25話 アルテナ商会の怖さ
ユニーク1000突破しました!
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馬車が来る。
四頭の馬が並び、その後ろに大人数が乗れる箱型の四輪が付いている。なかなかに豪華だ。
並んでいる人を見回すと、煌びやかな装飾を施した服装等で、これから舞踏会にでも行くのではないかと思えるほどバッチリ決めていた。
ん? 一人だけ小柄な人も並んでいる。服装と言うかローブで全身を覆っていて姿は分からない。
まぁ、同じ乗客なんだから気にしなくていいかな。
御者の男性にチケットを見せると、獣人だろうか? 首輪をした獣耳を生やした女性に中へ案内される。
「アスカ......あの人は奴隷......ですか?」
首輪は奴隷の証ってオジサンが言ってたな。奴隷か......なるほど。初めて見た獣人が奴隷なんて、なんだか胸糞悪い。リサーナも同情するように眺めている。
箱型の中身は本当に豪華だった。なめした革の張られたソファーが二人席で左右に四つ。計八人が乗れるようである。私達は一番後の席に案内された。
全員が乗ったところで馬車が出発する。御者の席と私達の乗る方では一枚のスライド式の扉によって繋がっている。
「それでは出発致します。検問でしばしのお時間を取らせてもらいますが、その後は順調に進みましたら十日ほどでウィルガルムへ到着になります。ごゆっくり寛いで下さいませ」
とてもいい笑顔で獣人の案内人がそう言う。
本当に奴隷なのかと疑わしいくらいに楽しそうに仕事をしている。その様子を見てリサーナも少しホッとしたようだ。
少し待っていると、検問に着いた。
どうやら例の魔王騒ぎのせいでいつもより厳しめに検問されるそう。
御者の人が、
「中は見せられません。貴族様御用達の定期便にケチを付けるとはいい度胸ですね?」
御者さんが頑張ってる! その調子だ! 頑張って!
しかし、検問の衛兵は偉そうに言った。
「へっ! 御者如きが国王の命令を無視する事の方が大変だと思うがなぁ? それでもいいのかぁ? 」
魔王騒ぎに国王まで一枚噛んでいたとはね。
「わ、分かりました......ですが、なるべく早くお願いしますね? 何も、無いですから」
「へへっ、そうだといいんだけどな!」
そう言って衛兵が乗り込んできた。御者さんは「申し訳ございません。しばしお待ちください」と頭を下げていたが、頑張った方だろう。仕方ない。ここは詐称スキルの出番かな?
しかし、衛兵が私達の方に来る事は無かった。逆に私達が出向くことになっちゃったけどね。
「おい貴様! 怪しいやつめ! その汚らしいローブを脱げ! お前みたいなやつが貴族の乗る定期便に乗れるわけがない! 無賃乗車とし、こちらで身を引き取らせてもらうぞ!」
うわぁ、なんか適当な事言って怪しい子を引っ張って行こうとしてるよ。
誰も止めないの? 御者さんいい人かと思ったんだけどそんなこと無いね。お金払って買ったチケットなのに......まぁ、国家権力には仕方ない、のかな?
「......嫌っ、離してっ」
女性の声だ。流石にやり過ぎだと思う。
「リサーナは此処で待ってて」
リサーナが今にも飛び出しそうなので私が行くしかないみたい。リサーナはすぐにボロを出すから危ないのだ。
私は少女の腕を強引に掴んでいる男の腕の方を軽く握る。
それだけでボキッと言う音が鳴り、男が悲鳴を上げて掴んでいた腕を離す。
「大丈夫? アナタはお金払ったのよね?」
ローブの少女は首を縦に振る。
「そう、ならいいじゃない。御者さんもチケット見たんでしょう?」
「あ、あぁ、そうだったね、済まなかったよ」
ふむ、ローブの少女にしっかりと謝ったみたいでオールオッケーだね。あ、衛兵のやつ忘れてた。
別に記憶力が乏しいとかそんな事じゃないからね? どうでもいいから見てないことにしただけどからね?
