3話 サービスサービスぅ!
「やぁ、また会えたね明日香さん?」
ここは私が転生する時に訪れた転生の間と言う空間だ。
「シュバル......ってことは私はまた死んだってことかな」
また死んだことに気付かないまま死んだって言うのはなんとも不甲斐ない感じだ。
せっかく最強の魔法使えるかもしれない能力を貰ったって言うのにね。
「うーん、本当は死ぬとこだったんだけどね〜、まずは謝らせてくれないかな?」
「謝る? 何に......って、あぁ! 私を貧乳にして送り付けたこと!? 謝りなさいよ!」
「貧乳......? な、なんのこと? 別に胸が小さいことは動きやすいしいい事じゃないの? それに謝りたいことはそんな事じゃないし」
そんな事......だと!?
ぐふぅ、1人で盛り上がって1人で落ち込んでいる姿はなんとも虚しくなる
「謝りたいことって?」
「いや、あの〜、言い難い事なんだけどね。転生させる位置間違えて送っちゃったんだよね、許して♪」
テヘペロと効果音が鳴りそうなくらいあざとく舌をペロッと出して謝るシュバルに一瞬何を言われたのわからずにフリーズする。
「え?」
「だってー、あんな呪いみたいな声で叫ばれたらビビっちゃってさ、間違えて何人たりとも踏み入れることの無い死の草原に送っちゃったんだもん」
は? 死の草原?
こいつは何を言っているんだ。
「まーた、失礼なこと考えちゃってー! まぁ、今回は僕に非があるからね、仕方ないね」
「いやいやいやいや、え? 私もう死んじゃったけどこれからどうするの?」
そうなのだ。
1度死んで転生して、数時間足らずでまた死ぬと言う偉業(?)を成し遂げた私だ。
「あー、その事は心配しなくていいよ。まだ死んでないし。それに、また同じ所に戻すくらいなら出来るから」
ん? また同じところ? 戻すくらいなら?
「もしかしてまたあそこに戻れって言うんじゃないでしょうね......?」
「うん? そうだけど?」
オウ、マイ、ガッ!
膝から崩れ落ちる。
またあのモンスターばかりの所に戻されるなんて考えたくもない。
また、あの死ぬ痛みを感じなければいけないだなんてそれこそ拷問でしかない。
「心配しなくても大丈夫だよー? 今回はちゃんと教えること教えてあげるから」
教えてくれる......!
「じゃ、じゃあ魔法の使い方を」
「簡単さ。イメージをして、詠唱を唱える。それだけでスキルレベルに応じた魔法を選べるからね、頑張って!」
「イメージして、詠唱を唱え......詠唱って何?」
イメージはできる。だが詠唱って何を唱えればいいのかさっぱりわからん。
「うーん、説明してる時間も無いからなー。今回はごめんなさいってことでスキルをプレゼントしちゃおう!」
太っ腹!
「で、どんなスキルなの? あの魔物の群れから逃げれるスキル? 逃避とか? 瞬間移動とか?」
「その名も! "詠唱省略" と "破滅魔法" !」
んん??
詠唱省略はフレーズからなんとなく分かるぞ。詠唱を省略するんだろうね。
でもさ、破滅魔法ってなに? 最早属性関係なくなってきてない!? アイツらを破滅させろってか?
「面白い反応ありがと〜! そうだね、詠唱省略は文字通り詠唱を省略するよ。無詠唱でどんな魔法もノータイムで即座に放てちゃう! まさに最強の魔女っぽい! 破滅魔法はね......使う時は気を付けてね」
え? いやいや、破滅魔法の説明は無いんですかね? 詠唱省略はなんとなくわかってたので破滅魔法ってどんな魔法を使えるのか教えてくれたりしてくれないんですかね!?
そんな事を思ったのだが、
「ごめんね〜、もう時間になりそう! 暫くしたらまた会えるさ。その時にでも教えてあげるよ。ただ、使う時は本当に考えて使ってね!」
前回同様真っ白な空間に大きな扉が浮かび上がる。
シュバルが合図をするとゴゴゴと開いていき再び吸い込まれる。
「ちょ! また!? 戻されてもあの攻撃にゃ耐えられないっての〜!」
「そこら辺は少し守ってあげるから! 大丈夫だと思うよ〜! あ、容姿確認したらちゃんと反応してね〜!」
そう言うと吸い込まれた。
あ、また容姿のこと聞くの忘れたわ。
胸のことは許したわけじゃないからな......!
異世界のことはまぁ、自分で情報集めろとかそんな感じだろうか?
次に目に入ってきたのは私に迫る龍のブレス。
「え? 初っ端から詰みですか?」
そんなことを思って咄嗟にガードしようと両腕をクロスさせる。
その時気付いた。無くなったはずの右腕がある。
あ、右脚もちゃんとある!
次の瞬間全ての命を刈り取る死のブレスが私に当たる
と思ったのだが私の目の前に張られた光の障壁によって全て弾かれる。
「これも、サービスって言うのかな......」
砲弾がシェルターにぶつかった時の音など比較にならないほどの耳を劈くような音を立てて障壁とブレスが拮抗する。
しかし障壁は圧倒的な固さでヒビ1つ入らない。
暫くするとブレスが止み、無傷の私を見て驚いたような声と、苛立っているような鳴き声が次々とあがる。
「もー! どうしろって言うのよ! シュバル、絶対恨むんだからね! でもありがとうね!」
早速プレゼントされた詠唱省略を発動させて魔法をイメージする。
とにかく今は、最強の、全てを消し去る魔法をイメージする。
頭の中に様々な魔法の候補が上がるが、どれも周りを破壊する程度だ。
まだだ、もっと、もっと強く!
その時、1つの魔法を見つける。
「見つけた!」
無詠唱でも発動できる魔法だが、なんとなく名前とかを少しでも呟きたかった。何も言わないと魔法唱えた感じがしないのだ。
「天を、地を、全てを焦がせ! 地獄の業火!」