38話 後始末
なんとか気力で書き上げたです......
作中のステータス等は基本、その時の気まぐれで決めているので後々変更すると思います。
こんなもんなんだなー。と思って読んでいただけると幸いです。
「うっ、ぐす、ひぐっ、酷いですー! 怒らないって言ったじゃないですかー!」
「レヴィは、レヴィはぁ......うぅ、本当の事を言っただけなのにぃ......」
メルガス大森林最深部、封印の神殿前。
そこには、正座させられ泣き喚く女性一人と幼女一人と、 それを見下ろす一人の魔王......魔女がいた。
「はぁ、どうしてこうなった」
そう、どうしてこうなったなのだ。
目の前の、私に叱られ、正座させられ泣いている二人を見て深い溜息をつく。
ちなみに幼女の方が、レヴィである。私が叱っていると、急に体が縮んでいき、六歳くらいになってしまった。
レヴィ曰く、これは竜鱗族の特性のようなものらしい。魔力を一度に使いすぎるとこうなるらしい。レヴィが言うには、一ヶ月ほどで元に戻るとの事。私が無事ということを知って気が緩んだせいか、縮んでしまったそうな。
しかし、二人共私からお積極と言うお叱りを受けている時、なんとか繕って誤魔化していたので
「もう怒らないから、本当の事を言って?」
と、諦めて聞いてみたのだが、怒らないと言ったけれどつい、怒ってしまったのだ。
その内容と言うのが、
「アスカ、最近私に構ってくれないので、ちょっと心配させちゃおうかなって言う......ただそれだけだったのです......だから、だからぁ......これ以上怒るのはやめてくださいぃ」
うん、理由がね、可愛いの。一瞬許しちゃおうかと思ったけど、そこはやっぱりケジメつけないとダメだよね。
だからとりあえず、手加減スキルを発動させて、二人の額目掛けてデコピンをした。
「はがっ!」
「ひぅっ!」
幼女にデコピンするのは躊躇われたけど、罪悪感を殺して頑張りました。デコピンを食らってから二人は暫く額を抑えて地面を転げ回っていた。
そして、今に至る。
「本当に危ない時は、絶対、私の言う事を守る事。それ以外は自由でいいから。わかった?」
泣きながらコクコクと頷く二人。
ふう、心が辛かった。お母さんが子供を叱る時はこんな感じなのだろうか。後は精一杯愛でてやらないと。
そう思い、二人を抱き寄せる。
「アズガー! もうしないのですー!」
「ひぐっ、ゆ、許しぇ〜!」
その後はパンデミアさんが戻ってくるまで二人はずっと私に抱きついたままだった。
「何を、しておるのだ?」
「あ、おかえりパンデミアさん」
暫くすると、パンデミアさんが帰ってきた。
二人は泣き疲れたのか、私の膝を片方ずつ枕にして眠ってしまった。今回は少し悪いことをしたかな。
目が覚めたらご飯にしよう。
「我はしっかりと約束を果たしたぞ。これで、文句は無いだろう?」
やれやれと言ったように、持っていた小瓶を手渡してくる。
「これは?」
「我から溢れ出た呪いの欠片だ。それが病の原因だったのだから、それを取り除いただけだ。後は万能薬か何かで治るだろう。我は回復魔法など使えんからな」
なるほど、ちゃんと仕事はしてくれたんだね。
渡された小瓶は光魔法で薄くしてからそこら辺に捨てる。
パンデミアさんが付いてくるのに、最初から私は特に意義無しだったんで、約束はちゃんと守るもの。
「ありがとう、パンデミアさん。それじゃあ、異界から出て来る時は合図を送ってね。急に出てこられて、それが人前だったら困るし」
「ふむ、それもそうだな。あ、飯時は呼べ。我も腹が減るのでな。後はなるべく夜刻に出てくる事にするわ」
「わかったよ。そう言えば、異界では何かするつもり?」
「おお、そうであったな。まだ言ってなかったな。元の我へ戻るために色々やる事があるのでな。それの準備と言うやつよ」
あれ? 元には戻れないとか言ってなかったっけ?
