37話 魔王 パンデミア
12000PVありがとうございます!
本当に嬉しいです! これからも最強魔女さんを宜しくお願いします。
「我の名はパンデミア。魔王なるぞ」
魔王。その名に相応しいほどの存在感。
見る者全てを恐怖に震え上がらせる威圧感。
その魔王が、低く腹に響く声で名乗る。
これが、本物の魔王......
その姿は竜鱗族と似ているが、邪悪である。
竜鱗は全ての光を飲み込まんとするほどの闇色、とでも言おうか。
その体躯は、私よりも二回り大きい。
「我の復活の贄は、汝か」
周囲を軽く見回した後、私の方へ近付いてくる。
怖すぎる。私がこの世界に来てから三度目の恐怖。
一度目はシュバルとか言うどっかのクソ神様が間違えて転生させた死の草原で、頭のおかしい強さを持つ魔物達に殺されかけた時。
二度目はリサーナを失いそうになった時。
そして、三度目。
「あ、あの!」
「なんだ? 我は腹が減っている。早く話せ」
恐怖と緊張のせいで声が裏返ったけど声が出せた。
魔王パンデミアさんはお腹空いてるみたいだけど少しはお話聞いてくれるのかな?
「伝染病で、苦しんでいる人達がいるの。貴方のその溢れ出る魔力が原因だから、やめてもらってもいい?」
「む? そうか、それは済まなかったな。だが、そればかりはどうしようもないのだ。我は復活したばかりでな。力の制御など出来んのだ」
え、嘘でしょ? この人結構いい人かもしれない?
もっと、「そんな事知らねぇよ。勝手に死んでろ」とでも言うかと思った。無論、そんな事言ったら今すぐここから逃げ出して竜鱗族を移動させようかと思っていたんだけどな。
話が通じるのなら、少し聞いてみたいことがあった。
「話はそれだけか? では、いただくとしよう」
少し考え事をしていると、パンデミアさんがその大きな手を、私を掴もうと伸ばす。
「ちょちょちょ、ちょっと待って! まだ聞きたいことはあるから!」
「む? ならば早く話せ。我慢の限界は近いぞ?」
「じゃ、じゃあ代わりにこっちを食べますか?」
そう言って、アイテムボックスからコカトリスの肉を大量に取り出す。
私の横にコカトリスの肉の山があっという間に出来上がる。
「空間収納か? なかなかの手練れではないか。それに、これは......コカトリスか! ハッハッハ、良いぞ! 良いぞ小娘よ!」
パンデミアさんが笑うだけで空気が震える。
どうやらお気に召したみたいで良かった。コカトリスの肉、超万能説あるなこれ。
「それは良かった。貴方が、魔王になった経緯について聞かせてもらっても?」
「そんな事か? コカトリスの肉なんて物を差し出すから、もっと他に願いを叶えろとか言われるのかと思ったんだがな」
パンデミアさんがコカトリスの肉に齧り付きながら話す。物凄いペースでコカトリスの肉が減っていく。
「我が魔王になった経緯、だったか? そんなもの無いわ」
「いいえ、貴方は竜鱗族の初代族長ですよね? 勇者の従者として活躍した貴方が、魔王になるなど考えられないのだけれど」
伝承が確かならば、魔王パンデミアは竜鱗族の初代族長だろう。呪いを受け、その呪いが魔王の因子として成長したなども考えられるが、いくら考えても分からないので実際に聞いてみることにしたのだ。
「ふん、それもそうか。我は竜鱗族初代族長であったのだな。だがそれも昔。今は魔王パンデミアとして生きておる」
「初代族長さんじゃ、無いってこと?」
「うむ、そうだぞ。おい、味が単調で飽きた。何か他のものは無いのか?」
「え? あぁ、はい」
なんだか図々しくなっている気がするけど、今はパンデミアさんに聞きたいことはあるのだから、もう少し機嫌を取っておかないと。
コカトリスはただ焼いただけだし、山ほどあった量を半分ほどまで食べる頃には飽きてくるのも当然だろう。そこで、私は秘伝のアイテムを取り出す。
「これを、付けてみて?」
「なんだ、これは? ふむ、匂いは悪くないな」
アルテナ商会で買い物をした時に一緒に購入したタレのような物。そこまで美味しくなかったので使うのは遠慮していたけど、味に飽きたらこれでも出しておけばいいだろうと思い与えてみた。
