第14話 心の音・前編
更新遅くなって申し訳ありませんでした(平謝)!もう何かそれしか言うことがないくらいな勢いです!ハイ!!では、本編へどうぞ!!
「ここにもいないな。いったいどこへ行ったんだか」
朝食を摂っていた公館から。気付いたらアリス・リアン・裕馬の3人が消えていた。それから。バニー宅・ソウ宅とまわってみたが、3人を見つけることはなかった。そして。もとの公館に戻ってきた。
「もう!裕馬さんってば。僕を置いてくなんてひどいなぁ」
ソウはぷんぷんと可愛らしくご立腹中だ。
あと、3人のいそうな所は・・・。
と、クイーンとバニーが思いをめぐらせていると。
『あ・・・』
2人の声が重なる。
「・・・え?」
ソウが2人を振り返ると。
「あそこかもしれんな」
クイーンはバニーと顔を見合わせると、こっちだと、バニーとソウを連れて書斎へと入っていった。
実は、この公館にはクイーンの書斎がいくつかある。その用途によってクイーン曰く、使い分けているらしいが。この書斎は、クイーンが半分息抜きに使う部屋。クイーン好みの洋書や新聞がきちりと並べられている。そして。本棚と対した壁には。大きなモニターがつけられていた。
クイーンは、ピピッとリモコンを操作する。そると、モニターにはいくつかの画面が現れた。
「これは・・・?」
「例の離れにつけた隠しカメラの映像だ」
・・・今、さらりとアンタ、何て言ったよ?
離れの存在は知っていても、隠しカメラの存在は知らなかったバニーはいささか驚いた顔をしている。そこへ。ソウが。最もな質問をしてみた。
「・・・なぜ、そのようなものを・・・?」
「リアンはよく一人で離れに行くからな。妙なことはしないだろうが。ま、いるかどうかを確かめるためだな」
しれっと言うクイーンだったが。その後ろからモニターを見つめる2人は。絶対嘘だと確信をしていた・・・。
所在の確認にこんなもん必要ねーだろ。
まさに。その通り。
どこまでも、いいご趣味なクイーン様でした。
「と、ここだな」
リモコンで各部屋を映していると、その映像の中に3人を見つける。
高性能なモニターくんからは音声も流れている。
そこに写っているのは。感心したようなリアンと。嬉しそうな裕馬。そして。真剣なまなざしでピアノに向かうアリスの姿だった。
『お〜。こりゃ、アリスの演奏聞けるかな。アリス、ピアノが気に入らないと弾かねえもんなぁ。すっげーうまいのに』
裕馬は興奮気味にしゃべっている。
『そんなにうまいの?』
裕馬はリアンの問いに、アリスを真っ直ぐ見据え。
『天才的です』
そう、答えた。
胸が、ドキドキする。ピアノを前にしてこんな気分になるのは何年ぶりだろう。
アリスの頭の中は、目の前のピアノでいっぱいだった。
そんなアリスの様子をバニーは穴があくほど見つめている。
ソウも同様に裕馬を見つめているが、どこか切なそうな瞳をしていた。
「・・・行ってみるか?離れ」
クイーンは、静かにそう言った。
ふぅっと、アリスは大きく息をはく。高まる鼓動を鎮めようと、集中力を高める。
そして。
静かに鍵盤に指を置く。
ピアノの澄んだ音が部屋に満ちていった。優しく、しかし決して弱くない、音色。
透明で、澄み渡るような、そんな音。
アリスはまるで生き物をなでるかの様な優しい手つきで鍵盤に指を滑らせる。
リアンも裕馬も言葉なく、その音に聞き入っている。
やっぱり、いい音色だ・・・。この、ピアノ。
アリスの頬が自然と緩む。
そのまま、アリスは没頭してピアノに向かっていた。途中、クイーンたちが入って来たのにも気付かず。
どのくらい没頭してピアノに向かっていただろうか。そんなアリスがピアノから指を離したのは、音に小さな違和感を感じたから。
「・・・違うな・・・」
急にアリスが演奏をやめたので、それまで静かに聞き惚れていた全員が怪訝な顔をした。
「どうかしたのか?アリス」
裕馬がアリスの傍に寄り、声をかける。
「え?あ・・裕馬か。あ・・あれ?いつの間に・・・みんな来たの?」
「気付かなかったのか?アリス」
クイーンたちの存在に今気付いたらしいアリスの反応に、クイーンが驚いてそう言った。
「あ・・・うん」
ちょっとバツが悪そうにアリスが返事をする。
「すごい集中力だねぇ」
リアンもそれには感心したらしく、へぇっと声をあげる。アリスは曖昧に笑顔を返しながら振り返る。そして。振り返った先で、バニーと視線が合う。その瞬間、アリスの頬がかすかに赤らむ。今日、初めてまともにバニーの顔を見る気がする。こちらに向けられる、無償の笑顔。自分だけに、向けられる・・・。
って!!何考えてんだ!!俺ッ・・・!!!
思わずバニーに見惚れるアリスくん。まだまだ青い。
「何赤くなってんだ〜?恥ずかしがることねぇじゃん。うまいんだからさ!」
そして。嬉しくも検討はずれな裕馬のセリフに。現実に戻ってみたり。
アリスは静かに立ち上がる。
「え?もうやめちゃうの?もう一曲くらい聞かせてくんない?」
ピアノから離れるアリスを、リアンが引き止める。
「や、ちょっと音がおかしいトコがあって・・・調律したいんだけど、道具ってある?」
「・・・僕が持ってくるよ」
どことなく、沈んだ表情のアリス。そのアリスの言葉を受けて、バニーが道具を取りに部屋を出る。
「・・・じゃあ、俺たちは帰るか」
「・・・そうだね。また聞かせてよ。アリス。この部屋は好きなだけ使ってくれていいからねぇ」
バイバイ、と手を振ってクイーンとリアンが部屋を出て行く。
「・・・裕馬さん、僕たちも行きましょう・・・」
「え?いや、俺は・・・」
アリスと一緒に。そう伝えようとした先のソウの表情は。どこまでも切なく。声もなく、裕馬のシャツをひっぱる。
「・・・・あぁ・・じゃ、行くか・・・」
さすがの裕馬も、ソウのその表情にソウの意見に従った。
誰もいなくなった部屋で、アリスは一人、ピアノを見つめていた。
もう、二度と弾かないって決めてたのに・・・。
アリスは、俯くようにして、瞳を閉じた。
そうしていると。
あの日のことが、脳裏によみがえってくる・・・。
あの、寒い、寒い冬の日。
アリスの人生の中で。
忘れることのできない、あの日の出来事・・・。
〜続〜
いかがでしたでしょう〜何か暗く本編が進んでおりますね。しかも前編とかにしちゃいました。たぶん、次でこのもどかしげなカップル事情は一段落つくはず。各カップルの幸せを願いつつ、次話をお待ちくださいませ〜(^^;)