幕間 帝都の王
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※少し改稿しました
「何故、何故こうなった!?」
ここは神聖帝都ウィルガルムの中枢区画。
そこで、ウィルガルムの王たる存在、若き皇帝であり今尚前線で剣を振るう帝都最強の戦士ギラオスは報告された内容について憤慨していた。
「我々もまだ情報を確認したばかりなのでなんとも......」
「えぇい黙れぃ! これまでが順調だったが故に手痛い状況だ......」
報告された内容、それは自国、神聖帝国ディアガルム帝都ウィルガルムにて女神の都ザッハノルンからの使者が殺されたと言う情報。
元々、女神教を名乗るノルン教と、戦神教を名乗るガルム教とは仲の悪い間柄である。その為、使者が殺されたとなればノルン教の信者達はそれを火種に戦争を吹っ掛けてくるのは火を見るよりも明らか。
「何者によって殺されたのだ?」
「それが......ノルン教の使者が我等が信仰するガルム教の教えを大衆相手に偽りだと吹聴した様子で、怒り狂った敬虔な信者達が殴り掛かる乱闘騒ぎになったのです。普通、そんな事では死者が出るとは思えないのですが、後頭部を強く殴られたお陰で死んだ模様です。恐らく、ノルン教の影の者達でしょう......」
「『忍』、か......」
ノルン教には影の暗殺部隊が置かれている。その名も忍。正体不明で神出鬼没。今も我らを見張っている気がするほどの超人達だ。恐らくも何も、乱闘に混じって邪魔だった権力者を適当な理由を付けてこちらへ送り、使者を適当に殺し、それを戦争の火種、ダシとして使ったのだろう。
「ふん、正々堂々と向かってこれぬ臆病者共のやりそうな事よ。卑怯、搦め手が常套手段だと言うのならばそれすらも砕いて滅するのが我が道、引いてはガルム様の道よ」
「仰る通りでございます」
ギラオスは皇帝でありながらも、ガルム教の司教も兼任している。慰問や月に一度の説法等の司教の細々とした仕事に加え皇帝としての激務を全うしているギラオス。御歳四十を超えても尚毎日を変わりなく過ごしているのはひとえに、彼のその強靭な肉体と精神、そして非常に切れ者だと言うことが要因だろう。
強さがものを言うガルム教の教えだが、それは腕っ節だけに限った話ではない。頭脳に関しても近隣諸国よりも高レベルである。
古き仲であるアルテリア・カイゼルにこの地に教育を広めてくれと頼んだのもこの男である。
「しかし、今は如何せん、人手が足りんな。戦力不足である......」
「陛下が居られれば問題は無いのでは?」
「はっ、俺がいくら力を持ってようと、戦は一人では絶対に勝てぬ。それが戦争だ。傭兵や冒険者を集めたとしても、ザッハノルンの魔法兵を崩すのは容易ではない」
彼の国は別名、魔法の国とも呼ばれる程の魔法大国である。俺を崩せる作戦、火力があるがために今回のこのような大胆な作戦に踏み入ったのだろうな。
つまりは相手の予想を遥かに上回る火力で、捩じ伏せねばならない。我が道の強さたるを示さねばならぬのだ。
しかし問題は先にも述べた通りの人手不足の戦力不足。いくら足らずとも相手は既に宣戦布告済みである。こちらを待ってはくれても彼我の行軍の速度等を踏まえても、長い目で見ても一月が限界だろう。
猶予は一ヶ月か。かなり厳しい条件だ。だが危険であればある程燃えるのは軍人の性か。
「装備のストックは幾らある?」
「使用可能が二千と、修復必須が五百から千であります」
「修復はどれくらい時間がかかる?」
「総動員すれば半月かと!」
「うむ、早速頼もう。それと合わせてギルドへ救援要請を頼みたい。任せられるか?」
「恐らく有志のみと条件が付与されるかと思われますがどうしますか?」