おい、誰だ老化始まったとか言ったヤツ。出てこい。
おっと、そんな事よりもこっちだ。
「ひぃ、ひぃ! き、貴様ぁ! 何をしたのか、自分で分かっているのか!? 衛兵に、手を上げるとは、重罪だぞ!? お、お前ら、こいつを、捕まえろぉ!」
そう言うとゾロゾロと馬車を衛兵が取り囲む。
「はぁ、これだから腐っているんだ。罪も無い少女を冤罪かけてとっ捕まえて、適当に罪を擦り付けて自分のお陰で捕まえた事にして手柄を立てるって作戦だったのかしら? もしかして衛兵ってそんな無能な集まりなのかしらねぇ? 私、アルテナ商会の伝でウィルガルム向かうの。『それくらい』の発言権はあるのよ?」
アルテナ商会の上層部が持てる印を押した手紙をチラつかせて話す。が、もちろん嘘である。しかし、アルテナ商会が力を持っているのはメルガス支店を見れば明らか。衛兵如きが逆らえるようなところではない。
因みに印はこっそりオジサンから借りた者だ。決して勝手に使ったとか、こんなことがあったら大変だもんね。とか思って作ったんじゃない。そう、私はそんなこと、しないかもしれない。
「あ、アルテナ商会......っ!? す、すまなかった、知らなかったんだ、アルテナ商会の者だって! だから、だから許して、許してください!」
うわ、アルテナ商会って凄いな。
周りの衛兵達はアルテナ商会って聞いただけですぐに離れていったよ。目の前の男なんて顔面蒼白。折れた腕を庇いつつも土下座気味に迫ってくる。
「私は。気にしてないよ? この子に謝って。そして五数える内に消えなさい」
「ひっ! す、すまなかった! 許してくれ!」
い〜ち、に〜ぃ、と数えるまでもなく、そう言うとすぐに出て行った。まったく、めんどくさいったらありゃしない。でも、リサーナがこちらを見て満足そうに微笑んでいるので良しとしよう。
席に戻ろうとしたら、くいっと服の裾を引っ張られた。ローブの少女だ。
「......あ、ありがとう。まお......っ」
ん? 最後、なんて言ったのか聞き取れなかったけど感謝しているようだ。それだけ言うとさっさと自席に戻っていった。
どこかで見た事あるような気がするけど......うーん、わからないしいいかな。
席に戻るとリサーナに凄く褒められた。それはもう、『凄く』だ。
そして、ガタゴトと静かな揺れを伴って馬車が進み始める。初めて馬車に乗ったけど、予想以上に揺れて吐きそうだ。
私は常に回復魔法を発動させて揺れによる酔いを回復させ続ける。
さて、少しの間だけど馬車の旅だ。たしか十日って言ってたよね。
「まだ先は長そうだからね。ゆっくりしようか」
「はい! それじゃあ、アスカのお話を聞かせてください!」
「そうね......」
私は前世の話をリサーナに聞かせた。リサーナは興味津々と言った顔つきで私の話をしっかりと聞いていた。そこまで面白い事ではないと思うんだけどね......。
「なるほど! アスカはこの前も言っていましたが、オヤコドンが好きなんですね! 作り方を教えてくれれば私が作りますよ!」
「へぇ、リサーナって料理も出来るんだ?」
こちらの世界に来てから私は料理なんてしてないのに、いつの間にか調理と言うスキルを手に入れていた。まさかとは思うが、コカトリスを丸焼きにしただけで、あれを料理と呼ぶのだろうか......?
スキルのハードル低くない?
「やったこと無いですけど多分出来ますよ!」
なんだこの溢れんばかりの自信は......
一体全体どこからそんな自信が溢れるのか......
「そ、そう。それじゃ、時間を見つけたら教えるわね」
「ふふふ、これでアスカの胃袋を掴めますね!」
なんか変な事言ってるけど、聞かなかったことにしよう。
しばらくすると眠くなってきたのか、寝息を立て始める。猫のように自由気ままに生きているなこの子。
私は魔法の目を操作して外の景色を眺めることにしようかな。