「うーん? 美味では......無い。が、クセになる味だな! 汝、面白いヤツだな!」
タレを付けた肉を頬張りながら豪快に笑う。
気のせいだろうか? 神殿から出てきた時よりも溢れ出ている魔力が、ドス黒い色から普通の黒になった気がする。
同じ黒だから見た感じは分からないけど、魔力感知がそう教えてくれる。
「もう話は終わりか? なんでも聞くが良いぞ」
「え、あぁ、えっと、今の貴方がパンデミアさんなら、初代族長さんは死んだってこと?」
「そうであろうな。と言うか、呪いをかけた後すぐに死んだぞ?」
「え? いつ? 封印されてから......だよね?」
「うむ、そうだな。我が目覚めたと言うことは体の持ち主が死んだと言う事だからな」
「じゃあ、貴方は誰なの?」
「何度も言わせるな。我は魔王パンデミアなるぞ」
んー? 呪いが魔王になったって言うこと? だめだ、全然分からない。
うーん、と頭を捻っていると、パンデミアさんが、
「なるほど、汝の聞きたいことが分かったぞ。我が何者か、と言う事だろう? 勉強が足りんぞ小娘よ」
小娘じゃないやい。
それよりも、何者かってさっきからずっと聞いてたいたのだけれど、今まで伝わってなかったってこと? どちらかと言うとパンデミアさんの方が......
「魔王大戦の最後の生き残り、勇者への呪いを強めたのも、聖女と竜鱗族へ呪いをかけたのも、他でもない。我であるからな!!」
バーン! と胸筋がこんもりしている固そうな胸を張る。
と言うことは、魔王大戦時の四人の魔王のうちの一人が、パンデミアさんだったってことか!
「でも、パンデミアさんの能力って魔王っぽくないね。どちらかと言うとセコい......?」
不治の伝染病を撒き散らすと言う点であればかなり凶悪なのだけれど、魔王と言ったらやっぱり破壊の権化みたいな能力だと思うんだよね。
「失礼なヤツだな。そもそもパンデミアは我のペットの名前だ。呪いにして竜鱗族に与えたのがパンデミアなのだ」
「それじゃあ、今は魔王のペットの魔王ってこと?」
「なんか分かりにくいが、要はそう言う事だな。本当の我は指先一つで国を破壊できるわ」
はいはい、それは恐ろしいですね。
でも、今の魔王パンデミアなら殺せる、かな? 怖くてステータス見たくないんだよなぁ。
あれ? でも、本当のパンデミアさん? なら、もっと強いわけだし、これから戻るのかな。
「本当の貴方に戻ればいいんじゃないの? そうすれば、魔王としてちゃんとできるんじゃない?」
「それは、無理だな。今、我はパンデミアとしてこの体に魂を入れている。本当の我の魂が見つかれば、それを回収しに行って元の我になれるのだが、本当の我の魂は既にこの世に無いだろう。それに、此度の世には既に四人の魔王がいる。邪魔をするのは悪いと言うものだろう? 我は何もする気は無い。腹も膨れたから、暫くはのんびりと過ごすことにするわ」
あれれ? 危害を加える気がない? それじゃあ、さっきの悪役っぽい感じはどうして出していたの......
「あぁ、あれか? あれは、やっぱり魔王なら魔王っぽくしたいじゃん? ちょっとビビったじゃろ?」
ウザい......。
もういるだけで危険な存在だし、殺してもいいかな? かな?
「あぁ、確か伝染病で苦しんでいる人達がいると言っていたな?」
「え? あ、うん、竜鱗族の人達」
「あー、我の呪い、ちゃんと働いているんだな。我、凄い! だが、正直人を殺すのはもう飽きたわ。だから、竜鱗族の伝染病にかかっているヤツらを治すくらいの事ならしてやるぞ?」
あ、まじで? パンデミアさんめちゃくちゃいい人じゃない? 殺そうとか思っちゃってごめんなさいだわ。それに、もう溢れ出る魔力で呪いにかかることも無さそう。お腹いっぱいになったのか、魔力の質が上昇してかなり濃い魔力ってだけになった。瘴気を発することは無い。
「それじゃあ、お願いしようかな。結構めんどくさい案件だったから助かるわ」
「ハッハッハ! ズバリと言うものだな。そうだ、汝の名を聞いていなかったぞ。名を何と申す?」
「アスカ。アスカ・ニシミヤよ」
「アスカか! 良き名だ。汝の傍にいれば退屈しなさそうだな」
んん? 何か不吉な言葉が聞こえたぞ?
