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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第二章
38/108

34話 もしかして、巻き込まれ体質?

評価&ブクマありがとうございます!


今回は切るところがなかなか無くて長くなっちゃいました......



「レヴィから離れろ、化け物め!」


 クリルさんが自分の味方、ヘイルさんや他の竜鱗族が集まってきた事で、自分が優位に立っている気になり、そんな事を言ってきた。


「化け物......か。でも、残念ながら私はどこにでもいる魔女さんなの。そんな不名誉な名前はいらないの」


 少し怒気を言葉に乗せながら話す。

 化け物と言う言葉に、先ほどまでテンションの高かったリサーナが、見るも無残にしょげていく。

 リサーナの元気を奪う奴は許さないよ。


「ヘイル、クリル。アスカ様は敵ではない。伝染病を治してくれるそうなのだ」

「はんっ! この伝染病は魔女如きに治せるものでは無いわ! レヴィ、これ以上我々の邪魔をするというのなら、お前を反逆者として追放しなければならなくなるぞ?」


 レヴィさんが頑張って説得をしてくれている間に、私はリサーナを元気づけないと。

 クリルさんが一丁前に語っているみたいだけど知ったことではない。放っておけば竜鱗族が滅ぶのは目に見えているからね。


「うぅ......アスカ、私は、私はぁ......」


 完全にトラウマスイッチ入っちゃってる。

 リサーナを泣かした罪、クリルさんにはしっかりと償ってもらわないとね。


「リサーナ、こんな有象無象の言う事なんて聞いちゃダメ。リサーナは、人間でしょう? それに、私はどんなリサーナでも気にしないって言ったでしょ?」


 私の言葉に、リサーナは強く頷き涙を拭う。


「っ! は、はい! そうですね、私は何者であってもアスカが愛してくれるなら何も気にする事は無いですよね!」


 そう言って、私の胸に飛び込んでくる。何かおかしな事を口走ったような気がするが、今ここで突っ込むのは無粋だろうか? 注意した方がいいのだろうか......


 それはそれとして、私に抱きついてニヤニヤしているリサーナの頭を軽く撫でてあげる。レヴィさんがクリルさんとヘイルさんを説得しながらも、こちらを見て羨ましそうに見ていたのは気のせいだろう。


「はぁ、この先どうしようかな......」

「アスカと一緒にいると楽しい事にたくさん巻き込まれますよね!」


 リサーナが顔を上げて、太陽にも負けない眩しい笑顔でそんな事を言う。

 楽しい事、ね。ほとんどトラブルに巻き込まれてばかりなのだけどね......。リサーナが楽しそうだからいいかな。


 と、その時。


「ただいま戻りました! 万能薬、買えましたよ!」


 急に門が開いたと思ったら、一人の竜鱗族が小袋を掲げそう言い放った。


 レヴィさんと口論を交わしていたヘイルさんが急に立ち上がり、小袋を持った男へ近寄る。


「こ、これで、妹と母さんは助かるのか!?」

「きっと、きっと助かりますよ!」

「そうか......帰ってきて早々で悪いが、医療所へ行ってくれ」

「もちろんですよ! ヘイルさんも一緒に!」


 そう言って二人は里の方へ歩いていく。ヘイルさんの目の端に輝くものがあった。妹さんとお母様が伝染病にかかっているのか。これで助かるなら私達はもう、このめんどくさい立場からドロンする事ができるかな。

