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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第二章
31/108

27話 神の声(仮)


 先程から、視線を感じる。

 前方からだ。


 ちなみに今の私の状態は、目を閉じて外の景色を眺めるのに集中している。こうすることで、魔法の目から入ってくる情報がより鮮明になるのだ。

 まぁ、ただ情報の選別をしただけなんだけどね。


 そして、前方から視線を送り続けている正体は......

 片目を開き、その少女を見る。


 あ、目が合った。うわ!すごい勢いで視線を逸らされたよ。


 ローブの少女である。


 たまたま助けただけで、こちらを常に見つめていると言う状態は、なんと言うか......居心地が悪い。

 リサーナは心地よい揺れと、私の膝枕のお陰か、激しく揺れる馬車内でも爆睡している。涎がたれそうになる度に口元を拭わなきゃいけないこちらの身にもなって欲しい......。


 ローブの少女は顔を背けたままだが、時々こちらをチラっと見てくる。何かするつもりは無さそうなので、大丈夫だろうと思い再び外の景色を眺める。


 メルガスからウィルガルムまでは街道で繋がっている。途中、いくつかの村に寄り休憩を挟みつつ進んでいく予定だそうだ。街道には魔物避けの魔法道具が設置されており、魔物による被害はほぼ無いとのこと。

しかし、近年稀に見る魔物の狂乱化により、進化した個体が時々街道へ被害をもたらすらしい。

 まぁ、私達はそんな確率の低い事にぶつかるなんてことはないだろうけどね。


 絶対に、無いだろうけどね!


 私が目を閉じたのと同時に、ローブの少女はこちらを見つめる。

 ふむ、目を合わせると避けられてしまうけど、何がしたいのかくらいは知りたいしな。


 そう思い魔法の目をローブの少女の前に飛ばす。


「......?」


 おっと、魔力感知出来るみたい。何か感じたけど分からないようでよかった。不思議そうにキョロキョロしている。


 ふふっ、私の魔法の目はほぼ完全に一つの個体として動き回る事も可能なのだ! 姿も消せるし、大きさも自由自在! 密偵とかなら最高に活躍出来るね! 密偵なんてしないけども。そもそも音を拾えないからあんまり使えなさそうだけどね。

 密偵するくらいなら、正々堂々と真正面から突っ込んだ方が私は早いんだけどね。

 おっと、話がズレたね。戻そう。


 それにしても、この子どっかで見た事あるんだけどなぁ〜。

 全然思い出せないや。

 わからないものは考えてもわからない! 思い出せないのは仕方ないのだ!

 だから今は忘れて外の景色を楽しむぞ!

 そう決心した直後、


「えー、そろそろ日が暮れてきましたね。村が見えてきました。宿を取るもよし、馬車の中で寝るもよし、自由に食事を取るもよしです。明日の朝には出発する予定なので、間に合うように行動してくださいね」


 獣人の乗務員さんがそう言うと、間もなくして馬車は止まった。


「リサーナ、起きて。降りよう。起きてー」

「むにゃむにゃ。あと少し、あと少しだけアスカの膝を......」


 ごっ。


 私はいつまでも起きないリサーナに対して軽く拳骨を落とした。本当に軽くやったつもりなのにものすごい音がした。

 鑑定さんでリサーナのステータスを見てみると少しHPが減っていてビビった。


 リサーナが頭を抑えてう"ぅ"ーと恨めしそうにこちらを睨んでくるが、私は悪くない。一度で起きないリサーナが悪いのだ。うん、そう言う事にしよう。


 正直力の加減がいまいちわからないのだ。手加減みたいなスキル無いのかなぁ?

 鑑定さんなら分かるんじゃないですか? あ、分かりせんか、そうですよね、分かりませんよね。

 そんな時、頭に直接響く声が聞こえた。


《条件を満たしました。手加減スキルを獲得します》


 え? 何これ? 何これ?

 ちょっと待ってね。うぇいとうぇいと。

 まずは落ち着こう。素数だ。素数を数えて落ち着くんだ。1,2,3,5,7......1は素数じゃないとか知らぬ。

 素数は1と自分の数でしか割れない孤独な数字......私に勇気をくれ......ったぁぁい! そんな事はどうだっていい、重要な事じゃあない!


