17話 焼き鳥は出来立てで
ブクマ&評価ありがとうございます!
日に日に増えていくことに嬉しすぎてジャンプしたら背中を痛めました。辛いです。
人物紹介をどこかで挟まないと作者でも忘れていた設定とかありそうで怖いです。どこか区切りの良さそうなところで人物紹介を入れたいと思います。
「コカトリスさんどこにいるんですかね......?」
「全然見つからないね、予定日までもう一日切ったのに」
現在私達がいる階層は二十八階層。
コカトリスがいるとされていた階層よりもかなり深くまで潜ってきている。
今までに何回か休憩を挟んで進んできた。リサーナが休憩で寝ている間にフロア全体を見て回ってコカトリスの痕跡などを探す。それでも見つからないため、どんどん奥へ来てしまったと言う感じだ。
私は食事を必要としていないが、リサーナは人間なので時々アイテムボックスから保存食などを出してあげている。もぐもぐと可愛く食べるリサーナを見ると癒されるので主に癒しを求める時に食べ物をあげたりしている。
餌付けしているみたいだ。
「むっ、アスカ今なんか変なこと考えていませんでしたか?」
「ふふっ、何も考えてないわよ」
むー。と恨めしそうにこちらを睨むが可愛いのでむしろプラスになっている。
ここに来るまでに魔物はほとんど素手で仕留めている。二十五階層辺りまでは、リサーナが怖がるので進路に先回りして殲滅してからまったり進むというのが私達流だった。地面についた血などは水魔法で洗い流して、肉や毛皮などはアイテムボックスに無理矢理収納している。
「そろそろ引き返さないと予定日を過ぎてしまいそうですね」
リサーナも迷宮は慣れてきたのかそんな事を言った。
「ギリギリまで粘るつもりだけど、予定日ギリギリになったら私が全速力で走るだけだから」
「うっ、またあんなに速く走るのですか......」
おや、衛兵達から逃げる時は結構落として走ったつもりだったんだけどそれでも速かったか。
そんな事を話しながら今までよりも少しペースを上げて進む。
しばらく探索をしていると二十九階層に向かって、下に伸びている階段を見つけた。
「うーん、二十九階層を探索してもいなかったら一度引き返そうか」
「楽しかった冒険ももう終わりなのですか......。コロン達にお土産を持ち帰れたらいいですね!」
ふむ、オジサン達にはお世話になりっぱなしだし何か良いものがあったらそれをプレゼントにしようかな。
最悪何も無かったら一番大きな魔法石、キメラから取れた魔法石でも渡すことにしよう。
プレゼントするならどんなのがいいかと考えながら階段を降りていく。
降りきったそこには――
「ちょ、多すぎだって! 流石にそろそろまずいかも? そこ隙ありぃ! ほらガルス、しっかりして! えぇと状態異常回復魔法っと、うわっ! あっぶなぁい! 回復してる時は攻撃しちゃダメなんだぞ! こら! ん? あぁ! 誰か来てる! 探索隊かな? おぉーい! こっちこっちー!!」
ようやく見つけた大量のコカトリスに囲まれながらなんとかガルスを庇っている一人の女性、アルマさんがいた。
戦いながらあのマシンガントークとか舌を噛んだりしないのだろうか? あ、噛んでるわ。
でも私の事には気付いてなさそうだからさっさと助けてコカトリスを貰わねば!!
