第4話 花嫁候補!!?
ちょこっとボーイズラブっぽい雰囲気になってきました!!(ようやくか)
「クイーンもリアンも“嘘”なんて言わないよね・・・?自分たちが決めたんだから。僕の・・・婚約者・・・」
今までの愛くるしい表情はどこへやら。明らかに、あぁ、そういう血を引いてるよね☆っていうような勝ち誇った笑みを浮かべるバニー。うん。あのマゾっぷりはもう微塵も感じさせないわけで。
「それに・・・これはアリスの意思でもあるんだから・・・」
小さく呟かれたその言葉は、アリスには届かなかった。
呆然とみんなが立ち尽くす、その中で。
「・・・!!わっ!!?」
バニーは、クイーンたちを無視してアリスの腕を引き寄せ、アリスを抱えあげる。
「なッ・・・!?お、おろせよ!!」
軽々と抱えられたアリスは赤面してバニーに抗議する。
もちろん、そんなこと、バニーが聞き入れるはずもなく。柔らかな笑顔だけアリスに向けて、スタスタと歩き出したのであった。
「・・・・行っちゃったねぇ」
その場に残ったリアンが、人事のように呟く。
「・・・どうすんの?クイーン」
先を歩く息子を眺めながら。クイーンは額を押さえながら渋い顔をしている。
「どうすると言ってもな・・・」
「・・・血は争えないね」
にやりと、何やら苦悶の表情を浮かべるクイーンに。リアンは意味深な言葉を向けるのであった・・・。
「・・・・・」
あれだよな。
ぽかんとするって、言うじゃん?あれ。何見たらそんなになるんだよって、そんな呆けたことになるわけねーだろって、思ってた。だけど。本当。人生の中で、ぽかんとすることってあるんだなって。
つか、問題はそこじゃないんだけど。脳が拒否?みたいな。
「・・・・すげぇ・・・」
約30秒間固まって。出た台詞がこれ。
アリスがぽかんとしている原因は。
眼前に聳え立つ、えっと、ここは中世ヨーロッパですかね?と、時代の確認をしてしまいそうな、そのお屋敷。てか、城だろ・・・。
「ふふ。今日から、ここがアリスと僕の城だよ」
アリスをおろしながら、さらりと恐ろしいことを言ってのけるバニー。
「・・・・・・・・え?」
はい?
何?
ここが?
俺とバニーの城、だぁ??
「やっぱり、狭い?」
小首をかしげながら、可愛らしく聞くこの男。
「せま・・・!?全然!!!」
どんな思考回路をしていたらこのばかでかい屋敷が狭いっつー話になるのか。てか広すぎだっつーの!!!
心の中で一人庶民的つっこみをしながら。
そんなアリスを見つめながら。
「とりあえず、中に入ろうか。部屋に案内するよ」
にこりと、アリスに微笑む。
「あ、うん」
「それに、着替えたいでしょ?僕はそのままでもいいけど・・・」
そういって、指さされて。アリスは。ナチュラルに忘れていた事実と直面した。
そう。いまだアリスは・・・アリスルックだったのである・・・。
「き・・・着替えます・・・」
真っ赤になって改めて恥ずかしさを痛感しつつ。案内するバニーのあとに、小さく続くのであった。
「とりあえず、この部屋で着替えて?僕は隣の部屋にいるから。終わったらおいでね」
バニーはアリスに着替えを渡すと、そのまま部屋から出て行った。
アリスは、だだっぴろい部屋で一人、ふうっと呼吸を落ち着けた。
何だか、今回もいろんなことが一度に起きすぎて、思考がついていかない。
バニーがおっきくなったこともだけど・・・俺がこっちの世界に来てしまったこと・・・それに・・・
「俺は・・・」
元の世界に、戻れるのだろうか・・・。
さっきまでのリアンやクイーンの様子だと、元の世界には戻れない感じだった。でも、何だか、そう言われても実感がない。それに、別の世界に来てしまっている実感もないのだ。ようは。脳が考えることを全面的に拒否している感じ。
考えてしまったら、壊れてしまいそうで・・・。
アリスは、ぞくっと走る寒気を振り払うと、明るい声をあげた。
「さっ、とりあえず、着替えるか」
できればもう少し。
俺の心が落ち着くまで・・・。
何も・・・。
今は考えたくない・・・。
アリスは、一呼吸置いて、カツラをはずし着替えることにした。
「・・・・・・」
ダダダダダダ
バタン!!
