第38話 秘密の花園・8
長らくお待たせしてしまって申し訳ございませんでした・・!ちょっとオフのほうが立て込んでいまして・・・!ようやっと続きを。
「それって、修羅場ってこと?終わったってこと?」
焼きたてのアップルパイを頬張りながら。
リアンは、人事のように言った。
いや、まぁ。
人事なんですがね。
「どう、なんでしょうか。でも、屋敷からソウさんの物が一切なくなっていたと言いますから・・・」
言いにくそうに、マスター。
「・・・捨てられたってこと〜」
納得、とリアン。
「そ!・・・そこまでは・・・」
そのリアンの言い方に。
マスターが反応する。
「だってそうじゃない?でかけて帰ってみたらもぬけの殻〜なんて。逃げられたとしか考えられないじゃん」
もぐもぐと。間で紅茶を一気飲みしながら。
「・・・!!リアンさん!!」
マスターは、さすがに、とリアンをたしなめる。
だって。
この場には。
「いいんです。マスターさん・・・。本当の、ことッスから・・・」
表情を強張らせながらも、笑顔を作ろうとしているのは。
祐馬だった。
リアン、マスター、祐馬。
3人で、小さなテーブルを囲む。
「・・・あのさぁ?祐馬くん」
にっこりと、リアン。
「・・・はい?」
「アンタ、ここでお茶飲んでる場合じゃないでしょうが〜〜〜〜・・・!!!」
花園から帰って来た祐馬を待つ人は。
もう、いなくて。
呆然と。広い屋敷のすみずみまで見て回って。
ソウの。
匂いのするものが、何一つ、残っていないことを知って。
一晩が、過ぎた。
長い長い、夜だった。
そういえば、こっちに来てから一人で夜を過ごすのは初めてだなぁっと、まるで人事みたいに思ったりして。
何だか。
笑えた。
心が、ザワザワする。
ザワザワ、する。
そして。
事を知ったマスターが心配して。
リアンを連れて朝から来てくれたのだ。
リアンは昨日から。
事は知っていたのだけれど。
「はは、そうッスよね」
リアンの叫びに、ようやっと。
笑顔で祐馬は答えた。
「ははって、アンタね!!」
笑ってる場合!?
「・・・俺、ソウを迎えに行こうと、思うんです」
身を乗り出すリアン。
それを止めようと、マスター。
もろともせずに、いきなり、祐馬。
その瞳に。
迷いはなく。
「どうなるかわかんないですけど・・・」
祐馬は、一口、紅茶を飲むと。
はぁ、っと息を吐いて。
「生まれて初めて」
「あがいてきます・・・」
欲しいなんて思ったことはなかった。
いつも、向こうから始まりは来て。
いつも、時期になると終わりは来ていて。
すがったことなんてないし。
追いかけたことなんか、ない。
追いかけて、すがってまで。
誰かを引き止めたいなんて。
思ったことなかった。
「・・・・」
リアンは、無言でマスターの止める腕を振り払うと、祐馬の前まで歩み寄る。
リアンと、祐馬の視線が交差する。
「・・リアンさ・・・」
リアンを呼ぼうとしたその声は。
かき、消された。
「絶対大丈夫だから!ちゃんと、ソウを連れ戻してくるんだよ!」
温かい、それが。
リアンの胸だと。
気付く。
「リアンさん・・・」
マスターの、驚いたような、涙ぐんだような声が聞こえる。
「ここは、愛の国なんだから!」
「俺だって、うまくいったんだから・・・」
リアンは、祐馬を見据えて、そう言った。
その言葉に。
2人は、笑った。
その日の午後。
「馬車に乗ってたら、ソウの実家まで運んでくれる手配だから」
てきぱきと。
馬車を手配して祐馬を乗せる。
えぇ。
例のあの、かぼちゃですね。ハイ。
ひ、一人で乗るのか・・!
これに・・・!!
いささか不安を覚えながら。
馬車の座席に腰を下ろす。
馬車が、ゆっくり動き出す。
小窓の外では、リアンとマスターが見送ってくれている。
ふと、顔をあげると。
クイーンと、バニーが視界に入った。
“言って来い”
そう、クイーンの唇が動いて。
バニーは、控えめに手を振る。
あぁ。
ここは。なんて。
「っ・・・いってきます・・・!!」
涙が出るくらい。
優しい場所なんだろうか。
どうして。
気付かなかったんだろうか。
どうして。
大切なものはいつでも。
なくさないと、その大切さに。
気付かないのだろうか・・・。
馬車の中でようやく。
祐馬は。
ソウを思って、泣いた。
〜続〜
リアンは、どこか自分に似ている祐馬を、実はきっと。一番心配しているんじゃないかと(笑)自分みたいになって欲しくないって、思ってるのかもしれません。去った人を追いかける勇気は、並大抵の勇気じゃないと思います。祐馬の足元は、きっと今ガクガクでしょうね(笑)!がんばれ!祐馬!!私がハラハラしながら見守ってどうする(笑)