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スカーレット・ゼロ  作者: ロマンスの馬
5/9

化物講義 入門編 1

俺は暗闇の中、必死に走って逃げていた

息も乱れ、走りのフォームの滅茶苦茶で何度もこけてしまいそうになった

だけど、こける訳にはいかない 何故なら走って逃げているという事は、何かに追いかけられているいう事なのである

何に追いかけられているのかは分からないし説明できない、いや、分かりたくないし説明できたくもない

とりあえず、得体の知れない恐ろしい物で捕まってしまったら、恐ろしい目にあってしまう

それだけ分かっていれば充分だろう

下手に正体が分かり、恐怖に心を潰され、足が竦み動けなくなってしまったら元も子もない

だから一切後ろを振り返らずに走る、だただた走る、

みっともなかろうが、情けなかろうが今の俺に取れる選択肢はこれしかない

戦う、という選択肢があるなんて思った奴、冗談じゃないやめてくれ

おれは週刊誌のバトル漫画の主人公じゃないんだ。ピンチになったら突然、力に覚醒して不審者を華麗に撃退、なんていうご都合主義のような展開を繰り広げられる程、現実は甘くなし、残念ながら俺は、実はかつて世界を救った勇者の血を継いでいるとか、実は幼い頃から世界最強の武術を習得するために修行していたとか、みたいな事は全然ない完全完璧な一般人だ

もう、かなりの距離と時間走り続けたが、一向に相手の追跡を振り切る事が出来ないでいた

いや、むしろ少しずつ少しずつ距離を詰められているように感じられた

何故そう思ったかというと、ハァッ、ハァッ、という息遣いと地面を蹴り進む足音がどんどん大きくなって近づいて来ているからだ

恐怖と焦燥感に支配された俺は『速く、逃げないといけない』と思い走る速度を上げるために、飛び込むように大きく踏み出した

けど、焦っていたいたのが悪かったのだろうか 着地のときに足を踏み外してしまい、滑るようにこけてしまった すぐに立ち上がろうとしたが、どうやらこけたときに足を挫いてみたいであしに力が入らなかった

怪我をしたと分かった瞬間、足首に鈍い痛みが走った

足首を擦りながら、俺はなんとかその場を離れようとして這うように移動した

だがその努力も空しく、聴こえてきた息遣いと足音が聴こえなくなり、真後ろに人が立っている気配がする

マズい、マズい、マズい、どうする!?

心臓の鼓動がうるさいくらいに高鳴り、この状況に戦慄していた

駄目だ、どうする事も出来ない、もう逃げられないと覚悟し、意を決して後ろを振り向いた

そこには目から涙のように血を流した、あの時俺に襲い掛かって来た女性が口を大きく開けていた


‘‘ピロロロロロロ♪ピロロロロロロ♪ピロロロロロロ♪‘‘

噛みつかれそうになったところで、俺は目覚まし時計の音で飛び起きた

昨日帰って来て、布団の中に入ってもののあんな事があったせいで、全く寝つく事が出来なかったが、どうやら何時の間に寝てしまっていたみたいだな 俺の記憶が正しければ朝の4時ぐらいは意識があった

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・夢か」

短距離を全力疾走したように息が乱れていたのを数度、大きく深呼吸をして呼吸を整え、汗でぐっしょりになった顔を腕で拭った

顔だけじゃなくて体中の汗でドロドロになっていた

「ああ、気持ち悪、時間ねぇけどシャワー浴びるか」

そう決めると、まだ鳴り続けている目覚まし時計を止めて浴室に向かった

脱衣室に向かい、汗でぐっしょり濡れた寝間着と下着を洗濯機に放り込んだ

シャワーのお湯で軽く流し、泡立てたボディソープを贅沢に使って体のベタつきを落とした

ベタつきが落ち、ボディソープのいい香りがし体はさっぱりした

頭からシャワーに向かって出しっぱなしに目を閉じてため息をついた

禍月は今日の放課後に話をしてくれるって言ってたよな

どう考えてもとんでもない話を聴かされるのは目に見えている

場合によっては本当に聴かないであいつの言ういつもの変わらない日常に戻るという選択した方が、良かったと思うような事実を突きつけられる可能性もある

というかその可能性の方が高いと思う

けどちゃんと事実を知りたいと思う自分もいる、勿論好奇心だけではない

多分何も分からない事が不安なんだろうな そういや昔母さんが言っていたな

『ねぇ、真紅郎人はどうして知識を知りたがるかわかる?

