18話 一緒
「久しぶりの再開の所悪いが、ニオは筋肉痛で外に出れない」
「大丈夫よ。私がこの部屋に居ればいいの」
どうやら今日は退屈しなさそうだ。
ㅤ俺はベッドに横になったまま、座って会話するユキさんとカケルさんの話を聞いていた。
「2人は知り合いだったんですか?」
「あぁ〜うん。同郷なんだ」
「幼馴染みでもある」
「へぇ……」
仲が良くて羨ましいな。
「付き合ってるの?」
「えっ!? つ、つつつ、付き合う!? 無い無い無い!!」
「おい……その反応が怪しいだろ」
顔を真っ赤にして否定するユキさん。
「カケルさん、顔カッコいいから良さそうですけど……」
「は……」
「あれれ〜? カケルもしかして照れてる〜?」
「照れる訳ないだろ……単づ、単純に嬉しいだけだ」
ま、俺は中身が男だから恋愛対象は女だ。
ㅤでも、カケルさんは何か特別でもあるな……。一緒にいたいという感情が大きい。
「ふあぁぁっ……眠くなってきちゃった」
ユキさんが大きく欠伸をして、眠そうに目を擦った。
ㅤんん、俺も暇だし寝ようかな。
「ユキさん一緒に寝よう」
「きゃああああ可愛いっっ……! いいよ!」
凄い勢いで布団に潜ってきた。
ㅤカケルさんが気まずそうにしている。
「えっと……カケルさんも寝ていいよ……」
「いや、気を使うな……といいたい所だが、俺の部屋はここしかないし、仕方ない」
そういいつつ布団に入ってきた。
ㅤユキさんとカケルさんに挟まれるようにして横になると、安心感が半端ない。まるで家族みたいだ。
「家族みたいですね」
と、冗談めかして言ってみた。
「そうだな……」
「かかかか、家族!? え、えぇっと、私とカケルが夫婦で、ええ、え、子供がニオちゃん……子……子供……ふぐぅぅっっ!!」
顔を真っ赤にして布団の中に潜ってしまった。どうやらユキさんはカケルさんの事が好きみたいだ。
ㅤでもカケルさんと俺はずっと一緒にいないとダメな関係にいるから、カケルさんは俺の物だね。……って何言ってんだ俺。
「あぁ、ユキ。暗殺者達が襲ってきた時、どのくらい死んだんだ?」
「……その話はやめて」
「あ、すまない」
怖っ……結構悲しんでたのか。正直俺も辛い事実だったな。シュリさんは生きてるのだろうか。なんて聞けるはずもない。
ㅤユキさんを慰めてやろうと、抱きしめる。
「おやすみ……」
「わぁ……天使だ……」
「ほら、寝るぞ」
これが本当の家族だったらどんなに嬉しい事だっただろうか。
ㅤそんな有りもしない人生を思い浮かべながら、退屈な1日を凌ぐ為に眠りにつく。
ーーーーー
目を覚ました頃には既に筋肉痛はなくなっており、少しだけ体に筋肉がついた気がする。
「やっぱり鬼人族って凄いんだね……」
「鍛えがいがあるだろ?」
「筋肉バカと一緒にしないの〜」
確かに、自分の体に筋肉がついていくのは楽しいな。大きな自信にも繋がってくる。
「よし、今日も訓練するか」
「あ! じゃあ私も付き合うよ」
3人で訓練するなら、あの辛い訓練も耐えられそうな気がする。
「準備したら行くぞ〜」
早速俺は白い服からチャイナドレスに着替えて、黒刀を握る。
「え……この服は自分で選んだの?」
「カケルさんが選んでくれました」
「ふぅん……カケルにしてはセンスいいじゃん」
いやいや、それ絶対好みの問題だろ。
ーーーーー
ㅤ今日も森に転移した。
「はい、素振り50回な」
「分かりました」
昨日と同じように、刀を鞘から抜いて構える。
「ちょっちょっ、ちょ、ちょっと待って。キツすぎない?」
「そうか?」
「……?」
これが普通なんだと思うんだけど、ユキさんにとってはキツいのだろう。
「え、ニオちゃんは大丈夫なの?」
「キツいですけど、余裕ですよ」
「何その矛盾……凄いね」
キツすぎるっていう程ではない。それに今日は、昨日よりも疲れない気がする。
「そんなにいうなら、ユキも素振り100回な」
「ひゃ、ひゃくぅ!?」
「大人だろ? ニオに良いところ見せないでどうする」
「う、分かった」
ユキさんが俺の横に並んで、剣を抜いた。
「違う、構えはこう!」
「うぇ〜……」
カケルさんによる細かい指導が入り、面倒くさそうに声を上げている。
「はい、じゃあ自分のペースで素振りな」
「「はい」」
「ユキさん、共にこの修行を乗り越えましょう」
「ニオちゃんと一緒なら行けるわ!」
ユキさんは最初からブンブンと振りまくっている。おれよりも50回多いのだから、ペースは考えた方が良いと思うな。
「お、昨日に比べてかなり良くなってるぞ。ニオ」
「ありがとうございます」
「私も褒めてよ〜」
「ユキはもっとできるだろ」
今回の訓練はかなり楽しいな。