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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第二章
45/108

41話 ステラとクラリス

遅くなりましたがなんとか投稿できました......


ユニーク3000人突破しました!本当にありがとうございます!


次はもう少し早めに投稿出来ると思います。


 アスカとリサーナがレヴィと出会った後、別方向へ飛ばされた二人のお話。




「こ、ここは......?」


 知らない天井だ。どこかの家の中なのだろうか。質素な造りのベッドの上に、私は寝ていた。

 確か、私は魔王を追いかけてやっと見つけたと思ったら、かなりの実力を持つ鬼人(オーガ)に襲われて吹き飛ばされて......

 その先はあんまり覚えていない。

 確か獣人の手を掴んだ事までは覚えているのだけれど......

 そうだ、獣人だ。私と一緒にいた獣人は?

 その時、部屋の扉が開いて一人の女の子が入ってくる。


「あ、お目覚めですか? 気分はどうです? どこか痛むところとかは?」

「......大丈夫」


 扉を開けて入ってきた人物は、どうやら私を看病してくれたようだ。恐らく、私は吹き飛ばされた衝撃でここ付近まで飛んできて意識を失ったんだろう。それで、この子に助けてもらったのかな。


「良かったです。もう、本当に驚きましたよ。空から人が降ってくるなんて」

「......ありがとう。助けて、くれた?」

「いえいえ、貴女の張った魔法障壁が強固だったおかげですよ。私はただベッドに運んで寝かせただけですから」


 魔法障壁? そんなもの、私は展開した覚えがない。咄嗟に防御姿勢を取るので精一杯で、魔法障壁を出すなんて余裕無かったのだ。

 今にも消えそうな魔力障壁を確認する。私を守り切ってくれた強固な障壁。既に欠片程度しか残っていないが、その魔力は確かに魔王のものだ。


「あっ、クラリスさん呼んできますね!」


 その魔王の魔力に呆けていると、クラリスと言う人物を呼びに女の子は部屋を出ていってしまった。

 クラリス? 誰だろうか。


「......お腹、空いた」


 ベッドの横に置かれているご飯に手を伸ばす。今は昼前だろうか? 朝食のようだがすっかり冷めてしまっている。しかし、起きがけの体にはちょうど良かった。置かれたご飯を黙々と食べていると、再び扉が開いた。

 先ほどの女の子が獣人を連れてきたのだ。

 獣人。あの時一緒に吹き飛ばされた獣人だ。クラリスと言うのか。覚えておこう。


「わっ、ご飯食べれるんですね! 良かったぁ」

「おはようございます。ローブの少女さん? 私の手を掴んでくれて、本当に助かりました。命の恩人です」

「......気にするな」


 もぐもぐと咀嚼をしながら、来て早々頭を下げる獣人に気にしないでいいと伝える。伝わったかどうかは獣人の反応を見れば明らかだ。

 それから、私は獣人と部屋主、ラビールと名乗っていた。ラビールから話を聞いた。


「それで、昨日の夕暮れ時に村の外にクラリスさんと貴女が落ちて来たの! 急いでベッドまで引き摺ったんだよ」


 フフン、とドヤ顔でゆっさゆっさと揺れる胸を張ってそう言った。


「そうだったのですか。この度はありがとうございました」


 クラリスは朝方には目が覚めたらしい。お互いに怪我などは無かった。

 魔王の魔法障壁の性能はこの世界の均衡を崩せるレベルだろう。あの一瞬で、ここまで強固な魔法障壁を組むなんて普通は有り得ないのだ。恐らく吹き飛ばされる事を予測して最初から魔法を組み立てていた、のかもしれない。どちらにしろ、魔王は凄いのだ。


「では、私はお店のお手伝いがあるのでまた夜にでもお話しましょ! あ、そうですそうです。なるべく外には出ないでくださいね」


 そう言ってラビールは部屋から出ていった。外には出るな? よく分からないけど、人はダメだと言われるとやりたくなってしまう生き物なのだから。仕方がない。村を見て回るとしよう。