「え......? 今、なんて?」
「ん? その若さで難聴か? 気苦労しているのだな。なーに、人間界に少し興味が湧いたのでな。アスカよ、お主に付いて行く事に決めたわ!」
は......?? 少し、頭の処理能力が追いつかない。
「なんでそうなるの!?」
「何故って、退屈しなさそうだからだ。我は寿命など無いからな。長い時を生きると、刺激が欲しくなるのだ。アスカからは面白い魔力を感じる。今までに見た事も感じた事も無いくらい強く、しっかりとした魔力だ。汝の傍なら、退屈せんだろう?」
このパンデミアさんの目......刺激とか言ってるけど、どうせ強いやつと戦いたいとかそう言う脳筋な考えなんだろう......。
「ふむ、嫌なのか? ならば交渉と行こうか。我が竜鱗族を治してやるから、我を連れて行け。断ったら今すぐにでも呪いを強くして竜鱗族を殺すぞ?」
あー、あー、はい。交渉とか言っときながら私が断れない方法取りやがりましたね。
パンデミアさんを殺せば竜鱗族も死なないのだろうけど、それはパンデミアさんが呪いを強くする前に瞬殺しなければならない。そんな事無理だ。こんなヤツでも立派魔王並の力を持っているのは確か。それを瞬殺なんて、私でも無理だ。十秒以内に殺せたとしても、パンデミアさんなら恐らく三秒で竜鱗族を殺せるだろう。
なんとか断るための言い訳を考えなければ......
「くっ、私が断れない方法を取ったね......。でもでも、別に、連れて行くのが嫌とかそう言うんじゃなくて、その、目立つんだよね。ほら、体大きいじゃん? それに、魔力も溢れ出てるし。そんなのすぐにさっきのヤツが来てバレちゃうってば」
さっきの謎の人物を言い訳に使う! 詐称スキルもほとんど働いていない......。
「さっきのヤツ? 誰だ、そんなヤツいたのか?」
「へ? 封印を解いた人だよ? パンデミアさんの知り合いかと思ってたんだけど。めちゃくちゃ強そうだったね」
「特徴は?」
クリルを連れ去って行ったやつだ。
なんとか思い出してみる......
「ん? 特徴ね......えっと、身長は私より小さかったかな。それで、声は少年みたいな、子供の声だった」
「それだけでは分からんぞ......」
「あ、後はクレイモアみたいな両手剣を片手で軽々振るってたよ」
「クレイモア......片手......軽々と......まさか!」
知ってる人かな? それにしては顔が青ざめている。
「知ってる人? 危ないヤツ?」
「アスカよ、其奴とは戦ってはならんぞ。其奴を敵に回すという事は、世界最強の魔王と敵対する事を意味する。それ即ち死だ」
「う、うん。わかった」
鬼気迫る表情で忠告してくるので、一応肝に銘じておく。
「話は逸れたけど、パンデミアさんを連れていくとなると大きくて目立つんだけど?」
「うっ、し、仕方ないだろう。この体はそういう者なのだから」
明後日の方向を向いてむくれたように言う。
全然似合わないな......
「そ、そうだ! アスカの空間魔法で、異界を作ってくれればいいだろう!?」
「いやいや、私、空間魔法なんて使えないし」
「いや、だって空間収納......」
「アイテムボックス。違い分からないけど、貴方ならわかるでしょ?」
そう言ってアイテムボックスを開いて見せると、パンデミアさんは徐にアイテムボックスに首を突っ込む。
「ほおほお、凄いなこれは......空間収納であるが、空間収納ではない。魔力の流れを感じないと言うことは魔法では無いのだろう。これ一体、何なのだ?」
「私もわからないよ」
「わからんのに使っておるのか。危険なものだったらどうするのだ。まぁ、いい。我が一方的にアスカの魔力を借りるぞ?」
「何やるの?」
私の質問を無視して、何かの魔法を組み立てていく。
私にはよく分からないので凄いのかどうか分からない。
「これから、アスカの魔力の一部を使って空間魔法を使う。この魔法は大量の魔力を使うからやりたくなかったのだがな......何としてでも付いて言ってやるからな!」
執念のようなものを感じる......そう言って、パンデミアさんは複数の魔法を行使していく。
と、その時、私の後ろから声がかかる。
「アスカー! 大丈夫なんですかー!」
「アスカ! 怪我はないか!?」
リサーナとレヴィだ。次の瞬間、魔法を組んでいたパンデミアさんが目を見開き一瞬で地を駆りリサーナとレヴィの元へ向かう。危ない!!
