第26話 傷跡・7
いよいよブラックとホワイトの過去が明らかになってきました。つーか最近、どこまでもシリアス調に進んでんなぁ・・・。・・・笑いの神よ・・・!!!って、こんな話のどこに笑いを入れろと・・・(笑)
「・・・ん・・」
「んん・・・?・・・っわぁ・・!!?」
寝苦しさと、息苦しさ、不審な物音を感じて、目を覚ます。
その目の前に広がる情景に、ホワイトから一気に眠気が吹っ飛ぶ。
部屋の扉の隙間から、白い煙が立ち込めている。
いったい、何事なのか、と。
最悪の事態を予想しながらも。そのドアノブに手をかける。
紅。
紅。
ただそこには、深紅が広がる。
この階まで火の子は届いていないものの、螺旋階段から見える階下は紅に染まっていて。
その煙が。
ホワイトの喉をつく。
「げほっ・・・!!」
ホワイトは震える手でドアを閉めると、ブラックを揺さぶり起こした。
「ブラ・・・!!ブラック!!起きて・・・!!」
その声に、ブラックは混沌としていた意識をそちらに向ける。
「何やの・・・?」
「大変なんだよ・・・!!火事・・・!!火事なんだ・・・!!」
半分、興奮と恐怖で泣き顔になって。
「は・・・?けほ・・・!!な・・煙・・・!?」
起きたばかりのブラックも、そのただならぬ雰囲気にパニックとなる。
「ど・・・どうしよう・・・!?下はもう真っ赤なんや・・・!降りられへん・・・!!」
ぎゅっと、ブラックにしがみつくホワイト。
「そんな・・・!どないしたらえぇんよ・・・?」
そのホワイトの言葉と仕草に。
絶望を、感じ取る。
「・・・このまま・・・焼け死ぬ、いうこと・・・?」
パチパチ
ゴオオオオオ
その扉の向こうで静かに、静かに迫り来る、音。
足がすくんで、動くこともままならない。
崩れるのが先か。
炎がこの部屋に届くのが先か。
絶望と恐怖だけが、二人を包む。
「い・・いやや・・・!!」
「誰か・・誰か・・・!!」
言葉にできない悲鳴が、響く。
おねがい だれか たすけて
ゴオオオ・・・バキバキッ・・・
ガタッ・・・ダン・・・・
「・・・?」
部屋が、その白い煙に侵食され、2人の意識が朦朧となり始めた頃。
階下から、不自然な音がし始めた。
そして。
バタン
「ブラック・・!!ホワイト・・・!!」
その扉を開けて、入って来たのは。
なによりも いとしい ひと
頭には濡れた布を被っているものの、顔も体も、ススで汚れ、怪我をして。所々火傷もしている。
その様相に。
迫り来る火の手のすごさが窺い知れる。
「スミレぇ・・・!!」
スミレは2人のもとに駆け寄ると、ぎゅっと2人を抱きしめた。
「無事だったんだね・・・!2人とも・・・!!」
肩で息をするスミレに、2人は今だ続く恐怖と安心感に震え、涙する。
「大丈夫、絶対、助けるから」
なぜ、おかしいと思わなかったのか。
後にして思えば、そう思う。
愛する人ができて。
愛する恋人ができて。
どうして。
ためらいもなく、あの業火の中に飛び込めたのか。
ブラックと、ホワイトのために?
