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最強魔女さんの混沌とした日常  作者: クリオネ
第一章
13/108

12話 小物王子とイケメンオジサン

ブクマありがとうございます!

嬉しすぎて駆け回っていたら角に足の小指をぶつけました。痛いです。


 街の人と仲が良いらしいからすぐに見つかるといいな。




 ―――すぐに見つかるといいな。




「ごめんねぇ、空いてる部屋無いのよぉ」

「もう空いてねぇよ、他のとこ当たんな」

「さっきまでなら空いてたのにねぇ、ごめんなさいね」



「どこも空室無しだね」


 私はジトーっと半眼でリサーナを見る。


「こ、こんなはずじゃ無かったのです......。つ、次の所へ行きましょう!」


 冷や汗を垂らしながらもどこか嬉しそうに私を先導するリサーナ。まぁ、このままどこも宿が見つからなかったらお城に来てくれると思っているのだろうね。


 そうなったら私はクエストでも受けて時間を潰すけどね。


 私は今、リサーナと一緒に宿探しをしている。

 最近の異変のせいで近くの小さな村や町から女性や子供らが、城塞都市であるここに避難しに来ていると言うこともあって、宿屋がなかなか空いていないのだ。


「次って......もう残ってるのは貴族街の西区だけだし、私はそんな所に泊まりたくないわよ?」

「それじゃあお城に――」

「行きません」


 ことある事に誘ってくるな......。疲れるぞこれ。


 そんな時、私達の横に数台の馬車が停まった。

そこから、見るからに精鋭たる兵士達がぞろぞろと降りてきて私達を囲った。


 私達の前に道が出来て、そこを1人の少年が悠々と近付いてくる。


「やぁ、リサーナ。どこへ行ったのかと探したよ? 僕と遊ぶ約束だろう?」


 私の事なんて最初からいないように喋っている。

 それにリサーナに対してのこの口調、リサーナと同じ、王族だな。偉そうだし。

 背後からキュッとローブを握られくっつかれた。

リサーナだ。震えていて今にも泣き出しそうだ。


「お、お義兄様......。私はまだ自由時間なはず、です......」


 震える声を絞り出しているがところどころ掠れている。

 そんなリサーナの腕を掴みあげ、そのまま引っ張って行こうとする。


「......っ!」


 引っ張られていく時、リサーナは私の方を見て言った。


 ごめんなさい――と。


 こんな私と関わったばっかりにこんな目に合わせてしまった、もう私とは関わらない方がいい。

 そんな悲壮感に満ちた表情で......。


 私も大概、お人好しなのかもしれないね。


「待ちなさいよ」


 泣き顔のリサーナが抵抗して振り向く。

 リサーナの抵抗など無いにも等しいのだが、初めて抵抗されたようで偉そうな男は驚いてこちらを見る。


「なんだ貴様は。無礼者めが。総員、コイツを捕らえろ。牢屋にでもぶち込んでおけ」


 そう言うと踵を返して馬車の方へリサーナを引っ張って行く。リサーナはまだ泣いていた。


 偉そうな男が馬車へ乗ったのとほぼ同時に私を囲んでいた男達が私を捕まえようと近寄ってきた。

 そして腕を掴まれた。正当防衛ならいいよね。


「そっちから手を出したんだからね。私は、自己防衛しただけよ? 天嵐(テンペスト)


 その瞬間私を中心にして巨大な竜巻が起こる。

 ちょっと久しぶりの魔法でかなり手加減してやっているのだけれどこの威力。前世で言う竜巻のレベルだとF3辺りだ。


「なんだ!?」

「魔法だと!?」

「こんな威力を!?」

「ば、化け物だぁ!!」


 そんなことを叫びながら上へ下へとシェイクされ、適度に刻まれていく。

 酷い言われようだがちゃんと致命傷で済ませてあげてるんだ。感謝すらして欲しいくらいだよ。


 ドサドサドサと、私の背後に男達の山が出来上がった。

 外の異変を察知して、偉そうな男が馬車から飛び降りてきた。リサーナは反対側から心配そうに見ている。


「き、貴様! 一体何をやったのだ! 僕に手を出すとは死罪だぞ!」


「先に手を出してきたのはそっちですよ? それに後ろの雑魚さん達は死んでないですけど早くしないと手遅れになりますよ? リサーナは私との用事があるんで、早く行かせてもらえませんかね?」


 フードの下から2回目の不敵な笑みを浮かべる。

脅迫とかのスキルが欲しいところだ。


「ひっ! こ、こんな女のどこがいいんだよ! クソが! 僕に楯突いたこと後悔させてやるからな!」


 そう言うと馬車を走らせて城の方へ走っていった。

典型的な坊ちゃんじゃないか。めんどくさいことこの上ないな。


「あ、アスカ......? 大丈夫なの......?」


 心配そうに私と後ろの男達の山を見ている。


「全然平気よ? それよりもリサーナは大丈夫なの? 痛いところはない? それにしてもあの男はなんなのかしらね、常識が成ってないわ」


 やれやれと肩を竦ませながらリサーナに回復魔法をかけてあげる。


「あ、あれ? 体の傷まで......」


 時間が経っている傷でも治せるのか。深い傷はまだ治ってはいないようだが。

 私の魔法チートだなぁ。風魔法も初めて使ったけど殲滅力高くて街中じゃ使いづらいわ。


 それから、リサーナから話を聞いたのだがどうやら私はやらかしてしまったようなのだ。

 先ほどの偉そうな男は偉そうな、じゃなくて本当に偉かった。


「彼は第二王子、王位継承権第3位のソーンお義兄様です。その地位を利用して女遊びをしたり、適当な人を拷問だと言って殺そうとしたり......」


 かなりクズだった。

 これで王族から目を付けられたら嫌だなぁ。

 はぁ、まったり適当に余生を過ごしたかっただけなのに......どうしてこうなったんだろうか。

 うーんうーんと悩んでいたらリサーナから呼ばれた。


「あの、アスカ......?」

「何かしら? 早く宿を探さないといけないわよ?」

「そ、その......。助けてくれて、ありがとう」


 深々と頭を下げてお礼を言ってきた。


「本当は、もうダメかと、私のせいでアスカが処刑されちゃうかと思って......でも、でも! アスカはまた私のことを助けてくれた! 本当に、嬉しかったの......」


