30話 竜鱗族
お待たせしました!
新キャラ登場です!
ブクマ&評価ありがとうございます。
「あの鬼人......次会ったら殺す......」
「私、あの人嫌いです......!」
私達は今深い森の中を彷徨っていた。
ベヒモスの粉砕による爆発の衝撃で吹き飛ばされた私とリサーナは、どこかわからない森へ落ちた。
リサーナをおんぶする形で森をかき分けて進む。
「すいませんアスカ。私も歩きますよ」
「気にしなくていいよ、悪いのは全部あの鬼人だから」
本当にあの鬼人は次会ったら殺す。
人に見えるけどあれは魔物だし、一切躊躇うことなく殺せるだろう。正直あれが人だとしても問答無用で殺す。
なんか名前あった気がするけど、覚えてないからいいよね。
リサーナをおんぶしている一番の理由は、この森が暗いこと。こんな暗い中で歩いて行くと、リサーナは一人でどこかへ迷子になりそうだからだ。
それを言うとリサーナは怒りそうだから、ちょうどいい建前にあの鬼人を使う。
「クラリスさん達は、ご無事でしょうか......」
「今はまだ無事みたいだよ」
私達と反対方向へ吹き飛ばされたクラリスとローブの少女。
魔力障壁が残っている限り、大体の位置はわかる。それこそ、死んでしまう程の攻撃を受ければ魔力障壁は壊れるだろう。
でもまぁ、大体どこら辺に居るかしか分からないし、助けに行くつもりも無いから放置で良さそうかな。
「二人の心配もいいけど、私達も早く開けたところに行きたいね」
そんなことを言ってみたら、
「あ、アスカ! ちょうど前に開けた場所がありますよ!」
「本当ね。行きましょうか」
開けた場所、それは......
辺りの木々が倒され、小さなクレーターのようなものまで出来ている場所だった。
それはどこかで見た事がある場所。そう、そこは......
「私達が落ちてきたところ、だね」
「アスカ? もしかして私達迷子ですか?」
迷子
まいご
マイゴ
MA・I・GO
リサーナのその一言に、私は膝をつき項垂れる。
『遭難』
「リサーナ、私達、迷ったっぽい」
「えーー!!!」
暗く、静かな森に響き渡るリサーナの悲鳴。
リサーナは、私達を覗く三つの影に気付くことは無いだろう。
私は気付いたけどね!!
「おい、あの二人、空から降ってきたぞ」
「そうだな、伝承の通りなら......」
「伝承なんて眉唾物だぞ? あんなの信じているのはヘイルくらいだろう?」
我らは竜鱗族。竜の鱗を持つもの。
そして我の名はヘイル。竜鱗族を束ねる者......に、なる予定だ。
「何を言うか。長老達からのお達しだろう。此度の厄災、救えるのは天の使いのみだという事だ」
「はっ! あんな小さい女が天の使いとでもヘイルは言うのか? 俺は自分より強いヤツにしか助けられたくねぇぜ」
「クリル、それは強がりだぞ。だがその言い分もわかる。竜鱗族は最も強く、気高き戦闘種族だ。自分達より弱い者に助けられるのは私も気に食わない。それにだ、今回の流行病は古来よりの病気だし、治す手段はあるさ」
我らは今、此度の厄災、流行病の流行を治す手段を探しに竜鱗族の長達から命じられ探しに来ている。その途中、遠方にて強大な魔力爆発を感じ、その直後に樹人族達の結界を打ち破ってこの森に何かが落ちてきたのを確認したので此処へ向かった所、人が二名落ちていたのだ。
クリルとレヴィは我の古くからの友だ。
クリルは少々過激な発言が多いが、面倒見のいい男だ。竜鱗族の里で、我と一位二位を争う実力の持ち主だ。
レヴィは男勝りな性格だが、誰よりも女性らしい。強く、優しいレヴィに、我は心惹かれている。この事は秘密だが。
「あの片方は、かなりの実力の持ち主だね? だが、連れの方は何も感じないぞ?」
「まぁ、そう急ぐなレヴィ。アイツらがこのまま何も出来ないようなら放っておくぞ」
「何を言うか、彼女らは天の使い。我らの里にお招きしなければならないだろう」
「ヘイル! 焦るのはわかるが眉唾物の伝承なんかに頼るな! お前だって本当はあんなの嘘だとわかっているだろう! 少しは自分達の力でどうにかしようとは思わないのか!」
「なっ......!」
レヴィがヘイルの胸元を掴み上げ、鋭い剣幕でそう言い放った。
「落ち着けってレヴィ。ヘイルはただ、家族を救いたいだけだろ......」
「す、すまない、ヘイル......少し頭を冷やして来るよ......」
そう言ってレヴィは一人、森の奥へ消えていく。
「ヘイル、レヴィだってわかっているんだ。あんまり悪く思わないでくれよ」
「クリル......我だって、わかっている......わかっているんだ......我だって......自分でどうにかしたかった......」
と、その時、そんな我らに声をかける者がいた。
「あのー、すみませんけど、森の外ってどうやったら行けますかね?」
「「っ!?」」
なんか話し声の聞こえる方に来てみたら、三つの人影があったから近寄ろうと思ったんだけど、急に喧嘩みたいになっちゃうし、一人はどっか行っちゃうしでもうね......
だが、私には相手側がどんなに沈んだ空気をしていようと、この状況を打破できるのならば使うしかないのだ!
