく一度作った物でしか作ってくれないのだろう。それはそれで不便なのだが、私としては徒労に終わらなくて良かったと一安心できた。




 その後も私はコカトリスさんを大量に焼く。


 大量虐殺、もとい大量入荷した時は在庫の底が見えないくらいだったのだが、今改めて見てみると残りが少ない事に気付いた。


 少ないと言ってもまだ後数十羽分はあるのだが。


「あ、そうだ」


 大人しくコカトリスを咀嚼していたジークリィンが何かを思い出したかのように声を上げた。


「どうしたの?」

「いや何、私がここへ来た目的を思い出したのだ!」

「目的?」


 確かに魔王程の存在がこんな所に用も無しに訪れる筈無いもんね。


 ん......? ちょっと待てよ。確かジークリィンは私を初めて見た時に何か......


「目的は、銀髪の魔王と勝負する事だった!」

「やっぱりか......」


 ジークリィンは私の仮面とローブを外した姿を見ていない筈なのに最初、やっぱり出てきた、と言ってたしね。そんな事だろうと思ってたよ。


「だから、アスカよ! 私と戦え!」


 ジークリィンが机に足を乗せて私に宣戦布告をしてきた。


 今も仮面とローブを付けているのに私に勝負を仕掛けてくるジークリィン。お行儀悪いから机から足を下ろしなさい。


 でも、魔王クラスと勝負か。前回の大魔王さんはパンデミアさんが楽しそうに戦ってて少し羨ましかったからな。少しくらいならやってもいい、かな?


 私も大分戦闘狂に毒されてしまったのかもしれない......。


「少しだけ、ならいいよ?」

「やった! やった! 手加減なんて許さんからな! 本気で、殺す気でかかってこい!」


 私が了承するや否や、ジークリィンは早速戦闘態勢に入ろうとする。


 ジークリィンが翼を広げようとするのを急いで抑える。こんな所で始めたら厨房が、宿が、ウィルガルムが大惨事になるよ。


「とりあえず、異界(アナザーワールド)なら被害無いからそっち行こっか」

「それも、そうだな! アスカは環境にも気配りをするんだな! いいやつだな!」


 竜魔王様に褒められちゃったよ。全然嬉しくないわ。


 リサーナだけに少し席を外すとだけ伝えて異界(アナザーワールド)へと二人で向かう。







「それで? 何で我の所に来るのだ?」

「いや、だって、もう一個作ったんだけどさ、簡単に壊れちゃうからさ......」


 異界(アナザーワールド)に入るなりパンデミアさんが口を尖らせていた。


 今朝作ったばかりのもう一個の方の異界(アナザーワールド)は半日も持たずに壊れちゃったもんね。仕方ない。


「パンデミアさんなら壊れそうな所から修復出来るでしょ? それなら、問題無いかなーって」

「そんな簡単に言うでないわ......。まぁ、出来なくはないがな! それで、その小娘と戦うのか?」


 パンデミアさんの巨体を見上げるようにしてジークリィンは固まっている。


「ぱ、パンデミアって、魔王大戦で呪いになって死んだんじゃ......」

「お? よく知っているな。アスカより知恵が深いではないか! ぐははははは!」


 相変わらずパンデミアさんは一言多いんだよね。今のは見逃してあげるけど次は無いからね?


 私はジークリィンに見向き、ルールを決める。めんどくさいルールは無しで、一つだけだ。


「ルールは一つだけにしようか。この異界(アナザーワールド)を壊したら負けね。壊さない程度になら幾らでも暴れていいから」

「う、うむ! 分かったぞ! よっし、やるぞー!」


 ジークリィンは竜魔王の名に相応しい荘厳たる竜翼を背に生やす。あの小さな体を飛ばすのにこれだけ大きな翼が必要なのか。


 良かった。色々法則をぶっ飛ばすような翼が出てこなくて安心した。

 因みにラ・ビールの方は高度な風魔法で浮いているだけらしい。翼はちゃんと肥大化すると言っていた。


「ほぉ、立派なものよ。まさか竜魔王とはな。アスカよ、ちと本気出さねば厳しいと思うぞ?」

「うーん、私が本気出すと、パンデミアさん仕事増えるよ?」

「ガハハハハ! それは困る! 本気の手前までで勘弁してくれ」


 私はパンデミアさんの問いに冗談で仄めかす。

 確かに空中に佇むジークリィンからは魔王の名に恥じない実力を感じる。しかし、それでもまだジークリィンは本気では無いのが分かる。


「久し振りにガチ戦闘だ。ワクワクするね」

「わはははは! 私も、いつに無くワクワクしているぞ! さぁ、始めるぞ!」


 私が構える間も無くジークリィンは空中を蹴ったように急速にこちらへ落ちてくる。


 私はそれに応戦するように拳を突き出した。




 それを合図に、ここに騒がしい夜の第2ラウンドが開始された。

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