23話 魔王様降臨
さて、どうしたものか。
流石にね、私も学習しましたよ。
調子乗ったり油断したら足元掬われるってね。
最初はネズミをサクッと殺したら次の瞬間には私の方が死にかけたり、次は卵の誘惑に負けてリサーナを守れなかったりね。
だから、これからは私、慎重に生きることにします。
そうすれば多少のトラブルも減ると思うのですよ。えぇ。きっと、多分、おそらく。
で、今私は魔王呼ばわりされてるんですよね。
「へへっ、やっぱり大量の兵士と俺らがいるから魔王もビビってやがるぜ」
「アンタはその他のうちの一人でしょうに。主に私に恐れているのよ。迷宮の中であの魔法を見たから迂闊に手を出せないんでしょうね」
「お前らは少し黙っていろ」
はぁ、この三人の既視感はあれだ。初日の小悪党達だな。すごく弱そう。
おっと、いけない。油断は禁物だからね。
レベル差だけが全てじゃないかもしれない。でも鑑定するのは怖いんだよね......範囲設定がいまいちよく分からないから、目の前の人達全員を一度に鑑定して、一気に情報が流れてきたら......正直情報過多で死ねると思う。
あ、そんなこと考えていたら炎円陣の効果時間が切れた。
こちらからも外の状況を見れない状態だったけど予想以上に危ないかもしれない。
「ははは! 僕の勝ちだな魔王よ! この大軍相手に勝てるわけがないだろう!」
「そうだよーアスカちゃん。もし降伏するならリサーナ様は助けてあげてもいいかもねー」
だーかーらー! 私はどこにでもいる一般的な魔女さんだよっ!!
はぁ、本当にこの街は腐っているね。
あ、そう言えばこの街、メルガスって街に見えてたけど実は国らしいね。
まぁ、王族がいるって時点で街におさまるはずが無いわけだ。
少し考えればわかったよね。うん、考えてなかったわけじゃないよ?
それにしてもどうしたものか......。
あ、魔法でどうにかするのが妥当かな?
そうと決まれば早速やりますかー。
手のひらを高く挙げ、大きく息を吸い、なるべく迷宮前広場全体に聞こえるように風魔法で声を拡散させながら話す。
「えー、コホン。私はー、リサーナ姫を攫いに来ただけですのでー」
いいぞ、全員注目したかな。
「幻視」
その言葉を発すると同時に指をパチンっと鳴らす。
すると、白銀色の魔力が一瞬にして迷宮前広場全体に届く。
そしてリサーナを担ぎ、人混みを飛び越え階段へ向かう。しかし、
「私達には、効かないよっ!」
人混みを飛び越え、着地する瞬間を狙って迫るロングソードによる薙ぎ払い。
「あぶなっ!」
瞬時に地面を爆ぜさせるようにその場を離れる。
しかし、逃げた先にも追手がいた。
「我々を舐めて貰っては困る!!」
あー、七星傭兵団だとか言う奴らだ。
七人が洗礼された連携プレーで私に迫る。めちゃくちゃ胸を揺らして迫ってくるのがいたから思わず殴りそうになったのをなんとか抑える。
遅い。最低限の動きで完璧に避け、階段へ向かって走り出す。
「かかったね!! 封絶!」
私が階段の手前に来た瞬間、足元が光り輝き視界を奪われる。そのせいで一瞬だが足を止めてしまった。
足元から何かが広がるのを感じる。
これは......結界?
「アスカちゃんのための特注品だよー。七星傭兵団と協力して作ったアスカちゃんを捕まえるための結界。これはアスカちゃんだとしても破ることは出来ないよー」
「無駄にならなくて済んだな。ここまでおびき寄せるのも上手くいってよかった」
おびき寄せる? いやいや、あなた達完全に何も出来てなかったじゃん。今回はたまたま私の注意力不足でこの結界に閉じ込められちゃっただけで......
「うーん、出してくれないかな?」
結界を囲むようにアルマと七星傭兵団が近付く。それにしてもアルマと七星傭兵団以外は皆私の幻視食らってるのか。
幻視は相手を夢の世界にご招待......もとい幻術を見せる魔法。
きっと今、あっちで突っ立ってる人達は私を殺してる幻でも見てるんだと思うよ。
「アルマ殿、この結界のもう一つの能力をお教えしましょう」
七星傭兵団とか言うやつはリーダーっぽい黒い鎧を着たオッサンしか喋らないな。
ありゃりゃ、囲まれちゃったよ。結界壊してもすぐには逃げられないってわけ? うーん、まーためんどくさいなー。
リサーナがまだ起きないのは幸いかな。
「この封絶を発動する魔法具は特別製でして、こちらに魔力を注いでください」
地面に掘ってある小さな魔法陣にアルマ達がそれぞれ魔力を流し始める。
それにしても特別製だの特注品だのうるさいな。一回言えばわかるんだよ。
ん? なんか変な感じ。体の力が抜けるんだけど。これは......ステータスが減少してる? なんだこれ。
「ふふふ、強がっているようだが今に動けなくなるはずだ。貴様のステータスを分解しているのだからな!」
ふーん、あ、そう。あ、なんか慣れてきたぞ。
あれ? ログになんか出てる。
抵抗に成功しました。
へー。だからかな? もうステータスも元に戻ってるや。
この人達そんな事にも気付いてないのに魔力流し続けてるよ。
これこっちから見てると無様でしかないよね。
魔力の枯渇で肩で息をし始めてるし。
「はぁ、はぁ、コイツ......! ステータスはどれほどあるのだ!? ここまで魔力を注いでも倒れやしないだと!?」
あー、これは何もしなくても勝てちゃうやつかなー?
