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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第一章
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18話 卵の誘惑

ブクマ&評価ありがとうございます!!

これからもマイペースですが頑張ります。


「はふぅ......お腹いっぱいですぅ」


 満足そうにお腹をさするリサーナ。コカトリスはとても美味で、リサーナもいつもよりたくさん食べていたが八割ほどは私の胃袋に収まった。


「ね、ねぇ、アスカちゃん?」

「ん? 何?」


 おっと、忘れるところだった。と言うか忘れていた。

 私達の後ろからアルマさんが声をかけてくる。

 アルマさんとガルスは二人とも私達が食べ終わるまで黙っていた。


「食べ終わって早々悪いと思うんだけど、これからどうするのか話し合わない?」

「そうですね、構いませんよ」


 テーブルの方へ二人を呼び寄せる。

 アルマさんに支えられながらだがガルスとやらも歩けるくらいには回復している。あんだけ厳つい風貌してるのに戦いになると弱っちぃね。この人。

 テーブルについてから、アルマさんがこの状況を教えてくれた。


「私達『黒の風切羽』は、今回の探索では四十階層を目指していたの。二十九階層までは順調に進んできたのだけど、ここでコカトリスの群れを見つけたの。簡易キャンプを作ってパーティ内で休みながら戦っていたんだけど、いくら倒しても群れが途切れるどころか更に増えていて......あ、コカトリスは群れを組むのは当たり前なんだけど、普通は大きくても五、六匹なの。でもあの量で......パーティも疲労がたまってきたから悔しいけど救援を求めに後衛三人を地上へ逃がしたの」

「あ、アスカに悪口言ってた人達のことですね! 全くもう、失礼しちゃう人達でしたよ!」


 リサーナが怒っているみたいだけどあれは悪口だったのか。私は気にしてないから別にいいんだけどね。


「みんなに会えたの!? だからアスカが?」

「あ、いえ。会えたと言うか見つけたと言うか。十五階層でキメラに襲撃されているところを助けたんですよ。その後は多分無事に地上へ行けたと思います」


「「十五階層にキメラ!?」」


 大人しかったガルスも目を見開いて驚いている。

 初めて会った時のあの感じはどこかへ行ってしまったのかな。


「や、やっぱりアスカちゃんって......」

「アルマ、危険だぞ。不用意な言葉は慎まねば......」


 またも小声で話し始める。私達には教えられないことでも話しているのだろうか? ちょっと傷付くよ。


「そろそろ予定日になりそうだから私達は帰るけどアルマさん達はどうしますか?」


 予定日まであと半日も無いので悩んでる暇は無いのだ。今の二人を見れば結果は聞かなくてもわかるけど。


「ガルスも私も満身創痍だし、私も庇いながらじゃ厳しいかな......だから、私達も付いて行かせてください」

「くっ......」


 アルマさんが改まってお願いしてくる。別についでだから気にしなくていいのに。

 ガルスよ、そんなに嫌々下げられてもこちらとしては逆に心が苦しいと言うか......


「そんなに改まらなくても大丈夫ですよ。アルマさん達はしっかりと地上までお送りしますよ」

「あ、ありがとう、アスカ」

「すまない......一つ、聞いてもいいか? そちらのお嬢様は誰なのだ?」

「ふぇっ!?」


 突然話を振られてビクッ! と私の後ろに隠れるリサーナ。ここまで人見知りなのか? と思ったけどガルスが初めて会った時と同じ感じがするのできっと威圧を使ったのだろう。なんか使い方が勿体ない気がする。

 地上へ出たらすぐにでも逃げなければいけないからリサーナの事は黙っておくことにしよう。


「彼女は」

「り、リサーナ・メルガスと申します......」


 少しは隠そうよっ!? 何のための変装なのやら......。リサーナが帽子を取りながら頭を下げる。これはきっとめんどくさい事に巻き込まれそうだと思いリサーナを軽く睨むと、リサーナは自分のした事に気付いてオロオロし始めた。