「ん?どうしたの?アリス?そんなに慌てて」
のんきに紅茶をすするこの男(ここらへん、リアンゆずり)。
そのバニーの前には、真っ赤な顔をしたアリスがいた。肩で大きく息をしながら。
「てめぇ・・・何だ!!!この服は〜〜〜!!?」
アリスは、腹の底からそう叫ぶと持っていた着替えを床に叩き付けた。
その叩きつけられた衣装は・・・。
春らしいピンク色に、白いレースがふりふりと。ところかしこには可愛らしいリボンが結わっている。
そんな・・・男物の服ってないよね☆
「あれ?気に入らなかった?」
あははは。似合うと思うけど〜とバニーは朗らかに笑う。
「だっ・・・!!気に入るか!!何でこんなッ・・・げほごほッ・・・!!」
勢いあまってむせるアリス。ちょっと涙目・・・かっちょ悪・・・。
「大丈夫?アリス?」
そんなアリスの背を、バニーは優しくさする。
「ぜーぜー・・・」
アリスは息を整えながら肩で息をする。
「冷めてるからどうぞ」
すかさず、バニーは紅茶を手渡す。アリスは、それをもらって一気に飲み干した。そのおかげで、幾分楽になった。
「・・・さんきゅ・・・」
そして・・・。
アリスの記憶は途切れた。
「だめじゃない、アリス。花嫁がそんな格好してちゃ・・・」
自分の腕の中で、ぐったりしているアリス。そのアリスに、バニーは優しく口付ける。
額に。
頬に。
瞼に。
唇に・・・。
深い眠りについた花嫁に。バニーは何度となく、口付けをするのだった・・・。
「・・・頭がパンク寸前だ」
「アンタでもそんなことあるんだねぇ」
真剣な顔をしたクイーンと、相変わらずなリアン。
こちらもだだっぴろい部屋の中。ソファに腰掛け、話している。
いつもは、たいていのことでは動じないクイーンも、さすがに今回のことは予想の範疇外だったようだ。
「息子が成人したんだ。いいことじゃん?」
リアンはそう言うと、クイーンの首に手を回す。
「だが、アリスはどうする?アリスには自分の国や家がある」
クイーンの瞳は、静かに語る。
軽率だった。
甘く見ていた。
誰を?何を?
否。すべてを・・・。
もっといい方法があったのでは?
どこかで・・・、思っていたのかもしれない・・・。
それもまた、運命だ、と。
所詮、自分のことではないのだから・・・。
「・・・アリスは必ず残ってくれるよ。帰れないってのもあるけど・・・だって、アリスは・・・」
クイーンは、リアンが最後まで言う前にその口を塞いだ。
「ん・・・」
舌と舌を絡ませて、長い長い、キスをした――――。
今、アリスたちがどうなっているかも知らずに・・・。
いつの間にか、眠っていたらしい。
どれくらい眠っていたのだろうか。
目が覚めた時、もう窓の外は薄暗くなっていた。
起きぬけの頭で、自分が今ベッドの中にいるのだと認識する。アリスは上体を起こし、しばしの間ぼーっとしていた。
コンコン。
そこへ、タイミングよくノックする音がした。
「アリス?入るよ〜」
リアンの声。
「うん〜」
半分重い頭で、アリスは返事を返す。
ガチャっと音がして、リアンが入って来る。
「・・!おや、まぁ・・・」
リアンは入ってくるなり、まじまじとアリスを見つめた。その後、にやりと笑みを浮かべる。
「・・・?」
アリスは、相変わらず・・・リアンって変・・・。とか思いながら(失礼)
「安心したよ、アリス。よかった。クイーン、入りなよ。アリスはもうその気だぜ?」
アリスは、ドアの外へ向かって声をかける。
何だか、いきいきしてるような気がする・・・。
「・・・リアン、そんなわけ・・・」
重くため息をつきながら、クイーンが部屋に入って来る。そして、アリスを見て、一瞬。止まる。
「・・・アリス・・・本当に、いいのか?」
クイーンは、アリスをまじまじと眺めた後、そう呟くように言った。
「・・・え?」
どうも話が見えない。でも、それを考えることすら今は億劫で。頭も重く、機能していない。
こんな時。
人はよく、どうでもよくなるものだ。
もちろん、アリスも例外ではなく。
「うん」
と、答えるのであった。
「そうか・・・お前がいいなら俺はもう何も言わん」
「嬉しいねぇ。よかったよ。アリスで」
「3日後、お前の他に3人、バニーの花嫁候補が来る。まぁ、どうせアリスで決まりだろうが」
クイーンは、やれやれといった様子で部屋をあとにした。
「んじゃ、アリス、ゆっくりしなよ。でも、いつまでもその格好じゃカゼひくよ〜」
うきうきと、クイーンのあとを追い、出て行ったリアン。
・・・・・花嫁・・・候補・・・?
