第40話 秘密の花園・10
この話で、ざっと本編は40話になりました・・・。えっと、な、長くなってしまったなぁ・・・。秘密の花園も、もう10話になる。皆様、いつもお付き合い、本当にありがとうございます。ここまで続けることができたのって、奇跡だなぁ・・・。(しみじみ)
人を好きになるって。
覚悟なんだな。
何ものに変えても。
貴方を愛するということ。
「とりあえず、ここで大人しく待っとれ!」
案内されたそこには。
きらびやかな世界。
一目見れば、その彼等が纏っているものがどんな品なのかがわかる。
いろ、とりどりの、世界。
10人ほどの青年が、その場にはいた。
どの青年も、自分と同じくらいか、または自分よりも雄雄しい体をしていて。
しかも、何とも育ちのよさそうな。
何で、俺は、ここにいるんだ・・・?
初めて、自分を恥ずかしいと、思った。
決心が、足元から崩れそうで。
祐馬は、震える足で、その場に踏みとどまる。
「次はね、ソウ。いわゆる、合コンよ」
母は、しごく嬉しそうに言う。
「はいはいはい。もう、好きに付き合いますよ」
ソウは、疲れたようにぶーっと頬を膨らましながら母のあとをついていく。
「ヨウ様」
2人で歩いていると、執事が声をかけてくる。
「?どうしたの?お客人は集まって?」
にこやかに聞き返すヨウ。
ソウを先に促す。
「・・・妙な輩が、混じっておりまして」
「妙な?」
小声で、その執事は続ける。
「まるで、そこらへんのガキ、といった人間が1人混じっているのですよ」
「・・・あらあら、何でそんな子を入れたの?」
「それが・・・馬車に乗って来ておるのですが、その馬車がどうも王家のもののようでして・・・」
「王家の?」
「はい」
ソウの母親は。
しばし、考えた後。
「その子を、連れておいで」
「くれぐれも、粗相のないようにするんじゃぞ!」
そう言って、突き飛ばされるかたちで入れられた部屋にいたのは。
思い人の、面影のある、人。
「・・・」
祐馬は、入れられたその部屋に。
その人を見て、呆けたように固まった。
「貴方の名前は?」
ぼうっと眺めていると、その人はくすりと笑ってそう聞いた。
「え・・?あ、せ、瀬戸祐馬です・・・!!」
祐馬は、自分が見惚れていたのだと知って、真赤になって答えた。
「・・・そう、貴方が祐馬さん・・・」
「私は、ソウの母のルカと言います。息子が、向こうではお世話になったようで・・・」
深々と頭をさげる。
「あ、あの・・!そんな、やめてください・・・!お、俺は・・・」
俺は・・・。
「それで?ここへはどのようなご用件で?」
祐馬が、その言葉にドキリとする。
言わないといけない。
伝えないと、いけない。
「ソ、ソウに・・」
「ソウの婚約者を、見にいらしたの?」
「・・・え・・・?」
にこやかに、微笑みながら。
その人は、祐馬の手をとる。
「あの子、向こうで失恋をしたらしくて。失恋には、新しい恋だと思いません?」
その瞳は、実は。
「あの子にふさわしい、地位の方との、ね?」
笑っては、いなかった。
祐馬は、ヨウから目が離せず。
手を、払うこともできず。
「祐馬さんは、賢そうな方ね」
くすり、と笑う。
「私の言いたいこと・・・おわかりに?」
「わか・・・りません・・・」
祐馬の口から漏れたのは。
小さな。
小さな、勇気。
「・・・なんて?」
「ソウを、ソウに・・・会いに来たんです・・・!ソウに、会わせてください・・・!」
初めて。
手に入れたいと思ったんだ。
ソウのことを、ソウの家族のことを考えたら・・・。
絶対に、してはいけないことなのだろうけれど。
それでも。
それでも。
ただ、ただ。
貴方を・・・。