「行きますか?」


 獣人も同じ考えのようで、私達はそっと窓から外へ出た。正面切って行くとなると必ず見つかるからだ。


 しばらく村を見て回ったのだが、村人が私達を見てコソコソと何か言っている。普通では聞こえない筈だが、私は身体強化で聴覚を強化しているので丸聞こえなのだ。獣人も恐らく聞こえているだろう。

 その聞こえた内容が、


「またラビールのお節介か?」

「いや、今度は美味そうな二人だよ」

「ククク、馬鹿な奴らだね」


 何か、おかしい。人と獣人を見て美味しそう、なんて考えが浮かぶだろうか? 初めて見た人を馬鹿と呼ぶだろうか? ......そういえば私は、元団長の第一印象は「こいつ馬鹿だろうな」だったから人のこと言えないな。

 そして一番不思議なのが、お墓の数だ。

この村の総人口は、およそ百五十人と言ったところだろう。それなのに、墓の数はそれの倍近くはある。

 村の中、外、道端にまで墓が建てられている。


「なんだか、嫌な予感がしますね......」


 獣人が耳を忙しなく動かしながらそう言う。獣の本能みたいなものだろうか? 私の魔力感知には何も反応は無い。しかし、獣人と同じく本能がこの村は危険だと警鐘を鳴らしている。


「......怪しまれないように、なるべく早くこの村を出る」

「わかりました。どこへ向かいますか?」

「......ウィルガルム」

「私達が飛ばされた方向と辺りの植物から見て、ウィルガルムが一番近い大きな街だと思います。歩いて一日ほどで着くと思います」


 飛ばされた方向までは私でも分かっていたが、辺りの植物の種類でどの地方にいるのかなんて到底分かるはずがない。しかし、この獣人はさも当たり前のように言ってのけたのだ。この獣人、いやクラリスは信用しても大丈夫かもしれない。それに見合う実力があるのだから。


 それにしても私達は運が良かったのかもしれない。ウィルガルム行きの馬車に乗って、吹き飛ばされてウィルガルム付近まで来れるなんて。ん? 待てよ、と言うことは反対方向に飛ばされた魔王達はウィルガルムより遠ざかったのか!? もし、魔王がウィルガルムに向かうのを諦めてどこか他の土地へ行こうというのなら、これでもし魔王への手がかりが無くなったりでもしたら......私は、どうすれば......


 それは後で考えるとしよう。

 今はこの村から怪しまれないように脱出することを優先しよう。


 もう少し村を探索してからラビールの所に戻ろう。バレないように、そっとね。


「......大丈夫、かな」

「まだバレてないみたいですね。念のために身代わりを置いておいて正解だったかもしれません」


 私の得意とする水魔法で、水分身を作り出して置いておいたのだ。クラリスが保険は必要だと言うので仕方なく。外に出たら否が応でも村の者の目に止まるからあんまり意味は無いと思ったのだけどね。


「......ん。とりあえず、作戦を立てよう」

「そうですね。ウィルガルムまでは側の街道を走ればすぐだと思いますよ」


 先程軽く村を見て回ったところ、村の側を街道が通っていたのだ。街道を通る人達を目当てに商売を始めると、このような村が各地に出来るのは知っている。しかし、この村は異様な雰囲気を感じるのだ。