「元に戻れるの?」
「うむ、異界では我の思う通りに出来るからな。そこで、力を付けるだけだな。尤も、アスカの創り出した異界でしか出来ない事なのだがな」
「え、そうなの?」
パンデミアさんも空間魔法使えるから、それで異界を創り出してやればいいんじゃないかなとか思ってしまった。
「我はそんな高等技術使えぬわ。そもそも空間魔法とは魔法の中でも群を抜いて難しい魔法。過去の四大魔王の中でも完璧に使える者はいなかったな。転移をほぼノータイムで使える、くらいだったからな」
「へぇ、そうなんだ」
まぁ、空間を操作するなんてそんな簡単に出来る方が大変だと思う。私にとってはなんの苦労も無いんだけどね。
「へぇって......。アスカよ、異界なんて創り出せるのはこの世でお主だけであろう。空間魔法は秘匿の多い魔法。大国が転移魔法陣を何十年もかけて完成させるほどに難しいのだぞ?」
「うーん、そんなに凄いなら、なるべく隠しておかないとだね」
「アスカ......お主は事の重大さをわかっておるのか? 空間魔法を完璧に扱える者がいる、と言うことはどこの国も喉から手が出るほどに欲しい人材なのだ。人目につく場所では使わない方が良いだろう」
「わ、わかったよ。ご飯は街外とかで食べればいいのかな? あ、異界で食べればいいのかな」
「ふむふむ、それが出来るのであればそうしてもらいたいな。して、アスカよ。お主、次はどこへ行くか決めておるのか?」
「決めてあるよ。ウィルガルムに行こうと思ってる」
神聖帝国ウィルガルムは、リサーナの要望だ。
「ウィルガルムか。ちょうど良いな。お主はその埒外な力を知ることから始める方が良いだろう。幸い、ウィルガルムには学校と言うものがあるそうで、そこで学ぶのが良いだろう」
「へー、学校。そんな物まであるんだ。面白そうだね」
確かに、この世界の魔法の常識とかは知っておきたい。
今回の空間魔法みたいに、まだ知らない魔法がありそうだし、勉強するのも悪くは無いかな。
のびのび、異世界スクールライフ! ってね。
そんなことを考えながら一人興奮していると、
「ん、んん......あ、アスカ、おはようです」
「リサーナ、おはよう」
「レヴィは、レヴィはまだ眠いのだが、お腹が空いたので起きるのだ」
「レヴィも、おはよう」
いつの間にか朝になっていたようだ。リサーナとレヴィは寝惚け眼を擦りながら挨拶を済ます。
その時、パンデミアさんにも、
「魔王さん帰ってたんですね。おはようです」
「魔王、おはよう」
「うむ、よく眠れたか? 我を怖がらんとは、アスカの仲間......? は強いのだな」
パンデミアさんも良き笑顔で答える。見た感じ厳つい風貌のパンデミアさんだが、かなり良い人なのかもしれない。
「仲間じゃないよ。友達。大事な友達だよ。多分、パンデミアさんはもう怖くないんだと思うよ」
「そうなのか? 寝惚けているだけでは?」
「もう起きてますー! 魔王さんは怖くないですよ。もし、何か仕出かすようなら、アスカがどうにでもしてくれるのです。だから、何も怖い事なんて無いんです」
「そうだな。アスカがいれば魔王も怖くないな」
魔法で水を出して、布を渡して顔を洗わせる。洗い終わってから私達の会話に入り込でくる。
「ハッハッハ! アスカよ、信頼されておるのだな。この我をもってしても、お主の力の底が見えんのは凄まじい事よ」
「はいはい、褒めても何も出ませんよ」
「アスカは誰にも負けないのです!」
「レヴィより強いのだ! 負けるわけがない!」
うんうん、二人共、それを言うならちゃんと前に出て言っておくれ。
リサーナとレヴィは私の背中にピッタリくっ付いている。やっぱり怖いものは怖いんだろうな。
後、さっきから気になっているのだけれど、レヴィの口調で幼女が話しているのがとても面白い。
「それじゃあ、さっさとご飯にしようね」
「はーい!」「準備はまかせろ!」「我も手伝おう」
今日もメニューは変わらずコカトリスさん。
パンデミアさんには一匹丸々上げて、もう一匹を私達三人で分け合う。
ご飯を食べている時、ふと気になったのでパンデミアさんのステータスを覗かせてもらった。
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パンデミア 性別不詳 年齢不詳
魔王
レベル75
HP26000/26000
MP14300/14300
STR19120
VIT9560
《スキル》
火魔法Lv.5、空間魔法Lv.2、破滅魔法Lv.7、全属性耐性、状態異常耐性、呪い、眷属支配、魔力感知、魔力操作、身体強化Lv.9、縮地、覇気、威圧
《称号》
魔王、魔王っぽい奴、呪いの権化、支配者、気さくな良い奴
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それなりに強い様子。でも、本人が言うには、本当のパンデミアさんはもっと強いらしい。真なる魔王のパンデミアさんはレベル90を超える、との事。
まぁ、それはどうでもいいので置いておこう。これ以上魔王とかに関わられるのは嫌だからね。
絶対、嫌だからね。
「そう言えば、レヴィってかなりレベル高いけどどうやって上げたの?」
食後のお茶を嗜んでいる時に聞いた。
実際は、レヴィが食事で口元を盛大に汚したので、拭ってやってる時にだ。
「レヴィはヘイルとクリルと一緒にこの森の魔物を狩り尽くしたのだ。そしたら、こんなにレベルが上がったのだ」
「なるほど......だからこの森に来てからそんなに魔物に会わなかったのか」
他の竜鱗族は基本的に20前半くらいらしい。
レヴィ、強すぎだろう......