私もパンデミアさんを追いかける。
「きゃっ!」
「ひっ、な、何者......!?」
パンデミアさんの強烈な一撃。それを片手で受け止める。
「むっ、何故止める?」
「私の連れなの。手を出すって言うんなら......殺すぞ?」
精一杯の怒気を乗せて、殺気を飛ばす。
パンデミアさんは一筋の冷や汗を流している。
「す、すまないな。不審なヤツらかと思ってな。もう何もする気は無い。無いから、その、威圧を解いてくれ......」
「そう、それならいいの」
フッと落ち着く。自分でも予想以上に怒っていた。
やっぱり、リサーナを傷付けるやつは許さん。
「ハッハッハ、やはりアスカよ、汝は面白い」
「褒めても何も出ないよ?」
そんなやり取りをする私達の後ろで、リサーナとレヴィは涙目で腰を抜かしていた。
「あ、アスカ、その人は......?」
「な、な、な、なんで......初代様......!?」
「二人共、落ち着いて。別に悪い人じゃないからさ」
そう言って、パンデミアさんの事を一から説明をした。
パンデミアさんは元、竜鱗族の初代族長。初代族長に呪いをかけた本当のパンデミアさんは既に死んでいて、今のパンデミアさんは本当のパンデミアさんのペットのパンデミアさん。
うん、我ながら説明していて頭がこんがらがったよ。
「なるほど......悪い人じゃなければ、いいです」
「初代族長が......なるほど。では、竜鱗族を救ってくれると?」
「うむ、そうだな。アスカ次第なのだがな」
「私はもう......別にいいよー」
リサーナとレヴィは私の背中にピッタリくっ付いて離れようとしない。余程怖かったのだろう。
「では、アスカよ、魔力を借りるぞ」
そう言ってパンデミアさんは魔法を発動させる。何やら魔力をごっそり持っていかれた感じがする。確認してみると、三割ほど減っていた。
「むっ! アスカの魔力の量......底が見えんな。今の我では発動は無理かと思っていたが、かなり余裕で出来そうだ!」
何やら喜んでいるようで良かった。私には何をしているか全く分からないのだけれどね。
次の瞬間、久しぶりのあの声が聞こえた。
《条件を満たしました。空間魔法を獲得します》
お、おぉ、凄い! どうやら、私の方からも強制的に空間魔法を発動させたようで、空間に巨大な穴が空いていく。
「成功だな。アスカの魔法センスは凄いな......」
「これで? どうするの?」
「よくぞ聞いてくれた。この異界は我の世界! と言うことで、いつでもアスカの元へ出て行けるようになったのだ。基本的にずっと異界にいれば問題は無いのだろう? そう言う約束だろう?」
「え、本当に付いてくるの......?」
「嘘だと思っていたのか!? ここまでしたというのに......」
「いや、魔王って言うくらいだからさ、俺より強いヤツと戦わせろー、とか、女! 金! 酒! とかそのためかと思ったんだけど......ただ付いてくるのだけなの?」
「アスカの中の魔王像、これまた酷いですね......」
「これは魔王に同情してしまうな......」
そこの二人、聞こえてるよ。
「アスカの傍なら退屈しない。そう思ったから付いて行くだけだ。なーに、心配せんでも何も邪魔せんよ。夜になったら出て行くから、その時は構ってくれ」
構えって......寂しがり屋なのね......
