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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第三章
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第57話 ほのぼの

ほのぼのしてます。


※2017/07/16 加筆しました。


「......むぅ、どれも高い」

「そうなの?」


 お昼を食べた露店の店主さんにオススメの武器屋を聞いて、ウィルガルムで一番大きな武器屋に来ている。


 そこで、ステラが新しい槍を探すのに付き合っていると幾本かの槍を眺めながらそう呟いたのだ。私は槍の相場などわからないが、槍士であるステラからすればどれも高いのだろう。


 かかっている値札を見てみると、一番安くても十五ゴールド、金貨十五枚はするようだ。高いのは金貨百枚とかある。

 手持ちの金貨ならこのお店に置いてある武器は殆ど買い占めれそうなのは黙っておこう。


「......それに、このお店は対人用ばかり。私は人を殺すために槍を振るうんじゃない」


 ステラが少し不機嫌になりながらそう言った。

 確かに、このお店にある槍は一番小さいものでも三メートルはある。それに対して、ステラが持っていた槍は一メートルと少しほどの大きさだったと記憶している。


「アスカ、見て下さい! おっきーですよ!」

「わ、私もこれくらいは大きくなるぞ!」

「うーん、武器よりも魔法の方が楽しいと思うんですけどねぇ」


 リサーナがお店に飾ってある先ほどの槍よりも大きな鉄鎧を指差してレヴィと一緒に興奮している。大人のレヴィは確かに私より大きいけれど三メートル以上あったら怖いんだが......。

 ラ・ビールは店内をあまり興味無さそうに見回している。そのうち魔法の素晴らしさとか語り出しそうな雰囲気だ。


「......アスカは、槍作れない?」


 店内の槍を見て、少し考えるようにしていたと思ったら急にそんな事を聞いてきた。

 槍以前に義手と義眼の方が先な気がするんだけどな......。でもそんな事を言うとそれすらも作れとか言われそうだからここは黙っておこう。

 まず武器とか作ったことないし......。


 それにしても、ステラから「アスカ」と呼ばれるのはなんだか新鮮でいいな。


「アスカなら何でも出来そうですもんね」

「むっ? なら私も籠手を作って欲しいな!」

「わ、私は武器よりもアクセサリーとかが欲しいです!」

「......確かに、このお店よりも素晴らしい物を頼む」

「あっ、なら私も何か欲しいですー!」

「えっ......ちょっと、マジで......?」


 最早お願いと言うより懇願に近い形で迫ってくる。仮面を付けてて分からないだろうが、私は物凄く引き攣った笑顔になっているだろう。


 それとステラ、そんな事お店の人が見ている前で言っちゃダメだよ。明らかに敵意と言うか殺気のようなものを感じるのだけど?


 店内で期待の眼差しを向けられて困り果てていると、案の定店主らしき人が近付いてきて......


「冷やかしなら帰ってくれ!!」





 はぁ、追い出されてしまった。

 あそこの武器屋にはしばらくは出禁になりそうで怖いな。


 それにしても、武器やアクセサリーを手作りか......。私、絵を描くのは得意だしデザインは出来ると思うんだけど......作成かぁ。

 今夜パンデミアさんに聞いてみようかな。


「まだ夕飯には早いけど、どっか行きたい場所はある?」


 武器屋に寄っていた時間が予想以上に短かったため、まだ夕暮れ前だ。

 宿に帰ってもやる事が無いから困ったな。


「あ、学校行きませんか? ちょっと見に行きたいです」

「学校ですか? リサ、アイリスさんは勉強したいのですか。偉いですねー」

「......勉強くらいなら、私が教える」

「学校? そう言えば学校ってなんだ?」


 おや、レヴィは学校知らないのか。と言うより、レヴィは世間知らずだったよね。私も人の事言えないけどさ。

 私は抱きかかえているレヴィに分かりやすいように教える。


「学校って言うのは、頭の良い人、先生って人から色々な事を教えて貰える場所だね。レヴィも戦い方とか大人に教えて貰ったりしたでしょ?」

「ん? 私は魔物と戦いながらの自己流だぞ。だから最初は何回か死にかけたこともある。あ、でも生活の事とかは色々教えて貰ったな!」


 なんだこの生粋の野生児は......。実際にそれで強くなっているので効果がありそうな気になるが、元々のレヴィの潜在能力が高かった故だろう。一般人がそんな事をやったらまず間違いなく死ぬよね。

 でも私もレヴィと大差無い気がする......。


 リサーナの提案で、ウィルガルムの学校へ皆で向かう事にした。ラ・ビールは人間に化けるのに疲れたとか言って悪魔に戻って認識阻害をかけ直して、後ろを羽をパタパタさせながら付いてきている。



