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第29話 傷跡・10

この回は、とっても気合いを入れて臨みました・・・!内容はちょっとグテグテなんじゃあ・・・と思う部分もありますが・・・!!気合い入れないと、あの子に押されてしまう・・・!!と、いうわけで、本編へどうぞ!!

 恋って何?

 愛って何?

 そんなの、聞くだけ無駄だし、考えるだけ無駄。

 本能で感じたままに、動けばいい。


 それが、運命なのだから。



「もう俺は、この世界で何見ても驚かねえ・・・!!」

「ぶっ・・・くくく・・・」

「俺・・・、常識って何か、わかんなくなってきたなぁ・・・」

 こんだけシリアスに進んでいる流れにそぐわぬ会話の主は。

 アリス・リアン・祐馬。

 なぜ、こんな会話になったのかというと。


「じゃあ、各自馬車に乗って湖まで行こう」

 そういって、乗ることになった馬車は・・・。


「「かぼちゃ〜〜〜〜〜!!!!?」」


 の、馬車だったのです。もちろん、運転(?)はトランプ兵。

 つーか、動力は何ですか?何だか車輪の下から聞こえてくるこのうめき声みたいのは何ですか??いやいや、恐ろしいことにはフタをしときましょう。

 で、何だか。かぼちゃの馬車を見て、どっと疲れてしまった裕馬とアリスだったわけで。その反応が、あまりにも想像通りで、バカ受け、なリアンさん。

 そんな中、珍しく。

 静かにソウは裕馬の横に収まっていた。


「ソウ?大丈夫?さっきから難しい顔してるけど。ブラックたちならきっと・・・」

 そんなソウに、アリスが声をかけると。

「・・・僕は、怒ってるんです」

 静かに、ソウは言った。

「ソ、ソウ・・・?」

 その瞳には、確かに。怒りがにじんでいた。


 ほどなくして、一行はスミレの墓標の近くにある湖に到着した。その周りを、全員が手分けして2人を探す。

 その湖を見て、ソウは、あぁ、ここだ、とつぶやいた。

 手中に握られる、ペンダント。それを、再び強く握り、ブラックとホワイトを探しに行くのだった。


「ブラック〜!ホワイト〜!!」

 静寂を破る、人の声。

 声。

 静寂を破る、音。

 音。


 あぁ、世界は遠くて。うまくその音すら聞き取れない。

 あぁ。

 あぁ。


 ぼくらのせかいは、ようやくおわる。


 いろも、ひかりもない。

 きぼうもない、このせかい。



「・・・!!ブラック・・!!ホワイト・・・!!!」


 あぁ、誰かの声がする。


 声が、する。



 お願いだから、そんなに強く抱きしめないで。

 脆くて、脆くて、脆くて。


 形がなくなってしまうよ。


 あぁ、あぁ。



 この、頬を伝う、熱いものは、何?


 ねぇ、



 もう、ねむらせて・・・。




 眼前に、光が広がる。

「・・・」

 瞬きを、何度かする。

 体がだるい。そのだるさが、自分がまだ現世にいるのだと、痛感させる。

「・・・!ブラック!!目が覚めた・・・!?」

 自分を覗き込む、アリスの顔。

 ねぇ、何でそんなに心配そうな顔をしているの?

「ブラック・・・!!」

 続いて、自分を見る、見慣れた、サクラの顔。いつも無表情のその顔が、苦渋に歪んで。その後。泣くように、強く、抱きしめられた。

「ホワイト・・・!目を覚ましたのか・・・!!」

 ふと、横を向くと。鏡に映したように。自分の半身も、強くかき抱かれていた。

「2人とも、もう少し発見が遅かったら・・・死んでいたかもしれなかったんです・・・!!間に合って・・・本当によかった・・・!」

 自分を抱く、その横からマスターが涙を流しながら、言った。

 自分たちを見つめる、多くの瞳。

 


「なんで、たすけたん?」



 ぽつり、とこぼす。



「もう、どうでもよかったんに・・・。色も光もない、この世界におる理由は、もうないのに・・・」


 世界は、終わった。

 表情なくつぶやくブラックとホワイトに、誰もが困惑の表情を浮かべる。


 大きな、大きな、心の傷。

 その深さを、目の当たりにする。

 痛いほどの、悲痛な、叫びが。

 部屋の中に広がる。


 つかつかつか。


 ビシャ。


「ちょっとは、頭、冷やしたらどうですか?」

 

