第9話 アリスの思い
嫁騒動勃発中。いよいよ、アリスは決断を迫られつつあります。ちょっとシリアスめな回でございます。
「へ〜、マスターってこんなに腰細かったんだ?」
「・・・・・!!」
「白、似合いますね」
「・・・!!からかわないでください!!2人とも・・・!!」
マスターとガーデンは、少し遅れて会場に来た。そして。きれいにドレスアップしたマスターは。来て早々に、クイーンとバニーに絡まれている。
「汚い手でマスターに触るな」
その様子を横目で流していたガーデンが、ムスッとしてマスターの腕を引き自分の胸の中に取り返す。
「!・・・へ〜。何があったか知らないが。よかったなぁ。マスター」
くくくと笑いながらクイーンは言う。
「え!?」
真っ赤になりながら、マスターはガーデンの胸の中に納まっている。
「そういえば、リアンとアリスは?」
にやにやとマスターをからかうクイーンに、ガーデンは無表情でそう聞いた。
「そういえば、少し遅いな・・・」
「ま、じきに来るだろう。リアンもついているし。・・・後は、バニーが夜の12時までに、婚約者を選ぶだけだ」
バニーは、クイーンの言葉に。小さくあぁ、と答えた。
「ひどいですよ!!リアンさん!アリスさん!!」
会場に入るやいなや。血相を変えて、2人の元へマスターが駆け寄って来た。
「・・・え?」
「え?じゃないですよ!!アリスさん!!何で、ドレスじゃないんですか〜!!」
顔を真っ赤にして。目じりに涙をためて抗議するマスターに。
・・・忘れてたよ・・・。
そう言えば。
今日のために衣装合わせとかしてたな・・・。
ごめん、マスター・・・。
マスターのみ、律儀にドレス着用で来ていたのであった・・・。
「い、いやぁ、着方がわかんなくって・・・!」
とりあえず。
忘れていたとは言えない雰囲気なので。適当にごまかすアリスに。
「そんなの!バニーさんに着せてもらえばいいじゃないですか〜!」
「なっ・・・!!!」
「ぶっ・・・!!」
天然な発言っておそろしい・・・。
横でリアンが肩を震わせて必死に笑いをこらえている。
アリスは、マスターの天然発言に思わず真っ赤になる。
「そんなの・・・!」
「そうだよねぇ。男同士なんだし〜?問題ないじゃんねぇ」
いつの間にやらマスター陣営に寝返ったリアンが楽しそうに言う。
「リ・・・リアン〜〜!!」
確かに。男同士だけど・・・!!
でも。
あぁ。どうしてこんなに。
バニーのことを考えると、落ち着かなくなるのか。
「いっ・・・いいの!!」
アリスは、やっとそれだけ言うと、2人の元から逃げ出す。
顔の赤みを隠すため、下を向いて歩いていると。前方に人がいるのに気付かず、思い切りぶつかった(当たり前)。
「す、すいません!」
鼻を押さえながら、ぱっと上を向くと。そこにいたのは・・・。
「あぁ、アリス」
「!バ、バニー!?」
何てタイミングの悪い。
アリスはの顔は、引きかけていた赤みがまた増しだす。
「・・・?遅かったね。顔が赤いけど、熱でもあるの?」
心配そうに見つめてくるバニーに。
ますますアリスは赤面する。
「あ、や・・・う、うん」
もう。しどろもどろで。適当に返事をしてしまう。
バニーの顔をまっすぐ見れなくて。視線をはずすと、見慣れない3人がそこにいることに気付く。その中の一人と目が合う。すると、睨むように視線を返される。
「こいつが最後の一人?」
いきなり横柄にそう言われ、アリスは面食らう。
「あぁ。アリスだ」
バニーは短くそう告げる。
「ふーん。俺はレン」
「はじめまして。ソウと言います」
「ケイゴで〜す!」
3人から自己紹介をされ、とりあえず、アリスも名乗った。
「さ・・・佐久間アリスです・・・」
言いながら、バニーに疑問を目で訴える。
「婚約者候補の方たちだよ」
バニーは優しく微笑みながらそう言った。
あぁ、これが・・・。と、アリスはその3人を改めて見やる。
何と言うか・・・。濃いメンツだなぁ・・・。
「なぁ、バニー。こんなガキどもなんて放っといて俺と2人で楽しもうぜ?」
レンは、妖艶な笑みを浮かべバニーの肩に腕を回す。
「バニー様の前で下品な言動は謹んでいただきたい」
その腕を払いながら、ソウは言った。
そのやりとりを、バニーは無表情で見やっている。アリスはその横顔を心配そうに眺めていると。
その視線に気付いたのか、バニーはアリスに微笑み返す。
「・・・!」
なぜだか。その笑みを直視できなくて。思い切り視線をはずしてしまう。
「アリス?どうしたの?具合、悪い?」
心配そうに、バニーが声をかける。
「え、あ、ちょっと・・・」
赤らむ顔を見られないように、下向き加減でそう答える。
何だか、バニーのそばに平然といられない。
「大丈夫?部屋で休んで来ていいよ?12時までに帰って来ればいいんだし」
「そ、そうするね・・・!すぐ、帰ってくるから!」
アリスはそう言うと、逃げるようにして会場を出た。
どうしよう。
どうしよう。
頭が混乱している。
バニーを必要以上に意識してしまう。
リアンに、あんなことを言われたからだ・・・。
「・・・ずるいよ・・・」
リアンが、俺の義兄で。
あちらの世界を捨て、こちらに来た。
「ずるい、よ・・・」
胸が締め付けられる。
呼吸が、苦しい。
俺は、どうしたい・・・?
考えたくない。
何も、考えたくない。
部屋の扉を、後ろ手に閉める。
しん、とした部屋に入ると。急に、リアンの言葉を思い出した。
『俺は・・・世界で一番、クイーンを愛しているよ・・・』
だから、後悔していないと、話してくれた。
でも、俺は。そう思えるほどバニーを愛しているのだろうか。
それ以前に、俺はバニーのことをどう思っているのか。
俺は・・・家族や友達を、捨てられるのだろうか・・・。
「どうすれば・・・いいんだ・・・」
頬を、涙が伝う。
とめどなく、流れ始める。
早く帰りたいと、思っていたはずなのに・・・。
今は、帰りたくないと思う自分がいる。
この、胸に大きくつかえるものは何なのか。
アリスは、リアンと寝ていたベッドに再び身を沈めた。
いつの間にか、深く、眠ってしまっていた。
気が付くと、時計は夜の7時を指していた。
時間だけが無常に過ぎていく中。
アリスは、いまだ答えを持たぬまま、会場へと向かった。
〜続〜
いかがでしたでしょうか。いつも読んでいただき、ありがとうございます。嫁騒動のようやく半分まで来た感じです。これからアリスはどうなっていくのか。次回は、新展開があります!ので、どうぞお楽しみに♪