36話 レヴィの実力
久しぶりの戦闘パートです!書いてて楽しいんですけど、短くなってしまいますね......
評価&ブクマありがとうございます!本当に励みになるです!
「はぁぁあ!」
開始と同時にクリルは大きく踏み込みレヴィの懐へ入る。そこから強化された身体能力で鋭く剣を振るう。
縦に、横に、斜めに、下からなど、赤い光を纏った剣が軌跡を描いてレヴィに迫る。が、レヴィには一撃も擦る事なく剣は空を切り裂く。レヴィは全ての攻撃を流れるような動きで躱し続ける。
「どうしたクリル、強くなってその程度か? 次はこちらから行かせてもらうぞ!」
クリルが、自身の攻撃が全く当たらないことに驚愕し、ほんの一瞬だけ攻撃を止めた。その一瞬を狙ってレヴィが攻勢に出る。
「ふんっ!」
たった一撃の蹴り。目にも留まらぬ速さで繰り出された蹴りは、クリルの強化された動体視力を持ってしても見えないほどの速さだろう。後ろへ蹴り飛ばされている時に、自分は蹴られた事に気付くほどの一撃。
「レ、レヴィさんすごいです......! アスカと同じくらい強いです!」
「驚いたね。アルマよりも強いや」
二人が戦っているのを木に登り、上から見物している。高みの見物だ。
ふと、気になってレヴィとクリルのステータスを鑑定でチラ見させてもらった。
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レヴィ・ドラグエル 女性 26歳
竜鱗族
レベル46
HP1610/1610
MP315/400
STR1700(上昇中3400)
VIT2080(上昇中4160)
《スキル》
竜鱗Lv.7、竜力Lv.5、竜化Lv.1、立体機動Lv.8、魔力感知
《称号》
覇者、泣き虫
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クリル・ドラグエル 男性 26歳
魔族
レベル49
HP2406/3100
MP670/705
STR2430
VIT2900
《スキル》
竜鱗Lv.―、氷結魔法Lv.1、闇魔法Lv.3、魔刃Lv.2、立体機動Lv.6、剣術Lv.7、魔力感知、魔力操作、麻痺耐性
《称号》
裏切り者、堕ちた者
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レヴィの竜力と言うスキル、レベル五でステータス二倍とか言うかなりのチート性能......。でも発動に魔力を必要としているからか、常時発動は厳しいみたい。攻撃をしたあの一瞬だけ、レヴィの魔力が脚に集中したのを感じた。それ以外はいつもと変わりないのが何よりの証拠。
しかし、称号欄の覇者の隣に、泣き虫なんてあってとてもシュール。あの勇ましいレヴィが泣き虫なんて......あ、最初会った時は泣いていたね。
対してクリルの方だが、魔族化したせいかレベルがかなり高くなっていて、ステータスの数値もそれなりに高い。スキル欄の竜鱗と言う文字が灰色に潰れている。しかし、スキル欄に残っていると言うことは、魔族から竜鱗族に戻る事が出来るって事かな?
クリルはまだ魔族になったばかりで、大して強くは無いと思う。倒すなら今のうちだ。だが、クリルは魔法も使える分有利なのだ。
レヴィの一撃であそこまで減っているのでもしかしたらこのままゴリ押しで倒せるかもしれないが、望みは薄いだろう。クリルも次からは本気になるだろうし。
後で聞いたことだが、竜鱗族は一族で皆、ラストネームが同じだそうだ。なんとも仲の良いことですこと。
レベルの近いアルマとここまでステータスの差が開いているのは、種族による力の差だそうだ。人間である私がどうして竜鱗族より強いのかは知らない。
私だって知らないんだもの。
そんな事を考えていると、倒れた木々の間をかき分けてクリルが立ち上がる。傷だらけに見えるがどれも浅い擦り傷のようなものばかりだ。
「油断したか......。次は本気でかかってやるよ」
手に持った剣が先程よりも大きな赤い光を纏う。それだけでリーチが倍にも伸びた。
クリルは、それを徐に振りかぶり......
「喰らえぇ!」
勢いよく振り下ろす。レヴィとクリルの間はかなり離れている。もちろん、いくらリーチが伸びたは言え、届くはずもなかった。
ただ、リーチが伸びただけであれば。
「っ!?」
クリルが振り下ろすと同時に赤い光が物凄い勢いでレヴィへ飛んでいく。
「魔刃を、飛ばしたのか......」
よく見ると魔刃のスキルレベルが一上がっている。追加技能の様なものだろうか。
それにしても、魔刃スキルかっこいいなぁ! 私も使ってみたい。厨二臭いとか言わない! かっこいい物はかっこいいのだ!