それはね、知らないっていうのは端的に言って恐怖の対象なのよ

未知を既知に変換する、暗闇を光に変える、知識を得るとはそういう意味をもっているんだよ

誰だって夜道は怖いし、街灯のついた道には安心感を覚える

つまり、人生とは未知を減らし既知を増やす作業なのだよ こういうと人生に張り合いがないよね~』

この話を初めて聞いた時、我が母ながら感心したものだ

俺は不安を解消したいが一番大きいのは確かだが、知っておかないといけない、という使命感に似たようなものを感じる

だから決めた、今日禍月に話を聞きにいこう

その決意し両手で頬を叩いて、シャワーを止めて浴室を出た

バスタオルで頭を拭いていると、脱衣室に置いてある携帯にメールが受信しているのに気がついた

確認すると、岬からだった 一体何だ、どうせ通学路で会うんだし直接言えばいいのに

『 遅刻しそうだから、僕はもう行くよ、中々来ないのにぎりぎりまで待った僕の優しさに感謝して欲しいな、だって、僕も走らないと遅刻しそうなんだからさ    岬 』

・・・・・・え?遅刻、 マジで

携帯の時間を確認すると、閉門10分前だった、絶望的な時間だった


普通に遅刻した俺は華ちゃんにありがたい説教を頂いた

見た目の印象とは違い、華ちゃんの説教はかなり堪える

いつもと同じおっとりゆっくりとした喋り方なんだが、なんというか静かに威圧的に怒る人だ

正論で相手の弱点をグサグサ刺してくる

一番怖いのは余りのプレッシャーに華ちゃんの後ろに般若の姿が幻視して見える

朝からSAN値をガリガリ削られて無駄に体力を使っちまったよ 一時限目から体育なのに

だが、いつまでも落ちている訳にはいかない、一時限目から体育だからな

綺麗に見える太もものライン、スリッドを直す仕草、とくに肌にピッタリ張り付き露わになるヒップラインそれはブルマだ、つまりブルマ

健康的なエロを体現している人類が生み出した至高の逸品、だと俺は信奉している

何故こんな話をしているかというと、その答えが目の前に広がっている

見渡す限り、ブルマ、ブルマ、ブルマ、まさにブルマの楽園がそこにはあった

そう、我が鳳陽学園の女子体操服はブルマだ ここだけの話だが、俺がこの学園を選んだ理由の一つだ

素晴らしい、実に素晴らしい、もうそれ以上言葉を重ねるのは無粋なうえに、価値を貶める行為になる事に繋がる、それはまさにブルマに対する冒涜だ

そんな事は断じて許さないし、断じて認めない

「ナイスブルマ!」

「ナイスブルマ!」

心の奥底からそう言い合う、近くにいた袴田とハイタッチをした

袴田は何の邪気もない晴れやか過ぎるすがすがしい笑顔をしていた、多分俺も似たようないい笑顔をしているだろう これで今日一日頑張れる

「素晴らしい光景とは思わないかね、袴田君、人類のフロンティアはここにあり!そう叫びたくなる」

「素晴らしいというのは同意するが、向坂、お前も相変わらずの尻フェチだな」

「尻フェチで何が悪い、俺は何も恥じる事はない」

そうだ、俺はただ素晴らしい尻を愛でていたいだけだ、痴漢してセクハラ行為をしたい訳ではない

それだけは分かってほしい

大野さんは小ぶりでプリッとした尻、原さんは肉付きいい安産型の尻、宮村さんは全体的のバランスが絶妙な尻、他にも十人十色と言うべき様々な尻が咲き乱れていた

「今お前が見惚れていた尻、確かに逸品揃いだけどな、最強無敵無敗の横綱クラスの尻があるんだろうが」

「なんだと!どこだそれは」

袴田が指を指した先を見ると、他の逸品をも霞ませるくらい絶品がそこにあった

俺の幼なじみの涼宮雫だった

なんというか勉強不足なのかもしれないが、雫の素晴らしさを表す言葉が見つからない

