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第13話 朝食戦線

今回は、アリスと裕馬が出張ってます。あまりラブっぽくないですが。新たな波乱(?)への伏線です☆

 平和な、平和な朝が訪れました。ただ今、午前8時。ほっとくと暇な人間はう〜ん、あと2、3時間・・・と(作者だけ?)惰眠をむさぼるその時間。というか、こっちに来てだいぶたつアリスなんか思い切りそのパターンで。真面目に朝ごはんを食べるのが実は今日がはじめて。

 アリスに裕馬、そしてソウと。新しいご近所さんも増えましたということで。食事をしばらくクイーン邸でもある公館でみんなで摂ることとなりました。

 爽やかな朝日とともに、マスターの淹れる紅茶の香り。

 そして。

 朝からむせ返るような・・・。

「重っ・・・!!」

 料理の品々。

 アリスは眼前に繰り広げられる、え?今は夕食の時間かな?と小首を傾げたくなるような料理を目の前に、うっとその一言を発する。そしてその横では。ちょっと精気の抜けたように呆然と料理を眺める裕馬がいた。

「これ、何・・・?」

 嫌がらせ?とか思ってみたり。

 

 アリスと裕馬は、渋好みなのか2人とも朝はご飯に味噌汁と決めていた。洋食は食べれないことはないのだが、長年の食習慣からか、あまり受け付けない。しかも、パンにスープという次元を超越したこのメニューは・・・。2人の胃に。食べる前から大きな負担をかけるのであった・・・。

 一方、2人が料理を目の前に愕然としている中、他の面々はというと。

 クイーンは眼鏡をかけ、何やら文書に目を通している。バニーもその横で何やら難しげな本を読んでいた。この2人、ものを読む時の顔が一緒だ・・・。そして、ガーデンはというと、自分の目の前で何やらうるさく騒ぐ例の双子に鋭い一瞥を投げかけていた。投げかけられた双子には、その一瞥の意味は通じてはいないようだったが。リアンとソウはいそいそと朝食の準備にいそしみ、マスターはにこにこと紅茶を淹れる。そんな、のどかなのどかな風景。

 に、見合わない料理。

「ていうか・・・そこだけ別世界・・・」

 遠い目をしてアリスはつぶやくのであった。


 あぁ、食文化の違いっておそろしい。



 そんな心の叫びも虚しく。

 モーニングタイムは始まるのであった・・・。


 改めて眼前に並ぶメニューを見て。

 思わず目をそらしてみたよ。つか、匂いも強烈ね。このご飯たち。

 ふと裕馬を見やると、がつがつ食べるホワイトとブラックを引きつった顔で眺めている。何と言うか・・・ご馳走様。

「どうしたの?アリス、食べてないみたいだけど」

 心配そうに声をかけるバニーに。今回ばかりは放っておいて欲しい気満々。

「アリスは昨日大変だったしねぇ。食欲ないんじゃない?」

 珍しく、リアンがアリスの欲しい助け舟をくれる。

 その言葉に、アリスは便乗し、そうなんだよね〜あはは。なんて答える。

「じゃあ、フルーツだけでもどうぞ」

 いつでも優しいこのお兄さんは、気を使ってフルーツが盛ってある皿をとってくれる。

「ありがと」

 涙が出るほど嬉しいッスよ。と思いながら。適当な量を皿に取ると、それを同じ思いの裕馬にまわす。

「急に環境が変わって、裕馬もあんまり食べれねーだろ?」

 そんなアリスに対して。サンキュー!アリス!愛してるぜ☆なる笑顔を向け。そのフルーツの盛られた皿を受け取る。

 そのやりとりを。

 静かに見つめるバニーとソウがいた。

「いやはや。これはおもしろい」

 それを見ながら、こんな不謹慎なことを言ってのけるのは。もちろんリアンさん。

「楽しそうだな・・・」

 呆れ顔でリアンを見ながらクイーンはつぶやく。

「そぉ?」

 言ってるその顔には・・・満面の笑み、であった。


 そんな楽しい朝食会も終わり。だるだるとしかし、各自が好き勝手に過ごしている時間に。

「・・・腹へった・・・」

 何ともそぐわないアリスのこの一言。

 いつもはおなか一杯食べるご飯と味噌汁を抜いて。しかも起きた時間は早いし。食べたのはフルーツのみ。そりゃあ、健全な男子高校生はお腹もすくよ。ソファで隣に座る裕馬なんて。アリスより代謝のいい分。余計辛そうに見える。

