46話 謎の仮面ヒーロー
話がてんこ盛りになってしまいました!
感想、評価、ブクマありがとうございます!毎回嬉しくて飛び跳ねてます!
「何者かと聞かれたら、答えてあげるが世の情け」
「いいから早く名乗ってよ」
うわっ、この悪魔ちゃんにテンプレは通じないのか!?
せっかくかっこよく名乗ろうとしたのに。
「まおー、まおー」
「ん? どうしたの?」
悪魔ちゃんと対峙している時でも元ローブの少女ちゃんは私に抱きついている。離れる気配は無いのでもう良いかなと半ば諦める事にしているのだ。
「えっとね、あのね、彼女は悪魔令嬢って言う悪魔で、彼女がクラリスを殺したの」
「クラリス死んじゃったのか」
「うん」
「ふふん! そうよ、私が悪魔令嬢ラ・ビール様よ! そしてこの私が、この私が! クラリスを殺したの!」
悪魔ちゃんはラ・ビールって名前なのか。それと、悪魔令嬢? ってなんだろうか。
『私』って部分を強調してくるのがどことなく虚しい。可哀想なので生暖かい目を向けてあげよう。
クラリスは私の魔法障壁が消えた時に死んだのかな。でも何でだろう。人が一人死んだと言うのに、私自身全く悲しくない。この辺りは前世の私と変わらないんだね。
前世から私は人が亡くなる事で泣いた事がない。多分、母が亡くなったら泣いてしまうだろうけど、私の方が先に死んだ。
恩師や、御世話になった友人の親が亡くなった時のお通夜でも、周りの人が涙を流しているのに私だけは何も感じなかった。心ここに在らずと言った虚無感故ではなく、ただひたすらに無関心だった。
だから、今回クラリスが死んだということも少し悲しいな、くらいで終わったのだ。
正直、この世界でもそこは変わらない。いや、少しは変わったのかな。リサーナだけは必ず守ると約束したから。
「ちょ、ちょっと、悲しまないの? 身内だったんでしょう? 悲しみなさいよ!」
「うん? あー、悲しい悲しい」
「なっ......!? 悪魔より極悪非道じゃないの......」
クラリスの訃報を聞いてもなんとも感じていないような私を見てラ・ビールちゃんが私を非難する。
失礼じゃないか? 私のどこが極悪非道と言うのだ。
「まおーは、悪くない。所詮この世は弱肉強食。弱ければ死ぬだけ。クラリスは、弱かっただけ」
元ローブの少女ちゃんがなんか恐ろしい事言ってる! いや、うん、まぁ、この世界は魔物とか言うのが溢れているし強くないと死ぬのはわかるけどさ。
「あ、貴女達、まさに悪魔ね......」
悪魔に悪魔認定される人間ってどうなのだろうか?
とりあえずラ・ビールちゃんを片付けよう。もう動けなさそうだし、楽に終われるかな。帰って寝たい。リサーナとレヴィの寝顔を拝みたいのだ。
戦いとは、情報戦を勝利した者が勝つのだ。とか聞いたことあるし、鑑定しちゃおう。ずるくないよ? 正義が勝つのではない、勝った者が正義なのだ!
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ラ・ビール 女性 年齢不詳
悪魔令嬢
レベル50
催眠・洗脳
HP1750/2300
MP5/2860
STR1400
VIT2910
《スキル》
人形使い、暗黒魔法Lv.6、空間魔法Lv.4、魔力操作、魔力感知、魔刃Lv.3、HP急速回復Lv.2、怒りLv.1
《称号》
伝説の悪魔、父親を憎む者、角無し、人形使い
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魔力残量少なっ! 極大魔法を撃った反動でほとんど動けないのね。HPが無くなると死ぬ、MPが切れると動けなくなるって感じなのか。今後は気を付けよう。ちょっと怖いわ。
後、レベルの下に催眠・洗脳ってあるけど操られているの? 催眠とか洗脳って悪魔が行使すると思うんだけど......うーん、考えてもわからないな。
称号にもスキルにも人形使いがあるな。称号とるとスキルも取れちゃうとかそういうシステム? 後で私の方も確認してみようかな。
「彼女は人形使いと言う不思議なスキルを持ってる。だから、気をつけた方がいい」
「そうみたいだね。でも、魔力切れで動けないみたいだし、すぐ終わるよ」
「なっ!? こ、殺さないで......」
私が魔法を発動させようとした時、ラ・ビールちゃんが子犬のようにプルプルして泣き出した。
あっ、ちょっとゾクゾクしてきた。いけない兆候だ。
「わ、私だって、殺したくて殺したんじゃないし......」
「殺される覚悟も無いのに殺そうとするなんてね、悪魔らしいと言えばらしいか」
「都合が良いって言うのはわかってる......だけど......」
うーん、どうしたものか。私だって嫌がる人を無理矢理殺そうなんて思ってもいないし、と言うか悪魔って死ぬの?