 ぽた、ぽた・・・。


「ソ・・・ソウ・・・!!?」


 その悲痛な空間を引き裂くように。

 ソウは、2人の顔に思い切り水をひっかけると、持っていたコップを、サイドテーブルの上に音を立てて置いた。

「こんだけたくさんの人に迷惑かけて、心配かけて。それでもまだ駄々こねるんですか?ガキじゃないんだから、いつまでも叶わなかった初恋引きずるのはやめたらどうです?」

「ソ・・・ソウくん、ちょっと、も、そこらへんにィ〜〜」

 さすがにリアンも、ソウのキレっぷりにマズイと思ったのか、口を挟む。

 そして。

「ちょっと、黙っててください」

 一蹴、されました。

「は・・・ハイ・・・」


「だいたい、あんたたちも!傷を見ないフリして愛語って何になるんです。だからこのお二人がいつまでもバカみたいに死んだ人間の幻影を引きずらないといけないんでしょ?」

 そう言って、今度はサクラとツバキにダメだし。

「いつまでも傷物に触るみたいに接しないで!!乗り越えさせるためなら傷口だって抉ればいいんですよ!!」

「・・・!そんなこと、できるわけないだろう・・・!」

 サクラが、さすがに言い返す。

「傷口を抉って、みんなに見てもらえばいいでしょう?そうしたら」


「みんな、その傷の痛みに気付くんだから」


 誰も気付かなかった。

 誰も知らなかった。


 2人の、大きな、大きな傷。

 その傷は、体の奥深くを、確実に蝕み、侵食し。

 こうなるまで、その深さに。

 その深刻さに、誰も気付かなかった。


「だいたい・・・!いつまでも居もしない人間のこと引きずるのはやめてください。不毛です」

 ずっぱり、ばっさり。

「・・・さっきから黙って聞いてれば何やの?ソウに何がわかるん?」

 涙が、頬を伝う。


 胸が、熱くなる。

 大きな声で、ソウを睨みつけながら。


「わいらにとって、スミレがすべてやったんや・・・!!」

「だった?今だってすべてじゃないですか」

「そうや!スミレがすべてなんよ・・・!それの何がアカンのや・・・!!」

「現実を見ろって言ってるんですよ!!どれだけスミレさんを想っても、スミレさんは生き返らないし」


 やめて。

 やめて。

 そんなこと、いわんといて。


「スミレさんに、他の人を愛した事実は変わらないんですから」


 あぁ。

 げんじつを、つきつけないで。


「ソウ・・・!いくらなんでも・・・!!」

 さすがに、見かねて裕馬が止めに入ろうとする。


「僕は、裕馬さんを心から愛しています」


 は   い  ?


 ソウは、突然、裕馬を振り返り、そう言った。

 いつもとは違う、真剣な、真剣な表情。


「だから、裕馬さんを自分に振り向かせるためなら、どんな努力だってします。だって、僕だけを見て、僕だけを愛して欲しいから」

 ソウは、その時だけ、ふっと、優しく笑んだ。

「無償に愛されることが続くなんて、僕は思わない。恋愛は、与えるものじゃないでしょう?相手がいて、その相手とするものなんだから」

 

 ちくり、と、その言葉が。


 裕馬とアリスの心にも、小さなトゲとなって刺さる。


「ブラックさんとホワイトさんは、本当にスミレさんと“恋愛”をしていたんですか?気持ちだけが後から後から、大きくなっているだけじゃないですか?」

 婚約、というその言葉が、いつまでも、どこまでも、錯覚を、引き起こす。

 まるで。

 そこには、愛があったかのように。


 冷たい、ソウの視線が突き刺さる。


 愛があったか?

 

 そんなこと。


 あったに決まっている。

 それが稚拙と言われようと。

 勘違いだと言われようと。


 あの時、あの瞬間。


 スミレを愛していた。

 その想いに、変わりは、ない。


「・・・わいらは、本当に、本当に・・・!スミレを愛しとった・・・!!」

「その想いは、嘘やない・・・!!」

 とめどなく、とめどなく、その頬に、涙が伝う。

 想いまで、否定しないで。

 心まで、否定しないで。


 痛いほどの、2人の叫びが。

 その場に居る全員に伝わる。


「・・・だったら、それでいいじゃないですか」

 ソウの口調が、突然柔らかくなる。

「お二人は、スミレさんを本気で愛していた。だけど、スミレさんは、他に愛する人を見つけてしまった。お二人は、失恋したんです。ただ、それだけです」

 笑顔で、さらりと。

「で、まだその失恋相手のことが吹っ切れてないから、サクラさんとツバキさんの求婚には応えかねる、と。そういうわけですよね?」

「・・・え?や、う、うん・・・・?」

 何だか、虚をつかれ。ブラックとホワイトは、ぐじゃぐじゃの顔のまま、半ば放心。

「実際、お二人は、スミレさんから別れの言葉をきちんと聞けなかったから、強くわだかまりが残ってしまったんですよ。・・・お二人が傷つかないように、と思った行動が、逆に、ブラックさんたちがスミレさんをふっきる機会をなくしてしまっていたんです。」