 しばらく歩いていると、前方に周りとは変わった形の建物が見えてきた。恐らくあれがウィルガルムの学校なのだろう。魔法の目を飛ばして上空から見ると、校舎の形はHの形と、その後にIの一本の校舎が見えた。かなり広い面積を取っていると思う。


「これが学校ですか! おっきーですね!」

「......でも、閉まってる」

「んー、人いないのかー?」


 そうなのだ。出入口であろう門はしっかりと閉ざされ、中に人のいる気配がしないのだ。

 と、ちょうど近くを通りかかった男性に話を聞いてみた。


「あのー、すみません。ちょっといいですか?」

「へ、変な仮面だな。冒険者がなんだ?」


 変な仮面とか言われた。ちょっと凹むわ。腕の中でレヴィが「かっこいいから安心しろ」って言ってくれた。幼女に慰められる私......。


「この学校について聞きたいんですけど」

「あぁ、学校か。今は休みの期間だぞ? 俺の息子が休みだって言ってはしゃいでたからな」

「そうなんですか。情報ありがとうございました」

「いいってことよ」


 その男性は手を振ると、近くの酒場に入っていった。

 この事をリサーナ達に話すと、


「そうなんですか......。いつ休み明けになりますかね」

「あ、聞くの忘れちゃった」

「......まおー、うっかりさん」

「じゃあ、帰りますか? 今から帰ればいい時間かと」


 ラ・ビールが提案した直後、レヴィのお腹が可愛らしく鳴る。......さっき食べたばっかりじゃないっけ?


「うぅ......」

「ふふ、じゃあ今日は帰ろっか」


 恥ずかしそうに小さくなるレヴィの頭を撫でながら家路ならぬ宿路につく。

 その後、頭を撫でたのを狡いなどと言ってステラが頭を撫でろと言ってきたので撫でてあげると、リサーナとラ・ビールからの羨ましいと言う視線に圧倒されたので結局全員を撫でてあげることになった。




 宿に着くと丁度看板娘さんが宿の看板に明かりを灯すところで、看板に背伸びをしていた。

 レヴィを下ろしてさり気なく持ち上げてあげると、驚きつつもしっかりと仕事をこなしていた。


「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ。今日は夕食頼めるでしょうか?」


 この宿は朝食以外にも、追加料金を払うと作ってくれたりするのだ。大抵の人は酒場や定食屋などで済ませるようだけど。


「はい! 今日は久しぶりにお肉です!」

「コカトリ......」

「ん? 今なにか......?」

「いえいえ、何でも無いですよ。楽しみに待っていますね」


 レヴィがコカトリスが良いと口にしそうだったのですかさず口に手を当てて止める。こんな所でコカトリスを出したら目立って仕方が無いだろう。


「むぅ! アスカのご飯が食べたい!」

「私もアスカのご飯食べたいですね」

「......同意」

「僭越ながら私もです!」


 流石に四人の口を封じる事は出来なかった! 不快に思われてしまったかと思い看板娘さんを見ると、


「お、お客様は料理が上手なんですか!? お肉よりもお客様の料理が良いとは......私も食べてみたいですね......」


 目を輝かせて食いついていた。

 こうなっては仕方ないか......コカトリスを少しの間食べないだけでこうなるとはね。

 それに私もそろそろ料理してみたかったし、丁度いいのかもしれないな。流石に一生コカトリスとか私が嫌だし。


「はぁ......それじゃあ、明日どっかで作ってあげるよ。それでいい? 今からは流石に急すぎるし」

「「「はい!」」」


 看板娘さんも混ざって返事をしていた。本当に食べに来る気なのか。どこか料理のできる場所を探さないといけないね。調理器具は持ってるから清潔な場所かなぁ。適当に異界(アナザーワールド)でも作る? それは看板娘さんもいるからダメか。却下だ。

 そこら辺も含めてパンデミアさんに聞いてみよっと。



 自室に戻り、夕食が出来るのを寛ぎながら待つ。私はゆったりとお酒を飲みながら待ってる。他の子達はラ・ビールのコマを皆で回しては楽しんでいる。

 それを眺めているだけで私は幸せだよ。いやほんと、マジで。



 リサーナは魔力が少ないのであまり長い時間回す事が出来ないが、綺麗な青色の魔力光だった。


 レヴィも同じ感じだが、回るスピードが激しかった。そこら辺も魔力の注いだ人によって違うのかな。レヴィの魔力光は赤黒い感じだったが、赤みが強いので綺麗だった。


 ステラは魔力の量を調整したのか丁度良い時間回っていた。魔力光は碧色で幻想的な雰囲気だった。


 ラ・ビールは手加減無しに魔力を注ぎ込み、長時間回っている。魔力光は深い黒、漆黒だが、中に交じる桃色が程よいアクセントになっていて、これまた美しかった。


 程なくして扉をノックする音が聞こえた。

 皆はラ・ビールの回したコマに夢中なので私が出る。夕食かな。


「はい、どうぞ」

「あっ、お客様。夕食運んで参りました!」


 看板娘さんがワゴンに六つの料理を乗せて部屋に入ってきた。ん? 六つ?