それくらい素晴らしい 余計な言葉はいらない 本能に直接訴えかけてくる。これこそが究極の美だと自信を持って言える

その雫は他のクラスメイトと一緒にバレーをしていた

トスで回って来たボールを高くジャンプして強烈なスパイクを相手のコートに叩きこんだ

あまりに早過ぎるそのボールに相手コートの女の子は反応することすら出来なかった

よしんば反応出来たとしたも追い付く事は相当に難しいし、レシーブ出来ても球が重すぎるからまともに

返すことが出来ない

実際に雫のスパイクを受けたことがあるから分かるが、男の俺でも返すのが精一杯だからな

雫のスパイクが決まったことで、バレーを見ていた生徒のほぼ全員が男女関わりなく歓声を上げていた

女子は純粋に雫のスパイクの凄さを称賛している歓声だったが、男子の方は雫の乳や尻が揺れているその素晴らしい光景に歓声を上げていた

「たまらんな」

「たまらんな」

「たまらんの」

「「権藤、いたのかよ」」

俺と袴田が雫のプロポーションに目を奪われていた横から権藤が会話に入って来た

「お前B以上の膨らみには興味がないと、言ってたじゃないか」

「雫じゃ明らかにストライクゾーンから外れているだろう」

「俺が言うているのは姫のことだ」

権藤の目線の先にはバドミントンをしている禍月がいた

小さい体が体操服とブルマに包まれた姿は正直、小学生にしか見えなかった

出るところは出てないメリハリのない体で、悲しいかな揺れるところがほぼない

「蕾を思わせる未熟で可憐な御身、妖精が躍っているように楽しそうで清らかな動き

姫、俺は貴女に夢中だ」

うっとりとした顔で、権藤が呟いていた

俺と袴田は権藤の気持ち悪さに数歩距離を取った

目の保養代わりに雫に視線を戻した やっぱり最高だ

俺が見ている事に気がついた雫が、こっちにニヤニヤ笑いながら近づいて来た

「どうだったよレッド、あたしのスパイクの切れ味は、にゃかにゃかのものでしょう

もしかして周りの男共みたく、あたしのプロポーションに釘付けだったのかな~このスケベ」

やっぱり気がついていたのか、まぁ、あれだけ露骨過ぎる視線を向けられていたから

当然といえば当然か

「さぁ、なんの事だかさっぱり分からんな」

無駄な抵抗だと思うが、とりあえず恍けておくか

「にゅふふふふ、知ってるレッド?女の子はそういういやらしい目つきとかは、敏感なんだよね

何でもない様子を装ってチラ見しているのは、大抵の女の子は気がついているんだよね

勿論レッドがあたしを見ていたこともね」

はい、バレてました

バレていなければいいなぁ、と思ったけどそれは問屋が許さなかったか

雫は俺の腕に抱き着いた、すると俺の腕が雫の胸に埋まっていく

うわぁ、ちょー柔らけー 腕を挟んだ胸がグニュグニュ形が変わっている

視覚的にも感触的にも凄い気持ちがいい

顔を歪みそうなのを必死になって抑える、これ以上からかわれるネタを提供して堪るか


「やめてください!曽山先生!」


突然の叫び声に、その場が騒然として、声のした方へと目を向けた

そこには岬と、岬の髪を掴んだ曽山がいた

叫び声の声に聞き覚えがあると思ったら、やっぱり岬の声だったか

「あんた、何やってんだ、岬から離れろ」

俺は岬の髪を掴んでいる曽山を岬から引き剥がして、岬を俺の懐に抱き寄せた

あの野郎、俺の大切な親友に汚い手で触れやがって

見てみろ、岬の奴、俺の懐の中で顔を赤くして俺に抱き着いているじゃねぇか 余程怖かったんだな

「何をするだぁ?向坂、お前こそ教師に向かって何だその態度は」

曽山が苛立った顔でこちらを睨んでくる

「まだ岬の髪のことで、ごちゃごちゃ言ってんのか、その件は林原先生との話で終わったはずだ」

「終わったか、終わってないかは俺が決めることだ、教師のいろはも知らない小娘が勝手に決めた事など