 手加減スキルを獲得します? そうだ、ステータスを確認しよう。


=========


アスカ・ニシミヤ 女性 18歳

魔女

レベル148


HP73800/73800

MP126000/126000


STR96100

VIT89710


《スキル》

火魔法Lv.10、水魔法Lv.10、風魔法Lv.10、土魔法Lv.10、光魔法Lv.10、闇魔法Lv.10、破滅魔法Lv.10、火耐性、水耐性、風耐性、土耐性、雷耐性、光耐性、闇耐性、回復魔法Lv.10、鑑定Lv.10、魔力操作、魔力感知、詠唱省略、縮地、剣術(短剣)Lv.1、幸運Lv.4、自己再生、詐称、情報操作、調理Lv.2、手加減【NEW】


《称号》

転生者、魔物の殺戮者、勇気ある者


==========


 本当に追加されてる!?

 何で!? 今までこんな事無かっ......あったな?

 確かコカトリス焼いてる時、そんな声を聞いた覚えがあるな。上手く聞き取れなかったから幻聴かな? とか思ったけど本物だったとはね......。


 そうだよ私。ここはファンタジーな世界なのだ。そんな神の声みたいなものがあってもいいんじゃないかな? 神って言うと悪いイメージしか無いから少し心配になるけどスキルをくれる優しい神様なんだろう。シュバルとは違って。


 貰えるものは貰っていくスタイルで行こう。


「アスカ? どうしたのですか?」

「あ、あぁ、ごめんね。ちょっと驚いた事があってね」


 突然虚空を見つめ動きを止めた私を心配したのか、リサーナが声をかけてくる。神の声みたいなやつは誰にでも聞こえるのだろうか?

 リサーナにも聞いてみた。


「そうですね、険しい訓練や鍛錬の結果、スキルを手に入れたりするのですが、その時にそのような声が聞こえる、など文献には書いてありましたよ」

「へぇ、リサーナは聞いたことあるの?」


 リサーナは意外と博学で、メルガスの王立図書館の本なら大体は読み終わったそうだ。素晴らしいと思う。

 ただ、日頃の行動が、ね。


「私は、まだ聞いたことがありませんね。いつか聞いてみたいと思っていますよ!」

「へ、へぇ......。私も出来る限りの事はするよ」


 そう言うとリサーナは照れたように頭をかいていた。

 と、そこへ案内人の獣人さんが近寄ってきた。何か用だろうか?


「お客様達は今夜どう致しますか? 宿に泊まりますか? それとも、馬車にて眠りますか?」


 なるほど、金の余っている人は宿に泊まって、金の少ない人は馬車に泊まったりするのだろう。

 私達は特に村に興味は無いので馬車に泊まるとこにした。リサーナも別にどこでもいいと言っていたし。


「アスカ、アスカ! ご飯は何しますか?」


 ワクワクが止まらないような表情で聞いてくる。リサーナは食べることが好きだね。私も食べることは好きだけど美味しくないものは嫌いだ。


「そうだね、少し離れたところで昨日採ったコカトリスでも食べる?」

「こ、コカトリスさんですか!? 持ってきているのですか! 私はあのお肉大好きになりました! 食べたいです!」


 お、おぉ、食いつきが凄いな。

 アイテムボックスの事も話しておこうかな。リサーナの荷物とかも持てるし。


「それじゃ、人目に付かないようなとこまで行ってから食べようか」

「はい!」


 そう言ってリサーナを抱き上げる。抱き上げる時に毎回リサーナが嬉しそうに顔を赤く染めるのはやめてもらいたい。こっちが恥ずかしくなる。


 しばらく走った後、迷宮と同じようにテーブルと椅子をアイテムボックスから取り出す。その時にリサーナにアイテムボックスの事を話したら、


「私も欲しいですねー。確か空間魔法にそんな魔法がありましたね。いつか覚えてみたいです」


 なんて事を言っていた。私のは魔法じゃないんだけどね。それに空間魔法なんて魔法もあるのか。私も覚えてないから、そのうち魔法書的な物でも買って覚えようかな。


 コカトリスのまだ生焼け気味な肉をテーブルに置いた大きなお皿の上に置く。

 私のアイテムボックスの中は時の流れが無いようで、アイテムボックスに収納した時と全く同じ状態で入っている。


 初めて食べた時と同じように、ここから更に焼いていく。食べ頃まで焼くと、こんがりと肉の匂いがそこら一帯へ広がっていく。さっきからリサーナのお腹の虫が叫んでいるのが聞こえるため、さっさと食べる事にした。