 少し泣きながら、もう離さない! と言ったようにギュッと抱きしめてくる。

 なんだかデジャヴを感じたけどリサーナに抱きつかれるのはもう慣れた。


「はいはい、可愛い王女様は泣き虫で甘えん坊ですからね」

「そうよ、アスカの前では泣き虫で甘えん坊であるって決めたのですから」


 そんな勝手に決められてもね......


 おやおや、これ以上ここにいると騒ぎが大きくなりそうだから早くここを離れないとだな。衛兵達が近付いているのがわかる。


 リサーナをお姫様抱っこで持ち上げて少し走る。

急にお姫様抱っこされて驚きながら照れているリサーナを微笑ましく思いながら走る。

 極力地面を破壊しないように走るが、その速さは残像が残るほどだ。走っている間は耳元でずっとリサーナが叫んでいた。




「で、どうして嬢ちゃんはリサーナ様を抱っこしてここに来てんだ?」

「オジサンなら何とかしてくれると思いまして」


 今はアルテナ商会に来ている。

 娘さんはドレスの寸法や生地選びなどで予想以上に長引いてしまったため、オジサンだけ先に帰ってきたらしい。


「王子様に楯突いたからしばらく匿ってほしい......ねぇ。正直長い事この商売やってるけど、そんなアホな依頼をしてきたのは嬢ちゃんが初めてだよ」


 王子様に立ち向かわないのだろうか?

 嫌なことされてるっぽいけどやっぱり権力が敵だと泣き寝入りするしかないのだろうか。


「嬢ちゃんはやっぱり面白いヤツだな! 俺の大切な客人だ。俺の家の部屋を貸してやろう」


「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」


 やっぱりオジサンはいいヤツだな!


「リサーナ様、我々アルテナ商会は貴女様を客としてもてなしますよ。だから、何も気にせずゆっくりして下さい」

「はい......。はい! 本当に、ありがとうございます! こちらにご迷惑をかけることは極力控えます」


 また泣いて感謝している。相変わらずリサーナは泣き虫だなぁ。まぁ、今までの境遇を考えると仕方ないことかもしれないしね。

 そんな時、アルテナ商会の扉が思いっ切り開かれた。


「アルテナ商会! このような者を見なかったか! 黒いローブ姿の魔法使いだ! リサーナ第三王女を連れ去った者として指名手配をする! 見つけた者には報酬金を差し出すと王からの命令だ!」


 丁度、私達のいる所は入口から死角のため見えていない。


「嬢ちゃん達、奥に行ってな。危なくなったら俺の家に行きな。鍵は開いてるはずだからな。あと俺の嫁にコイツを見せれば匿ってくれるはずだ。――おい! いきなりで物騒すぎやしないか? そんなヤツは知らんぞ! 商売の邪魔だ、手配書置いたらさっさと行ってくれや! 客が怖がっちまうだろう!」


 くぅ! オジサンがイケメンだ!

 オジサンの好意を無駄にしないためにさっさとオジサンの家にお邪魔するとしようかね。

 どうやらアルテナ商会に来た兵士達はすぐに帰ったそうだ。


「リサーナ、行くよ」

「わかりました!」


 オジサンから受け取った紙を持って裏口からオジサン宅へ走る。


 道中、走りながら街の様子を見ていたのだが、街の隅々まで私の手配書が出回っていてかなり不味いことになっている。


 それはオジサン宅でも同じことだった。

 オジサン宅には私が吹き飛ばした兵士のうちの1人が怪我しているのに無理をして来ていた。


「――なので、黒いローブを着た魔法使いを見かけたら情報を差し出すように! ヤツは危険な人物であるから気を付けるように」

「あらあら、街も物騒になったものね」


 んん? あれがオジサンの嫁さん? めちゃくちゃ美人じゃないか!! なるほど、娘さんがあんなにも綺麗なのは納得できる。


 衛兵達が去ったのを確認してドアをノックする。リサーナは目立つから少し離れた場所で隠れてもらっている。


「はい、どちら様......ってあら? 黒いローブさん? 私まで攫われちゃうのかしら?」


 結構やんわりとした人妻だな。

 私はオジサンから受け取った紙を渡す。


「あらあら、あの人ったら面白いわね。うふふ」


 何が書いてあったのか知らないけど何が面白いのだろうか。


「どうぞ、お入りになってください。リサーナ様もご一緒なのでは?」


 そう言われてリサーナを連れてくる。


「あ、あの......リサーナです......」


 借りてきた猫みたいに大人しいな。

 軽く挨拶すると家の中に通された。

 オジサン宅はこの街でも一般的な木材を使った家だが、大きさが違ってこちらの方が2回りほど大きい。


「自分の部屋だと思ってくつろいで下さい。もうすぐコロンも帰ってくるでしょうし、夕飯の支度を始めますね」


 あっ、夕飯ってことは美味しくないご飯を食べなきゃいけないのか......

 さすがに色々助けられているのにそのご好意を無下にする事は出来ないもんね......


 早く親子丼が食べたいなぁ。

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