 そう思い、付いていこうとすると、ヘイルさんと入れ替わるようにして三人の年老いた竜鱗族が出てきた。


「動くな! お客人とレヴィ、三人には牢獄に入ってもらうぞ」

「なっ、長老!? それはどう言う......」

「何度も言わせるな。ヘイルとクリルに大怪我を負わせたのはそこの二人と聞いた。そのような者を安易に里に入れたレヴィ、お前も同罪だ」

「さ、再考を求めるっ! アスカ様は我々を......」

「黙れ! 痴れ者が! 竜鱗族の恥晒しよ。牢獄にて頭を冷やすがいい。貴様は竜鱗族を滅ぼすつもりなのか!」


 怒鳴られ、一般の兵士のような竜鱗族が私達を連れて行く。

 なんかレヴィさんが可哀想になってきたよ。

 リサーナは私といられればどこでも良さそうで、特に気に病んだ事は無さそう。変なところが強くなっていくリサーナ......。どうなっちゃうんだろう。




 私達三人は、竜鱗族の長老達の家の下。地下に造られた牢獄にまとめて放り込まれた。


「アスカ様、私の軽率な行動でこの様な事態に巻き込んでしまい、本当に申し訳ない......」


 レヴィさんが牢獄に入るなり、いきなり謝罪をしてきた。初めて会った時とは打って変わって、悔しそうに下唇を噛みながら自分を責めているようだ。


「気にしないで。私達はレヴィさんの事なんて責めてないからさ。それに、こんな牢獄すぐにでも抜けれるよ」


 この牢獄は、竜鱗族の力を持ってしても破ることが出来ない造りになっている。滅多に使われることが無いらしいが、万が一のために造ったそう。

 なんの素材で出来ているのかなんて知らないが、壁や床をぶち抜くくらいなら余裕で出来そうだ。

通気口は外に続いてるみたいだし、そこをこじ開けるのでも良さそう。


 でもやっぱり、気付かれないように抜け出すのがいいよね。そんな事は朝飯前だし。


「あ、アスカ様......」


 なんかレヴィさんが崇拝でもしそうなくらいに目をキラキラさせて私を見ている。私はそんな優れた人間じゃないよ! 何故か心に直接ダメージが入った気がする。

 そんな事を思っていたら、レヴィさんが真面目な表情に変わって、懇願するように土下座をしてきた。


「私は、恐らくこのままでは竜鱗族の里を追放されるだろう。だが、伝染病で同族が滅ぶのを遠方で待つ事など出来ない......。せめて伝染病を鎮めてからこの里を出ることにしたいのだ。だから、それまで力を貸してくれないか、いや、貸してください......!」


 熱心に頭を下げるレヴィさん。ここまで付いてきて切り捨てるほど私は鬼にはなれない。死なば諸共、一蓮托生、リサーナも文句は無さそう。


「もちろん、私達は私達のやることをやるだけ。その途中に竜鱗族を救う事も、あるかもしれないね」

「アスカ、その台詞はあんまりかっこよくないです」

「うぐっ!」


 結構頑張って考えたんだけど、リサーナに思いっきり切り捨てられた。悔しい......。


「ほ、本当に、ありが、とう......このご恩は、絶対に、忘れないっ......!」


 レヴィさんは顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながらそう言った。


「感謝の言葉と涙は、全部終わってから貰いますよ。それと、お礼はこの森を出るために案内してくれるとかだと嬉しいですね」

「確実に私達に利益が出る約束......アスカ、恐ろしい子っ!」


 そのネタ、なんで知ってるんだリサーナ。


「お安い御用だ! アスカ様のため、竜鱗族のため、此度の原因を突き止めるっ!」


 ずっと放置してたけど、さっき民衆の前で言われて結構恥ずかしかったから、そろそろ訂正させないとな。


「その、アスカ"様"って言うのはやめて欲しいかな。まだしばらく一緒みたいだし、普通にリサーナと同じようにアスカって呼んで」

「わかった。ならば私のこともレヴィと呼んでくれ」

「うん、よろしくね、レヴィ」


 私とレヴィは握手を交わす。


「アスカ! 私とはギュってしてください!」

「はいはい、寂しがり屋なお姫様ですねー」

「んふふー!」


 そんな風に、牢獄の中でもいつも通りにしていたら、レヴィが聞いてきた。


「その、アスカとリサーナは、やっぱり、そう言う関係なのか......?」


 やたらモジモジして聞いてくる。そう言う関係?

 レヴィの中だと、確かリサーナが私のお姫様って事になっているのかな?