・・・・・カゼ・・・・?
クイーンたちが退出した数秒後。何だか、アリスは大きな不安を感じた。
何か・・・おかしい。
少しずつ、頭がはっきりしてきた。
そして、何だか体がスースーすることに気付いた。
ちょう、嫌な予感・・・。
「・・・!!?」
ちらりと自分の体に目をやると、アリスは素っ裸だった。かろうじて幸いなことと言えば、下半身はシーツに包まっていることくらいだろうか。
何!?
何で!?
アリスはパニックを起こす。
さっきまで着ていたあのアリスの衣装は!?どこ!!?
きょろきょろとあたりを見回していると、後ろに鏡があることに気付く。アリスは、その鏡を手にすると・・・。
「何だこれは〜〜〜〜!!!??」
叫んだ。
アリスの白い肌には。無数のキスマークが散っていたのだった。
首筋から、わき腹。腕の内側。
点々と、赤い印が・・・。
「こ・・・これを見て・・・リアンたちは・・・!!」
アリスは、さーっと血の気がひいたのがわかった。
そう。誤解をしたのだ。いや、誤解と言っても、アリスが無事かどうなのかは定かではないのだが・・・。
「だ・・・誰が・・・!?」
アリスが頭を抱えて白黒しているところへ。
「あ、おはよう。って時間でもないか」
そう言いながら、ナイスタイミングで部屋に入って来たのはバニーであった。
「おっ・・・お前か〜〜〜!!!」
「え?何が??」
怒れるアリスに、どこまでも爽やかな笑顔で応じるバニー。
「すっとぼけんな!!俺の服はどうした!!?しかも、しかも・・・!!」
アリスの顔が・・・体が、朱色に染まりだす。
「・・・しかも?」
バニーは、アリスに顔を近づける。
「この・・・!キスマークだよ・・・!!!」
羞恥心に震えるアリスを楽しそうに眺めながら。
バニーは、アリスをさらに突き落とした。
「・・・自分から誘ったくせに」
・・・・・!!!??
今度は一気に青くなる。
アリスも赤くなったり青くなったり大変である。
バニーは、冷たいほどにっこりと笑顔を作る。
「かわいかったよ、アリス」
「か・・かかか・・・!?」
あまりのことに固まるアリスをよそに。
バニーはちゅっとその頬にキスをする。
お・・・俺・・・!!
アリスは・・・。
もうお婿に行けない・・・・・!!!
わけのわからないことを、心の中で叫ぶのであった・・・。
〜続く〜
いかがでしたでしょうか。更新が遅くて申し訳ないです〜;次の話では、もう一組夫婦が出てきますのでお楽しみに☆
アリスを読んでくださっている方々、評価をくださっている方々、いつもありがとうございます!リアンとアリスはくっつきませんが(笑)、今後はボーイズラブ要素が強く・・・なる?予定です♪今後とも、よろしくお願い致します!