第15話 心の音・後編
やっとアクションがある回までいけました〜。伏線?というか前置き?の長い話でした。そして、今更なのですが。ピアノに関してはおかしいところが満載だったかもしれませんが・・・スルーの方向でお願いいたします・・・(笑)!!
アリスは、父親の横に座ってピアノを奏でている。
「アリスのピアノは優しい音を出すね」
静かに、微笑む父。
「そう?でも、俺は父さんのピアノの音のほうが好きだな」
アリスは、父親の弾くピアノが大好きだった。自分には、決して出すことのできない、音。
「ピアノの音は心の音だよ。アリス。ピアノは最愛の人の前ではとても綺麗に鳴く。心と、ピアノが共鳴するんだ」
その父親の言葉は、幼いアリスにはよく意味がわからなかった。ただ、その言葉は強烈に、アリスの中に残った。
「ピアノの音が汚い時は自分の心が汚いのだと思いなさい。本当に綺麗なピアノの音は・・・ピアノが美しく歌うのは・・・ピアノと一緒に、心が最愛を歌っているからだよ・・・」
その時、アリスには最愛の意味がわからなかった。
そして。時はすぎ。
運命の日を迎える。
父と、母の離婚。その理由はアリスには伝えられなかった。ただ、もう、父親と二度と会うことはできないのだと、子ども心に感じていた。
アリスは、その時に父親と交わした最後の言葉を覚えていた。
泣きながら、交わしたあの会話を・・・。
「父・・さん・・・」
「・・・泣くんじゃないよ。アリス。母さんのことは頼んだよ・・・」
いつものような微笑ではなく、困ったような、悲しそうな笑顔で父はそう言った。
「やだ・・・!!・・行かないで・・・!!」
決して、叶うことのない願い。
アリスは、泣きながら父親にしがみついた。そんなアリスの頭を優しくなでながら、父はアリスに優しく言った。
「アリス・・・父さんはいつまでもお前のことを思っているよ。・・・もう、会えないけれど・・・お前のために、いつもピアノを弾くからね。私の、最愛の息子のために・・・」
慈しむように、紡ぎだされたその言葉。
アリスは、その言葉がとても嬉しかった。
大好きだった父親に、最愛だと、言ってもらえたのだ。
「俺も・・・俺も父さんがサイアイだよ・・・!!だから・・・もう、ピアノは弾けない・・・!!」
アリスは、父から離れながらそう言った。
「ピアノは、サイアイの人の前じゃないと・・・綺麗な音にならないから・・・」
そう言ったアリスに。
父親は寂しそうな顔をしていた・・・。
それからずっと。
ピアノはまともに弾いていなかった。
これからも、弾くつもりはなかった。
サイアイの人であった、父が、そこにはいないから。
それなのに。
このピアノにはひかれるものがあった・・・。
どこか、懐かしいような・・・。
「父さん・・・ごめん・・・」
アリスの瞳に、涙が溢れる。
どこか、温かい、涙。
今までは、貴方が最愛の人だった。
離れてしまっても、私の心をつなぎとめていたのは、貴方だった。
優しかった父さんが、本当に。
好きだった・・・。
アリスは、ピアノの前に座り込んで、その膝に顔をうずめた。
「・・・もう、あなたが最愛じゃない・・・」
愛する人が、できました。
私を、愛してくれる人が、できました。
今なら、あの時の父の言葉の意味がわかる気がする。
最も、愛する人。
それは・・・。
「アリス?どうしたの?」
道具を持ってきたバニーは、うずくまるアリスを見て慌てて駆け寄ってくる。
心配そうな、バニーの顔。
そういえば、バニーはいつもアリスを心配している気がする。当たり前のように流していたけれど。その行動が。どこまでもアリスへの愛を感じる。
ためらいがちに声をかけるバニーが。
なぜかとても、とてもいとおしくて。
アリスは思い切りその首に抱きつく。
「ア・・アリス!?」
とっさのことに、バニーは思い切り動揺する。
そのバニーへ、アリスはにこりと微笑む。父親がしていた、あの、慈しむような微笑み。
「調律がすんだら、バニーのためだけに弾いてあげるね」
ちゅっと、バニーの頬にキスをして、バニーから離れる。
そして、呆然としているバニーを残して調律を始める。
「・・・バニーはどこへも行かないでね・・・」
アリスのその言葉は、どこまでも、どこまでも響く。
「行かないよ。僕はアリスを愛しているから。ずっと、アリスのそばにいるよ」
それだけは、何者にも誓えるよ。
その、貴方の言葉が。
私にはとても嬉しい。
人に愛されることが。
人を愛することが、こんなに素晴らしいことだなんて思わなかった。
ねぇ、父さん。
最愛の人が、できたよ。
「・・・最愛の人の前では、ピアノは綺麗に鳴くんだよ。バニー・・・」
アリスは、調律を終えるとそう言って再びピアノに向かった。