「あああ、アスカ! ど、どどどどうしましょう!? 私、私...... 」

「うーん、アルマさんなら大丈夫だと思うけどもう一人の方がねぇ」


 その二人はと言うと、驚きすぎて開いた口が塞がらない状態になっている。「おーい?」と顔の前で軽く手を振ると


「り、リサーナ様! 無礼をお許しください!」


 急に跪いてきた。ガルスなんて額から汗が止まらなくなっている。王女様に威圧使っちゃうなんて恐ろしいよね。


「気にしないでください、私は大丈夫ですから」


 お? リサーナが少し成長したのかな? なんだか微笑ましくなってくる。


 そんな事があったが、私達は早速帰ることにした。

 道中、何か忘れているなと思いながらも順調に地上を目指して進んでいけている。


 そして、低層付近に来た時、リサーナが私の忘れ物に気付く。



「アスカアスカ、卵って採れたのですか?」


「え?」


「え?」



 一瞬の静寂。アルマさんとガルスも空気を読んで黙っている。


「えっ?」


「卵忘れたぁーーー!!」


 私はショックで膝を抱えて蹲る。


「本命の卵が......お肉美味しくて忘れるなんて......卵......たまごォ......」


 アルマさんとガルスはまた何か二人で話し込んでいる。なんだ? デきているのか?

 リサーナは私の落ち込む姿を見て何とか励まそうとしてくれる。


「あ、アスカ! 元気出してください! まだ予定日までギリギリ時間はあります! アスカが本気で走れば往復出来るはずですよ!」

「うっ、ありがとうリサーナ。先に出口付近で待っててくれる? すぐ戻るから! アルマさん、リサーナのこと頼みます」


 私の言葉にアルマさんとガルスが目を合わせて頷く。そこは私と頷くところじゃないかな?


「わかったわ、アスカちゃんの強さなら往復なんて余裕なのね」

「はい! ありがとうございます!」


 この時、アルマさんとガルスの雰囲気が少し変だった事に気付いていたが、卵の事でパニックになっていた私は気にせずに再び二十九階層へ向かった。



 リサーナと数瞬の別れを告げ、全速力で迷宮を駆け抜ける。私が全速力で走ると周りに衝撃波が、ソニックブームが出来る。それを小さめの魔法結界を発動させて結界の中に収めることで周囲への被害を最低限にしている。


 体感では三十分もかからず二十九階層へ辿り着く。

 奥へ進み、コカトリスの巣を探す。どうやらこの階層のあちこちに巣があり、アルマさん達が倒しきれなかったのは全てのコカトリスが一箇所に集まったのが原因だろう。


「あった......!」


 コカトリス三匹ほどがスッポリと入れるような巣の中に四個ほど卵が置いてある。大きさは私より少し小さいくらいだ。

 全ての巣を回ったが、回収出来た卵は合計で五十個ほどだ。


「えへへ、これでもう大満足だよ」


 卵の回収を終わらせるのとほぼ同じくして、リサーナに放ったマーキングが視界の端で赤く点滅し始めた。

 これはマーキングした相手に命の危機が迫る時などに赤く点滅する。


「っ!? リサーナっ!」


 私は再び音を置き去りにする速さで駆け登る。

 リサーナのマーキングが迷宮の出入口の前の広場にて、大量の人に囲まれているのも確認した。


「なんで......まさかっ!?」


 私はこの時、アルマさんとガルスの不自然な感じを思い出した。


 裏切り。


 これは私の完全な失態でもある。卵のためにリサーナを一人にしてしまったからだ。だが、こうなってしまってはリサーナを助けるのは難しい。

 本当はこのままリサーナを連れてこの街を出るのがいいけど......追手が来ないなんて事は無いだろう。


 アルマさんと敵対する事はしたくなかったが、こればかりは仕方ない。


「ごめんね、リサーナ」


 初めて出来た異世界での友達。彼女だけは絶対に守る。私は一人そう誓い、迷宮を駆ける。


 低層付近まで来た時、冒険者が私を見つけて攻撃しようとしてくる。私は今、自分でも驚く程に冷徹になれた。

 私の通った後には冒険者だった物が肉塊となり血溜まりに落ちる。


 リサーナのマーキングの点滅が更に激しくなったのとほぼ同時に迷宮の出口の前に飛び出る。




「リサーナっ!!」



 体のあちこちに傷を作り、血を流し倒れるリサーナに駆け寄った。

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