「アスカ! アスカ! あれがコカトリスさんなんですね! それにしてもおっきーですねー!」
「でかい......」
少し離れているが、遠目でもわかるほど大きい。
アルマさんと比べるとアルマさんを一呑みにしてしまえるほど大きい。
鶏のような姿、所々に見える金色の羽毛。そして尾からもう一つの命のようにうねっている巨大な蛇の尾。
「「「こけぇぇぇぇぇぇえ!!」」」
何匹かがこちらを見つけ、鳴き声をあげる。
見たまんま鶏の鳴き声で少し笑いそうになったのは秘密だ。
「リサーナは隠れてて! 全部狩ったら卵探しに行こう」
「わかりました! 見つからないようにしますね!」
うーん、逞しいような残念なような。
かわいそうな子になっていきそうで心配になってくる。過保護? 知らない子ですねぇ。
三匹がこちらへ地面を砕きながら走ってくる。
それにしてもこんなのが外に出現でもしたら村なんて一瞬で無くなるんじゃないか? と思ったので後ほど聞いてみたのだが、迷宮では魔物が強くなっているらしく、外に出ているコカトリスは大きくても人間の二倍ほどの大きさだそうだ。
「さぁて、血抜きしやすいように首を狩らせてもらいますよー」
やったことはないけどチキンがそんな感じなので適当にやれば大丈夫だろう。あと、毒のありそうな尻尾と切って消毒しないとね。
コカトリスは三匹でフォーメーションを組んで戦おうとしている。それなりに知恵がありそうだな。このまま強くなれば人間なんてなんのその! で蹂躙できそうだけどそもそもこの階層の入り口より大きいから出ることなんて出来ないか。
まぁ、私がここで殺すから無理なんだけどね。
まずは一番近くにいるコカトリスの首元目掛けて地を蹴る。目標を見失ったコカトリス達は私を探すように尻尾の蛇をキョロキョロさせる。
なるほど、蛇の方で索敵とかをするのかな。
コカトリスの首元に辿り着いたと同時にお気に入りと言うか、思い入れのあるナイフで切り裂く。
魔力でコーティングをすると切れ味そのままにリーチが伸びることを知ったのでそれを利用して首を落とす。
首を落としてもまだ動けるようで、怒り狂ったように足を踏み鳴らす。そして尾の蛇を根元から切り落とすと、完全に動きが止まった。
「うーん、頭と尻尾切れば倒せるって感じかな。めんどくさいけどこれもお肉のためだ......。頑張ろ」
スタッと死体の前に降り立ち、アイテムボックスに放り込む。背後で殺気が膨れ上がるのを感じて振り返ると。
「「こけぇぇぇぇぇぇえ!!」」
仲間が殺された事に怒りをあらわにする二匹のコカトリス。
鋭い嘴で勢いよくつついてくる。つつく。名前だけ見れば可愛らしい攻撃だが、コカトリスが放つつつくは全てを砕き貫く必殺の攻撃。
いくら私でもあんなの食らって生きていられる気はしない。いや、多分ちょっと怪我するくらいかな。
ひょい、ひょいと身軽に躱しているが、私の周辺の地面にはいくつもの穴が開いてしまっている。
「足場が不安定だな、それっ」
そう呟き、こちらに向かって嘴を突き出すコカトリスをすれ違うように避ける。すれ違いざまにナイフで切り裂きダメージを与える。
私は後ろで傷付き倒れかけるコカトリスに向かって再びナイフを振るう。首と尾が吹き飛び絶命する。
アイテムボックスに収納するのは忘れない。
「こけぇぇぇぇぇぇえ!!」
残り一匹になったコカトリスがブレスを放った。
石化の吐息
それはコカトリスの持つ固有スキルの一つで、それを食らうとたちまち石化してしまうという。
「うわっ、危なっ!」
最後の一匹に向かおうとしてブレスを放たれたので咄嗟に空中へ逃げる。
しかし、バランスを崩しているのでコカトリスの追撃の蹴りをマトモに受けてしまった。
普通の人なら骨を粉々にされ、内蔵も破裂させるほどの強烈な蹴り。
「こけぇぇ!」
壁に叩きつけられた衝撃で壁に亀裂が走るほどの威力を食らわせてご満悦そうに鳴くコカトリス。
しかし残念ながら私は普通の人では無かったのだ!
「イタタタタ。油断したわぁ、次からは気を付けることにしよう」
無傷の私を見てコカトリスは呆然としている。
そんな隙を逃すわけもなく、一瞬で開いていた距離を駆け、首と尾を綺麗に切り落とす。三回もやれば慣れるものだ。
ふと、アルマさんの方を見る。
別にコカトリスに集中してて忘れてたとかじゃないですからね。
「もぉー! そろそろ、やばいんですけどー! ガルスさっさと起きてよー! 私、こいつら倒したらアスカちゃんの美味しいご飯を食べるんだ。ってあぁ! いったぁい、ちょっとやばいかなー?」
マシンガントークは相変わらずだったが少し危なさそうだ。それに私の分のコカトリスまで狩られたら困る。正直三匹分でもかなりの量があるからもう鶏肉に困ることは無さそうなのだけど。
「私のっ、獲物だぁ!」
それなりに離れていたがそんなの私の前じゃゼロ距離も同じ同じ。
「えっ? あ、アスカちゃん!? なんでこんなところに!? あぁ、そうか、私はもう死んでしまったのね......。これは夢なのね......」