さて、この後は後始末になるんだけど......
「どうしようかな......」
「どうするって、何か問題でもあるのですか?」
「うーん、山積み、かなぁ」
まず一つ目は、竜鱗族に対しての誤魔化し。
急に伝染病が治るようになったので、どう誤魔化していいのか......
「原因を倒したら呪いが弱まった、とかでいいのではないのか?」
「え、パンデミアさん倒されたってことでいいの?」
それは願ったり叶ったりだ。パンデミアさんは死んだことにしよう、そうしよう。
二つ目は、あの謎の人物に関して。
あの少年みたいなヤツは、私が魔王に殺される事を疑っていなかった。だから、私も死んだように見せかけなければいけないのだ。
「一つ目と合わせて、同士討ち、と言うことか」
「そうなるね。でも、どうやってそう見せかけるかがねぇ」
「簡単な事だろう? 我とお主の魔力をぶつけて爆発をさせて、如何にも激しい戦闘で同士討ちした事にすればいい」
なるほど。パンデミアさんって結構頭良いかも。
悪巧みとか好きそうだよなぁ。
「そうと決まれば早速始めようかな。リサーナ、レヴィ、下がってて」
「はい〜」「はいっ!」
パンデミアさんと封印の神殿を挟んで立つ。
「折角だし、ここを吹き飛ばそうよ」
「ハッハッハ! 粋な計らいだな! 良かろう。では、行くぞ!」
二人同時に特大の魔法を発動させる。私は詠唱省略しているので、パンデミアさんの発動を待つ。
「「火炎爆砕」」
打ち合わせしたかのように同じ火魔法を放つ。
まぁ、実際は私がパンデミアさんの魔力の流れを読み取って同じ魔法にしたんだけどね。
火炎爆砕はコスパの悪い魔法だ。広範囲に火種を撒き散らし、それを次々に爆発させる。莫大な魔力を使用する割には、そこまで火力が出せない。
でも、それは私基準で見るとそうなのだ。
本当は、火炎爆砕は集団詠唱魔法で、一人で使う魔法では無いのだ。戦争の時などに用いられる魔法。集団で使う場合には魔力消費は少なく、絶対的な火力を望めるのだが、一人で使うとなると......まぁ、お察しの通り、反対側で肩で息をしているパンデミアさんを見ればわかる。
「なんっ、で、そんな、涼しい顔を、して、いられ、るのだ......」
あちこちで爆裂音が耳を劈く中、消え入りそうな声だがしっかりと私の耳は聞き取る。
消費魔力半減してるからね。それに半減してなくても私のMP量なら半分も使わない。
空間魔法の方が大変な気がするな。
火炎爆砕により、封印の神殿跡地と化した更地。周囲の木々を爆砕し、焼き払い、鬱蒼と茂っていたはずの土地を天の光が届くまで綺麗にした。
「ほら、異界に入ってー」
魔力の使いすぎで動けなくなっているパンデミアさんを掴みあげて異界に放り込む。
これで、私とパンデミアさんは死んだことになった。
うん、ピンピンしてるけどね。
「もう、これで終わりですかね?」
「やはり素晴らしいのだ。竜鱗族の方へは私が話しておこう」
焼き焦げた跡地を見て素晴らしいなどと申すレヴィ。変わっているな。
ひとまずの問題は終わったから、後は竜鱗族へ話してさっさとウィルガルムに向かう事にしよう。
「あ、そう言えばさ、レヴィはこれからどうするの? ここまでしたんだから、もう追放とかは無いでしょ?」
レヴィは一応、竜鱗族の中では罪人扱い。しかし、今回の伝染病を治すのに一役買っているのだ。
でも、そこら辺はレヴィと竜鱗族に任せることにしよう。私とリサーナが首を突っ込んでいいもんじゃないよね。
「あの堅物の長老共が、どう出るかなんてわかっているようなもの。私の道は私が決める」
「おぉ......それはそれでいいんだけどね。とりあえず報告に戻ろうか。リサーナも、付いて行ってね。私は死んだことになってるからさ」
「はい! 私に任せてください!」
小さくなったレヴィの力強い覚悟が何なのか、私にはまだわからないけど、その決意した感じなら、もうどうするか決めているのだろう。
幼女verのレヴィも、かなり可愛いので、そんな可愛い顔でかっこいいことを言うと、ギャップ萌えと言うものがあるのだよ。
そんなこんなで、リサーナとレヴィは竜鱗族の里へ、私は少しやる事があるのでそちらへ行くことにした。