「貴方は、ソウの思いには答えられないのでしょう?それなのに、今更あの子に何の用があるんです?」
「あの子を、これ以上、傷つけないでいただきたいわ」
きりっと、祐馬の手を握る手に力が入る。
「きず・・つけません・・・。俺、俺は・・・」
「ソウが、ソウのことが・・・」
「好き、なんです・・・!」
言葉が、溢れて。
溢れて。
うまく、カタチにできなくて。
あぁ、ソウ。
お前のことが、好き、なんだ。
あぁ、駄目だって、わかっているのに。
このまま、立ち去ればいいと、わかっているのに。
なぜこんなに涙が出て。
なぜこんなに。
なぜ。
この場にとどまってしまっているのだろうか。
「好き、なんです・・・」
足元から、崩れ落ちそうな、恐怖。
どうして。
どうして。
どうしよう。
どうしよう。
ようやく、言葉にできたのは。
何とも陳腐な、愛の言葉。
「・・・そうですか、と、渡すわけにはいかないって、貴方もよくわかっているでしょう?」
声はどこまでも、明るく。
まるで笑みでもたたえているようで。
「バニー様の婚約者になるくらいの家系なの。うちは」
「貴方じゃ、ソウにはふさわしくないの」
この世界の王の息子。
その、婚約者。
それが。
この世界の住人でも何でもない、王家との関わりすらない自分と。
共に、歩んでいくなどと。
それは、大それた、夢?
「だから・・・帰ってちょうだい?」
きっちりと。
くっきりと。
その拒絶の言葉は。祐馬を侵食して。
その瞳の色は。
どこまでも。
祐馬を突き放す。
「貴方が譲れないように。私も、譲れないのよ?」
子を思う、貴方の心が。
イタイほどに。
「すいませ・・すいません・・・」
貴方の気持ちは。
イタイほどに。
わかるんです。
わかって、いるんです。
「すいません・・・すいません・・・!」
「それでも・・・俺も・・・」
あぁ。
アリス。
今なら。
おまえのきもちがよくわかる。
「ソウを・・・譲れないんです・・・」
思いよ。
お願い。
この思いよ・・・。
伝われ。
「・・・母様は?」
いいかげん、愛想笑いにも疲れた。
一緒に来るはずの母は一向に来ない。
どうしたものか、と。
ソウは、執事を呼んで問うた。
「ヨウ様はまだで?」
執事は、まだあの下賤な者と・・・?とブツブツ言っている。
「・・・?下賤な者?」
「はぁ。身なりのしゃんとしない童が一人混じっておりましてな」
「ふぅん」
興味なさそうに、ソウは答える。
大方、どこかの下級貴族の子息か何かか。
どうでもよさそうな、ソウに。
「まぁ、今にヨウ様が追い返しになるでしょう。あのような者、ソウ様には無相応です。」
「いくら」
「王家の馬車に乗って来た者とはいえ・・・」
その言葉に。
ソウの顔から。
表情が、消えた。
〜続〜
もう1、2話で、ソウと祐馬の話は完結すると思います。いきなり嫁姑戦争から始まってますが(笑)ソウと、祐馬の今後をお楽しみに・・・。
そして。今後のことですが。
アリスは、とても皆様に愛していただいて。ここまで長期に渡って書かせていただきました。すごくありがたいことだと。いつも感謝しております(それがまったく反映できてないのが悔やまれるッス)。アリスな話!ですが、ソウと祐馬の話が完結後、バニーとアリスのお話を入れて連載終了とさせていただこうかな、と思っています。番外編を、また短編なりで本館で書かせていただくかもしれませんが。ケジメとして。一度くぎろうかと思います。もうしばらく。皆様、アリスにお付き合いいただけると嬉しいです。本当に本当に。いつも温かく見守っていただけて、感謝の気持ちでいっぱいです!連載終了にあたり、また感謝祭も企画するつもりですので!皆様、そちらもお楽しみに!!では!秘密の花園・11でお会いしましょう!!




