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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第二章
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39話 脳筋


「私は死んだことになったんだっけな」


 リサーナとレヴィを里付近まで送り、私は一人で森を突き進む。会いたい人がいるもんで。


 それにしても、私はまだ生きていると言うのに失礼な事だ。でもこれで厄介事に巻き込まれなくなるって言うならいいんだけどね。


「どこにいるのかなぁ」


 時々出てくる魔物を片手間に屠りながら樹人族(エント)の張っている結界と言う物を目指す。


 のんびりとマイペースで進んでいると、何か見えない膜のようなものを通り過ぎる感じがした。


「今のは......?」


 魔力感知が反応しているので、何かの魔法と言うのはわかる。しかしそれ以上の事は何もわからない。


「特に変わったことも無いし、まぁいいか」


 これと言って自分の身に変化は無いので、さらに進もうと思った時に気付く。


「あれ? さっき通ったところ? しかも逆走?」


 マイペースに進んでいてもマッピングは忘れないのだ。そのマッピングがずっと先に続いてされている。


「通った道、だよね......という事は?」


 その場で振り向く。さっきの魔法みたいなやつが原因? と思い再び進む。


「やっぱり、これが原因か」


 目には見えない透明な膜の前で考える。魔力感知が働いているので、この透明な膜が何らかの魔法である事は確かだ。

 恐らくこれが樹人族(エント)による結界と言うやつだろう。先には辺りと同じように森が広がっていて、全く不自然には感じない。かなり高等な魔法なのだろう。

 そっと触れてみる。軽く触れただけで、魔力が波紋のように広がっていく。そのまま右手だけを入れてみると、


「うわっ、凄いなこれ」


 まるで鏡のように、左から私の右手が出てきた。

それを左手で握ると、確かに、私の右手を左手で握っている感覚がわかる。なんとも違和感がある。


「これを通れないと進めないんだよなぁ」


 そう、ここに来たのはこの結界を通り抜けるためである。入る時は問答無用に落ちてきたので結界が働く前に通り抜けれたようだが、どうやって出るのかはわからない。

 そのため、結界付近にいるだろう樹人族(エント)とかを説得して通してもらおうと考えていたのだが、


「なんの気配もしないよ......」


 さて、どうしたものか。

 正直、誰もいないから力技で抉じ開けるのも悪くは無いと思うのだ。あ、パンデミアさんに聞いてみよう。


「パンデミアさーん、出てきてー」

「な、なんだ急に......我はまだ回復出来ていないのだ......」


 空間に穴が空いてそこから顔だけを出すパンデミアさん。魔力がまだ回復していないみたいで、ぐったりしている。


「この結界、どうにかできそう?」

「む? これは......樹人族(エント)のやつか? 魔力があればこんなもの余裕で抜けれるのだがな。今の我には無理だな。お主なら抉じ開けられるのではないのか?」


 パンデミアさん使えないな。そうと決まれば即断即決! 抉じ開けまーす。


「お主、何か失礼な事を考えただろう? それにしてもその帽子、なかなか洒落ているな。我にも似合う物を探してくれ」


 なんだこの魔王(笑)は。人の空間に勝手に住み着いて、その上飯を寄越せだの、帽子を寄越せだの。挙げ句の果てにはそこまで使えないと言うね......

 私のはただのツバ付き帽子なんだけどね。


「はいはい、んじゃあ......これでいい?」

「おぉ! 素晴らしい性能だな! 感謝するぞ! 我はまたしばらく寝る事にする。飯になったら呼んでくれ」

「はいはい。おやすみなさいね」

「うむ、おやすみなのだ」


 アイテムボックスから適当に出した中折れハット。死の草原を焼き払った時の副産物で、性能は、『魔法によるダメージを軽減する』と言う物。どうやら常に魔法防御のバリアのようなものを張っているらしく、適当に選んだにしてはなかなかの上物。まぁ、喜んでくれたならいいかな。


 この結界を通り抜けるためには、恐らく落ちてきた時と同じように効果が発動前に通り抜けるか、違う魔力を流す事で魔力の乱れを起こすか。

 それくらいしか私には思いつかない。

 頭悪いとか言ったやつ出てきなさい。魔法の矢(マジックアロー)でど頭撃ち抜いてやるわ。


 ってなわけで最高速で駆け抜ける方法から試してみよう。まずは、身体強化? を施す。スキルを持っていないのでよくわかっていないのだが、レヴィのやり方と同じ感じで体内の魔力を強化したい部位に集中させる。


《条件を満たしました。身体強化を獲得します》


 お、神の声(仮)が聞こえたってことはやり方合ってたのか。スキルを覚えるとスムーズに強化が行えるようになった。正直強化しなくても十分抜けそうなのだが、念には念を入れないとね。調子乗らないって決めたもんね。


「位置について〜、よーい、ドンッ!」


 その掛け声で地面を蹴る。

 次の瞬間、先程の薄い膜を通り過ぎた感覚ではなく、普通に破り抜けた感覚がする。

 本当に一瞬、たった一歩踏み出しただけなのだが、私はいつの間にかかなり進んでいた。私の後ろには焼け焦げた地面の見える道が出来ていた。

 おかしいな? 道なんて無かったはずなんだけどな? 火魔法なんて使った記憶無いんだけどな?