それもあるだろう。
いや、どんな状況であったとしても、あの兄なら、2人のために命をかけることなど造作もなかっただろう。
けれど。
けれど、あの笑みは。
「2人とも、ちょっと離れておくんだよ」
スミレはそういうと、はめ込み式の窓に向かって椅子を思い切り叩き付けた。
その窓は、悲惨な音を立てて暗闇に消えていく。人の通れるスペースができたソコからは、冷気が流れ込む。
「ツバキ!!サクラ・・・!!」
声は到底届かない。しかし、その落下物の元へ、2人が駆け寄ってくる。そして、兄の意を汲み取る。
もしかして、と用意していたのは、大きなマット。
それを窓の下に広げる。
「さぁ・・・!ブラック、ホワイト、ここから飛び降りるんだ・・・!」
その様子を確認し、スミレが2人を促す。
「・・・ス、スミレは・・・!?」
「2人のあとからいくから。先にいきなさい」
いつものような笑み。
どこまでも人を安心させるような、笑み。
ブラックとホワイトは、こくりとうなずくと意を決して窓の外へと大きく跳んだ。
ドスンという衝撃に、目を開けるとそこにはツバキとサクラがいた。
まわりから、わぁっと大きな歓声が上がる。
その様子に、あぁ、助かったんだな、と2人はいくぶんか安堵した。まだ体は小さく震えていたけれど・・・。
「兄さん・・・!!」
ブラックとホワイトをマットから降ろすと、再び、その紅く染まる部屋を見上げる。
次はスミレだと。
誰もが思った。
スミレは、静かに炎に包まれていった。
そして、まるでその瞬間を待っていたかのように、屋敷は大きな音を立てて崩れ始める。
十分、その炎から逃げられたはすだ。
スミレは。
わざと飛び降りなかった。
「ス・・ミレ・・・・?」
「や・・・」
「スミレ―――・・・・!!!!」
倒壊する建物に近づこうとするブラックとホワイトを羽交い絞めにし、食い止めながら。
ツバキとサクラは、最期の兄の姿を見た。
目が、合った。
やっと、君の所へいける・・・
ブラックとホワイトをよろしくね・・・ツバキ、サクラ・・・。
確かに、最期に兄はそう言った。はっきりと、そう、言ったのだ。
“やっと きみのところへ いける”
「焼け跡からは、兄の死体が見つかりました。そして、後から調べてわかったんですが・・・」
「兄が死ぬ3日前に、兄が本当に愛した恋人が他界していたんです・・・」
そこまで話すと、2人は口を閉ざした。
“スミレを殺した”
その真相は、スミレの自殺。
「・・・あの2人にそんな過去があったなんて・・・」
眉を顰めて、リアンが小さくこぼす。
「火事で死人が出たことは知っていたがな・・・」
「そんな理由があったから、俺たちにも詳しいことが降りてこなかったんだろうな」
クイーンとガーデンも知らなかった、と呟く。
マスターはすでに涙ぐんでいる。
「・・・ふ、2人とも、走るの早・・・・!」
ハァハァと肩で息をしながらアリスがブラックとホワイトに次いで、その扉の前に到着する。相変わらず無駄に広い構造だ、とアリスは内心思う。
しかし、2人に追いついたものの。
ブラックとホワイトはその扉の前から動こうとしない。
わずかに開かれた扉。
微かに漏れてくる、室内の会話。
「?2人とも、どうし・・・」
「嘘や・・・」
その静寂を破るかのように、ブラックが小さく、しかしはっきりと、そう言葉にした。
「え・・・?ブラ・・・」
「嘘や・・・!スミレに・・・!他に好きな人がおったなんて・・・!!!」
ブラックとホワイトは、そう叫ぶと反転し出口に向かって走っていく。
「え?・・・えぇ・・・!?」
今ここまで来たかと思ったら。
今度は外へ・・・?
もう、意味がわからない。
「ちょ・・・!ブラック!!ホワイト!!!」
アリスは大声で2人を呼ぶも、2人は振り向きもせずに屋敷から出て行った。
1人残され、途方に暮れるアリスのもとに声を聞きつけてツバキたちが扉の方を向く。
そこには、残されたアリスがただ1人・・・。
「・・・ブラックと・・・ホワイト・・・は?」
掠れた声で、サクラが問う。
「え?いや・・・何か・・・嘘だ、とか何とか言って走っていっちゃったけ、ど・・・て、ええ・・・!!?」
アリスが言い終わらないうちに、サクラとツバキも2人に負けないくらいのスピードで屋敷から飛び出して行った。
「・・・??な、何事・・・・?」
その2人を、呆然と見送るアリス。
ゆっくりと、残された面々へ視線を移すと。
リアンは渋い顔をし、あちゃ〜と頭を抱えている。その横では、マスターがどうしましょう、と半泣き状態でパニくっている。
「俺たちも追いかけたほうがいいな」
そう言って、静かにクイーンとガーデンが立ち上げる。
「・・・は?」
「えぇ、このままだと・・・あの2人まで自殺しかねませんよ」
真剣な、裕馬の顔と台詞に。
状況を把握できないアリスも。
ただ事ではない、と感じるのであった。
〜続〜
いやぁ、双子の恋の行方が気になるところですねぇ、ソウくん。「いやぁ、ぶっちゃけ、僕、興味ないですから★」えぇ・・・!?「そんなことより早く僕と裕馬さんを書けって話ですよ(にこにこ)」ちょっとー!黒いよ!!ソウくん・・・!!「あはは、冗談ですよ(にこり)」どこまでが・・・?「さて、次の回では僕も大活躍な予定★みなさんお楽しみにね★」え!?そんな予定な・・・!(ソウにより、後書きは強制終了となりました)