レヴィは向かってくる魔刃を躱す。驚愕し、しばし戸惑ってしまい体勢を崩しながらも躱したが、避けた先には既にクリルの剣が首元を狙っていた。
魔刃は囮。避ける事を知ってか、魔刃の影に潜んでいたのだ。
体勢を崩したレヴィでは、クリルの振るう、赤い軌跡を残す程の剣速を避ける事は無理だ。
つまり、取れる行動は一つだけ、
「終わりだっ!」
「くぅっ!」
即座に防御姿勢を取ることが出来たのは、レヴィの身体能力の高さ故だろう。
しかし、首元へ迫っていたはずの剣先は、レヴィが防御姿勢を取った瞬間に軌道が逸れ、竜鱗の無い部位を切り付けた。
クリルの剣術の高さは目を見張るものがある。
「ちっ、耐えたか。だが次で終わりだ」
冷めた目付きでレヴィを見下ろす。レヴィはと言うと、
「ふん、少し舐めすぎだろう。私はまだ、倒れていないぞ?」
そう言っているが、片膝をついている状態だ。かなり劣勢を強いられている。
「抜かせ。俺の剣には麻痺蛾の鱗粉と体液を混ぜた物を塗ってある。既にその体は碌に動かないだろう?」
「くっ......」
クリル、なかなかに策士じゃないか。一撃でも当たれば勝ち、と言うわけか。レヴィはなんとか立ち上がろうとしているが、生まれたての子鹿の如く震えている。麻痺による障害だろう。
「無理をすると二度と動けなくなるぞ? いや、これから二度と動けなくなるのだから変わらんか。最期は魔法で片付けてやるよ」
そう言って、魔法を組み立て始める。レヴィは立ち上がるので精一杯の様子で、悠々と魔法を組み立てるクリルを強く睨んでいる。
「ククク、無様だなレヴィよ。一足先に待っているがいい、他の者共も直に迎わせてやるからな」
おや? レヴィが瞑目を始めた。何か手を見つけたのか。
「終わりだっ! 死ね、レヴィ! 氷結刃!!」
クリルの周囲に氷の刃が浮かび上がる。その数十六。クリルの背後で突然木々が燃えだしたのは氷結魔法とやらの弊害だろうか。結構使いにくそうな魔法だな。
ステータスを見るとMPが残り10になっていた。それがクリルの出せる最大なのだろう。
それらが一気に、レヴィを串刺しにせんと襲い来る。
次の瞬間、大地が爆ぜた。
「アスカぁぁぁ〜」
爆風からリサーナを庇いながらその原因、レヴィを見る。
そこには、真っ黒に焦げた地面の上に立つレヴィの姿があった。その姿は、先程とは変わって、竜。体全体を竜鱗で覆った様な姿だった。
「そ、その姿は......? 何故だ、何故お前がっ!」
クリルは物凄く焦った表情でレヴィに問いかける。
「言っただろう。力とは自身の努力と長い年月によって磨かれる、と」
「意味がっ、わからねぇ! ソレは初代族長の......」
どうやらレヴィは過去最強の竜鱗族と同じステージに立っているようだ。
「これは『竜化』。竜鱗族の持つ真なる力だ。まだほとんど使いこなす事は出来ないがな」
身体全身をレヴィの竜鱗、漆黒色の竜鱗が覆っている。顔は覆う事が出来ないのか、顎元までしか鱗が付いてない。しかし、黒く妖しく輝く鱗に覆われ、手と脚に、宛らドラゴンの様に逞しく、鋭い爪が生えている。
この竜化、かなりのMPを消費するため、使い勝手は悪そうだがとても強力だ。今回はクリルの放った魔法からMPを吸収する事が出来たので、レヴィ自身のMPは半分ほどしか減っていない。
飛んできた魔法から魔力を吸い取るだなんてこれも竜化の効果なのかな?