「ちょっと......やりすぎた......?」


 少し反省をしながら私は新しく出来た道を戻っていくことにした。











「全く、失礼しちゃうですね! アスカはずっと生きているというのに」

「リサーナ、落ち着け......とりあえず話を合わせてくれ」


 私は今、アスカと一時別れて、レヴィと一緒に竜鱗族の里へ向かっているのです。

 なんで竜鱗族のためにアスカが死んだ事にならなきゃいけないんでしょうか。

 でも、アスカが気にしていないので私もあんまり気にしないことにします。

 そんな事を考えていますと、里の方から竜鱗族の皆さんが駆け寄って来たのです。


「レヴィ! 封印の神殿の方から凄まじい魔力を感じたのだが一体......?」

「レヴィ、お前は牢獄にいるはずじゃ!? どうやって外に!?」

「そこの連れの者! もう一人はどうした!」

「レヴィ! 魔力使いすぎたのか!? そうなるとなかなか戻れないぞ!」

「そんなことよりさっきの強大すぎる魔力だ! 何事なのだ!?」


 あぁ、もう、うるさいですね。嫌になります。


「話は後でする。まずは最長老様へ報告しに行く。牢獄を勝手に抜けたのはすまなかった。その事も承知の上、まずは、話をさせてくれ」

「う、うむ......わかった。では最長老の元へ行ってくれ」

「済まない。感謝する」


 そんなやり取りをして、最長老? とやらに会いに行くことになりました。

 クリルさんと言い、ヘイルさんと言い、なんでこうも竜鱗族は話を聞こうとしないのでしょうか? アスカのような力があったら、ねじ伏せるところです。でも、それをしないアスカの優しいところが私は大好きなのですがね。だから、私も目を瞑るのです。



「最長老様。失礼します」

「おぉ、レヴィか......入れ......」


 レヴィに案内されて最長老と言う者の所へ来たのです。見るからに弱っているシワシワのお爺様ですね。それと、周りには憎き長老衆です。レヴィと私をずっと睨んでいるのです。最長老さんの前だからでしょうか? 絡んでこないのは嬉しいですね。


「レヴィ、魔力を使い果たしのか......?」

「は、はい。竜化にて、魔力を使い果たしてしまいまして......」

「おぉ! やはり竜化を使えたか! そうなるとしばらくは元に戻らんだろう......しかし、竜化に至るほどの魔力を、レヴィが持ち合わせているとは感じなかったがな......?」

「そ、それが......」


 その後、クリルさんの話をして、空気が落ち込んでしまいました。正直、私はどうでもよかったのでほとんど聞き流していたんですけどね。

 しばらくそんな話をして、本題に入りました。


「先程の魔力......あれは、初代様のじゃな......?」

「既にお察し済みでしたか。その通りでございます」


 レヴィの敬語! これはかなり珍しいですね。全然似合っていないのです。

 私は嘘をつくのが下手だから、とアスカにもレヴィにもなるべく喋らないようにと釘を刺されたので、今回は私は喋らないようにするのです。

 ちょっと失礼だと思うのですよね。嘘の一つや二つ、私だって簡単に吐けるのです。後でアスカに私の真の力を見せてあげるのです!

 おっと、話が逸れてしまいましたね。その後も、レヴィの似合わない敬語口調とお爺様な最長老さんの話は続きました。


「そうか......初代様は逝ったか......。では、もう一つの、魔力の主は、誰なのだ?」

「あっ、それはでむぐむぐむぐむぐ」

「わ、私が里まで案内した者の一人でございます!」


 私が喋ろうとしたのを思いっきり口を塞がれたのです。うぅ、アスカの事は私が話したいのです......

 レヴィを恨めしげに睨んだら、ごめんねって言われたので許すのです。今回だけですよ?


