ー幕間ー 小物三人衆のお仕事
黒の風切羽の後衛3人衆、エクスプロージョンが得意な魔法使い視点です。
アスカの思った通りのヤツらになりました。
私の名前はメリリアン。
城塞都市メルガスで一番強いパーティ、黒の風切羽と言うパーティの後衛をしているの。
私達黒の風切羽は迷宮の深層を探索しにいつものパーティで迷宮を潜っていたんだけど、二十九階層でコカトリスの軍団に襲われたの!
リーダーのガルスさんと副リーダーのアルマさん主軸に簡易キャンプを作って戦っていたんだけど、全然減らないの!
それで、まだ余力のあるうちに救援を呼ぼうってことになって、私を含めて後衛三人が今は地上に向かって急いでいるところ。
なんだけど......
「ねぇ? 十五階層にキメラなんて出るのかしら? これはどういう事なの?」
「お、俺に聞かれてもわかんねぇよ......」
「う、ぐ......」
私達は十五階層に辿り着いたんだけど、そこには私達の目指す深層によくいるキメラが待ち構えていたの。
不意をつかれて、盾役のヒューゴーが怪我を負ったわ。魔法戦士のジャスパーが回復魔法かけてるけどこのままじゃ全滅しかねないわね。
「私の魔法で目くらましさせるからその間に逃げるわよ!!」
黒の風切羽に入れるくらいの魔法の威力、得と味わいなさい!
「エクスプロージョン!!」
キメラが少し怯んだわ!
「今のうちよ!」
「ごぁぁぁあ!!」
嘘でしょ!? もう復活したし!
あ、やばいかもこれ。死ぬ時は三人一緒だぜ......なんて言ってる場合じゃないっしょ!?
あー、こんなキメラ倒して落ちた魔法石売ったら一生遊んで暮らせるんだろうなぁ。
なんて思っていたら......
「冒険者か!? ここは危ない! 逃げるんだ!!」
ジャスパーが十五階層の広場の出口を向いて叫んだ。
こんな所まで来れる奴なら少しくらいなら時間稼げるかも?
あ、キメラがあの冒険者の方に襲いかかった。
「ごがぁぁぁぁぁあ!!!」
「危ない!」
うわっ、あんなに速いの!? こりゃ、あの人はもう終わりだね。知らない人だけど死んじゃうのか。
とか思っていたら、
「そりゃ」
「がぁっ!?」
気の抜けた声でキメラを一発殴ったら、キメラが地面にめり込んで気絶した。何を言ってるかわからないと思うけど、私も何が起こったのかわかってない。
「大丈夫ですか? そちらの方を優先して回復させますね」
女性の声だから多分女性だ。その人がこちらに近づいてきてヒューゴーに魔法をかけてくれる。白銀色の魔力に傷が包まれると、みるみるうちに傷が塞がっていく。無詠唱なんて有り得ない上にこんな回復力......おかしい。それにキメラがあんな簡単に倒れるわけないでしょ......。
「え? あ、はい......えーと? あれ? キメラは......?」
「ちょっと気絶してるだけですから早くしないと起きてきますよ」
何を言っているのか全くわからない。ちょっと気絶? キメラが? そんなわけないでしょ。それとも何か? 私のエクスプロージョンでそれなりに弱ってたとか? それこそ無い無い。私はそれなりに強いけど謙虚な人間なのさ。
よく分からない謎の女性に対してジャスパーが取り乱したように喚く。
「いやいやいやいやいや! キメラだよ!? この僕達が苦戦してたのにそれを一発で!? そんなに弱ってるようには思えなかったし君は一体!?」
「回復したら早く帰ってくださいね。邪魔なので」
一切質問に答えずに邪魔と言った。邪魔だと?
ちょっとカチンときたのでここは怒らねばならないね。先輩冒険者としての威厳を見せないと。
「あの、助けてくれたのはありがたいんですけどその言い方はちょっと無いんじゃないですか?」
「ごめんなさい。私は早くこの先に行きたいので、キメラを倒す時に巻き添え食らったら大変だなぁと思っただけです」
やっぱり何を言ってるかわからない。キメラを倒すなんて黒の風切羽でも準備万端にしてようやく狩れる魔物なのよ!? それを、一人で!? 馬鹿にするのも大概にしてほしい。
「はぁ? キメラを倒す? さっきのまぐれでしょ? キメラは普通三十五階層以降にたまに見かけるけど絶対に手出しはしない敵よ!? 私達『黒の風切羽』の後衛三人でも無理なのよ! アナタ一人なんかじゃ無理に決まってる!」
おっと、アルマさんの事はさすがに知ってるみたいね。
「アルマさんとガルスさんは私達を逃がすために残ったわよ。異変が起きていることを地上に知らせるために、私達を逃がすために!」
少し八つ当たり気味になっちゃったけどこの際どうでもいい。
でも、この後のこいつの発言に頭が爆発しそうになった。
「コカトリスは何階にいるのかしら?」
「は? え、今の話聞いてなかったの? 『黒の風切羽』でも逃げることしか、逃げることもままならない状況で下に潜ろうとするなんてバカのやることよ?」
コイツはただのバカだ......。
そんな話をしていると、ヒューゴーが起き上がった。どうやら傷は治ったみたいだ。
「そいつは死にたがりなんだろう? いいから俺達をさっさと助けろ......」
「出口はあちらですよ」
チッ。と心の中で舌打ちしておく。こう言うのは態度に出しちゃいけないのだ。
出口に向かって急いでいたら、なんと言うバッドタイミング! キメラが起きて、しかもこっち見てるわよ!?