に従う理由はねぇんだよ」

曽山は滅茶苦茶なことを言いながら、怒鳴り散らしてる

「林原先生を何も知らない小娘っていうのは、言い過ぎじゃないですか。今すぐ訂正してくれますか」

袴田が人混みを掻き分けて会話に乱入してきた

普段はこういう面倒臭そうはことには関わらないのが、袴田のデフォルトなのだが

林原先生はテニス部の顧問だ、袴田は林原先生のことを非常に尊敬している 教師としても人としても

だから小娘呼ばわりされた事は許すことが出来なかったんだろう

「袴田だったか、どうして訂正する必要がある、本当のことだろう」

「だからって同じ教師なのですから、必要最低限の対応するのが当たり前じゃないですか」

感情的になりそうのを必死に堪えて袴田が言った あんなに怒っている袴田を見たのは初めてだ

「規則、規則、やかましい事ばかり言ってやがって、年上を立てることも知らん世間知らずの小娘

後輩は大人しくへこへこ頭を下げるのが普通だ

綺麗な顔してんだから股の一つも開けば可愛いがってやったのによ」

や、野郎とんでもない事言いやがった

「先生、今の発言は一人の女として言わせて貰うけどさ、地獄に落ちろエロジジイ」

「男の風上に置けない、出直し来い、屑が」

とうとう我慢出来なくなった雫と権藤が曽山に本気の罵倒を投げかけた

「黙れ、黙れ、黙れ」

曽山が頭をガシガシ掻き毟りながら怒鳴り散らした

「お前等、クソガキは大人の言う事を黙って聞いていればいいし、生意気にも逆らってんじゃねぇーよ

俺の一存で停学なりなんなりしてやってもいいんだぞ

それが嫌なら身の程をわ、ゲフッ!!」

後方から高スピードで飛んできたボールが後頭部に突き刺さるように、ぶつかり曽山がぶっ倒れた

ボールが飛んできた方を見ると、禍月がボールを投げた後の体勢で立っていた

「誰だ!俺にボールを投げた奴は」

「私よ」

曽山が禍月を睨みつけた

「見ない顔だな、確か転校生が来るって言っていたな、職員会議で」

「ええ、初めまして、禍月天理よ」

「名前なんてどうでもいい、何のつもりだ」

「何のつもり?何のつもりね、自分の胸に手を当てて考えてみなさい 貴方の発言がどれだけ常識知らずで恥知らずかをね」

「な、なんだと」

曽山の顔を真っ赤にして、血管が切れるんじゃないかと思うくらい怒り狂っている

「度重なる生徒と教師に対しての暴力と暴言、

一度処理された案件を個人的な理由で上の許可を取らずに撤回した

理由も理屈のなく時間も場所も立場も考えずに感情のままに怒声を上げる、

停学という処分を盾にしての脅迫行為

まぁ、女子生徒をいやらしい視線で舐めるような視姦していた件については追及しないでいてあげるわね」

「か、関係あるか、俺は間違っていねぇ」

曽山がそう言うと禍月の目つきが厳しくなり睨みつけた、その視線に曽山は怯んだ

「貴方、仮にも教職者でしょう、これからの未来を担い創り上げていく子供を教え導く高尚な仕事よ

だからこそその行動は、その言動は、その信念は正しいものでなくてはならない

さっきの貴方の全ては本当に正しいと言える、間違っていないと言える

もし本気でそんな恥知らずな事を思っているのなら、今直ぐに教員免許を国に返上しなさい」

「クソが、好き勝手に言いやがって、大人の逆らうとどうなるか体に教えてやる」

曽山は殴りかかろうと禍月に駆け寄った

周りで見ていたクラスメイト達は悲鳴を上げたり、咄嗟のことで何もできずにに動けなかったり

曽山を止めようしたりしていたが、誰も間に合わない

禍月は曽山の放ったパンチを上体を反らすと、手首と二の腕を掴み取り一本背負いをかけた

曽山は大きな音を立てて地面に叩きつけられた