なんか変なこと言い出したのでアルマさんの近くのコカトリス数匹を葬ってアルマさんを現実に引き戻す。
パチン。
「あいたぁぁぁ!! 何してくれんのさ!! 私これでもそれなりに強いんですけどぉ! その私にビンタだけでダメージて、痛いんだけど! ってあれ? アスカちゃん? 夢じゃなかった! 私、生きてるぅ!」
地上でもそれなりにうるさそうだったけど迷宮入ったらもうウザいくらいにうるさい人だ。
人が変わったようにはしゃいでいるから、きっと迷宮ハイってやつかな。
「その前に早く片付けたいので下がっててもらえますか?」
「え? この数は逃げた方がいいって、アスカちゃんどんな特殊スキル持ってるの? ちなみに私はまだ隠してるスキルありまーす! うふふー」
え? アルマさんってこんなにウザいの? すっごい殴りたいんだけど。
とりあえず説明は後にして早く下がってもらわないと私のお肉が......もとい、コカトリスを退治できないのですよ。
「いいから、下がって待っててくださいね。すぐ終わりますから」
そう言って魔法をイメージし始めるとアルマさんはガルスを引き摺って後ろへ下がっていった。
コカトリスは私の魔力を感じているのか、安易に手を出しては来ない。やっぱりそれなりに利口だな。
ふむ、魔法のイメージは固まったけどその前に数の把握だ。私から見た感じだと全部で六十ほどなんだけど実際はどうなんだろうか。
魔法で作った目では生物の確認は難しいので実際にフロアを駆け巡って数えることにした。
その途中、コカトリスから攻撃を受けることもあったが、往なすだけなら簡単なのだ。
「ふむ、見えなかったけどもっと奥にもいるのか。全部で二百五十くらいかな?」
この大きさでこの数と言うことは二十九階層はかなり広いと思われる。
再びコカトリスの群れの前に戻る。
すると前の方にいたコカトリス五匹が魔法を唱えた。
「「「「「こけ、こけぇぇぇぇぇぇえ!!」」」」」
その直後、私の上に魔法陣が現れ、凄まじい音と衝撃が私を襲う。
雷撃
コカトリスが使用するのが得意な雷魔法。儀式魔法のように複数で唱えることもできる範囲攻撃技。
範囲攻撃技を単体用に力を凝縮したのだろうか。私の帽子が焼け焦げてしまった。
私の方は雷耐性持ってるから無傷に決まっている。少しびっくりして魔法のイメージが消えてしまったのは誰にも内緒である。アルマさんは気付いていたっぽいけど?
瞬時にイメージをし直す。すぐに完成させ、魔法を全てのコカトリスに向かってロックオンする。
私の中で周囲に被害を出さない数少ない魔法だ。
「火球! 無限花火!」
私の後ろに無数の魔法陣が浮かび上がり、そこから連続して黒の炎の弾丸を発射する。
それらは全てコカトリスに当たり、黒の炎がコカトリスが死ぬまで焼き続ける。
「こ、こけぇぇぇ!」
最後の一匹が燃え尽きたと同時に黒の炎も消え去る。
ここら辺の調節はバッチリなのよ。
「あ、アスカちゃんすご......」
後ろでアルマさんが呆然としていたけど今はそんな事よりもコカトリスの焼死体を回収することに専念する。ちょうどいい焼き目が付いて鼻腔をくすぐるいい匂いが迷宮に溢れる。
ぐうぅ〜
と、可愛らしく迷宮に響き渡るお腹の音の正体は、
「アスカぁ......お腹すきましたぁ......」
残念王女様のリサーナだ。さっきまで隠れていたのに私が魔法を使い始めた辺りからひょっこり出てきていた。
「はいはい、待ってね。もう少し焼いた方がいいかな?」
全てを回収した後、一匹を取り出して少しずつ焼きすぎないようにコカトリスを焼いていく。
ちゃんと毒のある尻尾を切り落として、軽く毒消しの魔法を使っているので毒はないはずだ。
「でも、待てよ、今のアスカちゃんの使ってた魔法って黒の炎だったよね......? でもあれは魔王しか使えないって話だし......それにこの時期に......うーん、やっぱりそうなのかな......」
ブツブツと言っているアルマさんと、結構前から意識が復活していたガルスを放っておいてリサーナと焼き鳥の試食をする。
食事ではなく、あくまで試食の時間だ。
この香ばしく焼けた匂いに勝てる人間などこの世にいるだろうか? 否だっ! 私は匂いだけで確信する。これは美味いっ! と......
大きなテーブルと椅子をアイテムボックスから取り出して、テーブルにドスンとコカトリスの焼き鳥を置く。それにしてもかなり大きい。
「いただきます」
「いただきます!」
リサーナは一口が小さいので小さく切り取って渡す。
私は小骨(サイズ的には腕と同じくらいの大きさ)を握ってそこに付いている肉に齧り付く。夢のマンガ肉である。
「お、美味しい......!」
「美味しいわ! アスカ!」
キャッキャと効果音が付きそうなほど楽しく食べる私達。
しかし、背後ではアルマとガルスが険しい表情でこちらを見ていることに気が付くのはコカトリス丸々一匹を食べた後の事だった。