「どういう事なのよ! 私達が疲れるだけじゃない!! さっさと殺さないと!」
アルマさんブチ切れてるなぁ......。
もうあのイケメン美女さんの面影無いじゃん。
て言うかそろそろ出ようかな。もう見飽きたし。
そう思い、結界の壁を殴ってぶち抜く。
もうね、魔法よりも力技の方が早いんですよ。
パリーンと言うガラスの割れるような音が響き、結界が崩れていく。
「なっ!?」
うわ、めっちゃ驚かれてるし。
早くリサーナを休ませてあげたいからね、もう先行くよ。
あ、面白い事思い付いたぞ。
これは、我ながらいいアイデアだと思うのだよ。
「私は魔王! リサーナ姫は貰って行くぞ! 私を倒したくば、会いに来るがいい!」
どや! この、顔も知らない魔王様に全て押し付けちゃえ作戦!
まさか生きてて魔王に感謝するとはね。ありがとう、この世界の魔王様。
アルマ達は魔力の使いすぎで膝をついてる。
なるほど、魔力使いすぎると動けなくなるのね。今後はちょっと気を付けよう。
今は消費より自動回復の方が多いし消費半分だもんね。心の隅に置いておこう。
「水牢獄」
アルマと七星傭兵団の合計八人を覆うほどの水の牢屋を作り出す。
動けないようだけど一応ね、念には念をって言うし。
「嘘っ!? し、死んじゃう!」
「このまま溺死させる気だな!?」
今更だなぁ。て言うか私を殺そうとしたのに殺されるのは嫌なのね。温い、温いよ......。
こんなヤツらは殺しても意味は無いしね。殺さないように顔だけ出しておこう。
「ぷっ、あははははは!!」
面白すぎた。水の塊に体だけ埋まって顔だけ出している姿はなんとも無様で滑稽である。
このまま放置する方が個人的に楽しいからこうしておこう。
アルマが何か言おうとしてたけどウザいから意識だけ落とした。
「ま、待て、魔王! せめて我ら七星傭兵団だけでも殺していけ!」
「なんでよ? めんどくさい。死にたいなら助けられた後にでも死ねばいいさ」
「わ、我ら傭兵は貰った金の分は働けなばならないのだ! まして今回は王子からの依頼で莫大な金をもらっている! それを失敗したとなると......我々は傭兵としての人生が終わるの、ガボガボガボガボ!!」
あ、うるさくてつい水に沈めてしまった。
「うるさいなぁ。私には関係の無いことだって言ってるじゃん。これ以上は知らない、私に関わったのが運の尽きだね」
ん? あ、やばい。オッサンの顔がどんどん青くなっていくよ。死ぬんじゃない? 殺さないって言ったから殺さないようにしてたのに......。一応助けておくか。
「げほっ、げほっ、げほっ! さ、流石は魔王だ......。鬼畜だな......」
うわぁ、魔王は鬼畜だってさ。ごめんね魔王様。どんどん変なイメージついていくよ。
うーん、あの王子様の事だからなぁ、多分失敗したってわかったら七星傭兵団の人達殺されちゃうのかなぁ。さっきも行ったけど殺さないって言ったからにはこの場は生かしてあげないとね。
幻視の効果が切れるのはまだ当分先っぽいし幻視が切れる前に水牢獄を解除するようにしておこう。
「コホン! 魔王はこれにて帰る! さらばだ! フハハハハ!」
うわー、自分でやってて恥ずかしいわー。
階段を駆け上がりながら、これは黒歴史として抹消しようと思う私だった。
幻視が解けるまでならオジサンの家にお邪魔するとしようかな。リサーナを休ませられる所なんてオジサンの家くらいしか思い付かないし。
そうと決まれば、オジサンの家に特攻だっ!
あ、何もしませんからね。えぇ、本当に、何も。
これで一区切りつきましたね。
しばらくは幕間や人物紹介上げていけたらいいなーって思ってます。