それだけ見ると、レヴィの全MPを使ったとしても竜化は出来ないだろう。
竜化の時の反動により、軽い魔力爆発を起こしてしまったが、どうやら初めて成功したようだ。
レヴィ自身も少し驚いている。
「クリル、もう終わりだ」
「く、来るな......! 来るなぁァ!!」
竜力を使用している時よりも速い動きでクリルを殴る。殴られた反動で後ろへ飛んでいく所を背後に周り、さらに殴る。
鳴ってはいけない音が森に響く。既にクリルは瀕死になり、気を失っている。
「クリルよ、安らかに眠れ。破滅の吐息」
レヴィが両手を前に翳し、そう唱えると、黒と銀の光を放つ玉が出現する。
次の瞬間、一筋の黒き光線が地面に気を失い横たわるクリルを襲う。
凄まじい音と衝撃と共に、クリルのいた場所に巨大なクレーターが出来上がる。
土埃の中、レヴィは竜化が解けて仰向けに倒れる。
「レヴィ!」
「レヴィさん!」
私とアスカが駆け寄ると、私達に気付いたレヴィは笑顔で右手の拳を掲げる。
「ちょっと疲れたな......はぁ、はぁ。クリルは、死んだか」
肩で息をしながらそう聞いてくる。跡形もなく吹き飛んだ、と目の前のクレーターを見れば分かるだろう。
しかし、クリルのマーキングが消えていない事に気付く。
その位置は......頭上だ!
頭上に即席のバリアを張る。そこへ、気を失っているクリルを横脇に抱えた謎の人物がクレイモアの様な両手剣を、軽々と片手で振り下ろしてくる。
ガキィン!
そんな音がして攻撃を防ぐ。
「おっと、まさか防がれるとはね。かなり固いバリアだこと。いつから魔法を練っていた? 気付いた様子は無かったけどな。一番手強い竜鱗族が戦闘不能になったから楽々倒せると思ったのになー。残念」
仮面を付けていて素顔はわからないが、声は少年のような子供の声だ。
「誰?」
「知りたい? 知りたいよねぇ。でも残念。知る事は許されないよ。これからは一方的な殺戮が始まるんだからさ。でも、この子はなかなかに有望だよ。だから、貰っていくねー」
なんともおちゃらけた態度だが、かなりの実力の持ち主だ。あの破滅の吐息は私でも直撃したら怪我するだろう。それをギリギリでクリルを救出するほどの実力......。恐らく、レヴィより強いだろう。
「アスカ......」
「あれ? あれれれれ? 醜女王女様? なんでこんな所に?? ......もしかしてメルガスに出た魔王って、君?」
リサーナが背中へ隠れようとした所、謎の人物に気付かれた。竜鱗族の里では何も広まっていなかったようで、誰も気付かなかったが、コイツは違う。
「そうだよ。って言ったらどうする?」
ここは慎重に。レヴィとリサーナを庇ってコイツの相手は出来なくは無いけどめんどくさい。
「たかがメルガスの軍勢相手に逃げる事しか出来なかった雑魚が。魔王を自称するってのはそれ相応の覚悟あってのものだろ?」
突然、人が変わったように口調が変わる。溢れ出る魔力が今までのヤツらとは違う。凄く嫌な感じだ。
「と、言いたい所だけどー。僕としては今回は見逃してあげてもいいかなーって思っていたりして」
「いいの?」
うん? 案外イイヤツなのかもしれない。
「魔王を倒せたらねぇ? 僕はお使い頼まれただけだから。この子は貰っていくよー。また会えたらいいねぇ」
封印の神殿を指さして魔王と言った。
それだけ言うと、クリルを担いで飛んで行ってしまった。
「な、なんだったんでしょう? それに、魔王って?」
「クリルを、逃がしたか......」
「何か、嫌な予感がするよ......」
そう思った瞬間、地面が揺れる。
ゴゴゴゴ、と音が鳴り封印の神殿が開いていく。
「まさか、アイツが最後の封印を解いたのか......!?」
レヴィの表情が驚愕に変わる。
封印の神殿が開いたのと同じくして、ドス黒い瘴気が溢れる。見ているだけで気持ちが悪くなるようだ。
「うっ......! ゲホッ、ゲホッ!」
「な、なんですか、これっ! く、苦しい......!」
レヴィとリサーナがそれぞれ苦しみ始めた。これは......伝染病!?
即座に二人に完治をかける。その後に、虹衣で状態異常から守る。
私は特に異常が無いので二人を後方へ引かせた後、再び神殿の前へ戻る。リサーナが駄々を捏ねたので、「嫌いになるよ?」って言ったら大人しくしてくれた。その時のリサーナの顔はとても罪悪感に苛まれるので、次からは本当に緊急時以外使わないことにしよう。
神殿に戻ると、奥から誰かが歩いてくる音が聞こえる。近付いてくる度に周囲の瘴気が濃くなる。
「我の名はパンデミア。魔王なるぞ」
我こそが魔王。と理解させられる立ち振る舞い、雰囲気、オーラ。
竜鱗族の姿をしているが、溢れ出る魔力はドス黒い物。
神殿から出てきた者......それは、魔王だった。