「それは「そうですよ!」かな」


 「違う」と言ったのだが、リサーナの声に掻き消された。

 リサーナはドヤ顔でしてやったり! と言いたそうに胸を張っている。可愛いから許したい。

 レヴィの方はと言うと、


「はわわわわわ! や、やっぱり、そうなんですか......! 恋愛は、人それぞれだと思いますし、いいと、思いますよ? その......ええと、その......」


 顔を真っ赤にして何やら訳の分からないことを言っている。


 そこでだ! 私は声を大にして言いたい!



 私は、ノンケだあああああああ!!





 ふぅ。

 気を取り直して、私達は狭い牢獄の中で向き合って話をする。


「いつでもこの牢獄からは抜け出す事出来るけど、それをやるのは今じゃない。まずは作戦でも立てようか」

「では、現状の整理から行うとしよう」


 そう言って私達は、現状の整理、これからどうするかを決めた。


 まずはあの万能薬で、伝染病の症状を治せたかどうかを確かめないとね。そう言えば伝染病の症状とか聞いてなかったと思い、聞いてみると、


「伝染病の症状? 人それぞれで症状が変わるのだ......感染方法もわからない。分かることは、体の弱い者からかかっている、と言うことくらいしか......」


 と、その時、不意に通気口から声が聞こえた。


「――おい、聞いたか。あの万能薬を使っても効果が無かったそうだぞ。これは本当に危ないかもしれないな――」


「万能薬が効かなかった!? い、今のは本当なのか!? ど、どうすれば......」


 通気口にしがみつき、声の聞こえた方へ叫ぶレヴィ。もちろん、返事が返った来るはずも無かった。

 でも、これで伝染病の正体がわかった気がする。


「やっぱり効かないか」

「アスカは何かわかったのですか?」

「うん、多分この伝染病の正体は、動物性の毒だと思うね。毒性を持つ多種多様な魔物達が原因か、一つの毒で様々な症状を起こす新種の毒か......私は後者だと考えるけどね」

「何者かが我々を殺すために撒いた毒......?」

「恐らくそう考えるのが妥当だと思う。もし、伝承の通りなら封印の神殿が怪しいと思う」


 数日前、何者かが封印の神殿の封印を解いた、と聞いた。もし、伝承が本当の事だったならば、呪いが関係し、その呪いが溢れ出た可能性がある。


「レヴィは、封印の神殿に何があるのか知ってる?」

「すまない......竜鱗族の中で、封印の神殿に封印されているモノを知るのは長老の中でも最長老の呼ばれるお方ただ一人なのだ。ちなみに、長老達は全部で五人、先ほど私達の元へ現れたのは、まだ年若い成り立ての長老なのだ。最長老様は既に動くことが出来ないほど衰弱しているが、伝染病にはかかっていなかった」


 ふむ、その最長老とやらに会いに行くのも悪くないけど、ヘイルさんの様子を見ると、竜鱗族の中で一番重症なのがヘイルさんの身内なんだと思う。

 万能薬を一番に飲まされるくらいにね。

 考え事をしていると、リサーナが私を呼んだ。


「アスカ、動物性の毒って事は封印の神殿に封印されているのは生きているのですか?」

「これまでの憶測が正しいとしたら、きっと中で生きていると思う......って、あれ?」


 ちょっと待ってね。

 伝承の中では、竜鱗族の初代族長が呪いを封印するために、自分ごと封印したって言ってたよね?

 それじゃあ、封印の神殿で封印されているのは......


「初代族長が封印されている......? レヴィ、竜鱗族の寿命っていくつくらいかな」

「竜鱗族の寿命は、平均だと百五十年くらいだな」


 はー、すごいや。戦闘民族なのにそれだけ長生きするって事は、本当に竜鱗族の強さがわかる。


 魔王大戦が終結したのが、三百年前。

 封印と言う物がイマイチよくわからないけど、仮死状態になるとしたら今もまだ生きている......?