「はいはい、分かりましたよ。それじゃあ、そう言う約束ね。異界に入る前に、竜鱗族のみんなを治してね」
「承った。一晩もあれば気付かれずに終わらせられるだろう」
そう言って、パンデミアさんは闇に溶けるように消えていった。
里の方に向かったのかな。明日の朝、軽く様子を見てみよう。ちゃんと、やる事やってなかったら置いていくことにしよう、そうしよう。
「本当に、信用してもいいのか?」
レヴィさんが震える声でそう聞いてくる。
「さぁね。私も信用した理由じゃないしね。でも、何もする気は無いって行ってたし、もし何かする気ならその時は私が全ての責任を負うよ」
それくらいの責任は取れる。まぁ、あんな気さくな人でも魔王だからね。簡単に納得出来ないのもわかる。
リサーナはと言うと、
「私は気にしませんよ? アスカと一緒なら誰であろうと気にしないのです」
なんも頼もしい限りだ。頼もしいと言うか、なんと言うか......
あ、そうだ。待っていてとお願いしたのに勝手に来たことを怒らなければ。
「なんで勝手に来ちゃったの?」
なるべく優しく問いかける。別に、怒ったりなんてしてないんだよ? と言外に意味を持たせる。
「ひぃ! お、怒ってますか......? 怒ってますよね!? え、えーと、そのですね......」
パンデミアさんに襲われかけた時よりも表情が引き攣っている。
「それに関しては私が悪かったのだ」
おや、レヴィさんからの助け舟。
「どういうこと?」
「アスカが私達を安全な場所に置いていって、幾ら時間が経っても戻ってこない上に、なんの戦闘音も聞こえてこないのが不思議に思ってな。その旨をリサーナに話したら、『それは心配ですね! アスカに会いに、じゃなかった。アスカを助けに行きましょう!』と言って、現れたら謎の大男と話し込んでいるアスカが見えて近寄ろうとしたら、この有様なのだ」
......。
リサーナ、助け舟なんかじゃなかったな。レヴィは完全に自分は罪から逃れようとして、全部リサーナのせいにしようとしているのが丸わかりである。
それにしても、レヴィの声真似がかなりそっくりで凄いなと思ってしまったのは仕方ないだろう。
こういう時はどうすればいいのだろうか......
誰かを叱るなんて経験、ほとんど無いもんだから困った困った。
「わ、私は、悪くないですよ! アスカが......そう、アスカが悪いんです! いつになっても帰ってこないで......ソワソワしてる所にレヴィがなんか言うから! だから、悪いのはレヴィとアスカなのですよ! まったくもう」
「なっ、リサーナ! それはズルいだろう!? それに、私はアスカに怒られるかもしれないって言ったら、リサーナが『心配かける方が悪いんです! 全く、アスカは私がいないとダメですね』なんて言ったじゃないか! わ、私は......何も、何も......」
レヴィの反論を聞いてリサーナに視線を向けると、明後日の方向に顔を思いっきり背けて、冷や汗を垂らしているのがわかる。
やれやれ......
「どっちが悪いとか聞いてないよ? まぁ、私もね、危なくないから心配しないで、とか言いに戻ればよかったのかもしれない」
私の言葉にうんうん、と力強く頷く二人。
「でも、それとこれとは話は別。もし、私があの時止めに入らなかったら、パンデミアさんは手加減無かったと思うよ? もし、私が既にパンデミアさんに負けていて、私がいなかったら、二人はどうなっていたかね......私のお仕置きよりも酷い事になっていたかもしれないよ?」
私の言葉に最悪のパターンをわかったのか、みるみるうちに表情が青くなっていく二人。
「ご、ごめんなさいです......! で、でも、結果的に無事だったから......次からはちゃんと言うこと守るですからぁ......」
「ゆ、許して......レヴィだって、わかってたもん......だから、お仕置きだけは......」
「レヴィ、大丈夫ですよ。アスカはこんなにかわいそうな二人をお仕置きするような鬼ではないのです。顔を上げてアスカに懇願するので......す?」
この時の私の表情は、さながら悪魔のような笑みだっただろう。
「だーめ。私に心配をかけた罰は大きいよ? ちゃんと平等にお仕置きは受けてもらうからね?」
「え......」
「う......」
私を見て固まった二人。
「に、逃げ......」
「やーだー!」
逃げ出そうとしたところを首根っこを掴んで逃がさない。
「私からは、逃げられないよ?」
「や、ちょ、アスカ、おち、おち落ち着いて!」
「レヴィは、レヴィは悪くないのにー!」
その夜、メルガス大森林の深部に響くその悲鳴を聞いた者はいない。私達三人以外はね。