「ごぁぁぁぁぁあ!!」
「ぐ、ぬおおおお!!」
突進をヒューゴーがなんとか耐える。しかし、このままだと押し負けてしまう。こんな時こそ私の出番よ!
幸い出口にも近いからうまい具合にいけば......。
さっさと詠唱済ませてドーン! と行くわよ!
「エクスプロージョン!」
鼻先目掛けて吹き飛びなさい! ジャスパーがヒューゴーを引き上げるのと同時に爆発させる。そして、その爆風によって出口の前に吹き飛ばされる。
私ってば頭脳派!! まじ天才!!
それにしてもあの女、気に食わないわね。
「なんなんだよ、アイツは!」
「あの圧倒的な強さ......危険じゃないか?」
「とりあえず異変と一緒に報告するか」
そうね、ヒューゴーの言う通り異変と一緒に報告しましょう。
そうして、私達はなんとか迷宮を抜け、ギルドへ直行した。
「―――それで、迷宮の異変はコカトリスの大量出現、十五階層でのキメラ出現の以上ですかな?」
「それと、謎の人物がいました。高度な回復魔法、キメラを容易く葬るほどの実力、圧倒的なまでの恐ろしさ。アレは魔王のようでした」
嘘は言っていない。魔王っぽかったし、実際ちょっと頭おかしかったし。
ギルドのお偉いさん達に今回の件を話すと、話を大きくしないと適当にあしらいやがるのだ。この老いぼれ共が。
「なんと......魔王ですか......。女でしたか?」
「えぇ、声しかわかりませんでしたが女でした」
なんか王子がどうとか言ってるけどあんまり聞こえないな。
「ふむ、魔法使いメリリアン、魔法戦士ジャスパー、重戦士ヒューゴーよ。この度は良くぞ無事に伝えに来てくれたな。追って命令を出す。戦えるよう準備せよ」
「はっ、了解しました」
この後色々聞いて回ったんだけど、なんかリサーナ姫を誘拐したヤツがいて、どうやらそいつが私達が会ったヤツじゃないかと思うんだ。
しばらく待っていると、王子の使いとか言うやつがギルドに来た。どうやらソーン王子はリサーナ姫を拐ったヤツに恨みがあるみたい。どうせまた小さな事だとは思うけどね。
「ほう、今回の件、良くぞ伝えてくれた。魔王討伐に軍を出すことになったのだ。付いてこい」
「ま、魔王討伐ですか!?」
「そうだ。何か変か? 貴様らが魔王だと言ったのだろう?」
うげー、なんかあの女が魔王ってことになってるー! うん、この際だしアイツは魔王だ。そう、今この瞬間から私の中で魔王はアイツになった。
ソーン王子に付いていくと、迷宮前広場に着いた。どうやら本当に軍を率いているみたい。かなりの人数じゃん。
「フフフ、今回の戦力はお前達と合わせて七星傭兵団を雇ったのだ! そして迷宮内にいるアルマとガルスには王家専用の念話石を特別に使って今回の件を伝えておる! ヤツらも迷宮から脱出し次第こちらに加わるとのこと。そして! 迷宮から出るにはこの出入口ただ一つのみ! ここで待ち伏せすれば絶対討伐することが出来るのだ! そして王都から報酬金が出て......僕の時代が来るのだァ!! フハ、フハハ、フハハハハハハ!!!」
うーん、そんなに上手く行くもんかなぁ?
それにしても今回提示された報酬金がね、もうね、高すぎてやる気に満ちているのよ。
五万ゴールドよ!! 私達が殺されかけたキメラの魔法石並の値段! これだけあれば一生暮らせるのよ!
これはもう頑張るしかないわね。ヒューゴーもジャスパーも目が爛々としてるし。
この後、私達魔王討伐隊は魔王のたった一つの魔法によって半日ほど幻を見せられて成す術もなく逃げられてしまったと言うのは秘密です。
それのいつの間にか七星傭兵団の人たちもどっか消えちゃったし。きっと魔王に殺されちゃったのかしらね。
そして、私達後衛三人衆は今日も今日とてアルマさん達のお零れを狙うのさ!!