 コールドスリープと言うやつか。


「初代族長は、封印の神殿の中で生きていると思う。でも、こうして呪いによって伝染病が撒かれていると言う事実からして、初代族長は恐らく、呪いにより自我を失っている可能性がある......」

「生きているのかどうかはどうでもいいのです。その初代族長さんに、伝染病を治す方法を教えてもらう事は可能なのですか?」


 一番の問題がそれだ。

 魔王の呪い。その強さは見なくてもわかる。封印の神殿が解き放たれる前段階の状態でも、死を振りまくほどなのだから。


「呪いとか、破滅魔法とかをもう少し調べておけばよかったかなあ......」


 後悔先に立たず。

 そもそもメルガスでの滞在期間が短すぎたのがいけない。私はもっとゆっくりしたいんだ。親子丼作成が一番の目標! そしてリサーナと落ち着いた場所でまったり過ごす! 私が何をしたって言うんだ......なんでこんなにトラブル続きなのさ......


 はっ! いけないいけない。思考が完全に逸れてしまった。


「無理だと思う。最悪の場合は私がどうにかする。でも、今回はそれで終われるかどうかはわからないよ」

「その時はアスカに全て任せてしまう事になってしまうのを、どうか許して欲しい。しかし、他にも問題があると?」

「うん、一番深刻な問題。レヴィはわからない? リサーナなら、わかるでしょ?」


 レヴィが疑問を投げかけた時から、リサーナの、私わかってますよ! 言わせてください! と言う視線が痛かったため、リサーナに話題を振る。


「一番の問題は、封印の神殿を再度封印する事、ですよね!」


 世間一般に見れば無い胸を、私から見れば有る胸を張ってそう答える。

 うん、惜しいよ。惜しいけど、違うんだよね。それは二番目。


「一番の問題は、今回の犯人を捕まえること、だよ」

「うっ! し、知ってましたよ! アスカに譲ってあげたんです!」

「んー、はいはい、ありがとうねー」


 少し拗ねてしまいそうだったので頭を撫で撫でする。それだけで機嫌を取り戻してくれるリサーナは、チョロ......いい子なのだ。


「封印の神殿の封印を解いた人物! しかし、どうやってそれを見つけるのだ?」



「簡単だよ。それはね......」


 前世の知識が光る! 眼鏡をかけた見た目は子供、頭脳は大人な名探偵君も言っていた気がする。


「犯人は現場に戻る! だよ!」

「そうなんですか?」

「そうなのか?」


 ネタが、通じない......! でも、これは本当の事。


「封印の神殿の中で初代族長が生きているとしたら、封印が解かれた時点で外に出てきているはずでしょ? でも、出てきていない。恐らく封印の神殿は幾重にも封印を重ねていると思うんだ。だから、犯人は再び封印を解きに、神殿へ向かうと思う。そこを......」

「取っ捕まえるんですね!!」


 リサーナの口調が段々お姫様らしく無くなってきた気がする。まあ、元々もお姫様らしかったかと言われると、らしくなかったんだけどね。

 私としてはらしくない方が接しやすくて好きだけど。


「なるほど! でも、いつ戻るかわからないではないか?」

「ん? わかるよ? 魔法あるし」

「い、いつの間に!?」


 実はこの里に入った時点で魔法の目を飛ばして里全体を確認した。そして、怪しいヤツにマーキングを付けて泳がせていた。


「丁度いいね、犯人は長老達三人がこちらに来ている最も警備の手薄な今を狙って、神殿に向かったみたい。私達も行こうか」


 既に外は夜。里は森の中とは違い、拓けていて、空には美しく輝く幾千幾万の星達。

 マーキングした人物はかなり慎重に進んでいる。

 私からは筒抜けなんだけどね。


「準備はいい?」

「私は、いつでも大丈夫ですよ!」

「私も行けるぞ」


 いい返事だ。


「それじゃ、レッツラゴー!!」


 土魔法で壁に穴を開け、そこを突き進む。

 レヴィは驚いていたけどすぐに静かに付いてきた。土魔法って錬成みたいな事も出来るみたい。かなり有能かもしれない。


 そんなこんなで、私達は誰にも気付かれずに地上へ出ることが出来た。


「さぁさ、次は封印の神殿目指してレッツラゴー!」


 なんだか楽しくなってきたぞ。嫌なことでも楽しいと感じれば楽しくなるもの、かな!?

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