「元ローブの少女ちゃんよ、悪魔って死ぬの?」
「むぅ、ステラ」
私にくっついたまま離れようとしない元ローブの少女ちゃんが見るからに怒ってますよと言う雰囲気を出して名前のような言葉を口にする。
ステラ、か。可愛らしい素敵な名前だ。
「ごめんごめん。ステラちゃんは悪魔が死ぬのかどうかってわかる?」
「ん、知ってる。悪魔は人の負の感情から生まれる個体と、召喚の儀式による召喚、そして強固体悪魔から生み出される事がある。彼女は多分強固体悪魔だと思うから殺しても数年で蘇ると思う」
悪魔ってだけで不死身なのか。羨ましいな。
じゃあ、完全に殺すことって、この世から消すことって不可能なのか。
「例外として、破滅魔法による消滅は可能」
私の心を読んだかのように付け加えてくる。横でドヤ顔をしてくるステラちゃん。まさか、本当に心を読んだとでも言うのか......!?
まぁ、それはこの際どうでもいい。破滅魔法で消せるのか。使ったことないし、シュバルもなるべくなら使わないで的なニュアンスで言ってたしな。
と、その時、何者かが近寄るのに気付いた。気配を感じた方向へ魔法の矢を放つ。
「なんっ、だと......!」
何も無い空間に突如として現れるもう一体の悪魔。その胸を穿つ私の自慢の魔法の矢。
「ジャグウェル!?」
「あ、知り合いか」
ラ・ビールちゃんが既に死にかけの悪魔に駆け寄る。悪魔にしては仲間思いの強い良い子じゃない? 私の中の悪魔のイメージって、仲間とかどんどん捨駒にするようなヤツなんだけどな。
「あー、ごめん。普通に近寄れば何もしなかったんだけどさ、変に気配消してるんだもん。そりゃあ、撃っちゃうよね」
反感を買いそうなのでとりあえず謝っておこう。そうだ、私は悪くないもんな! 中途半端に気配消す方が悪い! 無罪! 閉廷!
「私の、気配遮断を中途半端、ですと......? サタン様、不甲斐ない私をお許しください......。そしてラ・ビールよ、貴女は優しすぎるのですよ......騙していたことをお許しください......」
「ジャ、ジャグウェル! 死ぬな!」
「貴女のお母様に似てお優しいラ・ビール様......どうか、復讐だけに囚われるのは......ごふっ! お逃げ、下さい......」
あー、なんか適当に撃っただけなのに悲しい場面になっちゃった。もう、帰ってもいいかなぁ?
「仮面の御仁よ、ラ・ビール様を殺すのは、諦めてもらえます、かな......?」
「あー、うん。ラ・ビールちゃんはいいけど、お前は殺すよ?」
「や、やめろ! ジャグウェルを殺すなら私を殺してからにしろ!」
ジャグウェルとか言う悪魔、最後までクズか。
ちょっとジャグウェルのステータスを覗かせてもらったのだが......
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ジャグウェル・ハードノエル 男性 年齢不詳
悪魔公爵
Lv.56
HP25/2540
MP2000/3000
STR1780
VIT2100
《スキル》
火炎魔法Lv.6、水魔法Lv.2、暗黒魔法Lv.4、魔力感知、魔力操作、洗脳操作、身体強化Lv.4、HP急速回復Lv.4、気配遮断、気配感知
《称号》
大魔王の従者、悪魔令嬢の執事、魔物狩り、洗脳操作
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ジャグウェルのスキル、洗脳操作。これでラ・ビールちゃんを洗脳しているんだろう。少ない魔力で少しずつだが回復している所を見ると、ラ・ビールちゃんを犠牲にして自分だけでも助かろうという作戦か?