 ソウは、言いながら、ポケットからペンダントを取り出した。

「それ・・・!!」

 アリスがあの時の!と声を出す。

「スミレの・・・」

 スミレがいつもつけていた、ペンダント。

 形見に、譲り受けたもの。


 ソウは、静かにそのペンダントのフタを開ける。

 ざっと、スミレの立体映像が現れる。

「ブラックさん、ホワイトさん、このペンダントに仕掛けがあるのを知っていましたか?」

「・・・し、かけ?」

 初めて聞いた、とブラックとホワイトは顔を見合わせる。サクラとツバキも顔を見合わせていることから、きっとこの2人も知らなかったのだろう。

「スミレさんは、きちんと、恋の決着をつけていたんですよ。お二人が、次の恋へ進めるように」

 ソウは、そう言うと、カチリ、と中蓋を開け、中の歯車の一箇所を押した。


 ざぁっという音とともに、映像が変わる。

 そこは、さきほどの湖だった。その湖畔を背に、スミレがいつもの優しい笑みで佇む。

 ただ、その笑みは。

 どこか、寂しそうな、悲しそうな、表情をしていた。

『親愛なる、ブラック、ホワイト』

 その立体映像の中のスミレが、言葉を紡いでいく。


「・・・!こういうものがあるとは聞いていたが・・・」

 どうやら、ここにいる他のメンツも、見るのは初めてのようだった。


『この映像を君たちが見る時は、僕はもう、この世にはいないかもしれないね。

 僕は、ちゃんと君たちにお別れが言えたかな?

 もし、何らかの理由で伝えられなかった時のために、これを残します。

 

 ブラック、ホワイト。僕は、本当に君たちのことが好きだったし、愛していたよ

 ただ、それは・・・恋愛感情ではなかったんだ・・・。

 ただただ、無邪気な君たちが、弟のように可愛くて。

 

 好きな人が、できたんだ。

 愛する人が、できたんだ・・・。

 君たちに対する感情とは、まったく違う感情で、僕はその人に惹かれた。

 僕は、その人のことを、愛してしまったんだ


 だから、ごめんね。

 もう、ブラックとホワイトの、婚約者ではいられない。

 と言っても、まだ僕の片思いなんだけどね・・・

 君たちとの関係をきちんと終わらせてから、想いを伝えにいこうと思うんだ』


 柔らかい、微笑。

 本当に、その映像からでもわかる、相手への深い・深い、愛情。


『ひどいことをして、ごめんね。

 それでも、自分のこの想いは、変えれないんだ・・・。


 都合のいいことを、と思うかもしれないけれど・・・。

 これだけは、信じていて。

 ブラックとホワイトに何かあったら、僕はこの身を投げてでも、助けにいくから。

 僕にとって、2人は大切な、大切な存在なんだ。

 

 恋愛は、できなかったけど。


 勝手なことばかり言ってごめんね。

 

 これからの、君たちの人生が、幸多きものでありますように・・・』


 そこで、映像は止まった。

 

 ブラックとホワイトは、映像を数分間、見つめ続けた後。

 堰をきったように、大声で泣き始めた。



 あぁ、どうか。

 カミサマ。


 僕の愛したあの、愛くるしい子達の、未来が、明るく幸せでありますように。


 あぁ、どうぞ。

 カミサマ。


 あの子達を、本当に愛してくれる人が、現れますように。


 傲慢かもしれないけれど。


 僕が言える義理ではないかもしれないけれど。


 どうか。

 どうか。


 あの子達が、いつも笑顔でいれますように。


 どうか。



 どうか。






 カミサマ。


                     〜続〜






やっと!やっと!!ここまでたどり着きました〜〜!!ほぼ、このお話も完結ですね!キーマンはソウくんでした。熱く語るソウを動かすのがおもしろくておもしろくて・・・!!いや〜、次への伏線もきっちり張ってくれるところがソウくんらしいですね!失恋や人の死を乗り越えるって、本当、時間もかかるし、大変なことなんだと思います。でも、乗り越えるには、やっぱりキッカケが必要だと思うのですよ。抉るくらいにガツーンとね。ここまで引きずってしまっちゃったら。と、勝手に思ってみたり(汗)ちょっと一部、表現を曖昧なものにさせていただきましたが、あしからず。

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