第35話 秘密の花園・5
離れ離れになってしまったソウと祐馬。お互いに何を思うのか・・・とか、シリアス調に前書き書いてみたりして★(そして、この時点でブチ壊し)
「祐馬〜、女の子が呼んでる〜!」
「お〜」
「また祐馬かよ・・・!?」
「瀬戸モテすぎ〜〜・・・!!」
「お〜い、ソイツは悪い奴だぞ〜!」
「お前ら、うるせぇよ・・・!!」
祐馬は、後ろで飛ぶ野次に苦笑しながら、校門で待つ女の子の元へ駆け寄る。
この制服は。
隣の女子高の制服か。
「忙しいところ、ゴメンね」
髪は肩までで、ちょっと茶色がかったるかな。
目はぱっちりしてて、ちょっと、恥ずかしそうに俯く姿が何とも愛らしい。
「や、かまわないけど」
男子校に、一人で来るのはそうとう勇気がいったことだろう。
明るい声は出してはいるが。
肩が微かに震えている。
「あ、の。陸上の大会で、瀬戸くんをみて・・・それから、ずっと・・・瀬戸くんのことが、好き、で」
「もし、よかったら、・・・付き合ってくれない?」
「・・・やっぱ、これだよな」
「え?」
「あ、いやいや。いいよ。俺、今フリーだし?可愛い彼女が欲しかったんだ」
嬉しさに泣き出す女の子。
そうだよ。
俺が求めてたのは、これなんだって。
女の子との、恋愛。
だって、アイツは男じゃん?どんなに目がぱっちりして、どんなに可愛い顔で笑ったって。
だって。
だって。
だって。
覚悟なんてない。
覚悟なんて。
ないんだ。
その日、俺は。
アリスの存在の残る物を。すべて片付けた。
「ソウ、一緒にお茶でもどう?」
眩しい木漏れ日の中。
大きな木の下で、ソウはうとうとしていた。
昔からの、お気に入りの場所。
「・・・かあさま・・・」
「向こうでの生活はどうだったの?」
「楽しいですよ。みなさん良くしてくださるし」
にこにこと、アリスさんが、リアン様が、バニー様が・・・とソウは向こうでの生活を語る。
そのソウの言葉に、丁寧に相槌を返す。
ソウにかあさま、と呼ばれるその人は。
ソウにそっくりの容姿をしていた。
ソウの、こちらの世界でいう母親。
似ているが、醸し出す雰囲気はどこか優しく、そしてどこか強い…。
「…かあさま…」
ソウは、それまでの明るい声とは違った、小さな小さな声で。
「僕は…裕馬さんにとって何だったのかなぁ…」
ソウは、俯いたまま。
言葉をつむぐ。
「どんなに人を好きになっても・・・駄目なことってあるんですね・・・」
貴方が好きです。
貴方のことが、好きです。
ねぇ。
ねぇ。
聞こえていますか?
届いて、いますか?
「ソウ・・・」
「・・・祐馬さんにとって、僕は・・・」
「何だったんだろうなぁ・・・」
ソウの肩が微かに震える。
そして、ぽつぽつと。
固く握られた拳の上に雫が落ちる。
「祐馬くん」
「祐馬くん」
可愛い唇からつむがれる、自分の名前。
それなのに。
心はちっとも動かない。
とっても、可愛いとは思う。
女の子特有の華奢な肩。
(そういえば、アイツも華奢な方だったな)
シャンプーの香り。
(いい香りがいつもしてたのは、何の香りだったんだろう)
くりくりとおおきな目。厚い唇。さらさらな髪。
何で。
何で。
アイツが出てくるんだ。
何で。
アイツを重ねてしまうんだ。
「祐馬くん?」
「・・・あ、いや」
彼女と一緒にいるのに。
他の奴、しかも。
男のことを考えるなんて。らしくない。
「疲れてるんじゃない?」
「そうかも」
ハハ、と愛想笑いを返す。
笑顔さえ返せば。
それで丸く収まる。
「そういえば、男子校ってさぁ」
「ん〜?」
ファミレスの一角。ドリンクバーで粘りながら。
「やっぱ、ホモとかいるの?」
なんて、タイミング。
「いやさ、よく聞くじゃん?どうなのかな、って思って」
「ハ、ハハ。どうだろ。俺はよく知らないけど」
こんな会話、やめてくれ。
「そうなの?友達のお兄ちゃんもそこ通っててさぁ。いるらしいって聞いたんだよね」
動悸が、する。
「ありえないよね。男同士なんて」
ガシャン。
「わ、大丈夫?」
祐馬の前のグラスが、倒れる。
女の子がナプキンで、こぼれた琥珀色の液体をふき取る。
「・・・あぁ。ゴメン、ゴメン」
綺麗に整えられた、爪。
「でもさぁ、だって男同士だよ?」
「人には、それぞれあるんじゃないの?」
アリスだって、そうだった。
「え〜、そうかなぁ。お手軽にすませたいだけじゃない?」
リアンさん達だって。マスターさん達だって。
「そうじゃない人たちも、いるかもしれないだろ」
あんなに。
お互いを。
「う〜ん。でもォ、祐馬くん的にはどうなの?」
「なしだと思わない?やっぱり」
彼女の瞳が。
俺を射抜く。
覚悟がないんだ。
覚悟が、足りないん、だ。
「それとも」
「覚悟が、ない?」
ぐるぐると、頭が回る。
気分が悪い。
頼むから。もう。俺に構わないでくれ。
俺を、惑わさないでくれ。
ようやく。
ようやく。
俺はすべてを捨てる覚悟をしたのに。
〜続〜
ようやく半分くらいかな。ソウと祐馬の話。な、なかなか書き辛いです・・・。この2人・・・!!ラスボスが待ってた感じ。あ、や、ラスボスはまだですね・・・。ハイ。あ。今回、祐馬ちゃんの彼女がいろいろ言ってますね。ホントはもっと過激に言わせようとも思ったのですが(笑)否定するような話が出てくるのが駄目な方もおられるようなので、このあたりで。
配慮はしたつもりですが、グサっときた方おられましたらすみません・・・!つーか、祐馬、切り替えはや!!