なんかお涙頂戴展開みたいになってるけどさ、コイツって本当に悪魔みたいだね。洗脳とか、身内を当然のように捨てる存在は本当に嫌い。
ラ・ビールちゃんは被害者のようだね。
――胸糞悪い。
「くそったれ......」
「まおー?」
「ジャグウェルとやら、お前は殺す。今ここで」
「ちっ......バレたのか......」
そう言って危険を察知したのか、その場から飛び去ろうとする。もちろん、逃がしはない。
派手な魔法は使えないので、便利で小回りの効く魔法の矢を次々と放つ。
「ぬぅん! フハハハハ! なかなかやるようだ。だが、これならどうかね!」
ジャグウェルは所々を撃ち抜かれながらも反撃の魔法を放つ。
暗黒弾。暗黒魔法の基礎だ。
だが夜中の悪魔の魔法。それだけで脅威なのだ。
「ふん。もう終わりだよ」
飛んできた暗黒弾を片手で弾く。三人が驚いていたが無視だ、無視無視。
適当に放っていた魔法の矢に軽く魔力を込める。多少離れていても方向転換とかは当たり前のように出来る。
それらをジャグウェルを囲むように動かす。空中にいるので上下左右、四方八方から迫る魔法の矢。逃げ場はない。
「ククク、まさか、この私が死ぬとはね......連絡すら許さないとは、恐ろしき存在よ......」
最後、何か言っていたようだけど聞きたくもない。魔法の矢が中心、ジャグウェルを次々と穿つ。断末魔が消えるまで撃ち込む。
「汚ねぇ花火だぜ......」
決まった......。
べ、別にこれがやりたくて空まで逃がした訳じゃない。断じてない。......はい、嘘です。これがやりたかっただけです。
一歩も動かずに倒せたけど、魔法の矢が便利すぎて楽しい。
「まおー、やっぱり凄い」
「ジャ、グウェ、ル......? あ、が、ぐぅぁああ!」
相変わらずくっついたままのステラちゃん。と言うか魔王ではなく後でちゃんと自己紹介しよう。
ラ・ビールちゃんはジャグウェルが死んだ事で洗脳が解けそうなのか、頭を抑えて蹲っている。
大丈夫かな......?
「母様......? ジャグウェル......? なん、で、ジャグウェル、が......? あ、あぁ......そうか、ちく、しょ......」
そのままラ・ビールちゃんは気絶した。悪魔の洗脳というのは恐ろしいな。とりあえず落ち着いたから、帰ろう。
「じゃ、私は帰るから、そろそろ......」
「嫌っ!」
ステラちゃんが私に捕まる力を更に強くする。ちょっと痛いぞ?
そうなるとこのまま連れていくしか無いのだろうか......夜も明けてきたし、リサーナに何言われるか......
「連れてって」
「いや、うーん、でもねぇ......」
どうしようかと空を仰いだ時、私達の上を鳥が大量に旋回しているのに気付く。
「何、あれ......」
「多分、バルドラード。別名屍食い鳥」
「屍食い鳥......?」
「うん、彼女を狙っているんだと思う」
ステラちゃんの視線の先には横たわるラ・ビールちゃん。
「はぁ......一人も二人も同じか......」
「クラリスも」
片手にラ・ビールちゃん担ぐ。
クラリスは既に死んでいるが、お墓くらいは建ててあげようかと思う。少し離れた場所に胸に穴の空いたクラリスが倒れていた。
土魔法で土葬くらいしか出来ないが、そのまま埋める。ステラちゃんも納得してくれたし、良しとしよう。この世界にも土葬の文化はあるのかな。
クラリスを土葬し、ラ・ビールちゃんをお姫様抱っこし直す。この時ステラちゃんから恨みがましい目を向けられたがよく分からないのでスルーした。
夜も明けてきたので急いでリサーナ達の元へ戻る。
戻ったのは良かったんだけど......
「あ、おかえりなさい明日香さん。パンデミアさんと少し白熱しちゃったよ」
「はぁっ、はぁっ、アスカよ、お主の、知り合いか......?」
そこには疲弊して今にも倒れそうなパンデミアさんと、見覚えのある結界に守られて良い寝顔のリサーナとレヴィ。
そして、
「ちょっと話したい事があるからさ、来ちゃった」
テヘペロと言いたそうな表情で語る自称神様。
「とりあえず殴るわ、死ね! シュバル!」
「へぶぅっ!」
シュバル。私を転生させてすぐに殺しかけたクソ神様。到着して早々、私は神様を殴った。




