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鬼ノ物語  作者: フ一三ソ
7/27

7話 読心

結局何されたのか分からないまま、不思議に思いながらも眠ることにした。

ㅤ少しだけ話して疲れたのだろう。柔らかなベッドに包み込まれるように眠った。


ㅤそして次の日の朝、1人ボーッと朝食を食べているとシュリさんがやってきた。


「おはよう」

「おはようございます」

ㅤ(今日も可愛いなぁ)

「えっ?」

「えっ?」


今何か聞こえたような……気のせい……?


ㅤ(ご飯が進むぅ……)

「あ、あの……」

「な、なんだい?」

「今日も可愛い……とか、ご飯が進むって……どういう事ですか?」

「えっ!?」

ㅤ(声に出してた!? いや、そんな筈はない……)


明らかに口を動かしていないのに、シュリさんの声が聞こえる。

ㅤまるで……そう、まるでユキさんが言っていたような、心を読んでいる感じだ。


「……まさか……」

「ニオちゃん……ね、寝ぼけてるのかい……?」


昨日の夜、ユキさんが何かを呟いた時に俺の体が光に包まれた。その時にこの能力を貰ったのだろうか。

ㅤ確かその後それらしい事を言っていた気がする。


「ニオちゃん……?」

「ん、あ、ね、寝ぼけてただけみたいです……ごめんなさい」

「あ、あぁ〜いいんだよ。さ、食べよう」

ㅤ(心読まれてるのかと思ったよ……ふぅ)


なんだろうこの新感覚は……相手の思ってる事が全て分かる。つまりだ。相手が俺を嫌っていたら心の中の悪口が俺に聞こえるという事だ。そ、そんな人いないよな……。

ㅤ周りの人を見渡すが、何も聞こえない。どういう事だ? 近くにいるシュリさんの心の声だけは聞こえる。


ㅤ(キョロキョロしてどうしたんだろ)


そんな声が聞こえてた直後、シュリさんも周りを見渡した。


「どうかしたのかい?」

「あ、いや。別になんでもないんです」

ㅤ(不思議だねぇ……)


今俺は不思議だと思われてるのか。あまり変な動きはしない方が良いのかな?


「そういや、昨日は眠れたかい?」

「あ、はい。ユキさんがお話してくれて……」

ㅤ(勇者様は小さい子に優しいね)

「良かったねぇ、また後で勇者さんと遊ぶのかい?」

「ん〜……」


今ユキさんは1人でいるな。特に忙しそうではないし、話せるだろうか。


「まだ分からないです」

ㅤ(これはチャンスかも)

「じゃあ私と遊ばないかい?」

「い、いいですけど……何するんですか?」


ここで出来る遊びなんて何も無いと思うのだが……。


「本、読んであげよっか?」

ㅤ(小さい子は本が好きだからね)

「お気持ちは嬉しいですが……そういう年齢では無いので」

「あっはっはっ、そうだったね」


まるで母みたいに接してくるな。母がどういう者なのか知らないけど。

ㅤでも、こうやって相手の本心を知れるっていうのは有難い事だな。自分も話しやすくなる。


ㅤもしかすると、ユキさんはこの為に能力をくれたのだろう。後でお礼を言わないとな。


ㅤと思っていると、ユキさんがやってきた。


「おはようございま〜す」

「あ、勇者さんおはようございます」

「おはようございます」


いつもの調子でニコニコと声をかけてきた。


「ユキさん……えっと……昨日はありがとうございました」

ㅤ(どう? 意外と良い能力でしょ?)

「また眠れなかったらお話しようね〜!」


どうやら能力を上手く扱っているようだ。心の中で本当の事を言って、他の人には別の事を話しているかのような会話にしている。


ㅤ(ニオちゃんの心は読み取れないけど、意識して私に話しかけたら分かるよ)

ㅤ(こ、こうですか……?)

ㅤ(そうそう! 良かった、これで夜も静かに話せるね!)


俺とユキさんの不自然な笑顔に、シュリさんが不思議そうな顔をしている。

ㅤ面白いなこの能力。使い方次第では良いことに使えそうだ。


朝食を食べ終わった後、外に出てみないかと誘われたが断った。まだ怖くて出られないのだ。

ㅤ「構わないで好きにしてていい」 と伝えて、俺はベッドで横になった。

ㅤ外に出れない人は本当にすることが無い。外は危険なのに、外に出ないと何も出来ないというのは辛い。

ㅤ俺も外に出たいとは思うのだが、どうしてもアイツらを思い出して動けなくなる。少しずつ慣れないとな。


静かに壁を見つめてると、段々脳が活動しなくなってきた。体が女になり小さくなってから、眠くなる事が多くなった気がする。

ㅤお腹一杯だから、という事もあるのだろう。このまま起きてても何もないので、そのまま眠ることにした。


ーーーーー


本当に平和だ。朝食を食べて眠って昼食。かなり生活リズムが悪いと思うが、アイツらに支配されていた頃より確実に平和だ。……あまり思い出したくない。

ㅤ太陽も登って、かなりポカポカした時間になった。


ㅤ外では今もキャッキャウフフと遊ぶ人達がいる。とても平和だ。


「ニオちゃ〜ん」

「あ、ユキさん」


どうやらユキさんの心も、他の人と違って読めないようだ。意識して話すことはできるが、ユキさんに対しては役に立たない能力だろう。


「今日の夜、皆で魔法の練習をしようと思うんだけどね」

「魔法!」


ついに魔法の練習が出来る!!


「その為には外に出ないといけないの」

「……」


上げて落とされるのは嫌いだ。


「そ、そう嫌な顔しないで……ニオちゃんが外に出れないのは知ってるよ」

「じゃあどうするの?」

「少しずつ外に出る練習しよ? ニオちゃんも、外で走り回りたいって気持ちはあるんでしょ?」

「う、うん……」


この恐怖を克服できるのだろうか。かなりのトラウマを植え付けられた俺が、外で走れるのだろうか。


「焦らなくても少しずつで大丈夫。まずはあの扉に近付く練習からしよう?」

「じゃあ今日の夜はどうするの……?」

「外に出れない人以外で……練習かな」


ってことは見学扱いか。まあ……仕方ない。


「分かった」

「良かった……じゃあそれだけだから、またね!」

「また」


ついに今日の夜、この目で魔法が見れるんだな。

ㅤ遠足以来のワクワクに心が踊った。

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