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鬼ノ物語  作者: フ一三ソ
23/27

23話 心配

ユキさんの部屋に入れられて、なんとか俺が着れるような服を着せてくれた。


「とりあえずこれで大丈夫だから」

「あ、ありがとうございます」


それは白い半袖のワンピース。脚がスースーして慣れない。


「カケルの所に行こっか」


そういってまた手を引っ張ってきた。忙しい……、


カケル様は、カケル様の部屋に戻っていたようで、座ってソワソワとしていた。髪が濡れている。


「着替えさせたから、もう大丈夫」

「そうか。池の中には何も無かった。ニオで間違いないだろう」


なるほど。まだ池の中に子供の俺が沈んでいないかと確認しに行ったのか。……にしても、あの池の主はどこに居たんだ?


「凄い美人さんになったよね……」

「そ、そんな……美人さんだなんて……」

「そうやってすぐ挙動不審になるのも、ニオらしいな」


そういう癖まで見られていたのか。

俺は無意識に、膝の上に乗せている黒刀を握りしめていた。2人に何と言われるか不安だからだ。


「あ、あの……」

「ん?」

「なんだ」


なんだか、2人の返事が素っ気なく感じるのは気のせいだろう。


「突然姿が変わって……その……カケル様とユキさんがどこかに行ってしまいそうで……あのっ……」

「大丈夫だ」


必死で何かを伝えようとした。2人と離れたくないという思いを、必死に表現していた。そして、カケル様は大丈夫だと言った。


「お前はニオだ。ずっと守ってやるって約束したよな」

「信じて……くれるんですか……?」

「信じるも何も、信じるしかないじゃない。ね?」

「ああ。ニオはお前しかいない。俺達にとって特別な存在であるニオは、姿は変わっても大事だという気持ちは変わらない。

だから、心配するな」


ああ……やっぱりカケル様はとても優しい。

姿がどう変わったとしても、気持ちは全く変わらない。今まで通り大事にしてくれる。

俺が2人を信用しないでどうするんだ……。


「ありがとうございます……」

「私としては……カケルの周りに美人さんが増えるのは良い気はしないけど、ニオちゃんならいいかな」


身体が変わったとはいえ、カケル様を手に入れれる訳じゃない。池の主は努力次第だと言った。


「改めて……これからよろしくお願いします……」

「そう畏まるな。今まで通りに接せれていないのはニオの方じゃないか」

「そう……ですね…………。すみません」

「すぐ謝るところはニオちゃんらしいよね」

「すみませっ……?」

「ふふふっ」


まあ、一先ずは2人とは今まで通りの関係を保てて嬉しい。身体が成長した事で、いままで出来なかった事も出来るようになるだろう。

それに、脳も成長した気がする。いつもは考えすぎると頭が痛くなったりしていたが、成長してからは痛くならない。


今気づいたのだが、角が視界に入ってきている。それだけ伸びているという事だ。角も身体と一緒に成長しているのだろう。


「でも、今日から3人で寝る事は難しそうだね」

「ん? 俺は別に大丈夫だが」

「そうなの? じゃあ3人で一緒に……お風呂は私とだね」


そうか。俺はもうカケル様の大きなブツを見る事は出来ないのか。


「? どこ見てる……の……」

「な、なんだ」

「もしかしてだけど、ニオちゃんはカケルの……見た?」

「……」


縦に頷いた。


「カケル! 小さな女の子の全裸見たの!?」

「わ、悪いか? 洗ってやらないとダメだろう」

「そう……だけどっ! 使用人とかいるよね!? もしかして見たかったからじゃないよね!?」

「違う! ちゃんとニオの為を思ってだな……」


俺はどうやら考えすぎていたようだ。

いつもと変わらない2人の様子を見て、少しだけほっとした。


ーーーーー


「ニオちゃん! お風呂入るよ!」

「は、はい」


更衣室でワンピースとパンツを脱がされて、ユキさんも全裸になった。


「っ……」

「わぁ……ニオちゃんの筋肉凄い……」


身体をまじまじと見つめられると恥ずかしい……。

でも、こういうのって普通なのだろうか。同性同士だから、別に変な事はしていない。意識しすぎだろう。


「ユ、ユキさんの胸も……大きいですね」

「胸だけは勝ってるからね〜」


腰に手を当てて胸を張ると、ぽよんと動いた。柔らかそうだ。


「身体洗うね」

「じ、自分で洗えます」

「駄目だよ。身体は大人になっても、まだ子供なんだから」


そういって、俺を椅子に座らせて身体を洗い始めてくれた。


「く、擽ったいです……」

「優しく洗わないと肌が傷付くからね」


タオルも何も使わず、手の平だけで洗っている。


「んんっ……」

「胸……これ以上成長しないかも……」


胸を触りながらそう言われると、本当にそうなんだと思って落ち込むから辞めてほしい。


しばらく耐えていると、今度は下半身へと手が伸びてきた。


「っ!?」

「駄目だよ。そこもしっかり洗わないと」

「で、でも……」

「恥ずかしいのは分かるけど、我慢我慢」


ーーーーー


「はぁ……」


全身をくまなく洗われて、浴槽に浸かっている俺は完全に脱力しきっていた。


「ニオちゃ〜ん。女の子同士なんだから、ここでしか話せない事話そうよ。おいで」

「は……はい」


断る訳にもいかないし、ユキさんの隣に座る。


「ほんと今更言うのもアレだけど……聞き流してくれて構わないよ。あのね」

「はい……」

「暗殺者達が攻めてきた時、何人かは助かったって言ったけど……あれは嘘なの。

奇跡的にニオちゃんだけ助かって、王国一の治癒魔法師に治癒して貰って……実は、ニオちゃんは本当に特別で大事な存在なの」


俺だけ助かった……?


「シュリさんは……?」

「あの人……多分、死んでる。確認はしてないけど、あの状況では生きられないよ……」


本当に何があったのだろうか。ユキさんですら負けてしまう、帝国軍の暗殺者グループ。

シュリさんが死んだ……。じゃあ俺は、皆の仇を取らないといけない。皆の命を犠牲に俺だけが生き残った……本当に申し訳ないけど、その分幸せに生きないといけない。


「絶対に……仇を取りましょう……」

「っ! だ、ダメ!」

「っ……」

「あ、ごめん……でも、絶対に戦おうなんて思っちゃダメだよ……」

「分かりました……」


こんなに怯えるユキさんは初めて見た。

俺も持ってきている黒刀を握りしめる。


「……」

「ごめんね。急にこんな事話して……」

「いえ。教えてくれただけでもありがたいです」


これで、この城に心残りはない。

死んでしまった皆の為にも、俺は強くなって仇を取らないとダメだ。誰になんと言われようと、暗殺者グループは許せない。

皆から天国を奪ったんだ。


「ニオちゃん……?」

「あ、は、はい……?」

「怖い顔してたよ」

「あ……すみません」


ふぅ……あまり感情は表に出さない方がいいな。

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