「いただきます」

「いただきます!」


 リサーナにはちゃんと、小さく切ってあげてから渡している。


 タレも何も付けていないが、肉本来の味と言うか、皮のパリッとした食感の後に来る香ばしい匂い、そして押し寄せる肉汁の波。身はプリッとしていて、いくら食べても飽きることは無いと思わせる食感。

 リサーナも幸せそうに食べている。


 気付いた時には既に皿の上に肉は残っていなかった。

 今回も私の胃袋にコカトリスの八割ほどが収まった。明らかに私よりも大きい体積を摂取したと言うのに、一切お腹が大きくなっていないのはきっと、私の胃袋はブラックホールなのだろう。

 リサーナは私の出した食後のお茶を飲んで溶けたように寛いでいる。


 既に月が頭上へ登っている。


「美味しかったけど、デザートも欲しくなるね」

「わかります〜。あま〜い食べ物も食べたいですね〜」


 やっぱり女子なのだ。スイーツが食べたいお年頃なのだ!! 道中甘そうな果物の売っている店を探してみるかな。


「後、そろそろお風呂に入りたい」


 その一言に溶けたように寛いでいたリサーナが凄い勢いで起き上がり、私に迫ってきた。


「お、お風呂! 一緒に入りましょう! ね!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて? 一人でゆっくりしたいな〜なんて......?」


 その言葉にリサーナはショックを受けたように固まる。背景に『ガーン!!』と言う文字が見えるくらい落ち込んでいるのがわかる。


「や、やっぱり私の事嫌いなんですね......。ぐすっ、お友達とお風呂に入るのが夢だったのに......ぐすっ」


 えー、そうなるのぉ。それと、リサーナ。さっきからチラチラ見てるの気付いているからね?

 全く......。もしかして私は尋常ではないほどめんどくさい人を連れてきてしまったのかもしれない。


 その場は何とかリサーナを宥めて馬車に戻ることにした。帰る時もリサーナを抱き上げたのだが、来る時よりも密着率が高かった気がする。リサーナのしぶとさが怖いです。


 馬車に戻った私達を見て、案内人の獣人さんが驚いていた。どうやら少し帰りが遅くなったようだ。これから探しに行くところだったらしい。

 入れ違いにならなくて良かった。


 馬車の中は既に静かで、ローブの少女が寝ているようだった。御者さんも宿で眠るそう。

 つまり馬車の中は私達とローブの少女、そして案内人の獣人さんの四人みたいだ。

 獣人さんも、宿に泊まらないのだろうか? と、聞いてみたところ、


「人の宿に、獣人が泊まることは出来ないんです。出来たとしても馬小屋などですし......それに、馬小屋に泊まるだけでも高等な扱いですけどね」


 アハハ、と自嘲気味に言った。

 なるほど、獣人差別とは良くあることか。リサーナも何とも言えない表情になって、話を聞いていた。メルガスでも獣人の奴隷は国民の三割を占めるほどいるそうだ。私は見たことが無かったんだけどなぁ。

 どうやら、主に王城で扱き使われていたり、地下鉱脈での採掘などに使われているらしい。


 世知辛いねぇ。リサーナにはこれ以上奴隷の事を聞かせると気分を悪くさせてしまいそうなので、先に寝かせる。獣人さんから備え付けの毛布を借り、そっと被せる。


 そして、夜も更けた頃、私はこの世界の奴隷について話を聞くことにした。まぁ、前世でも奴隷なんてほとんど知らなかったんだけどね。

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