禍月の一本背負いが決まって瞬間、雫がスパイクを決まった時より大きな歓声が上がった

あれくらいなら出来るよな、昨日の戦闘の方が動いていたし

曽山は痛みに呻きながら禍月を睨んでいた

「禍月、お前、ただで済むとお」

「うるさい、これ以上は黙っていなさい」

そう言うと、実に鬱陶しそうな顔して、曽山の頭を横合いから蹴りつけ気絶させた

おいおいそこまでやる必要があるのかよ

クラスメイト達が禍月の周りに集まってきた

「凄い、禍月さん」

「もしかして武道か何かやっていたの?」

「すっきりしたぜ、禍月さん、良くやった」

「ねぇ、もし良かったら柔道部に入らない?」

「柔道部、禍月さんを独占しようとしてんじゃねぇーよ」

凄い騒ぎになっているな、一応授業中だぜ、担当教諭の曽山は気絶してるがな

禍月はパンと叩いた

「はいはい、今は授業中よ、早く解散しなさい。それと権藤君、そこに転がっている教師の皮を被った屑

を近くの木陰に運んでおいてくれる」

「了解した、姫」

権藤は曽山の足を持って引きずっていこうとした

「おい、権藤、一応それ教師だろう。引きずっていった事がばれたら面倒だぜ」

「俺も腹を据えかねているからな、処分された時はその時だ、」

「その時は俺達が無罪を主張するために職員室に殴り込みをかけてやるよ、なぁ?岬、袴田、禍月」

「うん、勿論だよ」

「ああ、権藤がやっていなかったら俺がやっていたしな」

「私が運んで欲しいってお願いしたのだから、そこは任せておきなさい」

「頼もしい答えが聞けて嬉しいな」

権藤は曽山をずるずると引きずっていった

「義城君、大丈夫?災難だったわね」

「うん、真紅郎が守ってくれたから、ありがとうね真紅郎」

「別に礼を言われるような事は何もしたつもりはねぇよ、困っている親友を守るのは当たり前だろう」

「あら格好いい、親友を好きな女に言い換えたら、貴方に惚れてしまう子が続出してしまうわね」

「あたしはそんな格好いい台詞言われた事にゃいね、雫ちゃんも言われてみたいにゃ」

「向坂がそんなに気が利く訳ないない、ん?、義城、手首どうした?赤くなっているぞ」

「ああ、これは曽山先生に強く握られたから」

岬の手首にはくっきりと握られて出来た痕が残っていた

「あ~痛そう、あのエロジジイ酷いことするな」

「怪我の手当をした方がいいわね、向坂君、義城君を保健室に連れて行ってあげなさい」

「そうだな、じゃあ岬、保健室に行こうか」

俺は痕がついていない方の手をひいて岬と共に保健室に向かった


校内に戻って、保健室に向かっていた

保健室は一階の一番端っこにあり、移動にはそれなりに時間がかかってしまう

もし急患とかだったら間に合わないじゃないかと思う、そんな大怪我したら素直に救急車を呼ぶが

そういった理由で多くの生徒が、本当に怪我したり、気分が悪くなった時にしか利用しないのだが、新学期が始まってから保健室の利用者が右肩上がりしている、特に男子

「禍月さんも少し大げさだよね、保健室に行く程の怪我じゃないと思うけど」

「せっかく綺麗な肌してるのに、変な怪我が残ったら俺が嫌だからな、・・悪い、綺麗な肌とか言われるのは嫌だよな、男っぽくないって言われるみたいで」

「別に気にしないでいいよ。昔から言われ慣れてるからね

それより、僕の肌に怪我が残って嫌?」

「そりゃ嫌だろう、当たり前のこと言うなよ」

そうこうしている内に、保健室に着き、扉を引き開けた

「失礼します。入りますよっと」

扉を開くと、保健室の利用者が増えた原因がそこには居た

流れるような長いクリーム色の髪、知的なイメージを受ける細身の眼鏡、知的とは逆のイメージを受ける優しい目つき、ハイネックの服に苦しそうに押し込まれたたわわに実った大きな乳、