 そんな状態で昼ご飯までの時を過ごそうとしていた2人に。扉のところでリアンが手招きをしている。

「・・・?俺たちかな?」

「みてーだな・・・」

 2人は、呼ばれるままにリアンの元へと駆け寄るのであった。そしてそのまま、その部屋をあとにした。



「どうしたの?リアン。どっか行くの?」

 行き先も告げず、公館を出て行くリアンに対し、アリスが問う。

「ふふ〜。ま、ね。2人とも、腹減ってんでしょ?ま、誰だって朝からあの料理はちょっと引くよねぇ」

 あはははは〜とリアン。

「気付いてたんですか?」

 裕馬のその言葉に。リアンはにやりと、当たり前だよん。とだけ答えた。

 そして、3人は公館から5分ほど歩いた場所に着いた。

 そこには・・・。

「うっわ〜・・・」

 ここは、さっきまでいた場所と同じ敷地にあるもの?と、一瞬目を疑いたくなるような。竹林。

「純・・・日本建築・・・」

 その一角に建つ、昔ながらの日本家屋。

 リアンは、呆然とその屋敷を見つめる2人をどうぞ、と中へ通した。


「ここはね、離れなんだよ。俺、日本文化好きだからさ〜わがまま言ってクイーンに建てさせたんだよね〜」

 笑って言える次元じゃねーよ。それ。

 リアンはそんな恐ろしいコメントを残し、アリスたちを客間に通すとちょっと待っててね〜と部屋を出ていった。

「すげえ・・・これ、かけじく?」

「これって、檜??」

 残った2人は・・・ちょう低次元な会話を繰り広げるのであった・・・。

 

 30分も待っただろうか。

 リアンがお盆を持って入って来た。

「お待たせ〜リアンさん特製和朝食よん」

 アリスと裕馬の前に置かれたのは。

 白いご飯にお味噌汁。お漬物に根菜の煮物だった。

「ありあわせのものだからたいしたモンじゃないけど」

 ごめんね〜と言うリアンに。

「く・・・食ってい〜の?」

「う、うまそう・・・」

 飢えに飢えてるんだね・・・。

「どーぞ」

 その言葉に。アリスと裕馬は景気よく。いっただきま〜すと食べ始めるのであった。

「今まで和食派だったなら、こっちの食事は慣れるまでキツイかもねぇ。めっちゃ洋食よ。こっちって。しかもやたら重いんだよねぇ」

 苦笑しながらリアンは言う。

 住む世界が変わるということは、こういうことでもあるんだなぁと。2人は改めて感じるのであった。

「まぁ、ここにはたいていのものは揃ってるし。和食が食いたきゃ作ってやるから。いつでもいいなよ」

 おいしそうにがっつく2人を嬉しそうに眺めながら、リアンはそう言った。

 


「は〜おいしかった!ご馳走様!!」

 淹れられた煎茶まできっちり飲み干して。大満足と、顔に書いてある。

「ほんと、うまかったです。ごちそうさまでした」

「いえいえ、おそまつさまでした」

 ここまでやりとりをし、誰からともなく笑い出す。

 久しぶりの、なごやかな時間。


 3人で食べたあとを片付け。

 アリスの要望で、屋敷の中を案内してもらうこととなった。

 檜のお風呂に縁側に。お茶室に。畳の香りが、木のぬくもりが、どこまでも温かい。

「ここはちょっと毛色が違うんだけど・・・」

 そう言って、リアンが止まったのは。この屋敷ではじめてみるドアノブのついた扉。中に入ってみると、この部屋だけフローリングだった。

「は〜ここはフローリングなんスね」

 結構な広さのあるその部屋を見渡しながら裕馬が言う。

「リアン・・・あれ、ピアノ・・・?」

 アリスが指差すその先には。漆黒のグランドピアノ。その部屋の片隅に、ひっそりと置かれていた。

「そーそー。グランドピアノってかっこいいじゃん?どうしても欲しくてさぁ」

 ひけるわけないんだけど、と前置きをし。

「むこうとシンクロした時パクッてきちゃった☆」


 あなたの本気はどこまでですか?


 ざっと一歩引くアリスと裕馬に冗談だって!と言うが・・・本当のところはどうなのか。とりあえず。疑問にはフタをするとしましょう。

 アリスは、気を取り直すと、そのピアノのフタを開ける。

 そして、静かに鍵盤をなぞる。


 ポーン・・・


 静かな部屋に、その音が大きく響く。

 空気が、締まる。


「・・・綺麗な・・・音・・・」

 アリスは、今度は椅子に腰掛け、鍵盤を一つ一つ丁寧に押していく。

「アリスはピアノが弾けるの?」

 意外そうにリアンが聞くが、アリスはその問いに対して返事をしない。

「無駄ですよ。もう、アリスの耳には何も届きません」

 裕馬は苦笑しながら、でも、少し困ったように言った。

「アリスの前の父親が結構有名なピアニストで。アリスも弾けることは弾けるんスけど・・・」


「音が、いいな」


 ぽつりと、アリスはつぶやくと。

 本格的に、ピアノを弾く体制に入った。


                                     〜続〜







いかがでしたでしょう。あまりラブっぽくない回ですね!続きをお楽しみにってことで☆

この場を借りて。いつも『アリス』を読んでいただきましてありがとうございます。最近は評価やメッセージもいただけて本当に嬉しいです。こんなところで何ですが。いつも感謝しております。皆様からのコメントやメッセージは参考にさせてもらいますので♪どんどんリクエストや更新早くしろとの意見(笑)ありましてらお願いいたします。励みになりますので。ではでは、これからもよろしくお願いいたします。

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