「ほう、その者のその後は......?」

「ど、同士討ちという事に......」

「違いまむぐむぐむぐむぐー!」

「そ、そうです! 残念ながら!」


 また、塞がれたのです。ちょっと痛かったのです。


「そうか、感謝せねばならぬか......。レヴィ、その者はもう一人の者か?」

「はい、リサーナと言う者です」

「リサーナ!?」


 な、なんか、凄い視線を浴びたので私は少し下がります。怖いです。


「は、はい。リサーナと申します......」

「差し支えなければ、その帽子を取っていただけますでしょうか......?」

「え? まぁ、いいですけど......」


 この時私は失敗してしまったです。もう少し考えて行動していれば、と。

 流れで帽子取ると、私の金髪がサラリと流れます。それを見た最長老さんと長老さん達は、


「なっ......!」

「え......」

「う......え?」

「あ、あ、あ、あ......」


 レヴィは驚いて声も出ないようでした。私を見て固まってしまいました。


「「「「「こ、これまでの無礼、お許しください!!!」」」」」


 部屋にいる人達、私以外が全員揃って頭を下げてきました。レヴィまでも。


「あ、頭を上げてください。私はそんなに偉くないですし」


 と言うと、


「そ、そのような訳には......いかないのです」

「その通りでございます......」


 と言う最長老とレヴィ。それに引き換え、他の長老さん達は、


「ふ、ふん。そうか。醜女なんぞに頭を下げていられるか」

「そうだな、私は失礼するぞ」

「ちっ......」


 そう言って、長老さん三人はこの部屋から出ていってしまいました。本当にあの人達はこの里で偉いのが不思議なくらい酷い態度でした。まぁ、私はもうなんと言われようとも気にしないのでいいんですけどね。

 でも、後でアスカに頭を撫でてもらいます。これは確定事項なのです。


「あ、あの者らにはしっかりと言っておきます故、申し訳ございません......」

「リサーナ様、どうかお許しを......」


 最長老さんとレヴィは顔を上げたものの、物腰が低いですね。今まで通りに接してほしいのですが......

 と、その時、部屋奥に飾られていた緑色の宝珠が輝いたのです。


「これは......緊急事態か! ドライアド様がいらっしゃるぞ!」


 最長老さんが先程よりも力強くその声を張り上げる。

 外で待機していた竜鱗族の皆さんが、何か準備に取り掛かろうとした瞬間、緑色の宝珠から一人の緑色の女の子が飛び出してきました。その子は、飛び出してくるなり大声でこう言い放ったのです。


「大変大変!! 樹人族(エント)の結界が破られた!! 最近張り替えたばっかりなのに! もう魔力無いってぇの!!」


 まるで駄々をこねる子供のように喚き散らしていました。この子が、ドライアドさんなのでしょうか?  ドライアドって言うと高位の木精霊、と本に書いてあったのですが......


 そう言えばアスカが結界をどうにかするって言っていましたね。流石アスカなのです! 樹人族(エント)の結界を丸ごと破るなんて!


「り、リサーナ様。これって、アスカが......?」


 と、小声でレヴィが話しかけてきました。今まで通りに接してほしいのですが......


「今まで通りで大丈夫ですよ。アスカに決まっています! こんなこと出来るのはアスカだけですよ!」

「そんな埒外な......私は竜鱗族の端くれですから......。やはりアスカでしたか......」


 興奮気味な私と、少しやれやれと肩を竦めるレヴィ。

 そんな私達に、鬼気迫る表情でドライアドさんが近付いて、


「アンタ達! なんか知ってそうね!? ちょっと、付いてきなさい! 最長老、アンタもよ!」

「え、ちょっと......」

「あ、あー」

「畏まりました」


 最長老さんだけが悟ったような表情で、ドライアドさんに私とレヴィは片手ずつに引っ張られる。

 宝珠の前に来ると、ドライアドさんはよく分からない言葉のような、歌のようなのを発したと思ったら、次の瞬間には森の中にいたのです!


「うわっ、びっくりしたなぁ。あ、リサーナとレヴィじゃん。どうやってきたの?」


 あ、あれ? 私達さっきまで竜鱗族の里にいたはずじゃ......?

 そんなことより......!


「アスカぁああああ!」

「わっ、なになに、どしたの」


 ドライアドさんがアスカに何か言おうとしていたのは知りません! 今はアスカニウムを大量に摂取しないといけないのです!

 はすはす、んー、アスカいい匂いです。ちょっと森の匂いもしますけどそこら辺はどうでもいいのです。


「匂いを嗅がないの。何か、あった?」


 しばらくアスカの匂いと嗅いで復活した私は、アスカと別れてからの出来事を事細かに話しました。

 その間、最長老さんとレヴィとドライアドさんは大人しく待っていてくれました。

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