 それから私達はラビールが来るまでの間、作戦を話し合った。作戦と呼べるほどのものではないが、一応は纏まったのだ。

 明日の朝一番で抜け出す。これが最優先事項なのだ。

 しかし、予想外の事が一つあった。


「私も一緒に寝ますー!」


 脱出作戦のため、私とクラリスが共に寝ようとしている所に、ラビールがそう言い放ったのだ。

 ここで変に追い返して疑われるのもなんなので、一緒に寝ることにしたのだ。


 三人で一つのベッドはかなり狭かった。私とラビールがいくら小さいからと言っても流石に無理があったかもしれない。

 それ以外は何事もなく夜も更けていった。

 そして、翌日の日も登る前。私とクラリスは無音と言う音を消すスキルを持っているので、ラビールを起こさないように、気付かれないように作戦を決行する。


「ラビールさんにはお礼くらいは言いたかったのですが、致し方ありませんね。では行きますか」

「......ん、行こう」


 ラビールが静かに眠っているのを確認し、私達は村の闇へと溶け込む。

 人気も無く、明かりも無いため、村の中は深淵の闇のように深い闇に覆われていた。

 私は暗視のスキルを持っているから困らないが、クラリスは目が見えないのを不自由に感じているようだが、気配感知を使って闇の中でも見えている時と同じように感じるようだ。


 それにしてもまだ日の出前だからといってこんなに暗くなるだろうか? この村は本当に謎だらけだ。

 そんな疑問もこの村を出たら忘れるんだろうなと思いつつ、音も立てずに村の中を駆け抜ける。


「っ! 止まってください。誰かいます」


 気配感知で闇の中を進んでいたクラリスがそう言うのであれば誰かいるのだろう。クラリスと私が止まった瞬間、私達の足元に何かが突き刺さる。後少しでも止まるのが遅かったら気付かずに怪我をしていただろう。

 その勢いから、明らかに殺気を感じる。私も警戒を強くする。


「......誰?」

「わかりません。ですが、私達を殺そうとしているのはわかります」

「......気を付けて」

「はい」


 最低限の会話を終わらせると同時に、会話が終わるのを待っていたかのように闇の中から無数の先ほどと同じような攻撃が飛んでくる。それらを紙一重で躱し、避けきれない分を弾き落とす。


「くっ、何者ですか!?」


 クラリスは獣人特有の身体能力と、そこに身体強化とは違うスキルを合わせて攻撃の全てを避けている。

 避けながら敵の情報を探ろうと少しずつだが、近付いていく。私には真似出来ない戦い方だ。


「クラリス・ラクーニア」

「っ!?」

「クラリスっ!」


 周囲に謎の声が響いた瞬間、クラリスがその場に倒れ伏した。無事かどうか確かめようにも、攻撃を捌くのに手一杯でクラリスに近付けない。

 クラリスに一発でも攻撃が当たれば無事では済まない、のだが、何故かクラリスへの攻撃は止んでいる。

まずは攻撃を全て捌くことを優先する。

 恐らく一撃くらいなら少しだけ残る魔王の魔法障壁が守ってくれるだろうと思ったからだ。


「安心してよ。殺したりしないからさ」


 再び響く声。それと同時に攻撃が止む。

警戒を解くことなくクラリスに近付き、目立った傷が無いことを確認する。

 そして、攻撃の飛んできた方向を見ると、一人の人物がこちらへ歩みを進めてくる。

 その人物が近付いていくるにつれ、陽も顔を覗かせる。深淵の闇のような暗さだった村に陽が差し、その人物を照らす。


「ふふっ、貴女達は運が無かったの。もうこの村からは、出られないよ?」

「......ラビール?」


 その正体は、ラビール。のようだが、彼女はまだ寝ているはずだ。それに、目の前にいる少女は私達の知るラビールとは外見が全然違うのだ。

 頭から二本の拗られた角、血よりも赤い瞳、浅黒い肌、そして、悪魔の羽と尾。


「分かってくれるなんて、嬉しいね。私はラ・ビール。純血なる悪魔を統べる長。貴女達は、私の餌となりなさい」


 ニイッと口の端を不敵に釣り上げるラビール。

 悪魔。ラビールの正体を知っている者は、この世に同族以外には存在しない。ラビールを見た者は、人であろうと魔物であろうと全て殺されるからだ。

 それが、悪魔令嬢(デビルレディー)なのだから。

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