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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第一章
22/108

21話 迷宮探索 その3

シリアス展開は書くの難しいですね。

難しいですがとても楽しかったです。


※誤字修正しました。


 私達はアルマと、ガルスさんを連れて迷宮の出口を目指しています。

 アスカの先導で行くと全く迷うことが無いのに驚く二人でした。アスカだから当たり前なのです!


 そう言えばアスカは卵を探そうって約束してましたけどもう一人で採っちゃったのでしょうね。あれ? でもコカトリスさん食べ始めてからずっと一緒にいましたよね?


「アスカアスカ、卵って採れたのですか?」


「え?」


「え?」


 え? あれー? 私の言葉に一緒の静寂が訪れました。えっ?


「えっ?」


 アスカが固まってしまいました。もしかして......。

 あ、アスカが動きましたね。


「卵忘れたぁーーー!!」


 アスカが大きな声を出して丸まってしまいました!  こんなアスカも可愛いです! あぁ! そんな事言ってる場合ではないですよ!


「本命の卵が......お肉美味しくて忘れるなんて......卵......たまごォ......」


 わかります。私もお肉美味しくて本当は今の今まで卵の事忘れていましたからね。こんなアスカもたまにはいいですけど、やっぱりアスカは元気でかっこいい方が好きです!


「あ、アスカ! 元気出してください! まだ予定日までギリギリ時間はあります! アスカが本気で走れば往復出来るはずですよ!」

「うっ、ありがとうリサーナ。先に出口付近で待っててくれる? すぐ戻るから! アルマさん、リサーナのこと頼みます」


 どうやら元気になったみたいです! でも本当は私も付いていきたかったですけど、それだと間に合わないと思ったので今回はお預けです。うぅ、しばらくアスカとお別れです。早く帰ってきて欲しいです。

 アスカは音を置き去りにするほどの速さで来た道を戻っていきました。


 あれ? あの時よりも速い気がしますね? もしかしてあれが全速力なのでしょうか......?

 ふとアスカの言葉が頭をよぎりました。

『ギリギリまで粘るつもりよ。予定日ギリギリになったら私が全速力で走るだけだから』

 うっ、あの速さって私、生きていられるのでしょうか?

 ......。考えないようにしましょう。


「リサーナ様、先を急ぎましょうか」


 アルマとガルスが私を引っ張るように進もうとします。アスカの事待っていたいですが仕方ありません。アスカの言う低層付近で待っていることにします。



 私を先導するアルマとガルスさん。会話も最低限しかしてくれませんし、なんだか雰囲気がお義兄様達と同じ気がします。怖いです。早くアスカに会いたいです。


「では、しばしお待ちを。私は外の様子を見てきますね」


 アルマがそう言って迷宮の外に出ました。ガルスさんのことは怖くて苦手なので、今すぐにでも逃げ出してしまいたいくらいです。

 そんな事思っていたら、ガルスさんが頭を下げてきました。


「リサーナ様、本当に申し訳ございません。しかし、これは上からの命令。どうぞ私を恨んでください」


 この時、私はガルスさんが何を言っているのかわかりませんでした。


 次の瞬間、ガルスさんが剣を抜き私を脅すように突きつけてこう言いました。


「このまま進んでもらいます。抵抗するならば殺しても構わないと"念話"で通達が来ました」

「ッ!?」


 もしかして、最初から私を騙すために一緒に帰ることにしたのでしょうか!? それだとアスカが邪魔だから卵を......? でもどうやって卵の事を忘れるように仕向けたのでしょうか。

 考えていると、


「早く進んでください。私は貴女を殺したくありません」

「っ! わかり、ました......」


 アスカが帰ってくるまでどうにかして私は私で生きなければいけないのです。覚悟を決めて迷宮の出口目指して歩きます。

 すると、外に出ていたアルマが戻ってきました。

アルマは私の事を既に見捨てたように、下に見るような目をしていました。魔物を見る目。過去にもたくさんの同じような怪奇の目を向けられました。

 私のトラウマがフラッシュバックします。

 怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い。


「ソーン様がお待ちですよ? 早く歩きなさい」


 私は怖くなりました。ソーンお義兄様が、ではありません。もしかしたらアスカもいつか私を見捨てるのでは、いつか私を殺すのかと。


 アスカは......




 眩しい。いつの間にか外に出ていたみたいです。そこには、迷宮の出口、あちら側から見れば入口に埋め尽くすような、大量の兵士達。その先頭にはこの街、いいえ、城塞国家メルガス最強と言われるたった七人の傭兵団『七星傭兵団』がいました。


「これはっ......!?」


 その兵士達が道を開け、一人の男がこちらに歩いてきました。


「やぁ、リサーナ。探したよ? 攫われてさぞ怖かっただろう? もう大丈夫さ。僕が来たんだから」


「ソーン、お義兄様......!」


 この世界で1番怖いものはと聞かれたら私なら「家族」と答えるでしょう。ソーンお義兄様は私を、殴り、罵倒し、ストレスの発散道具にしか思っていない。幸い、ソーンお義兄様には妾がたくさんいるので、私に性情を向けることが無かったのが幸いでしょう。


「あの女はどこだい? 奴を殺すために七星傭兵団まで雇ったんだ。絶対に殺すさ」


 そんな......アスカが、アスカが!