「構わん。こちらとて無駄死にさせるつもりは無いからな。頼んだ」
「はっ!」
こちらの兵士は合計で千から千五百。どれも高水準の精鋭ばかりだ。寄せ集めの憲兵共を合わせれば更に増えるだろうが、無駄死にはさせたくはない。
そこに更に魔法兵も加わり合計で二千から二千三百......。ザッハノルンの推定戦力は――五千。
「厳しいか......」
「いかが致しましょうか」
「ふむ......」
圧倒的に不利なこの状況に眉に皺を寄せて考え込む。
ザッハノルンは魔法が極端に強い国だ。我が国の天敵とも呼べる。しかし、逆に言えば魔法だけの国なのだ。つまり近付けさえすれば我が国にも勝ち目はある。近付けさえ出来れば、だが......。
前衛を陽動隊として捨て、少数精鋭の別働隊が横から討つのも可能性としてはある。あるが、恐らく風の探索魔法によりバレてしまうだろう。
陽動隊と言うが、ザッハノルンの魔法に耐えられるだけの戦力、堅牢さが必要だ。だが奴らは極大魔法をぽんぽんと放ってくるため、後手のこちらは受け切れなければ即座に崩されてしまう。三発程度ならば我らも受けることは出来るだろう。しかし奴らはその程度で終わらない。
その為、この作戦を取るのであれば最も堅牢な俺が受け切れなければならない。しかし、少数精鋭で乗り込んだ場合でも、奴らの魔法近接戦は舐めてはいけない。それこそ狂信者のように命を盾に魔法を使う者すらいるのだから。
出来れば近隣の国からも支援を受けたいところだ。
だが最近、城塞国家メルガスでは魔王が現れ、第三王女リサーナ殿が攫われたとか......
作戦を練っていると、報告に来た者がおずおずと言った様子で声を掛けてきた、
「恐れながらギラオス様。もう一件、お耳に挟んでいただきたいことがあります......」
「なんだ次から次へと......早く言え」
「はっ! ば、バートゥーン王国から、ユング様とクレイル様の二名の学校への留学をご希望されてお出でです」
「なんだと!」
いかんいかん、もう歳も四十を過ぎる頃。あんまり怒りすぎると早死にすると医者も言っておったしな。少し落ち着くことにしよう。
それにしても留学か......
「期間はどれほどなのだ?」
「一ヶ月を目安に、とのことです」
「一ヶ月留学か......戦争を先延ばし出来るのは一ヶ月が限界だと考える。バートゥーン王国へは借りがあるからな、良いだろう。ついでに今年の編入生も十数名確保しておけ」
「畏まりました。そう伝えておきます」
最後の報告を終えたのか、諜報部隊は即座に行動に移す。本当に良く働いてくれる者達だ。
先延ばしは得意中の得意だ。ザッハノルンからの挑発に耐えられればどうにか事が上手く運ぶ筈なんだがな......
「後は、近隣諸国から支援を受けられるかどうか、だな。それが今回の肝となるか......」
日々衰えを感じる四十の肉体。――他の者から見れば衰えなど感じさせない輝きを持っているが。
それを今一度奮い立たせるように一ヶ月の月日を過ごす事になると思うと、再びゆっくりと眠れる時が来るのはいつになるかとため息を吐く。
「次に眠るは戦場か、将又極上のベッドの上か......忙しくなりそうだなっ!」
「ぐあっ!」
胸に潜めていたナイフを抜くと同時に、影に向かって投げつけると、そこには胸に深々とナイフの刺さった忍と呼ばれるザッハノルンの影の者がいた。
「ふん、鼠一匹殺す事など容易き事よ。舐めるなよザッハノルン如きが......!」
「クククッ、流石は実力主義の帝国で幹部の上にまで辿り着く男だ。剣神、未だ衰えずか......これは楽しくなりそうだ......!」
ギラオスは遠ざかって行くもう一人の忍に気付く事は無かった。
不穏に笑う影。ザッハノルンとディアガルム間での戦争は既に始まっているも同然であった。