「あ、私もご一緒させてもらいます!」


 どうやら休憩を取るついでに夕食も済ませるようだ。それをどうしてこの部屋で? とも思ったが別に構わないので一緒に食べる事にした。ご飯は皆で食べる方が美味しいもんね。


 ご飯時なのでローブと仮面を外す。その際に看板娘さんが「はふぅ......美しいですねぇ」と艶やかな吐息を漏らしていたのは気にしない。

 だから、リサーナと二人で私談義をするのはやめて欲しい。恥ずかしいから......。


 レヴィもローブを脱ぐのに躊躇っていたので、私に隠れるようにローブを脱がすと、看板娘さんが、


「あ、私は気にしないのでどうぞですよ。亜人には可愛い子が沢山いるのに、なんで差別なんてするんですかね......」


 看板娘さんはウィルガルムの人にしては差別主義者では無いようだ。確かに、この宿には亜人の奴隷がいないよね。これだけ大きいならいてもおかしくないのに。


「両親も差別なんてしないので宿では気にしなくていいんですよ。他のお客様がそんな事をするようならこの宿から追い出すので言ってくださいね」


 ご飯を食べながら結構物騒なことを言う看板娘さん。この宿はなかなか素晴らしいな。料理もメルガス程不味くないし。

 確か日本にも差別する客に対して、もう二度と来るなって対処して少し話題になったお店もあったよね。


 因みに今夜の夕食は、米が立つくらいホカホカに炊き上げられたご飯に、甘辛いソースのかかった骨付き肉だった。何の肉かは知らないがかなり歯応えのある肉だった。何の肉かは考えないようにしよう。


「娘さんは、ずっとこのお店で働いてるんですか?」

「あ、申し遅れましたね、私はセラと言います。今は宿で働いてますけど、もう少ししたら学校に行く事になります!」

「えっ!?」


 予想外の場所で学校関係者に出会い、リサーナが驚く。

 レヴィは骨付き肉に一心不乱に齧り付いていて気付いてなさそうだ。あぁ、ソースが服に......。


「今年から通う事になったんです。それで、今は暦では八つ目の月の二週目なので、半月ほど学校自体を休止するんです。私も初めて見て驚きましたねぇ。本当に学校の機能を全部停止させてましたよ」


 それから、私達はセラから学校について色々と話を聞いた。


 学校は試験を受かれば、貴族平民関係なく誰でも入学する事ができ、一般教養や冒険学、魔法学に戦闘学など様々な分野について学ぶことが出来るそう。しかし、編入は正規入学時の試験よりもずっと難しく、編入生と言うだけで噂になるようだ。


 まるで隣のクラスにイケメンの転校生が来た時みたいだな。


 現在の校長は、冒険者でも屈指のSSランク。そして先生方も最低でもBランクと言った優秀な人達が大勢いるそうだ。


 途中まで話を聞く限りでは冒険者育成とは違うのかと思ったが、先生等の話を聞くと冒険者育成学校のように感じて仕方がない。

 しかし、セラを見ていても冒険者になりに学校に行くと言うよりも教育を受けに行くと言う印象が強い。


 やはり、ウィルガルムの教育制度はかなり進んでいるようだ。


「でも私は良く口喧嘩しちゃうんですよね。男子とかとよく......」


 話を聞くと、亜人奴隷を教室へ連れて来ては身の回りの世話を任せ、時には宿題なども奴隷にやらせている男の子につい叱ってしまうらしい。

 これはセラに非は無いだろうが、相手は有名貴族のようで先生すらも味方に付けているそうだ。


 どこにでもいるんだな。金で物を言わせる狡賢いガキ大将みたいなやつは。




 夕食が終わるとセラは仕事に戻る。帰る時少し名残惜しそうにしていたのは気のせいだろう。私達は昼間購入したフルーツを齧る。


 一番最初にレヴィが夢の世界へ旅立つと、他の子達も釣られるように眠りについていく。


「さて、私はもう少し起きてないとね......」


 そう言って私は一つの酒を持って異界(アナザーワールド)に入っていく。



 そして今夜も夜は更けていくのであった。

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