「あのー、すみませんけど、森の外ってどうやったら行けますかね?」
「「っ!?」」
うわっ、なんかすごい驚かれちゃった。この人達、人間じゃないのかな?
体の至る所に鱗みたいなものがついている。
鱗族とかかな?
リサーナ置いてきちゃったけど連れてくればよかった。
「な、なんで......!」
「天の使い様......!」
天の使い? 真面目そうな方がよく分からない事を言ってきた。
その隣で、驚きつつも腰に差してある武器を構えようとしているガラの悪そうな方。
「あぁ、戦う気は無いよ。ちょっと迷子になっちゃってね。ウィルガルムってどっちかな?」
「おかしなヤツめ! ウィルガルムなんてずっと南だろう! それに迷子だと? 空から降ってきたのは知っている! 何の目的で俺達、竜鱗族へ近寄るつもりだ! 奴隷狩りか? たった二人で何が出来ると言うのだ!」
「お、落ち着けクリル。相手に敵意は無いぞ」
「黙れヘイル! この俺らが気付くことも出来ないほどに隠密行動に慣れている相手だぞ、気を抜いたら殺される」
そう言うと、クリルと呼ばれた男が腰の剣を抜く。片刃の剣だ。
それにしても、物騒なこと言いますね。
私はこう見えてもまだ人を殺した事は無いんだぞ。少し失礼じゃないかな。
「戦う気は無いし、奴隷狩りでも無いよ。信じておくれ。ウィルガルムへ行く途中、変な輩に絡まれちゃって、吹き飛ばされたんだよね」
「吹き飛ばっ......! アハハハハハ! 巫山戯たことを抜かすヤツだ! だがこれでわかったぞ。樹人族達の結界を抜けてこの森へ入れたのはただの偶然。コイツと連れのヤツは天の使いなんかでは無いぞ。ヘイル! 分かったなら殺るぞ!」
「そうか......そうだな。後でレヴィに謝らねばならないな」
「へっ、最初からそうしてくれや。行くぞ!」
あれれれれー? どうしてこうなったのー?
ヘイルって方の男はロングソードみたいなのを二刀流で使うみたいだ。
殺気が漏れている。この人達、かなり強いね。
でも......
「はぁ! でや! せい! な、なんだコイツ!」
「ふっ、はっ、せや! 攻撃が当たらないだと!?」
素手の私に対して武器構えて突っ込んで来るなんてね、しかも私達初対面じゃん? この人達は初対面だと殺し合う種族かなんか? めんどくさいねー。
攻撃が当たらないんじゃ無いよ。目で見て回避が余裕なだけ。リサーナも待ってる事だし、この二人をお土産にしよう、そうしよう。
「案内する気が無いなら邪魔しないでね。魔法の矢」
魔法の矢は馬車に揺られている時に思い付いた魔法で、夜な夜な練習してた魔法なんだよね。使い勝手も良いし、威力も申し分無いし。コントロールも自由自在。
ほぼノーモーションで撃たれる矢は音速で飛ぶから初見で避けるのは至難の業だと思うね。
その矢によって二人の両腕、両足の筋を撃ち抜く。
「くそっ! 危ねぇ!」
「かなり危険な魔法だ。だがこれだけの威力だ。連発はできないだろう」
嘘でしょ......撃ち抜こうとした部位にあった鱗ごと撃ち抜こうとしたら、逆に弾かれた。
十八番にしようと思っていた魔法の矢が......
......よし、これ無かったことにしよう。幸い私しかこの場にいないからね。誰も見てないよ。
前にいる二人は私の名誉のために死なない程度までボコボコにする。
もう一つの十八番の火魔法は、森の中だから使ったら全焼すると思う。
「悪いのは君達だよ?」
「は?」
瞬きする間に、クリル君との間合いを詰める。クリル君が反応し、防御の姿勢を取ろうとしたけどもう遅い。
腹部に一発。ただ力任せに殴るだけの簡単なお仕事。
「ぐぇっ!」
クリル君が胃の中の物を吐きながら、体をくの字に曲げて背後の木々をなぎ倒しながら後方へ吹き飛ぶ。
「クリル!」
はいはい、他人の心配している暇はありませんよっと。
次はヘイル君。ヘイル君の背後に回り込み、回し蹴り。後ろに回り込めるかどうかってだけで力の差が分かるね。
「いつの、間にっ!」
硬い感触がしたからきっと背中にも鱗があったんだろう。そこまでダメージは入ってないみたい。
ヘイル君が体制を立て直して攻撃を仕掛けてくる。
右手の剣で大上段からの袈裟斬り。それを左手で受け止める。
「なんだとっ!?」
驚きながらも左手に持った剣で、足を狙って薙ぎ払ってくる。それを片足で弾きながらヘイル君の懐へ踏み込み、顎を叩く。手加減スキルを発動させているので意識を吹き飛ばされただけで済むだろう。
「なかなか楽しかったね。戻るか」
そう言って私はリサーナの元へ歩いて帰る。
衝撃で木々が倒れ、地が抉れ、その場からは草花が消え去った。
かなり遠くまで殴り飛ばされたクリルは自力でよろけながらも戻って来て、その荒らされた光景と、自分と互角以上の実力を持つヘイルが意識を失い倒れている光景を見て固唾を飲んだ。
「なんなんだあの化け物は......あれこそ災厄じゃないか......」
死ななくて良かった。未だ意識を取り戻さないヘイルを担ぎ、里に戻りながらクリルはそう思った。