そして保険医のトレードマークである白衣を羽織っている

「いらっしゃい、どこを怪我してしまったのかしら?」

その名はリアフィーノ・ルルナアーク

去年定年退職したお婆ちゃん先生の代わりに新学期から新しく赴任して来た美人外人先生だ

街ですれ違えば、10人中10人振り返るであろう絶世の美女

カウンセリングの資格も持っており、男女関わりなく様々な相談に乗っている

更に言えば、傷や怪我もテキパキと治療し、最後に少し上目遣いで『もう怪我しないでくださいね』なんて笑顔で言われた日には、惚れるなっていうのは無理な話だ

まだ一か月も立っていないのに、愛の敗残兵を大量生産している罪なお人だ

「真紅郎、鼻の下伸びている」

「おっと失礼、岬、そんな不機嫌そうな顔するなよ。美人な女性に見惚れるのは自然の摂理だろう」

「あら、お上手ね、それで怪我したのは、どちらの子かしら」

「あ、僕です」

「じゃあ、ここに座って患部を見せて」

岬はルルナアーク先生に案内されるままに椅子に座り、ジャージの裾を捲って赤くなった手首を見せた

「握りしめられた跡みたいね、触診するわね、、、、、ここ痛くない?」

「んっ、、少し、でも大丈夫です」

先生が岬の手首を触りながら、怪我の度合いと岬の反応を確かめていく

保健室の中には、消毒液の臭いと痛みに耐え、妙に色っぽい岬の声が響いている

「良かった、大した怪我じゃないみたい、適切な処置をすれば明後日くらいには、腫れも痛みも引くわね」

そう言うと湿布と包帯を棚から出すと、湿布を貼った手首を包帯でしっかりと固定した

「はい、終わりました。もう怪我しないでくださいね」

来た!ルルナアーク先生の最強のリーサルウエポン

俺も始めて見たが相当くるな アレを真っ正面至近処理で言われたら、男だったら抗うのは難しい

コレで心動かない奴は男じゃない 果たして岬がどういう反応するか楽しみだな

「なるべくそうならないように気をつけます。治療してくれてありがとうございます」

「ううん、気にしないで、保険の先生として当たり前のことをしただけだから」

全くのノーダメージ、

なん・・・だと、野郎、本当に男か

どうして靡かない。表情を崩さないどころか頬の一つも赤らめない

俺なら顔がにやけるのを必死で止めてるのに忙しくなっているところだ

岬の反応に呆然としていると、誰かに見られているような感じし視線の元に目を向けた

視線の先にはルルナアーク先生がいた

ルルナアーク先生は俺を観察するように見ていた 値踏みするような嫌な視線ではなく

ただ単純に俺に興味がある、どんな子だろう?そんな純粋なものだった

「えーと、その、なんすか?」

「ごめんなさい、少し不躾だったわね。人間観察が趣味の一つなの」

「あまりいい趣味とは言えないですね、あまりいい気分じゃねぇな」

「真紅郎、そんな言い方は失礼だよ。ごめんなさい先生、ほら真紅郎も謝って」

「気にしないで、生徒をそんな好奇の目を向けた私が悪かったのだから、ごめんなさい」

そう言うとルルナアーク先生は俺達に頭を下げた

ここまで責めるつもりはなかったから、俺は慌ててしまった

「いや、こっちこそすいません、別に責めたかった訳じゃないですし、言う程怒っている訳じゃないです

だから頭を上げてくださいよ」

「そうですよ、先生、真紅郎の言うことを一々気にしていたらダメですよ。真紅郎には後で僕からきつく言っておきますから」

岬は俺の耳を強く引っ張って、ひきずっていく

「それじゃあ、失礼しました、ほら、行くよ真紅郎」

「いだだだだだああ、離せよ、岬痛いつーの」

俺は岬に引きずられて保健室を後にした


真紅郎と岬が保健室を出ていくのを確認すると、コーヒーポットからコーヒーを注ぎ入れて

ミルクと砂糖を大量に入れて、スプーンでかき混ぜて一気に半分近く飲み干した

「あの子が向坂真紅郎君か、天理の言っていた通りの子ね」

リアフィーノ・ルルナアークは先程の会話を思い出してクスリと思い出し笑いをした



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