「......わ」

「わ?」

「私を代わりに殺してください! そして彼女を殺さないことを......」


 決死の決断だった。こんな事しても意味は無い。ソーンお義兄様は私を殺した後でアスカも殺すだろう。死ぬなら唯一の理解者であるアスカと共に死にたかった。


「はっ! 何を言うかと思ったらそんな事か! 奴を殺したらお前も一緒に殺すさ。奴に殺されたことにすれば何も問題は無い。安心していいぞ? 奴を殺した後に殺してやるからなぁ! アハ、アハハ、アハハハハハ!!」

「どうして......」


 でも、これでこの地獄からも抜けれる、生と言う縛りからやっと助かることができる。

 でも......


「そんなの......嫌です......」


「あ?」


 つい、零れたその何気ない一言。


 嫌だ。


 死にたくない。まだやりたい事はたくさんある。アスカとたくさん、たくさんお話をしたい。いつかアスカに守られるだけじゃなく、アスカを守る存在になりたい。アスカの料理が食べたい。アスカの故郷を見たい。アスカとお風呂に入りたい。アスカと色んな国を見て回りたい。アスカと一緒に。アスカと、アスカと......


 アスカと一緒に......



 生きたい。



 アスカに渡された護身用のナイフ。小さくて、軽くて、とても扱い易いナイフ。けれどなんでも切れるほど切れ味は鋭い。

 そのナイフを生にしがみつくように握りしめ、目の前の「敵」目掛けて一閃。


 ザシュッと音がして血が流れる。


「く、うぅ......」


 倒れたのは私でした。

 お腹が焼けるように熱いです。痛くて、痛くて痛くて、今すぐにでも泣いてしまいそうな程痛いです。


「残念。まだまだ届かんよ」


 七星傭兵団の一人が私とソーンお義兄様の間に入り、私のナイフを持つ方の腕を掴み上げ、逆に私の脇腹を切り裂いたのです。


「な、何をするかと思えば......! はっ、お前なんぞに僕を傷つけることなど出来ないんだよ! おい! こいつを死なない程度に痛めつけろ!」


 地面に投げ捨てられた私はソーンお義兄様の命令で集まった兵士達に囲まれ、全身を殴られ、斬られながらも死ぬことは出来ませんでした。私はアスカから貰った帽子を胸に抱き締めながら耐え続けました。


 遠のく意識の中で、七星傭兵団の一人が、


「これ以上は死ぬぞ。そこら辺に放っておけ」


 と言って私は地面に転がされました。

 生きているのが不思議なくらい血が流れています。ふと、目を閉じようものなら意識を失って、そのまま死んでしまうでしょう。

 こんな所で死ぬなら、最後まで足掻きたいです。アスカなら、諦めるなんてしないでしょう。少しの間ですがアスカの事は分かった気がします。


 胸の大きさで悩んでいることも、誰かを恨んでいることも、満足にご飯を食べられないことも。


「アス、カ......」


 掠れる声で呟きます。

 そうです、こんな所で倒れているわけには行かないのです。まだ、戦えます。私は人間じゃありません。魔族でもあるのですから。そんな簡単に死んでたまりませんよ。


 力を振り絞って立ち上がります。

 体に力を入れる度に至る所に尋常ではないほどの痛みが走り、すぐにでも意識を刈り取られそうです。

 体に力を入れる度に傷が開き血がさらに流れます。


「なんと......まだ立ち上がるか」


 ふふ、七星傭兵団の人達も驚いていますね。ここで一矢報いるのも、アスカが昨夜話してくれたかっこいい死に方でしょうか?


「ああああ!」


 言葉にならない叫びを上げて近くに落ちていた私のナイフを拾い、七星傭兵団に切りかかります。


「っ! 素晴らしいです。敵ながら天晴れです。ですが、私はアナタを殺すことは出来ない。少し眠っていてもらいますよ」


 そう言って男は、フラフラと襲いかかる私の腹へ拳を一撃。


「がはっ!」


 私は地面を血を吐きながら転がります。


 痛い。今すぐにでも死んでしまいたい。


 死ぬ。死ぬのは怖いです。

 せめて最後はアスカに看取られたかったですね。


「げほっ、げほっ!」


 転がる勢いが止まり、再び血を吐きます。体の外も中もぐちゃぐちゃなのがわかります。もう体に力を入れることすら出来なくなりました。


 もう目の前に死が迫っているのに気付きました。


 不意に頬に涙が流れます。

 私は、もうアスカの前でしか泣かないと決めたのに、死ぬのが怖くて泣いてしまいました。子供のように、アスカに縋るように。


「嫌だよ......死にたく、ないですっ......アスカ、死にたく、ない......アスカぁ、死にたくない、死にたくないよぉ......」


 酷い嗚咽でした。本当に小さな声で、血に混ざりながらも言葉を発していました。

 本当は一番最初に言いたかった言葉を。


「大好き、だよアスカぁ......」


 私は、アスカが好きです。母のように包んでくれる優しさ。そこに愛を感じ、縋ってしまいました。

 これが最初にして最期です。たった1つのお願いです。



「助けて......」



 その時、迷宮の方から大きな爆発音がしました。既に首は動かなくなっていましたがわかります。

 そして辺りの視線は迷宮の入口に向かいます。が、既にその人は私の傍にいました。


「リサーナっ!!」


 そっと優しく抱き上げ、私の姿を見て涙を流してくれる優しい人。アスカ。本当に来てくれるなんて、アスカは......本当に、私のヒーローです。


「アス、カ......」

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