「・・・最愛の人って・・・僕の、こと・・・?」
アリスは、そのバニーの問いに、はぁ?っと返す。
「当たり前だろ?裕馬やリアンたちも好きだけどさぁ。それと最愛の人はまた別じゃん。最愛の人は、一人だけだから・・・」
アリスが全部言い終わる前に、アリスはバニーに後ろから思い切り抱きしめられる。
「わわ・・!!バニー・・・!?」
突然のことに、アリスは真っ赤になる。
そこには、柔らかい時が流れ。
しばらくの間、アリスはバニーのぬくもりの中にいるのであった・・・。
裕馬は、その様子をクイーン邸の例の書斎で見ていた。
「何かなぁ・・・。やっぱ、おじさんのこと・・・ずっと、心に残ってたんだな・・・」
ずっと、アリスの中にあったわだかまり。
自分はそれを知っていながらも。
どうすることもできないでいた。
それを、裕馬に言わせれば。バニーはいとも簡単に取り除いてしまった。
アリスは、見つけてしまったのだ。
本当に、心を許せる相手を。
「ちぇ。心配してるこっちがバカらしー・・・」
ようやく気付いたか。っつー突っ込みをこっちはしたいですがな。とか思いつつ。
裕馬は、ちらりと横を見ると、そこには寂しげに俯くソウがいた。
「・・・あ〜・・・ソウ」
裕馬は、頬をかきながらソウに声をかける。
「はい?」
裕馬に名前を呼んでもらえ、ソウは嬉しそうに裕馬へ振り返る。
「アリスはバニーにまかせときゃいいし。俺も少し、自分のことを考えてみることにするわ」
珍しく。赤くなりながら。裕馬はそれだけ言った。
ソウは最初、きょとんとしていたが、裕馬のその言葉の意味を悟って。
「裕馬・・・さん・・・!」
ソウは、目いっぱいに涙をためて裕馬にしがみついた。
そして。
「僕、僕・・・!絶対、裕馬さんを幸せにしてみせますから・・・!!!」
あれ?
「・・・ん?」
幸せに、しますって・・・?
「男は初めてでも大丈夫ですよ!!僕がちゃんと開発してあげますから!!」
「・・・・!!?開発・・・!!?ちょ・・・お、俺が・・・もしかして・・・!!」
何か、一代決心した途端。怪しい雲行きなのですが。
「僕の、お嫁さんになってくださいね」
天使の微笑で。
悪魔のような言葉を囁くソウ。
そういえば。しがみつかれている腕がはずせないんですけど・・・。
「ふふ・・・。ガタイのいい人、好みなんですよね・・・」
「お・・・!お前・・・二重人格・・!!?」
さすがの裕馬も何だか身の危険をいっぱいに感じておりますが。
「やだなぁ。策士って言ってください」
よけい悪いわ・・・!!!
ようは。
しおらしくして周りや裕馬に可愛さをアピールしつつ。
実は羊の方から罠にかかるのを待っていた狼さんだったってことで。
「・・・やっぱり、喰えない奴だったな・・・」
その様子を見ながら、クイーンはぼそりと言うのであった。
「はは。しかも、何か2カップルがいちゃいちゃしてるし・・・」
ご馳走様。とリアン。
「ところで、クイーン」
くるりと全開の笑顔つきでリアンはクイーンへ向き直る。
「?何だ?」
「あれは何かな?」
可愛らしい声で、指さす先には、例のモニター。
「・・・あれは、お前の所在を確認するための・・・」
しれっとした顔で話すクイーンに。
バチーンと平手が飛ぶ。
にこにこと、笑みながら平手をくらわせたリアンは。
「何で風呂場や脱衣所や寝室にまでついてんだ!!このヘンタイ!!!だいたい、俺に言ってから取り付けろ!!!」
珍しく。
お怒り頂点。
「風呂場や脱衣所につけたのは俺の趣味だ。それに、今言った。だいたい、言ったら取り付けさせんだろ」
どこまでも、しらじらと言うクイーン様。
その後。
リアンは離れに行き、カメラをぶちぶちはずし。クイーンを離れに立ち入り禁止に処するのであった。
しかし。
実は、リアンの知らない場所に。まだまだ超小型カメラが潜んでいるのであった。
余談。
カメラをはずし終わり、その数の多さに。
「こんなにカメラつけやがって!このバカ!!」
と、思い切りリアンは文句を言うのであった。
「いいじゃないか。減るものじゃないし」
それに対し、やはり悪びれなくクイーン。
「ていうか。一国の王に手あげるか?お前?しかもバカ?バカっつたね?後で覚えとけよ?」
この2人も。結局ディープにらぶらぶなのであった・・・。
いかがでしたでしょうか?例のピアノはリアンがパチってきたものなのですよ(笑)
ようやく各カップルが落ち着き?ましたね。裕馬のとこなんて・・・とこなんて・・・!!笑いが止まりませんよ・・・!!結局ソウ×裕馬の方向で話を進めていきたいと思います。これからはソウに振り回される日々が始まるんだろうなぁ。合掌。
さて、次回はアダルティにクイーンとリアンの話にでも移っていこうかと思います♪お楽しみに★